2020年3月24日号
■自民党 両院議員総会で運動方針採択へ
 自民党は、新型コロナ問題で延期していた党大会に代わる両院議員総会を3月17日に開催して改憲を前面に打ち出し、「改憲原案の国会発議に向けた環境を整えるべく力を尽くす」と党の決意を鮮明にした「2020年運動方針案」を採択するという(詳細は前号参照)。
 このところ自民党は、改憲反対勢力を意識し、国民世論を喚起する草の根運動を強調している。
 「改憲発議に反対する全国緊急署名」運動と世論を大きく盛り上げよう。(3月12日記)
■法治主義の崩壊招く検事長定年延長 法律家9団体が共同声明
 東京高検の黒川弘務検事長の定年延長は、安倍首相が「桜を見る会」疑惑で刑事告発される中で行われ(告発は1月14日)、歴代政権の法解釈を180度変更した違法の決定であることは前号でふれた。さらに政府は、黒川氏の定年延長とつじつまを合わせるため、検察官の定年を63歳から65歳に引き上げる検察庁法改定案の国会提出を目論んでいる。
 黒川氏の違法な定年延長を受け、社会法律文化センター、自由法曹団など法律家9団体は3月5日、定年延長を認めた閣議決定の撤回と、黒川氏に辞職することを求める抗議声明を発表した。
 声明は冒頭で「この人事は、黒川氏を、2021年8月14日に65歳で定年退官となる稲田伸夫検事総長の後任に充てる目的といわれている。黒川氏は、かねてから菅官房長官と懇意であり、政権の中枢に腐敗事件の捜査が及ばなくするための人事ではないかとの疑惑が指摘されてきた」「官邸による検察・法務人事への介入の総仕上げといえる」と指摘している。
 また、声明は検察官の定年制について「検察官が刑事訴訟法上強大な権限を持」っており、「その職務と責任の特殊性に鑑み、検察官の人事に権力が恣意的に介入することを防ぐ」もので、国家公務員の定年延長制度が「検察官に適用されることはあり得ない」とし、1981年の国家公務員法改正時、「政府も検察官について国家公務員法の定年延長の定めは適用されないとする解釈をとっていた」と指摘。
 ところが安倍首相は、2月13日の衆院本会議で、「検察官の勤務(定年)延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と答弁。首相と「つじつまを合わせる」ため、森雅子法相らは支離滅裂な対応を繰り返し、国会はしばしば紛糾した。  これら一連の政府の対応について声明は、「定年延長についての閣議決定が、法務省や人事院の正規の決裁も経ないまま長年の法解釈を無視し、官邸の独断で行われたものであったことを白日の下に晒した」ものだと断定し、「もはや法治主義の崩壊と言うべき事態である」と断じている。
  声明は最後に「この問題は、日本の司法と民主主義の根本にかかわる重大事である。…… 検察の独立を含む民主主義を復活させるまで闘いつづける決意を明らかにするものである」と結んでいる。
(中)
2020年3月10日号
■改憲前面に 自民、2020年運動方針案
 自民党は2月21日の総務会で2020年の運動方針案を了承した。方針案は、@前文A憲法改正B重点政策C党活動で構成。憲法を独立した章として前面に打ち出し、衆参両院の憲法審査会で早期に議論を進めるよう訴えている。
 方針案は、「憲法改正原案の国会発議に向けた環境を整えるべく力を尽くす」(毎日)と決意を明記した。改憲について国民が判断する材料を示すのは政治の責務だと強調し、衆参両院の憲法審査会で早期に「各党各会派の枠を超えた議論」をするよう求め、「各党各派からの意見・提案があれば真剣に検討するなど幅広い合意形成を図る」(同)と強調した。
 さらに方針案は具体的な行動として、国民世論を喚起するため「遊説・組織委員会」の設置と全国各地における憲法集会の開催やポスターの全国展開と女性向けパンフレットの作製、インターネット動画の活動など、昨年来取り組んでいる各地における草の根運動を再確認している。われわれの「改憲発議に反対する全国緊急署名」の草根の運動との真っ向勝負だ。自民党のあらゆる改憲策動を打ち破ろう。
 3月8日に開催予定だった自民党大会は、新型コロナウイルスの感染拡大問題などを受けて延期に。
■法解釈180度変更 検事長定年延長 立憲デモクラシーの会声明
 憲法に従った政治の回復を目指す憲法学者・研究者らで組織されている立憲デモクラシーの会が2月21日、「検察官の定年延長問題に関する声明」を発表した。
 東京高検の黒川検事長は2月7日に退官する予定だったが、安倍内閣は国家公務員法を根拠に黒川氏の定年延長を閣議決定した(1月31日)。
 これまで検察官の定年延長は検察庁法によって認められてこなかった。また、政府の見解でも「国家公務員法の規定は検察官に適用されない」という考え方が示されてきた。それにもかかわらず、閣議決定で制定当時の政府見解を180度解釈変更して、国家公務員法を根拠に定年延長が認められるのか?
 声明は、「国会の審議・決定を経ずして、単なる閣議決定で決められるべき事柄ではない」と批判。「従来の法解釈を自由に変更してかまわないということでは、政権の行動に枠をはめるべき法の支配が根底から揺るがされる」「その時々の都合で長年の法解釈を変更して恬(てん)として恥じるところがないというのでは、国民の法の支配への信頼は崩壊してしまう」と断じている。
 また、声明は「百歩譲って検察官にも国家公務員法を適用して定年を延長できるとしても、それが可能な場合は現行法上、きわめて限定されている」として、「問題となる国家公務員法の規定が適用されるとしても、今回の閣議決定は、人事院規則および国家公務員法に違反」と主張。「法の支配をないがしろにする現政権の態度があらわになったと言わざるを得ない」と手厳しく批判している。
(中)
2020年2月25日号
■自民党 あの手この手で改憲の糸口さぐる
 安倍首相は年頭からことあるごとに、改憲をあおる発言を繰り返している。
 自民党幹部も様々な手口で改憲の糸口をつかもうと躍起になっている。
 新型肺炎の感染拡大をめぐり、緊急事態条項の創設を露骨に持ち出したのは、自民党の伊吹・元衆院議長。1月30日、派閥の会合で「緊急事態の1つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」(東京)と発言した。2月1日には自民党の下村・選対委員長(前改憲本部長)も「人権も大事だが、公共の福祉も大事だ。直接関係ないかもしれないが、(国会での改憲)議論のきっかけにすべきではないか」(日経)と講演の中で述べた。
 これに立憲民主党の枝野代表は記者会見で、「拡大防止の必要な措置はあらゆることが現行法制でできる。憲法とは全く関係ない。人命に関わる問題を悪用しようとする姿勢は許されない」(毎日)と噛みついた。
 感染拡大で国民の不安に乗じる改憲策動はあまりにも姑息だ。
また、自民党の稲田・幹事長代行は2月10日、記者団に「女性の政治家の割合が極めて低い。憲法14条を改正してクォータ制(議席や候補者の一定割合を女性にする制度)を入れることも考えるべきではないか」と強調(毎日)。
 14条は「すべて国民は、法の下に平等であ」るとしている。ちなみに昨夏の参院選での女性候補者の割合が共産党55%に対し、自民党は14・6%に過ぎない。自民党が女性候補を増やせばいいだけの話である。
 あれこれと改憲の糸口をつかもうと躍起になっているが、安倍改憲の本丸は9条改憲である。
■進む日米軍事一体化 全国各地で軍事訓練
 北海道や沖縄など全国各地で陸上自衛隊と米海兵隊との共同訓練が活発化しており、いっそう一体化が進んでいる。
 沖縄では、陸自の水陸機動団と在沖海兵隊の共同訓練が1月25日〜2月13日までの日程で、ブルービーチ訓練場(金武町)で実施された。2018年に発足した水陸機動団と米海兵隊の共同訓練は初めて、陸自は60人、米軍は2500人が参加。
 沖縄タイムスは「沖合の揚陸艦3隻からボートに乗った米兵と自衛隊員がブルービーチに上陸。敵地を制圧した後にホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)で運んだ最新鋭の高機動ロケット砲システム(ハイマーズ)を地上に展開した」と、訓練の模様をつたえている。
 「日本版海兵隊」と言われる水陸機動団は、国内外で米軍との共同訓練を重ねてきた。米海兵隊は海外への“殴り込み部隊”の異名を持つ。現在、水陸機動団は長崎県に2連隊が置かれている。3つ目の配置先として沖縄と北海道が検討されている。
 北海道における共同訓練は、1月22日〜2月8日の日程で実施され、陸自約1600人、在沖海兵隊側は約2500人の計約4100人が参加した。「国内での日米共同訓練としては過去最大規模」(北海道新聞)となり、オスプレイも参加した。
(中)
2020年2月11日号
■安倍首相、9条への自衛隊明記は「安全保障・防衛の根幹」
 安倍首相は、年頭から改憲発言を繰り返してきた。1月6日の年頭記者会見では「参議院選挙や、世論調査を見ても、国民の声は、憲法改正の議論を前に進めよ、ということだ」と述べ、「憲法改正を私自身の手で成し遂げていくという考えには全く揺らぎはない」と強調(官邸HP)。1月12日のNHKの日曜討論でも同趣旨の発言を繰り返し、20日の施政方針演説では「未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは私たち国会議員の責任ではないか」と訴え、具体的な改憲案を提示するよう与野党に呼びかけた(時事)。
 9条への自衛隊明記について首相は、1月27日の衆院予算委員会で、元防衛相の自民党議員への答弁で「自衛隊をしっかりと憲法に明記し、その正当性を確定することこそ安全保障、防衛の根幹だ」と述べ、自衛隊が「国民のために命を賭して任務を遂行」しているとし、「政治の場において、彼らの正当性を明らかにしていく責任が政治家にある」(毎日)と強調した。
 安全保障のために自衛隊を明記するというのは、口実に過ぎない。言うまでもないことであるが、集団的自衛権を認め、戦争法を制定してもなお、9条が歯止めとなって自衛隊が大手を振って海外で戦争することは制約される。9条に自衛隊を明記することによって、戦力不保持・交戦権否認の大原則を空文化してしまおうというのが安倍首相の狙いである。
 今年は憲法施行から73年。この間、日本は9条の縛りによって一度も戦争を起こしていない。戦争では、ひとりも外国人を殺していない。
 昨年の参議院選挙の結果や世論調査で明らかなように、多くの国民は改憲を望んでいない。国民の意思に逆らう安倍改憲に全力で立ち向かおう。
■日米安保改定60年 戦争法成立で地球規模の日米軍事同盟に変質
1960年1月19日に現行の日米安全保障条約が署名されてから60年になった。安倍首相は記念式典で「60年、100年先まで世界を支える柱として同盟を強くしていこう」(東京)と訴えた。
 現行日米安保条約によって、米軍は日本の基地から日本側との事前協議なしにどこにでも出撃できることを可能にした。実際、米軍によるベトナムやアフガニスタン、イラクへの侵略戦争など、在日米軍基地が出撃拠点になった。
 安倍政権は、集団的自衛権の行使を認めた戦争法の成立を強行した(2015年9月)。これによって現行安保条約は、地球規模の日米軍事同盟に大変質した。
 在日米軍専用施設面積の7割が集中する沖縄。「米軍による事件・事故、騒音や土壌汚染といった環境破壊などの過重な負担は『安保のトゲ』として県民に突き刺さり続けている」(琉球新報)。
 また、安倍政権は民意を踏みにじり、辺野古新基地建設を強行している。安倍政治を許してはならない。
(中)
2020年1月21日号
■改憲発議阻止 安倍9条改憲にとどめを
 「たやすい道ではないが、必ずや私の手で成し遂げていきたい」―野党の結束によって自民党改憲案の憲法審提示を阻まれ、国民投票法改定案を5国会連続で採決を阻止された昨年の臨時国会閉会直後の安倍首相の発言だ。2021年9月までに改憲を実現しようとする並々ならぬ決意が込められている。
 本年の通常国会と臨時国会で「改憲発議」を許すかどうかの正念場になった。この期間に衆院解散・総選挙が行われる可能性も濃厚である。
 私たちは、2年間にわたって3000万署名や街頭行動などに取り組み、「安倍改憲反対」「9条守れ」の声を広げる努力を積みあげてきた。
 「安倍9条改憲NО!全国市民アクション」では、安倍改憲阻止の闘いがいよいよ重大な局面にさしかかったとして、3000万署名にかえて「改憲発議に反対する全国緊急署名」を呼びかけている。今年こそ国民の意思に逆らう安倍・自民党改憲にとどめを刺す年にしよう。
  ◇            ◇
■2019年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・4日 参院選公示 安倍首相は、改憲について「議論を進める政党か、議論しない政党かを選ぶ選挙だ」と訴え、争点化
・16日 安倍首相、憲法審をめぐり「野党が審議拒否している。給料をもらっているのに職場放棄だ」と暴言
・21日 参院選投・開票 改憲勢力は発議に必要な3分の2議席を割る。安倍首相は記者会見で「勝利を収めた。憲法改正について議論すべきという国民の審判は下った。私の使命として残された(総裁の)任期の中で、憲法改正に当然挑んでいく」と強気の発言
〈8月〉
・1日 臨時国会開会
・5日 臨時国会閉会
・6日 公明党の山口代表は記者会見で、自民党内に参院選で勝利を得たとの見方があるが「何の民意を得たのかさっぱりわからない」と疑問を呈する
・27日 安倍首相、9月に内閣改造・自民党役員人事を行うと明言
・30日 防衛省、2020年度軍事費の概算要求決定。総額は5兆3223億円と過去最大
〈9月〉
・11日 第4次安倍再改造内閣発足。安倍首相は記者会見で改憲について「困難な挑戦だが、必ずや成し遂げる」と強調。自民党、臨時総務会を開き改憲シフトの新執行部を決定
・27日 河野防衛相、2019年版防衛白書を閣議に報告
〈10月〉
・4日 臨時国会開会
・8日 安倍首相、参院本会議で「自民党は改憲のたたき台を提示している。野党各党も改憲案を持ち寄っていただきたい」と求める
・10日 衆院予算委員会で安倍首相は自衛隊の9条への明記について「自民党総裁として大変大切だと思っている」と強調
・11日 自民党の憲法改正推進本部は、全国各地で憲法集会の開催を進めるため「遊説・組織委員会」の新設を決めた
〈11月〉
・7日 衆院憲法審、2年ぶり自由討議
・21日 安倍首相、参院本会議で「桜を見る会」の招待客の推薦にかかわっていたことを認める
・25日 「桜を見る会」野党追及本部結成。野党合同ヒアリングで政府を追及、19回開く
〈12月〉
・9日 臨時国会閉会。安倍首相、記者会見で「たやすい道ではないが、必ずや私の手で成し遂げていきたい」と改憲への執念をむき出しに
  ・10日 麻生副総理、改憲について「(任期中に)できるならいいが、できるあてがないなら、その対策を考えなきゃいかん」と述べ、総裁4選を示唆
・27日 閣議で自衛隊の中東派兵決定 
(中)