2007年12月25日号
■「新テロ法」国会越年自公 会期再延長の暴挙
 就任後の最初の仕事として新テロ特措法に固執する福田首相。自民・公明党は14日、衆院本会議で会期の再延長を強行した。参院選の民意を踏みにじる暴挙である。
■憲法審査会の始動めざす動き活発化
 8月の臨時国会で衆参両院に設置された憲法審査会がいまだに活動を開始していない問題で、国会内外の動きが活発化。
 笹川尭衆院議院運営委員長(自民)は4日、西岡武夫参院議院運営委員長(民主)に対し、審査会始動の条件となる「審査会規程」の制定を協議するため、衆参合同議運幹事会の開催を提案した(産経)。が、野党の反対の立場は変わっていないため、今国会中の始動は困難とみられている。
 改憲を目的とした「新憲法制定議員同盟」(中曽根康弘会長)も同日、総会を開き、審査会規程の早期制定を各党に求めていくことを決定した。
同議員同盟が取り組んでいる審査会規程の早期制定を求める国会議員の署名は231人に(4日現在)。
   さらに、「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(民間改憲臨調、代表世話人・三浦朱門元文化庁長官)は6日、自民党本部に憲法審査会規程の制定の促進を求める要望書を提出した。同時に、衆参両院議院運営委員長にも提出。
 国会が発議する改憲原案の審査権をもつ憲法審査会の活動が開始できないことへの改憲派の苛立ちが見えてくる。
■安倍路線継承 中川昭一氏ら勉強会立ち上げ
 自民党の中川昭一元政調会長や無所属の平沼赳夫元経済産業相らが4日、新たな勉強会(会の名称は決まってない)を立ち上げた。勉強会は、安倍前首相が掲げた「戦後レジームからの脱却」路線を継承し、保守勢力の再結集を狙っている。
 中川氏は「数ヶ月前までみんなが『やるべきだ』と言っていたことが忘れ去られてはいけない」(朝日)とあいさつ。
 設立趣意書には、@伝統・文化を守るA疲弊した戦後システムを見直すB国益を守り、国際社会で尊敬される国にする―などの項目(読売)が盛り込まれている。
■民主党の前原副代表「国連決議前提」に異論
 民主党の前原副代表は、東京都内であったシンポジウムで、自衛隊の海外派兵は国連決議を前提とする小沢代表の見解に対し、「自衛隊を海外に送るには国連決議はあったほうがよい。しかし、国連決議を金科玉条のようにしてしまうと、決議があれば何でもできる、また決議がなければ何もできないという考え方になる。これでは日本の国益や安全は守れない」(NHK)と異論を唱えた。
 ちなみに、自民党が昨年8月にまとめている「国際平和協力法案」(恒久法)によれば、自衛隊を海外に派兵する条件に、国連決議や国際機関の要請がなくても、「我が国が特に必要と認める事態」をあげ、政府の判断で派兵するとされており、国連に限定していない。
(中)
2007年12月11日号
■与党が憲法審査会の始動を策動
 憲法審査会始動の動きがでてきた。西岡武夫参院議院運営委員長(民主)は、11月20日の議院運営委理事会で、笹川尭衆院議院運営委員長(自民)から「憲法審査会の運営規程の制定を検討したい」との申し出があったことを明らかにした。会期再延長ともからみ、その動きを警戒しなければならない。
 審査会は、8月の臨時国会で衆参両院に設置されたが、野党の強い反対で運営規程が決まらず、活動が開始できてない。
■海外派兵恒久法制定で与党や民主党に動き
 11月22日、3度目の福田・小沢両党首会談がもたれた。福田首相は小沢氏に恒久法と社会保障に関する政策協議を提案した。
 小沢氏は「国会内でオープンにやるのがわが党の方針」(毎日)と反対を表明。恒久法については「無原則に派遣するのは憲法に反する」(同)と述べ、原則の明確化が恒久法制定の前提であるとの立場を明らかにした。
 民主党が公表した(11月13日)「アフガニスタン復興支援特措法案」(仮称)の要綱には、恒久法の早期制定の必要性が明記されている。
 また、公明党の北側幹事長は、NHK番組「日曜討論」で、恒久法について「スピーディーに対応していくためには、恒久法があっていいという議論は十分、理解できる」(公明新聞)と語り、慎重だった姿勢から恒久法制定へ一歩踏みこんだ。
 9条解釈改憲―新テロ特措法や恒久法の制定、集団的自衛権行使容認の動きからいよいよ目が離せなくなった。
■集団的自衛権容認「懇談会」 報告書先送りか
 東京新聞(11月25日付)は、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(柳井俊二座長)が、「今秋予定していた報告書の取りまとめを年内は見送る方針を固めた」と報じた。その理由を、@福田首相が性急な憲法解釈見直しに慎重なことA新テロ特措法案の国会審議への影響を考慮した、としている。
 懇談会は5月以降、5回開催されたが、安倍前首相が9月に突如退陣したため宙に浮いていた。
 懇談会は、安倍前首相が提示した4類型(公海上における自衛隊の米軍艦船の防護、米国に向かう弾道ミサイルの自衛隊による迎撃など)について、「憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使として容認すべき」とする意見が大勢を占め、報告書に盛りこむ予定だった。
 他方、同日付の読売新聞社説は、懇談会は「政治情勢の変化にとらわれず、日本の安全保障に資する報告書をしっかり作成してもらいたい」と注文をつけ、「懇談会の今後の議論では、恒久法整備につなげるという視点が重要となる」と強調している。
(中)
2007年11月27日号
■「大連立騒動」で恒久法制定に弾みか
 福田首相は、福田・小沢両党首会談後の記者会見で「『国連の決議や国連の承認した活動を原則にやっていこうという話し合いをした』と語り、恒久法をめぐって小沢氏との間で認識の共有があったことを強調した」(朝日)が、次期通常国会から最重要の政治課題になる可能性が出てきた。
 「自衛隊の海外派遣は国連決議を原則とする」は、小沢氏の年来の主張であり、福田首相も官房長官時代から恒久法の制定に熱心である。
 「大連立騒動」で憲法違反の危険な動きがさらに強まろうとしている。
 自民党の大島理森国対委員長はフジテレビの報道番組で(4日)、恒久法について「今国会ではまだ法案を出していないが、次期国会であるかもしれない」(朝日)と語り、年明けの通常国会への法案提出を示唆した。
 7日の衆院テロ防止特別委では、民主党の大島敦議員が「特措法によって場当たり的に対処するのではなく、『一般法をつくってフレームを用意して』、国際貢献のあり方を事前に整理しておく必要性を主張した」(同党HP)。
 「石破防衛大臣は、日本を訪問しているアメリカのゲーツ国防長官と会談し(8日)、インド洋での給油活動が中断したことに関連し、『個別の事態が起きた場合に、そのつど、特別措置としての法律を作って対応するのではなく、必要があれば自衛隊を海外に派遣できるようにする恒久法の議論が今の国会で出ている。政府としても真剣に取り組んでいきたい』」(NHK)と強調した。
 もし自衛隊の海外派兵をいつでも可能とする恒久法の制定を許すようなことになれば、究極の9条解釈改憲といわれる集団的自衛権行使合憲論は必要なくなるほどの重要な問題であろう。
■福田・小沢密室会談 「二大政党政治」が一夜にして大政翼賛政治に
 浅井基文・広島市立大学広島平和研究所所長は「今回の一大茶番劇が示した最も重要な事実は、日本のように民主政治が形骸化し、空洞化しているところでは、『二大政党政治』が一夜にして大政翼賛政治に陥る重大な危険性を内に秘めているということでした」と警鐘をならしている(詳細は浅井氏のHPを)。
■憲法審査会の始動を急げ 新憲法議連が決議
     日経新聞によると、超党派の国会議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は8日、都内で緊急総会を開き、憲法審査会の早期始動を求める決議を採択した。中曽根氏は「政治的な事情で党内、国会の活動が頓挫しているが、自民党新憲法草案の再点検や各党同志との共同研究には意味がある」と強調した。
(中)
2007年11月13日号
■福田首相 国会答弁録
 福田首相の本質はタカ派。いまのところ低姿勢を貫いている。改憲にかかわる代表質問以降の国会答弁を拾ってみた。
  • (集団的自衛権の行使) 「どこまで今の憲法の解釈上許される国際活動なのかについてはこれからも十分議論していく。ただ、その扱いは十分に慎重でなければいけない」(衆院予算委員会)―行使容認に慎重な考え?
  • (安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)「私は、何ら今まで指示したこともない。ですから、今までの経緯もあり、しかし、その内容を見て判断する」(参院予算委員会)―「懇談会」は、秋に予定している報告に集団的自衛権の行使を認める内容を盛りこむ見通しとなっていた
  • (テロ撲滅の方策)「人道支援や復興支援によって治安・テロ対策は代替はできない」(衆院本会議)―海自の派兵に固執
  • (複数の任務につく米軍艦船への給油活動)「当該艦船が、実態として、テロ対策海上阻止活動の任務に当たっていることが重要である」(衆院本会議)―海上阻止活動の実態があれば、それ以外の任務についていても給油容認を示唆
    ■改憲派のいらだちと巻き返し
     自民党の参院選惨敗や安倍首相の退陣、そして後を継いだ福田首相の低姿勢が続く中で、改憲派が苛立ち、巻き返しをはかってきている。
     改憲・右翼団体である日本会議が設立10周年記念大会を開催。同会議会長の三好達・元最高裁長官はあいさつで、福田首相について「はなはだ遺憾ながら、靖国神社に参拝しないことを明言し、所信表明演説で憲法改正にまったく触れなかった」と批判。「戦後レジームからの脱却」を唱えた安倍晋三前首相の退陣を踏まえ「これまでの流れに対する揺り戻しが危惧される」と保守路線後退に強い懸念を示し(毎日)、大会は「教育改革」「新憲法制定」「天皇陛下御即位20年奉祝」の三つを基本に運動を展開するとの宣言を採択した。
     自民党の中山太郎憲法審議会長は、国会内で講演し、衆参両院の「憲法審査会」がまだ始動していないことについて、「立法府で違法行為が行われている」と述べ、両院の議長や議院運営委員長は努力すべきだという認識を示した(NHK)。
     読売新聞(10月22日付)は社説で、「国や社会の将来像にかかわる憲法論議は、政治が取り組むべき最重要課題だ。いつまでも衆参両院の憲法審査会を宙に浮かせておくわけにはいかない」と苛立ちをみせ、「インド洋での給油活動継続問題だけでなく、今後の国際平和活動を円滑に進めるためにも、憲法審査会で、憲法上の問題をきちんと整理することが大事だ」と、憲法審査会の始動と改憲論議を促している。
    ■憲法の原点に返る時だ―北海道新聞社説
     北海道新聞(10月11日付)の社説は、民主党の小沢代表が、国連決議に基づくアフガニスタン国際治安支援部隊への自衛隊参加は合憲としたことに対し、「海外での武力行使を認めるこの憲法解釈を私たちは到底容認できない。たとえ国連決議があっても、平和憲法の精神に照らせば自衛隊が海外で血を流すことは許されない」と断定した。
     一方、インド洋での給油活動について「非戦闘地域に限って行動し、後方支援で武力行使をしないのだから憲法に違反しない」とする政府の見解に対して、「だが、後方支援が軍事活動の一環だというのはむしろ常識だ。集団的自衛権行使の問題を含め、自衛隊の海外派遣と憲法との関係をめぐる政府の説明は、およそ説得力を持っているとは言えない」と喝破している。
    (中)
  • 2007年10月23日号
    ■福田首相 3年後に向け改憲論議促す
     福田首相は所信表明演説で改憲に一言も触れなかったが5日、参院本会議で社民党の福島党首の代表質問に「時代の変化を踏まえ、将来を見据えながら、新たに加えるべきものや改めるべきものがあれば憲法改正についても議論がなされるべきである」と答弁、改憲に意欲的な姿勢を示した。
     福田首相は、任期中の改憲についての質問には答えなかったが、「(改憲手続き法が)本格施行となる3年後に向け、広く国民の間で、与野党においても議論が深められることを期待している」と改憲論議を促した。
     また、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の今後の取り扱いについては「これまでの議論の経緯などを踏まえて検討したい」と答え、「懇談会」の存廃や報告の取りまとめなどについて明確にしなかった。
     報告書には集団的自衛権の行使を認める内容が盛りこまれる見通しになっていた。
    ■小沢氏 国連決議の有無で合憲にも違憲にも
       民主党の小沢代表は2日の記者会見で、インド洋での給油活動について「安保理で、きちんと国連の平和活動として決められたものであれば憲法上差し支えない。今のような状況(国連の決定がない)の中で、日本に直接的な攻撃や脅威がないのに、(自衛隊を)海外に派兵し、米軍の軍事行動を支援するのは憲法に抵触している」「油の供給は戦争そのもの。いくら戦車や飛行機があったって油がなければ動かない」と新テロ特措法に反対の立場を強調した。
     しかし一方で、アフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加について「国連の決定によってスタートした活動である。参加することは憲法に抵触しない。国連の活動に参加することは、憲法の理念に忠実な行動だ」と述べた。
     この見解は、「国連の決定に基づく平和維持のための軍事力行使は、第9条が禁じている『国権の発動による武力行使』には当たらない」とする小沢氏の持論で、目新しいものではない。
     国連の決定があろうが、なかろうが、憲法は海外で武力行使することを禁止している。
    ■石破防衛相 特措法やめて恒久法つくるべき
     臨時国会の焦点である新テロ特措法の本格的な論議を前にして、石破防衛相は2日、毎日新聞などのインタビューで「その都度特措法をつくるやり方は、これを最後にして、恒久法を作るべきだという議論が、与野党の共通認識として深まることを期待する」と強調。
     インド洋、イラクなどすべての海外派兵が自衛隊の本来任務となった今、時限立法ではなく、いつでも派兵を可能とする恒久法制定の動きが強まるであろう。
    (中)
    2007年10月9日号
    ■福田政権が発足 違憲のインド洋派兵に固執
     「アタシ、もうアベしちゃおうかな」―若者の間に流行っているそうである。この人に「子どもたちに規範意識を身につけさせる教育改革」を唱える資格はなかったのである。
     突然、政権を放り出し、これ以上ない無責任さで退陣した安倍前首相に替わり、自民党総裁になった福田康夫氏が首相に就任し、新内閣がスタートした(9月25日)。
     「福田首相は安倍政治に距離を置いていたから、政治が大きく変わるのではないか」などといった何らの幻想を持つことは許されない。
     なぜなら福田氏は、小泉政権の官房長官として弱肉強食・格差拡大の「構造改革」を推進し、臨時国会の最大の焦点になっているテロ特措法の成立にも中心的な役割を果たすとともに、自衛隊の海外派兵のための恒久法を積極的に検討させた人物である。
     また、自民党の新憲法草案起草委員会では安全保障小委員会の座長として9条2項の削除と自衛軍創設の改憲案をまとめあげた人物である。
     確かに、参院選における厳しい国民の審判と与野党逆転の中にあって福田氏は、安倍氏のように改憲≠むき出しにするわけにはいかないだろうが、われわれの運動と政治状況次第で、そうならない保証はどこにもない(両氏に本質的な違いはないのだから)。
     改憲スケジュールに多少ブレーキがかかるとすれば、改憲阻止の運動をさらに大きく拡げ、前進させていく好機である。
    ■福田氏の改憲語録
    福田氏の総裁選挙公約には憲法のケの字も出てこないが、マスコミのインタビューや公開討論会などで改憲問題について発言している。慎重ではあるが、改憲への意欲を垣間見ることができる。記録しておこう。
  • (改憲)「憲法改正は党是という方針は変わらない」(産経)
  • (集団的自衛権の行使)「憲法に抵触するかどうか、今まで憲法解釈がなされてきたわけだから、そういうことも含め慎重に考えた方がいい」(時事)
  • (参院選で公約した3年後の改憲発議)「国会で3分の2を取れる態勢が組めればしてもいいが、今はそういう状況ではない」(共同)
  • (恒久法)「何か起こった時に慌てて法律をつくるということでは機敏な対応はできない。きちんと整えておくことが大事だ」「(その際)集団的自衛権に関する部分をどう判断すべきか、『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の答申は意味がある」(共同)
  • (3年後の改憲発議)「発議できるような状況にあるかというのが大前提だ。したくてもできないということはある」(毎日)
  • (国会の憲法審査会の始動)「憲法(論議)は国会が認めるかが問題。いくら言ったってだめなものはだめで手続きが必要だ」(毎日)
  • (集団的自衛権の解釈に関する「懇談会」の議論)「集団的自衛権も(議論されている)事例(『ミサイルの迎撃』など四つの個別事例)が適切かも含めて考えたらいい」(毎日)
    ■総務省 改憲手続き法の周知徹底に6億円
     しんぶん赤旗(9月23日付)は、「改憲手続き法を国民に周知徹底するために政府が約6億3千万円を投じて新聞全面広告などを使った広報計画を準備している」と報じた。総務省が来年度予算案で概算要求した。
     主なものは、新聞全面広告に4億円(全国紙5紙、ブロック紙3紙、地方紙42紙の計50紙に3回にわたって掲載)、雑誌広告(一般週刊誌5誌、女性週刊誌2誌)に7千万円など。
    (中)
  • 2007年9月25日号
    ■改憲総理=@突然政権を投げ出す
     安倍首相は8月30日、首相官邸で記者団に、自民党が先の参議院選挙の公約に2010年の国会で改憲案の発議をめざすと盛りこんでいたことに関連して「憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立したので、この3年間で、国民とともに新しい憲法について広く深い議論をしていかなければならないという考えに変わりはない」(NHK)と語り、参院選の歴史的な惨敗を受けても公約を見直す考えはないと強調した。
     10日に召集された臨時国会冒頭の所信表明演説でも「憲法については、国民投票法の成立により、改正に関する議論を深める環境が整った」と訴え、改憲に固執した。  ところが、安倍首相は12日、衆議院の代表質問を受ける直前になって緊急記者会見を開き、突然辞意を表明した。
     インド洋における海上自衛隊の給油活動継続の展望が開けず、そして国民の支持、信頼のうえに力強く改革を進めていくことが困難な状況にあり、自らけじめをつけることによって、行き詰まった局面を打開しなければならないと判断した―ことを理由にあげた。
     参院選の国民の厳しい審判には目もくれず続投を宣言し、内閣改造を行い、所信表明演説に対する代表質問を受ける直前の辞任―無責任の極みであり、政治判断が未熟としか言いようがない。自民党の責任も重い。
     安倍氏は、「改憲」と「教育の抜本的改革」を掲げ、「戦後レジームからの脱却」を宣言。「任期中の改憲」を使命としたが、1年をたたずに政権を投げ出し、その路線は破綻した。
     いずれにしても、改憲阻止戦線をいっそう拡げ、その強化につとめるほかない。
    ■集団的自衛権行使容認の報告書提出へ
     安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は8月30日、第5回目の会議を開き、米軍などへの後方支援を議論。今回で首相が示していた集団的自衛権の行使に関する「4類型」の議論が一巡した。
     北海道新聞の社説「集団的自衛権・説得力ない身内の議論」(8月31日付)が面白い。
     「やはり、はじめに結論ありきだったようだ。
     集団的自衛権の憲法解釈見直しを検討する政府の有識者会議が、安倍晋三首相が示した四つの類型について、ひと通りの議論を終えた。
     @近くにいる米国艦船が攻撃された場合の応戦A米国に向けて発射されたミサイルの迎撃B他国の軍隊が攻撃されたときの駆けつけ警護C戦闘地域での後方支援の拡大―である。
     会議ではいずれについても、現行の憲法解釈を改めるなどして認めるべきだという意見が大勢だった。
     メンバーは、集団的自衛権の行使や自衛隊の海外での武力行使を認めようという人ばかりだ。多様な観点から是非を論じる場とは思えない。
     専門家による検討という看板を掲げて権威づけしても、これでは説得力はない。会議は11月にも最終報告書をまとめる予定だというが、こんな会議の議論を、憲法解釈見直しのよりどころにされては困る。(以下略)」
     ※安倍首相の退陣で、懇談会の存続は不明(13日現在)。
    ■自民党 衆院憲法審査会長に中山太郎氏内定
     毎日新聞によると、自民党は4日、衆院憲法審査会の会長に中山太郎・自民党憲法審議会長を充てることを内定した。
     なお、衆参両院の憲法審査会は、野党の反対で「審査会規程」が決まっておらず、今臨時国会でも始動するめどは立っていない。
    (中)
    2007年9月11日号
    ■憲法審査会 秋の臨時国会でも動き出せず
     8月の臨時国会で設置された憲法審査会は、秋の臨時国会でも始動できそうにない。
     実際に動き出すためには、定数や議決要件などを定める「審査会規程」を本会議で議決しなければならないが、民主党が「与党側は、国民投票法の採決に問題があったことを認めず、与野党が憲法問題を冷静に議論する環境は整っていない」(NHK)との姿勢を維持しているためだ。共産、社民両党は、憲法審査会の設置そのものに反対。
     安倍改憲スケジュールに影響を与えることになるのか。
     安倍首相は、就任以来改憲の牙≠むき出しにしてきた。8月27日の内閣改造後の記者会見でも「戦後レジームからの脱却」路線について、「戦後つくられた仕組みを原点にさかのぼって見直しをしていく方針に変わりはない」と強調した。
    ■自民、集団的自衛権の解釈変更棚上げへ
     日経新聞によると、自民党はこの秋をメドにまとめる予定だった集団的自衛権の憲法解釈変更に関する提言を事実上棚上げする方針を固めた。
     公明党が集団的自衛権の行使を容認するための解釈変更に反対することを明言し、先の参院選での与党惨敗による参院の与野党逆転で自衛隊法改悪など必要な法整備は困難な情勢になったため。
     自民党は4月に「集団的自衛権に関する特命委員会」を設置し、論議を積み上げてきている。
    ■慄(りつ)然とする自民・佐藤参院議員の「駆けつけ警護」発言
     「(オランダ軍が攻撃されれば)情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる。巻き込まれない限りは正当防衛、緊急避難の状況はつくり出せない。…日本の法律で裁かれるのであれば喜んで裁かれる」と、元陸上自衛隊イラク先遣隊長で、先の参院選で自民党から立候補し当選した佐藤正久議員が8月10日のテレビ報道番組で驚くべき発言をした。
     イラク派兵当時、「オランダ軍が攻撃を受ければ駆けつけ警護を行う考えだった」とする佐藤発言に対し、弁護士や市民グループが「自衛隊法に違反するばかりか、憲法9条をないがしろにし、シビリアンコントロールも無視する許し難い行為だ」として、同議員に「駆けつけ警護」を現在も肯定するのかなど、7項目の公開質問状を提出した。安倍自民党総裁には同議員の辞職勧告を求めている。
     水島朝穂・早稲田大学教授(憲法学)は「(佐藤発言は)当時、より高いレヴェルによる明示または黙示の承認がなかったならば出てこない発言である。一議員の『失言』ではなく、本格的な真相究明が必要だろう」と指摘している(同氏HP)。
     「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は8月10日の第4回会合で、「駆けつけ警護」について、国際的常識で容認すべきとの意見が大勢を占めた。
    (中)
    2007年8月28日号
    安倍改憲路線の出鼻をくじいた参院選結果
    ■憲法審査会 臨時国会で発進せず
     改憲手続き法の規定によって、参院選を受けて開かれた臨時国会(7日召集・10日閉会)から衆参両院に憲法審査会が設置されたが、定数や議決要件などを定める「審査会規程」が決められなかったため、実質的な立ち上げは次期国会以降に先送りされた。
     「改憲手続き法の成立は与党の強行採決によるもので問題があった」とする野党が、「審査会規程」の協議に応じなかったことによるもので、与党もこの臨時国会で規程をつくることを断念せざるを得なかった。
       安倍首相と自民党は、参院選の公約で3年後に改憲発議をめざすとしているが、「憲法改正論議への影響が懸念され」(産経)、「スタートからつまづく形」(朝日)、「出鼻をくじかれた形」(NHK)となった。
    ■公明党 集団的自衛権の憲法解釈変更に反対
     公明党の北側幹事長は8日、国会内で記者会見し、「集団的自衛権の行使に関する有識者懇談会の議論に関して『長年の間、確立している集団的自衛権の憲法解釈を変更するような形で、何らかの法律を提出することには、そもそも反対だし、参院選の結果を受けると、そうしたことができるような状況ではない』」(公明新聞)と明言した。
     「懇談会」は今秋にも、歴代政府が憲法違反と判断してきた解釈を変更し、集団的自衛権の行使容認を提言する予定。
     安倍首相は、集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊が行動する場合は、根拠となる関連法の整備(自衛隊法改悪や恒久法制定など)を前提とする考えを示しているが、参院の与野党逆転や北側幹事長発言を受け、憲法解釈の変更と法整備に踏みこめるかどうかが焦点となる。参院第1党の民主党の出方も問われる。
    ■参院 改憲派が3分の2議席を割り込む
     朝日新聞(7日付)は、「参院選の当選者のうち憲法改正に賛成なのは48%と半数を割っていることが、朝日新聞社と東京大学の共同調査で明らかになった」と報じた。
     改憲反対派は31%。公示前に実施した全候補者アンケートから当選者の意識を探ったもの。
     非改選を合わせた新勢力でも改憲賛成派は53%で、3分の2を割り込んだ。9条改憲については当選者の26%が賛成、反対は54%。新勢力全体でも賛成31%、反対50%だった。
       毎日新聞(7月31日付)も、公示前の全候補者アンケートから当選者のうち改憲賛成派が58%(前回04年は56%)、改憲反対派は32%で、改憲発議に必要な3分の2以上には届かなかったと報じた。
     9条の改憲では、全体でも63%が反対と答えた。現憲法下で集団的自衛権の行使が認められるかどうかについては、自民党は賛否が39%で同数。民主党は「認められない」が70%で、「認められる」の21%を大きく上回った。
    (中)
    2007年8月14日号
    ■集団的自衛権の行使容認 9月にも提言
     自民党は参院選で歴史的惨敗を喫した。ところが、集団的自衛権の行使と改憲に異様なこだわりを持つ安倍首相(総裁)は、民意には目もくれず、その座に居座っている。改憲の動きにブレーキがかかるのか、それともアクセルをさらに踏みこむのか?
     その首相に、私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が、この9月にも集団的自衛権の行使を容認する提言を提出する方針を固めている。
     「懇談会」の柳井俊二座長は参院選公示直前に、朝日新聞のインタビューに「現実に合わない憲法解釈はもうやめるべきではないか」と答え、歴代政府が憲法違反と判断してきた解釈の変更が必要との認識を示した。
     また、柳井氏はインタビューの中で朝鮮の核・ミサイル問題や中国の軍拡をあげ「背景が変わったのだから憲法解釈も変わってしかるべきだ。みんなの考え方もそういう方向だ」と語っており、「懇談会」には考えの近いメンバーを集めただけに議論も早く、結論も初めから見えている。
     「懇談会」の第1回会合が開かれたのは5月18日、今月8日に第4回会合が開かれている。
    ■自民、公明、民主3党の改憲公約
     「なぜ国の将来像を論じないのか」(読売社説)「自民も民主も逃げている」(毎日社説)「白紙委任しないために」(朝日社説)―最大の争点でなければならなかった改憲論争を回避したまま、参院選は終わったが、改憲3党の選挙公約を記録しておこう。
    ●自民党
      次期国会から衆参両院に設置される「憲法審査会」の議論を主導しつつ、平成22年(2010年)の国会において憲法改正案の発議をめざし国民投票による承認を得るべく、新憲法制定推進の国民運動を展開する。
    ●公明党
     次期国会で衆参両院に設置される憲法審査会での議論を深め、国民的な議論を喚起します。憲法審査会での3年間の議論を踏まえ、3年後を目途に加憲案をまとめることを目指します。
    ●自公連立与党重点政策
     新しい時代にふさわしい憲法をめざす。平成22年(2010年)以降の国会を視野に入れ、次期国会に衆参両院に設置される「憲法審査会」の議論を深め、同時に、憲法に関する幅広い国民的な議論を深めていく。
    ●民主党
     現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改めることを、責任を持って提案していきます。2005年秋にまとめた「憲法提言」をもとに、国民の皆さんと自由闊達な憲法論議を各地で行い、慎重かつ積極的に検討していきます。
    (中)
    2007年7月3日号
    ■自民党、改憲へ草の根運動展開
     自民党は6月15日、憲法審議会を開いた。
     「参加した議員からは、今後はブロックや県、選挙区ごとに草の根運動を展開し、憲法改正へ向けての国民運動を盛り上げていかねばならないなどの意見が出された」(同党HP)。
     また、中山太郎会長は「国民投票法の会を(衆院の)小選挙区ごとに設置するべき」と、国民運動を盛り上げる組織づくりを強調。「9条の会」に対抗する狙いもある(時事)。
    ■公明党、改憲に向けてさらに踏みこむ
     公明党は6月14日、参院選に向けた政策綱領「マニフェスト2007」を発表した。
     憲法については「3年後をめどに、『加憲』の具体案をまとめることをめざす」と明記している。 
     公明党が、選挙公約で改憲に向けた党の見解に言及するのは初めてで、改憲へさらに踏みこんだものである。
    ■集団的自衛権行使 改憲か、解釈改憲か
     「仲良し」賛成派一色(「毎日」)―と言われる「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が集団的自衛権行使のための憲法解釈変更に汗を流している。
     9条改憲を最大の課題とする安倍首相は、懇談会を設置し解釈改憲の検討を始めたが、今のところ改憲との関係について何ら明らかにしていない。自民党内には改憲による集団的自衛権の行使論も根強くある。
     毎日新聞(特集「平和と自衛」6月16日付)によると、懇談会の委員である坂元一哉大阪大教授は「自衛隊にできることはここまでですよ、ということが決まれば、後は憲法典の文章の改定になる。いきなり憲法の条文を削って大論争になるよりも、憲法改正がやりやすい」―9条の明文改憲の前に解釈変更で集団的自衛権の行使を認めておれば、改憲のハードルが低くなるという考えをあけすけに語っている。
     懇談会委員の北岡伸一東京大教授も同「特集」の中で、集団的自衛権の解釈を変更すれば「改憲に対する抵抗が少なくなるかもしれない」と語り、「改憲は、少なくとも3年以上先になる。この間に国際関係がより緊張する可能性もある」。積極的に対応するためには、解釈を変えるほうが「憲法前文の精神にも合致するし、そうしないのは国益を損なう」と強調する。
     安倍首相の仲良しの人々の発言から、集団的自衛権の解釈改憲を先行させている安倍首相の狙いどころが見えてくる。
    ■「許すな!憲法改悪・市民連絡会」ブログから
     ブログはまず、集団的自衛権の憲法解釈を変えようとしている「有識者懇談会」を「お友達だけの『私的サロン』」と痛烈に批判した上で、阪田雅裕・前内閣法制局長官に対する東京新聞(6月12日付)のインタビュー記事を紹介している。
     質問=集団的自衛権という権利はあるが行使できない、政府解釈がわかりにくいとの批判がある。
     阪田=法律のイロハを知らない人の議論だ。国際法は国家にあらゆる権利を認めている。国際法上権利があるというなら戦力を持つこともできる。国民の意思で国家の権利を制限しているのが9条だ。
     阪田氏の話は「その通りだ」。「改憲派は姑息な論理のすり替えをやっている。そこで後ろめたいから『有識者懇談会』などで、権威づけようとしている」と安倍首相の政治手法をたたき、最後に「答申を出させて、国家安全基本法などを制定して、例の『4類型』を合憲だと強弁するつもりか、あるいは基本法すら作らないでやってしまうか」だと指摘している。
    (中)
    2007年6月26日号
    ■自民参院選公約 2010年に改憲発議
     自民党は6月5日、7月の参議院選挙に向けた公約―「155の重点政策」を発表した。
     冒頭に「新憲法制定の推進」をかかげており、「新憲法制定」については「次期国会から衆参両院に設置される『憲法審査会』の議論を主導しつつ、平成22年(2010年)の国会において憲法改正案の発議をめざし国民投票による承認を得るべく、新憲法制定推進の国民運動を展開する」と明記した。また集団的自衛権については13項で、「個別具体的な類型に即し、集団的自衛権の問題を含め、憲法との関係を整理し、安全保障の法的基盤の再構築を行う」と強調している。
     選挙公約のトップに改憲発議を掲げることは異例のこと。安倍首相の集団的自衛権行使や改憲への異様なこだわりとその決意が見えてくる。
     訪独中(G8サミット出席)の安倍首相は6月6日、同行している記者団に対し、参院選について年金問題など生活重視の争点設定になるとの考えを示したうえで、「中長期的な課題として、私が総理として初めて憲法改正を政治スケジュールに載せると申し上げている。そのことを訴えていくのも当然だ」(朝日)と語り、改憲も争点にする考えを改めて強調した。
    ■自民党、憲法審議会が初会合
     自民党は6月8日、憲法審議会(中山太郎会長)の初会合を開いた。改憲手続き法の施行で改憲発議が可能になる3年後を視野に議論を加速させる。
     同審議会では「憲法改正の発議に向けて幅広い合意形成の努力を行っていく方針を確認した」(同党HP)。
     また、会長代行に就任した舛添要一参院政審会長は、新憲法草案の概要を説明した上で、「今後はこれを基礎として、より良いものにする努力を続ける」と述べ、草案の見直しを含めて検討する方針を示した(産経)。
    ■海外派兵の先兵 陸自中央即応連隊創設
     自民、公明、民主の3党は6月1日の参院本会議で、海外派兵の中核部隊(「殴り込み」部隊)となる中央即応連隊を新設する自衛隊法改悪案を可決・成立させた。
     中央即応連隊の新設によって、海外で戦争する態勢づくりがいっそう加速することになる。
     一方で、9条の「解釈」を変え、集団的自衛権の行使を容認するための「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は第2回会合(6月11日)を開き、本格的な議論に着手した。
    (中)
    2007年6月12日号
    ■改憲手続き法 5月18日公布
     政府は改憲手続き法を5月18日公布した。法施行は公布から3年を経過した日と定められており、2010年5月18日が施行日となる。
     ただし、改憲原案の提案権を持つ憲法審査会は次期国会から両院に設置される。改憲原案の審査は3年間(施行日まで)凍結されるが、自民党は原案の骨子・要綱の作成は可能だとしている。
    ■公明党 2010年メドに改憲案
     公明党は5月25日、党憲法調査会を開き、同党の改憲案である「加憲」案を2010年メドにまとめることを決定した。
    ■自衛隊法改悪案可決 中央即応連隊を新設
     海外派兵の中核部隊となる中央即応連隊の新設を盛りこんだ自衛隊法等改悪案が5月25日、衆院で自民、公明、民主党の賛成多数で可決された。
     海外派兵が自衛隊の「本業」になったことを受け、陸上自衛隊は「新たな脅威や多様な事態に対応し」「国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組む」(「防衛大綱」)ため、全部隊の戦略転換、その再編を急いでいる。
     法案は今国会で成立の見通し。
    ■集団的自衛権 解釈改憲の企て鮮明に
     明文改憲を待たずに9条の「解釈」を変えて、海外で「戦争する国」づくりをめざそうと、安倍首相の「仲良し人脈」のメンバーを集めてつくった首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(略称「安保法制懇」)の第1回会合が開かれた(5月18日)。
     政府がこのほど公表した議事録(首相官邸HP)からも懇談会の狙いがいよいよ鮮明になった。出席者の発言を紹介しよう(氏名は未公表)。
  • 我が国の自衛権は最高裁も認めている。自衛権には当然集団的自衛権が含まれ、権利があれば行使できる。
  • 21世紀初頭という新しい状況下で平和と安定を得るため、憲法解釈が桎梏になってはならない。憲法解釈を抜本的に検討しようというのはたいへん歴史的な意義がある。
  • 日本の場合、安全保障の法的基盤が拠って立つものは、憲法と個別の法律の間の解釈にある。その解釈の中で一番重要なのは、昭和56年(1981年)の集団的自衛権に関する政府見解だ。現在の政府見解は問題があり、修正する必要がある。
     懇談会の目的が明々白々である。「初めに結論ありき」のメンバーによる「ヤラセ」といわれてもいたしかたなかろう。
     会合終了後の記者会見で、「解釈変更すべきでないとの意見はあったか」と問われ、柳井俊二座長は「なかった」と答えた。
    (中)
  • 2007年5月29日号
    ■自公が度重なる暴挙 改憲手続き法成立
     議論は尽くされていない―徹底審議を求める世論が広がりを見せる中、自公が14日の参院本会議で憲法改正権者である国民を置き去りにしたまま改憲手続き法案の採決を強行。両党の賛成多数で可決・成立した。国民の声を聞く中央公聴会さえも開催しなかった。
     改憲手続き法案は、審議すればするほどボロが出ており、矛盾と問題点が明らかになっている。特別委員会の質疑で法案提出者が、しどろもどろの答弁をくりかえす場面も見られた。
     議員立法でありながら18項目にわたる付帯決議(最低投票率制度の是非や公務員・教育者の国民運動規制の検討など)が採択されていること自体が欠陥法であることを物語っており、採決できるような状況にはなかったのである。
     改憲手続き法の成立・公布を受け、自民党の改憲スケジュールが明らかにされているが、それによると参院選後に召集される臨時国会で衆参に設置される憲法審査会で改憲骨子案の作成に入り、最短で2011年夏に発議し、同年秋に国民投票を実施するとしている。
     いよいよ改憲勢力が勢いづいてくるであろう。本当の勝負はこれから。改憲反対の草の根運動を強め、国民の多数派をつくることが求められる。
    ■改憲への執念示す 60周年の首相談話
     安倍首相は、3日付で憲法60周年にあたっての談話を発表し「憲法を頂点とした(我が国の)基本的枠組みは、(社会の)大きな変化についていけなくなってきており、その見直しが迫られている」「憲法の在り方について、今後国民的な議論がさらに広く展開され、方向性がしっかりと出てくることを強く期待する」と、改憲への執念をあからさまにした。
     憲法の尊重擁護義務を負っている首相が改憲志向の談話を発表するのは初めてである。
    ■憲法60年の記念日に改憲案ゾロゾロ
     憲法が満60年を迎えた5月3日の憲法記念日に改憲団体が改悪案を次々に公表した。
     新憲法制定促進委員会準備会(座長・古屋圭司自民党衆院議員)の新憲法大綱案は、防衛軍の創設や男系男子による皇位継承を盛りこんだ。
     「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会(三浦朱門代表世話人)が公表した新憲法大綱案は、軍隊の設置や国防の責務を明記するとしている。
     新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は、日本の歴史や伝統などに言及した前文案を発表した。
     公明党は太田代表が、加憲案を2010年秋までにまとめる考えを表明した。
    (中)
    2007年5月15日号
    ■自公暴走 常軌を逸した参院特別委運営
     安倍改憲スケジュールに合わせて、改憲手続き法案の成立を急ぐ自民、公明両党は、参院憲法調査特別委員会の連日審議の強行や地方公聴会の開催を十分な余裕を設けずに直前に決めるなど、常軌を逸した委員会運営を続けてきた。
     地方公聴会や参考人質疑で最低投票率の導入や教育者・公務員の国民運動の規制、有料CMの禁止など法案の重大な問題点が指摘されている。
     国民の79%が最低投票率が必要と考えている(朝日新聞世論調査)。NHKの世論調査では、法案「賛成」がわずか29%、そのうち「いまの国会にこだわらずに時間をかけて議論すべき」が71%にのぼっている。「今の国会で成立させるべきだ」とする意見は全体の8%しかなかった。
     自公の暴走によって主権者を置き去りにした改憲手続き法は、断じて認めるわけにはいかない。
    ■憲法審査会 「調査」名目に改憲案づくり
     改憲手続き法によって改憲案の発議権を持つ憲法審査会は公布後、初めて召集される国会から設置されるが、与党の修正で憲法審査会は3年間、改憲原案の審査・提出は行わず(施行まで凍結)、「調査」に専念することとなっている。
     ところが参院憲法特別委の議論を通じて、憲法審査会において「現行憲法の調査」を名目にして改憲のための審議が推し進められ、事実上改憲案が固められる恐れがあることが明らかになった。
     法案提出者の赤松正雄衆院議員(公明党)は憲法審査会の役割について「時代状況の流れの中で憲法について明文を変えた方がいいという声もある。そういったものを踏まえて、いよいよこれから本格的な議論をやろうというのが、憲法審査会である。2年では短い。しっかりとした議論には最低3年必要だ」と述べた。社民党の近藤正道議員の質問に答えたもの。
     さらに、近藤氏の「集団的自衛権行使の見直しを憲法審査会でも行うのか」という質問に対して、法案提出者の船田元衆院議員(自民党)は「9条の規定とも関係しているので、議論することは当然ある。また調査することもある」と答弁。赤松氏も「当然そういうふうになる」「9条をめぐる議論の中でどのようにそれ(集団的自衛権)を位置付けるのか、概念の整理も含めてしっかりと議論していく」と強調した。
     「単なる形式的な国民投票の手続き法」ではなく9条改憲と密接に結びついていることが、いよいよ明確になった。
    ■集団的自衛権行使 憲法解釈の変更へ
     安倍首相の強い意向で4月25日、集団的自衛権行使を容認するため、「個別事例」(自衛隊がアメリカを狙った弾道ミサイルを撃破するなど4類型)について研究する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が発足した。
     懇談会の「メンバーの大半は政府が憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使を認める立場で」(朝日)、「中心は首相の『仲良し』人脈。解釈変更までを視野に入れた布陣」(毎日)となっており、「集団的自衛権について研究する」といってみても、これでは「初めに結論ありき」だ。9月をメドに報告書をまとめる。
     公明党の北側一雄幹事長は同日の記者会見で「政府解釈を見直していくことであってはならない」(公明新聞)と前置きしながらも、研究対象として挙げられている個別事例に関しては「個別的自衛権の範囲内で解釈できる場合が多いのではないか」との認識を示した(同)。
     憲法を変えずに海外で「戦争する国」に踏みこんでいく。
    (中)
    2007年4月24日号
    ■自公むちゃくちゃ 数の暴力で衆院通過
     与党は12日の衆院憲法調査特別委で、多くの国民の徹底審議を求める声を踏みにじって改憲手続き法案の採決を強行した。委員会で中山太郎委員長は一方的に質疑の終局を宣言。野党の激しい抗議と混乱の中で与党単独で与党修正案を可決し、13日の衆院本会議で通過した。
     同法案には過半数の定義や最低投票率制度、公務員の政治活動の制限など、数多くの問題が残されたままである。
     同法案をめぐる攻防は参議院に移る。与党は「連日7時間の審議を重ねて最速27日の成立をめざす」(朝日)。
    ■安倍首相 集団的自衛権行使で有識者会議を
     安倍首相は、憲法が禁止している集団的自衛権の行使に踏みこむため、月内に有識者会議を設置する方針を打ち出した。
     共同通信によると有識者会議は、@日本のミサイル防衛(MD)で同盟国を狙った弾道ミサイルの撃破、A公海上で自衛隊艦船と並走する艦船が攻撃された場合の反撃、B一つの目的で活動する多国籍軍で他国軍が攻撃された場合の反撃、C国連平和維持活動(PKO)で任務遂行への妨害を排除するための武器使用―の4類型を検討項目として議論し、秋までに一定の結論を得る見通しだという。
     9条の明文改憲による集団的自衛権行使の容認では数年先となるため、政府の解釈変更に踏み切ることによって海外における武力行使への道を開き、安倍氏の主張する「日米同盟をより効果的に機能」させようとするものである。
    ■中曽根元首相 改憲へ国民運動展開
     中曽根元首相は5日、首相官邸で安倍首相と会談。中曽根氏は、自らが会長に就任した「新憲法制定議員同盟」(自民党などの国会議員や元議員約190人で構成)の発足(3月27日)を報告し、「国民運動を展開して新しい憲法への国民の理解を深めていきたい」(NHK)と、安倍首相を激励した。
    ■9条改憲反対が過半数 読売新聞世論調査
     読売新聞は5日付で、憲法に関する全国世論調査(3月17、18日実施)の結果を「改正派は昨年調査に比べて9ポイント減り、3年連続で減少した。非改正派は昨年比7ポイント増えた」と発表。改憲賛成は46%で、反対は39%。改憲賛成は10年ぶりに過半数割れした。
     9条について見ると「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」が20%、「これまで通り、解釈や運用で対応する」(明文改憲不要)が36%で合わせて56%。「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」は36%だった。9条1項については改正の必要が「ない」が80%に達した。「ある」は14%。第2項は改正の必要が「ない」が54%で「ある」は38%だった。
     集団的自衛権については「これまで通り、使えなくてよい」が50%だったのに対して、「憲法を改正して、使えるようにする」「憲法の解釈を変更して、使えるようにする」は各21%だった。
     施行60年の憲法の役割を「評価している」は「大いに」「多少は」を合わせて85%にのぼっている。
     数年来の改憲勢力の攻勢に対する9条改憲反対、憲法守れの運動が人びとの意識に反映しつつあることを示している。
     読売新聞は同日付の社説で、改憲をめぐる「一連の動きは憲法改正の論議を加速させ、改正派の増加をもたらしていい。ところが、そうはなっていない」と苛立ち、「今日の国内外の情勢を踏まえれば、憲法改正作業は、休まず、たゆまず進めなければならない時代の課題だ」と改憲を煽る。
    (中)
    2007年4月10日号
    ■与党が「修正」案提出 公務員の運動に規制 13日の衆院通過狙う
     今国会での成立をめざして自民党と公明党は3月27日、改憲手続き法案の与党「修正」案を衆院に提出した。
     「修正」案では、公務員や教育者の「地位利用による国民投票運動の禁止」条項はそのまま残っている。「罰則は設けない」ことになったものの、運動した公務員や教育者が行政処分の対象になり得るし、運動の萎縮効果もでてくる。また、民主党との修正協議で「公務員法上の政治活動の禁止規定は適用しない」ことになっていたが、「修正」案では施行までの間に(3年)規制を強化する方向で検討することを盛りこんでいる。公務員や教育者から運動の自由を奪うことになるし、不当な弾圧を招きかねない。
     「投票日の14日前」からテレビなどの有料広告は禁止されることになったが、14日前までは野放しということになる。テレビのCMが世論に与える影響は大きい。資金力の豊富な改憲勢力の大キャンペーンによって世論がゆがめられる恐れもある。改憲に関する賛否両論の十分な情報が提供され、十分な熟慮の時間があってこそ、民意が正確に反映される。
     過半数の意義について、「修正」案は「投票総数」という表現に変えているが、それは有効投票数の言葉の言い換えに過ぎず、全くのペテンである。最低投票率の定めもなく、これでは有権者の10、20パーセント台の賛成で憲法が変えられかねない。改憲賛成が「有権者の過半数」ということであれば、こういった問題は起こらない。 
     このほか投票方式や無料の意見広告など多くの問題点があり、改憲手続き法案は廃案にするしかない。
     与党は、安倍首相の号令に従い今国会での成立をめざして、単独であっても13日の衆院通過を強行しようとしている。
    ■会議録で再現する3・15特別委員会
     衆院憲法調査特別委員会を委員長職権で開催し、採決の前提となる公聴会を与党単独で強行議決した3月15日の暴挙を会議録で再現する。
  • 10時43分開会
  • 中山委員長 これより会議を開きます。(発言する者、離席する者あり) ※多くの野党委員が委員長席を取り囲み抗議。改憲手続き法案の趣旨説明の省略を決した後―
  • 中山委員長 公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立………(発言する者あり)  ※騒然とする中、委員長の声を速記者も聞き取れない。  〔賛成者起立〕
  • 中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  ※読み上げている原稿に目を向けたまま。
     なお、公聴会は来る22日開会することとし、手続きにつきましては、委員長にご一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)
     〔賛成者起立〕
  • 中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  ※読み上げている原稿に目を向けたまま。  本日はこれにて散会いたします。
  • 10時45分散会 
    ■公明党の太田代表 「集団的自衛権の行使は認めない」と明言
     公明党の太田代表は3月25日、テレビ朝日の番組で、憲法改正について「集団的自衛権は認めない。9条1項、2項は堅持する」(毎日)と明言した。さらに「自民党の憲法改正草案は集団的自衛権を認めるということが裏にある。(同党とは)相当ぶつかり合う」(同)と述べた。
    (中)
  • 2007年3月27日号
    ■与党、議決強行の暴挙 改憲手続き法案公聴会設定 4月中旬通過狙う
     自民、公明両党が15日、野党との合意がないまま衆院憲法調査特別委員長の職権で委員会を開会。野党委員が委員長席に詰め寄り、騒然とする中、与党が一方的に改憲手続き法案採決の前提となる公聴会の22日開催を強行議決した。委員長が予め準備されていた原稿を読み上げるのに2分とかからなかった。暴挙というほかない。
     与党は統一自治体選挙前半戦の終了後の4月中旬の衆院通過を狙う。 もともと与党は、安倍首相の指示で憲法記念日までに成立させるため、3月中の衆院通過をめざして8日、委員長職権で委員会を開催し公聴会の15日開催を企てたが、市民団体の抗議行動と野党が強く抵抗する中、委員会は開会にいたらず流会した。
     公聴会の設定が強行できない中で、安倍首相は11日放送されたNHK番組で、改憲手続き法案について「5月3日の憲法記念日にはこだわっていない」と述べ、軌道修正を余儀なくされた。
     一方、与党も首相の意向を受けて、月内の衆院通過を断念し、4月に先送りせざるを得なくなった格好である。
     委員会流会で15日開催の公聴会を見送らざるを得なくなった政府・与党は15日、なりふりかまわず2度目の委員長職権による委員会を開催し、野党の反対を押し切って公聴会設定の議決強行の暴挙に出た。
     改憲手続き法案阻止のたたかいは、統一自治体選挙のまっただ中で、最大のヤマ場を迎えることになるだろう。
    ■集団的自衛権の研究 首相、結論急ぐ考え示唆
     安倍首相は7日、内閣記者会とのインタビューで集団的自衛権行使の個別具体的事例の研究について、「国民の命と財産に関わることだ。(研究は)そんなに長い時間をかけるべきではない」(産経)と語り、結論を急ぐ考えを明らかにした。
    ■中曽根元首相 改憲で安倍首相激励
     9日夜、中曽根元首相と安倍首相が会食。中曽根氏は、首相の改憲への取り組みを評価し、「憲法問題をしっかりやって欲しい」(読売)「憲法改正の必要性を国民にしっかり説明したらいい」(時事)と激励した。
    ■古賀元幹事長 「憲法は世界遺産に匹敵する」
     エッ本当?― 共同通信によれば自民党の古賀誠元幹事長は11日、福岡県内で講演し、「憲法は占領下で米国に押しつけられたと言われるが、日本の平和(を守る)という意味で世界遺産に匹敵するぐらい素晴らしい」と述べ、9条改正に否定的な見解を示したという。
    (中)
    2007年3月13日号
    ■改憲手続き法案 安倍首相が「憲法記念日までの成立」を指示
     改憲手続き法案について与党と民主党との調整が難航する中、安倍首相は先月26日の自民党の役員会で、「憲法記念日までの成立」をあらためて指示した。
     安倍首相が改憲を参院選の争点にする方針を表明しており、自民党にとっては今国会中に改憲手続き法案をなんとしても成立させなければならない。5月3日までの法案成立のため、今月中の衆院通過をめざす。
     一方、野党側は憲法記念日までに成立させる与党方針に反対することで足並みをそろえている。ただ、廃案をめざす共産・社民党と慎重審議を主張する民主・国民新党との間には基本姿勢に隔たりがある。民主党の今後の動向が注目される。
    《与党・民主党幹部の発言から》
  • 中川自民党幹事長―民主党が党利党略で引き延ばすなら、粛々と採決するしかない。
  • 太田公明党代表―あくまで自公民3党で成立を期すのが望ましい。なにがなんでも5月3日までというわけではない。 
  • 中山衆院憲法特別委員長―(自民党の二階国対委員長に対し)自公民で成立させることが好ましい。最後まで努力する。
  • 簗瀬参院憲法特別委理事(民主)―(理事懇談会で)これを(憲法記念日までの成立や単独採決)取り消さなければ協議にのぞめない。(社民党とともに退席したため理事懇は散会)
  • 鳩山民主党幹事長―国政の重要課題の是非を問う一般的国民投票も導入すべき。この点で与党との溝は埋まっていない。
    ■改憲、海外派兵など迫る―第2次アーミテージ報告
     2月16日、アメリカのアーミテージ元国務副長官ら超党派のアジア専門家グループは「第2次アーミテージ報告」を発表した。前回の報告(2000年)は、集団的自衛権行使への踏みこみを要求するなど、「その後の日米同盟強化路線の基本方針となった」(「毎日」2月17日付)。
     第2次報告の性格について、広島市立大学広島平和研究所長の浅井基文さんは「2000年の時と同じく、アメリカの国益を中心に据えて、アメリカにとってもっとも望ましい日米関係のあり方に関する青写真を示すとともに、日本に対する要求事項をめいっぱい並べ上げるということにあります」(浅井さんのHP)と指摘している。
     めいっぱいの要求とは@政策決定の迅速化A改憲論議に対するアメリカとしての期待感の表明B迅速な海外派兵の実現C一層の軍事費増大D国連安保理入りするためにも軍事的な対応能力を備えること―などを盛り込んでおり、憲法「改正」を強烈にアピールする内容になっている。
  • 詳細はHPへ
    http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/
    (中)
  • 2007年2月27日号
    ■改憲手続き法案 与党 単独で採決も
     民主党の小沢代表は、改憲手続き法案の扱いについて「憲法改正に限らず、国政の根幹や国民生活の根本にかかわる重要な政治課題についても国民の意思を問える一般法であるべきだ」(同党HP)として、あくまでも一般法である民主党案を貫くべきだとの考えを繰り返し強調している。
     これに対し、自民党の二階国対委員長は11日のNHKの討論番組で「与党内には5月3日の憲法記念日までに成立を目指すべきだという意見もあり、議論(修正協議)だけで空転するようなら採決に踏み切る」と民主党を牽制。与党単独の強行採決は、改憲要件(3分の2議席)を考えれば両刃の剣にもなる。
     一方、同番組で民主党の高木国対委員長は「国民投票の対象をどうするかなど、十分な議論が大事だ」と強調した。
     改憲手続き法案には、20%台の賛成で憲法が変えられかねないなど多くの問題点がある。与党と民主党との合作で9条改憲につながる法案の成立は許されない。
    ■海外派兵の実戦部隊=「中央即応連隊」新設
     昨秋の臨時国会で成立した「防衛省」法によって1月9日に「防衛省」が発足し、海外派兵が自衛隊の「本業」になった。
     政府は9日の閣議で、海外派兵の中核部隊となる「中央即応連隊」の新設などの組織改編を定めた防衛省設置法と自衛隊法の改悪案を決定、今国会の成立を狙っている。
     陸上自衛隊は「新たな脅威や多様な事態に対応し」「国際平和協力活動に主体的かつ積極的に取り組む」(「防衛大綱」)ため、全部隊の戦略転換、再編を急いでいる。その新機軸となる「中央即応集団」(規模約4100人)が3月に新設される。
     海外派兵の「本来任務化」に伴い創設される「中央即応連隊」は「中央即応集団」の主力であり、約700人の規模で、宇都宮駐屯地に07年度中に設置され、陸自の海外派兵の計画・訓練・指揮を一元的に担任する「中央即応集団司令部」のもとに置かれる。海外緊急展開部隊であり、従来の「専守防衛」の枠にとどまるものでない。
    ※まぎらわしい言葉…国際平和協力活動=「防衛大綱」を読めば軍事行動をさしていることがわかる。
    ■安倍首相 「恒久法」の制定に積極姿勢
     海外派兵の「本来任務化」によって「恒久法」制定に弾みがつく。
    安倍首相は衆院予算委員会で、海外派兵をいつでも可能にするための「恒久法」の早期制定を問われ、「国際平和協力のための多様な取り組みに対応して、的確な協力の推進をはかる必要がある」とし、「一般法(恒久法)の整備については、国民的な議論の深まりを踏まえて検討したい」と強調、あらためて同法制定の積極的な姿勢を打ち出した。
    (中)
    2007年2月13日号
    ■「手続き法案」 5月3日までの成立狙う与党
     通常国会の論戦がスタート。安倍首相は施政方針演説や代表質問でも、改憲と改憲手続き法案成立への執念を強く打ち出した。参議院では改憲手続き法案を審議する憲法調査特別委員会が自民、公明などの賛成多数で設置された。
     自民党は民主党との共同修正を目指しているが、2月中旬までに民主党の出方を見極め、同党が応じてこなければ、与党単独でも修正案を提出するとしている。また、3月上旬に衆院を通過させ、5月3日の憲法記念日までに法案を成立させる方針も確認している。
     一方、民主党は昨年秋の臨時国会で「修正方向」について与党とほぼ合意しているが、参院選への影響が出ることを恐れ、共同修正への対応に苦慮している。NHKの報道によれば、国民投票の対象を憲法改正に限定せず国政の重要課題でも行えるようにするなどとした民主党案を(与党が)全面的に受け入れないかぎり早期成立を認めず、慎重審議を求める方針を決めている。
     9条改憲につながる改憲手続き法案の攻防は、いよいよ最大の正念場を迎えようとしている。
    ■施政方針演説 総理!地方の声にも耳を
     安倍首相は1月26日、就任後初の施政方針演説を行った。演説では「憲法を頂点とした基本的枠組みの多くが、21世紀の時代の大きな変化についていけなくなっている」「戦後レジームを原点にさかのぼって大胆に見直すべきときが来た」「新たな国家像を描いていくことこそが私の使命」と、持ち前の右翼的イデオロギーを露わにした。演説は、侵略戦争の反省の上に立った憲法と戦後政治の原点をくつがえすものである。
     しかし、なぜ「時代についていけなくなっている」のか、「さかのぼる原点」とは何かの説明は一切なかった。
     演説に対する地方の声(地方紙の社説)に耳を傾けてみた。
     〈北海道新聞〉「戦後のシステムや枠組みが憲法の理念と相いれなくなっているというのなら、それは政治や社会が憲法をないがしろにしてきたためではないのか」「憲法を暮らしのなかに血肉化していく。いま大事なのはそういうことだ」
     〈信濃毎日新聞〉「憲法改正と教育改革へ向けた意欲を、前面に出したのが特徴である」「暮らしの安定より憲法改正を優先する演説がどこまで国民の耳に届くか、疑問が残る」
     〈中国新聞〉「『時代の大きな変化についていけなくなった』と指摘した。本当にそうだろうか。国民投票法案成立への期待も表明した」「しかし国の在り方の根幹にかかわる問題にしては、十分な説得力があったとはいえない」
     〈沖縄タイムス〉「果たして、憲法改正の機は真に熟したのか。沖縄は米軍占領下の27年間、憲法の恩恵に浴していない」「そして、復帰後も憲法で守られているはずの人としての健全な平和な生活をする権利を奪われてきた」
     〈琉球新報〉「改憲手続きを急ぐことが国民の喫緊の要求とは思えない。戦力の不保持や交戦権の否認を定めた9条を改正する理由が説得力を持たない中で、改正ありきの流れを強引につくろうという姿勢は評価されまい」「『変化についていけない』と断じるのではなく、むしろ先輩たちが築き上げてきた日本、そして平和主義を堅持すべきではないのか」
    ■安倍首相 「海外派兵ためらわず」
     日本の首相として初めて北大西洋理事会(NATOの意思決定機関)で演説した安倍首相は「自衛隊の海外活動をためらわない」と明言した。
    (中)
    2007年1月23日号
    安倍は改憲へ“猪突猛進”
    ■憲法60年―安倍首相「新憲法」へ猪突猛進
     安倍首相は、07年の年頭所感で施行60周年を迎える憲法に関して「新しい時代にふさわしい憲法を、今こそ私たちの手で書き上げていくべきだ」とし、今年の通常国会で改憲手続き法案の成立を目指す決意を示し、任期中の改憲実現に意欲をみなぎらせた。
     また、年頭記者会見では改憲を参院選の争点にする方針を明らかにした。
    ■公明党 9条改憲へ
     NHKの報道によると、公明党の幹部が改憲の具体案を独自にまとめていたことが明らかになった。それによれば「自衛のために必要最小限度の実力組織として自衛隊を保持する規定と、自衛隊が平和構築のため積極的な国際貢献を行う規定を明記する」としている。
     公明党もいよいよ9条改憲に踏み込んだ。
    ■経団連ビジョン  10年初頭までに改憲実現
     日本経団連は1日付で、10年後の日本のあるべき姿を目標として示した「希望の国、日本」(「御手洗ビジョン」)を発表した。
     ビジョンは、改憲について「2010年代初頭までに実現」することを提起した。日本経団連は95年1月、9条2項を削除し自衛隊の保持と集団的自衛権行使を憲法上明記することを提言しているが、改憲時期の明示は初めて。
    ■2006年― 主な改憲の動き(下)
    〈7月〉
     28日 自民党、9月総裁選に向け本格的な論戦スタート
    〈8月〉
     15日 小泉首相、靖国神社参拝
     30日 自民党の防衛政策検討小委員会、恒久法案をまとめる
    〈9月〉
     1日 安倍官房長官、改憲と教育の抜本的改革を柱とする政権構想「美しい国、日本。」を発表
     5日 世界平和研究所(会長・中曽根元首相)、核兵器問題検討の必要性を盛り込んだ「21世紀の日本の国家像」発表
     11日 安倍官房長官、改憲について「5年近くのスパンで考えないといけない」と表明
     20日 自民党総裁選、安倍晋三氏を選出
     26日 安倍内閣発足
     29日 安倍首相、所信表明演説
     30日 第6回公明党全国大会、「加憲」論議の対象として9条など13項目を例示
    〈10月〉
     2日〜3日 衆参代表質問、安倍首相は改めて改憲への強い意欲を示し、集団的自衛権の行使については「日米同盟をより効果的に機能させるため、個別具体的な例に即して研究する」と強調
     5日 安倍首相、衆院予算委員会で村山談話、河野談話について「私を含め政府として受け継いでいる」と答弁
     12日 安倍首相、参院予算委で敵基地攻撃能力保有を検討すると答弁
     政府、ミサイル防衛導入時期の前倒し方針決定
     15日 自民党の中川政調会長、日本の核保有論議の必要性を強調
     17日 麻生外相、衆院安全保障委で核保有の論議を否定せず
     26日 衆院憲法調査特別委、改憲手続き法案の審議再開。テーマ別に審議を加速するため小委員会の設置を決める
     31日 安倍首相、米英メディアとのインタビューで「2期6年の任期中に憲法改正を目指したい」「時代にそぐわない典型的な条文は9条」など改憲をあけすけに語る
    〈11月〉
     21日 安倍首相、ミサイル防衛は日本の防衛目的に限定するとした福田官房長官談話(03年)の見直しを示唆
     24日 久間防衛庁長官、衆院安全保障委で核搭載艦艇の領海通過について「緊急事態の場合はやむを得ない」と述べる
     30日 衆院憲法調査特別委、投票年齢を18歳以上とすることで与党と民主党が一致するなど、法案の一本化に向けた協議が加速する
     「防衛省」法案が衆院通過
    〈12月〉
     14日 衆院憲法調査特別委、賛成多数で改憲手続き法案の継続審議を決める
     15日 参院本会議、教育基本法改悪法案、「防衛省」法案が成立
     18日 民主党、「政権政策の基本方針(政策マグナカルタ)」決定
     19日 第165臨時国会閉会               
    (中)
    2006年12月26日号
    ■改憲手続き法案 決戦は07年通常国会へ
     第165回臨時国会は違憲の教育基本法改悪法案や「防衛省」法案を強行成立させ閉会した。
     改憲手続き法案は、与党と民主党が共同修正して、来年の通常国会での成立をめざす。
     今国会中、憲法調査特別委員会が9回、小委員会が5回開かれ、与党と民主党が法案の一本化へ大きく歩み寄った。
     過半数の意義について民主党が与党案の「有効投票総数」の受け入れを示しており、50%台の投票率の場合、有権者の20%台の賛成で改憲案が承認されかねないことになる。教員・公務員の国民投票運動の規制や最低投票率制度、個別発議・個別投票の問題はあいまいなままである。
    《両案の主な修正方向》
    【投票用紙への賛否の記載方法】
  • 与党案―賛成は○、反対は×  民主党案―賛成は○、その他は反対
  • 修正方向―投票用紙に「賛成」「反対」の欄を設けどちらかに○印
    【過半数の意義】
  • 与党案―有効投票総数  民主党案―投票総数
  • 修正方向―投票総数とは賛成投票数及び反対投票数を合計した数をいう
    【国民投票の対象】
  • 与党案―改憲に限定  民主党案―一般的国民投票も含む
  • 修正方向―改憲に限定。ただし、予備的国民投票を検討
    【投票権者の範囲】
  • 与党案―20歳以上  民主党案―18歳以上
  • 修正方向―18歳以上。ただし、公選法や民法などの改正措置が講じられるまでは20歳以上
    ■自民党 集団的自衛権行使へ解釈変更
     自民党の防衛政策検討小委員会(委員長・石破茂元防衛庁長官)は、10月以降、毎週1回のペースで集団的自衛権行使の解釈変更の検討に取り組んできた。
     6日の委員会で、石破委員長は「(行使の)範囲をどこまでなら認めるべきかを条文の形で示したい」(同党HP)と、委員会としての考え方をまとめる意向を示した。
    ■2006年―主な改憲の動き(上)
    〈1月〉
     18日 自民党大会、「新しい憲法の制定」をうたった運動方針採択
     20日 小泉純一郎首相、施政方針演説で「新しい時代の憲法について、大いに議論を深める時期である」と表明
    〈2月〉
     23日 自民党、衆院憲法調査特別委員会の理事会で改憲のための国民投票法案の論点協議を提案、民主党も大筋で了承
    〈3月〉
      9日 衆院憲法調査特別委、改憲の手続きを定める国民投票法案の議論を開始
    〈4月〉
      6日 衆院憲法調査特別委理事懇談会、改憲の手続きを定める国民投票法案の「論点整理」をまとめる
     12日 自民党、「改憲手続きに関する法律案」の骨子案をまとめる
     13日 衆院憲法調査特別委、参考人質疑開始
     18日 自民、公明両党、改憲手続き法案決定
     26日 民主党、参院憲法調査会で、通常国会における国民投票制度の創設に反対を表明
     28日 政府、教育基本法改悪法案を国会提出
    〈5月〉
     16日 民主党、改憲手続き法案について、与党との共同提案に応じないことを決定。改憲手続き法案の大綱案まとめる
     23日 民主党、「日本国教育基本法案」を衆院に提出
     26日 与党、改憲手続き法案を衆院に提出
         民主党も対案を提出
    〈6月〉
      1日 衆院、改憲手続き法案審議入り
      9日 政府、「防衛省」法案を国会に提出
     18日 第164回通常国会閉会     
    (中)
  • 2006年12月12日号
    ■集団的自衛権行使へ
    解釈改憲急ぐ安倍内閣
     安倍首相は11月14日、ワシントン・ポスト紙の取材で集団的自衛権の行使に関連して「ミサイル防衛で米国に向かうかもしれないミサイルを(日本が)撃ち落とすことができないのかも研究しなければならない」(毎日)と主張したが、「集団的自衛権の行使になる」としてきた従来の政府見解とは相いれない。
     さらに首相は、この発言に関連して11月21日、ミサイル防衛を他国の防衛に使わないとした03年の福田官房長官談話の見直しを示唆した。
     一方、自民党の防衛政策検討小委員会(委員長・石破茂元防衛庁長官)は、10月以降毎週、集団的自衛権行使の解釈変更の検討を進めている。
     政府は常に、集団的自衛権の問題を「アメリカが攻撃されたら、同盟国として傍観できるのか」といった次元で国民世論の誘導を狙っている。
     ひたすら「戦争する国」づくりをめざす安倍首相は、集団的自衛権の行使について「個別具体的な例に即し、よく研究する」ことを表明しており、憲法解釈を変え、9条の明文改憲の前に集団的自衛権の行使ができるようにすることをあけすけに語っている。解釈改憲を急ぐ背景にはアメリカの強い要求もある。
    ■民主党が基本政策案 国連の武力行使に参加
     民主党の政権政策委員会(委員長・赤松広隆副代表)は11月28日、基本政策案(政権政策―たたき台)を発表した。小沢代表が9月の党代表選挙の際発表した「私の基本政策」をほぼ踏襲している。党内論議を経て年内に決定する。
     焦点である安全保障の分野では、自衛権の行使は憲法9条にのっとり、専守防衛に限ると明記し、これまでの個別的・集団的自衛権といった概念上の議論にこだわらないとしている。自衛権の範囲について松本剛明事務局長(政調会長)は「まず専守防衛の原則を定めて、個別の議論、検討に入る」と、記者会見で含みのある答弁をした。
     また、国連の平和活動については「主権国家の自衛権行使とは性格を異にしていることから」武力行使をともなうものもふくめて積極的に参加するとうたっている。この点についての記者の質問に赤松委員長は「場合によっては、自衛隊が武力行使をすることもあり得る」と答えた。
    ■「非核4原則」認めぬ? 自民党の中川政調会長
     「非核3原則」に『言わせず』を加えた「非核4原則」なるものがあるそうだが、自民党の中川政調会長が11月23日、岐阜市内の講演で、「4原則は認めない」と噛みつき、「日本を侵略させないために何ができるかを考え、最大限努力する必要がある」(読売)と核武装論議の必要性を重ねて強調した。
    (中)
    2006年11月28日号
    ■改憲手続き法案 一本化目指し与党調整へ
     衆院憲法調査特別委と小委員会で改憲手続き法案の審議が進んでいる。一方、与党は民主党案との一本化を目指し、両案の対立点となっている投票権者の年齢や国民投票の対象などについて与党内の調整を進めている。
    ■安倍首相「時代に合わない条文の典型は9条」
     「時代にそぐわない典型的な条文は9条だ」―安倍首相は10月31日、どういうわけか日本のメディアではなく米英メディアとのインタビューで、9条改憲をあけすけに語った。
     安倍氏は今国会の論戦で「現行憲法は、60年近くを経て現実にそぐわないものとなっている」と、繰り返し答弁してきたが、具体的な条項に触れたことはなかった。  また、安倍氏は「自民党総裁の任期は3年で、2期までしか務められない。任期中に憲法改正を目指したい」と表明した。首相就任後、改憲の狙いが9条にあることや具体的な改憲スケジュールについての言及は初めて。
     これを受けた8日の国家基本政策委員会(党首討論)で安倍氏は、民主党の小沢代表の質問に対して「自衛隊という実力組織を保持し、国際貢献の中で、すでに自衛隊を活用している。9条の中に自衛隊の存在を明示する必要がある」と9条改憲の内容を説明した。
     周知のとおり、自民党の「新憲法草案」は、単なる「自衛隊存在の明記」にとどまらず、9条2項を削除し、自衛隊とは異なる自衛軍という名の「日本軍」の創設を明記している。
     9条は、本当に時代にそぐわなくなったのか。否、9条に象徴される徹底した平和主義は、多くの国民から、そして国際社会からも幅広い支持を受けている。「9条の心」を世界にはばたかせることこそ、いま、日本がとるべき道である。
    ■核武装論議必要論―全国紙の社説にみる
     朝鮮の核実験をきっかけに、日本の核兵器保有をめぐる論議が高まっている。自民党の中川政調会長や麻生外相らが火付け役だ。安倍首相も核論議発言を容認した。  「非核三原則の堅持」を前置きしながら、「核武装についての論議が必要」と説くのは、理屈に筋が通らないのでは…。  
     そこで、全国4紙の社説をみる。
     産経(7日付)は、「北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対する日本の抑止力を論じようという中川氏の発言は当然そのものである」と評価し、「重要な立場の人は慎むべきだ」と批判した自民党の二階国対委員長の発言を「理解に苦しむ」としている。  読売(8日付)は、「『核を持たずに北朝鮮に、どんな対抗措置が取れるのか』と問題提起するのは、責任ある政治家の誠実な態度ではないか」と主張し、非核三原則が作られた「当時と比べ、現在の安保環境は劇的に変化した」「議論があってよい」としている。
     朝日(11日付)は、核保有による危険や不利益に触れながら、「日本を危うくするだけだ」と主張。「この地球上に核を増やすのではなく、なくす方向で世界と自分自身の安全を考える。それが日本の役割であることを忘れてはならない」と結んでいる。
     毎日(11日付)は、「外交責任者、政権党の政策責任者にとって、核問題は…極めて重いテーマ」「覚悟を決めての問題提起でないなら、軽々に論じるべきことではない」と指摘し、「非核政策の価値を下げるような論議ならば、そろそろ幕を引いた方がいい」と主張している。
     ともあれ、「非核三原則は堅持する」と言うのに、なぜ、核武装論議が必要なのか。その先に本音が見えてくる。
    (中)
    2006年11月14日号
    ■改憲手続き法案 小委員会設置で審議加速
     衆院憲法調査特別委員会は10月26日、先の通常国会で与党と民主党がそれぞれ提出し、継続審議となっていた改憲手続き法案の本格的な審議を開始するとともに、審議の加速を狙った小委員会の設置を決めた。
     小委員会では、2日から両案の相違点(国民投票の対象、投票権者の年齢など)や憲法審査会・広報協議会のあり方、メディアの規制・利用、国民投票運動などテーマごとに審議を行っている。
    ■イケイケドンドン―憲法壊す異常な発言
     朝鮮の核実験に便乗して、これまでできなかったことを一気にやってしまおうと、閣僚や自民党幹部から憲法を壊す発言が次々と飛び出している。発言を拾ってみた。
  • 安倍首相「(敵基地攻撃能力について)常に検討、研究していくことは当然」(参院予算委)
  • 久間防衛庁長官「(船舶検査後方支援のため)周辺事態として認定することもある」(同)
  • 久間防衛庁長官「(ミサイル防衛の導入時期)前倒しを考えなければならない」(同)
  • 中川・自民党政調会長
    「核の保有は憲法で禁止されていない。核があることで攻められる可能性が低くなる。だから議論は当然あっていい」(テレビ朝日)
  • 久間防衛庁長官「(自衛隊が補給している米戦艦が攻撃を受けた場合、自衛隊が)自分が攻撃されたとみなして反撃するのは自然なことである」(衆院安全保障委員会)
  • 麻生外相「(核武装の検討について)隣がみな持ってくる時に、日本だけ何の検討もされていないということはいかがなものか」(同)
  • 瓦・防衛庁の「省」への昇格を目指す自民党国会議員の会代表世話人「(『防衛省』昇格法案の早期成立に向けて)北朝鮮など周辺の状況も変化している。日本の防衛体制を万全にする時期だ」(同会の会合)
  • 安倍首相「(核保有の議論について)政府や自民党内で議論する考えはないが、それ以外の議論を封殺できない」(講演)
    ■安倍総理 またまた心変わりしたのですか?
     「現憲法は優れており、国民の中に定着している」×「現行憲法は、制定60年近くを経て現実にそぐわないものとなっている」―公明党の太田代表と安倍首相の現憲法に対する認識のやりとりである(衆院代表質問)。
     ところが、10月23日の参院本会議で安倍首相は「現行憲法が持っている主権在民、自由と民主主義、そして基本的な人権、平和主義といった原則は、普遍的な価値であり、当時の日本国民が希求していたものであるというのも事実である」と答弁。憲法観を変えてしまったのだろうか?
     現憲法が徹底した平和主義に立っている所以は、前文と9条にある。安倍氏はこれまで、前文を「連合国に対する詫び証文」(『美しい国へ』)と敵視。9条2項が海外での武力行使や集団的自衛権行使を許さない歯止めになっているが、「権利はあるが行使できないとする論理が、はたしていつまで通用するのか」(同)と、歴代政府の憲法解釈を攻撃してきた。
     もちろん安倍氏は「他方で、占領軍の影響下において、憲法が制定されたことも事実。いかに中身がすばらしいものであっても制定過程にはこだわらざるを得ない。私たちの手で新しい憲法をつくっていく」と、持論である「押しつけ憲法」論も展開。
     とはいえ、参院における前段の答弁は、先述のとおり歴史観同様、これまでの言動と矛盾する。本音を隠して世論を操作する安倍政治手法は、やがて化けの皮がはげるであろう。早くも閣内不統一が起こっている。
    (中)
  • 2006年10月24日号
    ■安倍さんが、安倍さんじゃあなくなるの?
     安倍晋三首相が初めて臨んだ国会論戦。
     衆参予算委員会で安倍氏の歴史認識が繰り返しただされた。
     首相就任前は「村山談話」や「河野談話」を「自虐史観」として否定し、攻撃してきた安倍氏が国会答弁で一転して、両談話を「私を含め政府として受け継いでいる」と明言した。
     ところが、野党から過去の言動との矛盾を、具体的な事実にもとづいて突かれた安倍氏は、答弁に窮すると「政治家は特定の戦争観、歴史観について語ることは謙虚であるべきだ」「歴史認識や分析について、政治家がいちいち神のごとく判断するのは間違っている」などと逃げまくった。
     結局、安倍氏は首相就任前の自らの言動は誤りだったと認め、反省することはなかった。誤りを認めず、反省もなしに、いくら村山・河野談話を踏襲すると強調しても、本音では踏襲しないということになる。
    ■「下駄の雪」になるのか公明党? 
     衆院代表質問に立った公明党代表の太田昭宏氏は「現憲法は優れており、国民の中に定着している。9条1項、2項を堅持したうえで、環境権やプライバシー権などを現憲法に加えて補強する、加憲という立場に立っている」との見解を示したが、安倍首相は「現行憲法は、日本が占領されている時代に制定され、60年近くを経て現実にそぐわないものとなっている」、だから「私たち自身の手で21世紀にふさわしい日本の未来の姿、あるいは理想を憲法として書き上げていくことが必要と考えている」などと答弁。現行憲法が「押しつけ憲法」との認識を明らかにし、所信表明より一歩踏み込んで改憲への意欲を示した。
     国の基本法である憲法に対する安倍首相と公明党の評価や認識に、これほどまでに大きな隔たりがあったことが国会の場でさらけ出された。
     公明党は、このまま連立を維持し続け、「下駄の雪」となって、どこまでも自民党についてゆくのだろうか。
    ■自民党、改憲へ審議会設置
     新憲法制定5年以内―
    とする安倍首相の意向を受けて、自民党は現在の党憲法調査会を憲法審議会に格上げすることを決めた。昨年11月に発表した新憲法草案の見直し作業を加速することにしている。
     会長には、改憲に取り組む姿勢をアピールするため、総理大臣経験者を当てる予定という。
    (中)
    2006年10月10日号
    ■安倍内閣発足 集団的自衛権の解釈変更強調
     右翼的イデオロギーが濃厚な安倍内閣が9月26日、発足した。
     安倍首相は、就任後初めての記者会見で「日米同盟においては(双務性を高めていくことが)極めて重要。(集団的自衛権行使の)幾つかのケースについて研究すべきは研究し、結論を出していきたい」(官邸HP)と述べ、政府解釈の変更を強調した。また、「憲法については、政治スケジュールに乗せていくべく、総裁としてリーダーシップを発揮したい」と強調し、在任中の改憲に強い意欲を示した。 
    ■公明党が大会 集団的自衛権どうするの?
     公明党は9月30日、全国大会を開催し2年間の運動方針を決定した。
     運動方針では「加憲」の対象テーマとして、「自衛隊の保持」や「知る権利」「環境権」など13項目を例示し、論議を深めていくとしている。
     平和主義・国際貢献の項で、9条については1項、2項を堅持したうえで「自衛のための必要最小限度の実力組織としての自衛隊の保持」と「積極的な国際貢献」をあげており、自衛隊の憲法上の明記や国際貢献への宣言規定などによる「加憲」の形で9条改憲の方向を打ち出している。
     前大会(04年10月)の方針で「認められないという意見が大勢」としていた集団的自衛権の行使について、今大会の方針はまったく触れていない。「1項、2項堅持」との整合性が問われる。
    ■小沢代表 武力行使伴う国連平和活動は合憲
     民主党は9月25日の臨時党大会で小沢一郎代表の再選を正式に決定した。小沢氏は、代表選の立候補にあたって同月11日の記者会見で、6項目の「基本政策」を発表し、「これをたたき台として論議し、党の政策の基本としてまとめたい」との考えも示した。
     「基本政策」の安全保障分野では、自衛権は「個別的であれ集団的であれ、わが国が急迫不正の侵害を受けた場合に限って行使する。それ以外では武力を行使しない」としている。
     一方で、武力行使をともなう国連の平和活動への積極的な参加を打ち出している。国連の要請に基づく参加は、「主権国家の自衛権行使とは性格を異にしており、憲法第9条に違反しない」―(国連の決定に基づく軍事力行使は9条が禁じている「国権の発動たる武力行使」に当たらない)とする持論を展開している。
    ■自民党は新憲法草案見直しへ―安倍発言
     先月の毎日新聞は、安倍官房長官(当時)が新総裁に選出された場合、「新憲法草案を見直し、第2次草案をまとめる方針を固めた」と報じた。その内容は「前文を修正し、集団的自衛権行使容認などを明確化する意向」としている。
    (中)
    2006年9月26日号
    ■「新憲法制定5年以内」 安倍氏、公開討論会で
     安倍晋三官房長官は11日、自民党総裁候補討論会で憲法改正について「5年近くのスパンも考えないといけない。さらに前倒ししていくことも考える」(毎日)と改憲の時期を示した。
    ■安倍氏、村山談話の踏襲を明言せず
     26日の臨時国会において、首相指名が確実視されている安倍晋三官房長官の歴史認識が厳しく問われている。
     安倍氏は、自民党総裁選に向けた新聞・通信7社との共同インタビュー(6日)や、その後の記者会見で、「植民地支配と侵略」を認め、「痛切な反省と心からのお詫び」を表明した1955年の「村山談話を踏襲するのか」と繰り返しただされたが、次期政権として踏襲するかどうかについては明言を避けた。
     談話の根幹である「植民地支配と侵略」という認識について問われても「その評価は歴史家にまかせるべきだ」と述べ、これまた明確な答弁を避けた。
     そこには、軍国主義と侵略戦争の反省から生まれた憲法と教育基本法を敵視し、「戦後体制からの脱却」を掲げて総裁選に挑んだ安倍氏の本音―「村山談話からの脱却」がにじみでている。
     改憲首相の誕生によって、侵略戦争を肯定・美化する流れが勢いづく恐れがあろう。
    ■核武装の検討を提言―世界平和研究所
     中曽根康弘元首相が主宰する世界平和研究所は5日、「21世紀の日本の国家像」を発表した。
     中曽根氏は発表の記者会見で「自民党総裁選では各候補が憲法改正などを主張している。我々が考える国家像を論争の参考にしてもらいたい」(読売)と強調しており、提言はポスト小泉政権をにらんだものであろう。
     同研究所は昨年1月、防衛軍保持の「憲法改正試案」を公表している。
     「国家像」は9項目から成っている。「新たな脅威への対応―主体的な防衛戦略の確立」では、9条改憲や集団的自衛権の行使容認を唱え、「非核保有国としての立場を堅持し、NPT体制の強化に努めるとともに、将来における国際社会の大変動に備え、核問題の検討を行っておく」という驚くべき提言である。
     産経新聞によれば中曽根氏は、「核問題」について記者会見で「周辺には核兵器を持つ国があり、日本は米国の核(抑止力)に頼っている。日米安保条約をやめさせられるなどの大変動がある場合に備え、研究するものだ」と説明したという。
     9条を変え、軍隊を持ち、核武装に備えよ、という。ポスト小泉政権は、どう応えるのか。
    ■船田氏、3年以内に自公民で改憲原案を
     自民党の船田元・憲法調査会長は神戸市で講演し、「国民投票法案を臨時国会で成立させたい。その後には憲法改正の中味の議論を行い、自・公・民の3党で3年以内に憲法改正原案をまとめたい」と述べ、新総裁の3年間の任期中に改憲原案を策定したいとの意欲を示した(読売)。
    (中)
    2006年9月12日号
    ■「戦争する国、日本。」へまっしぐら
     自民党総裁選の最有力候補である安倍官房長官は1日、改憲と教育の抜本的改革を柱とする政権構想「美しい国、日本。」を発表した。
     「政権の基本的方向性」で真っ先に「新憲法制定」を掲げ、「『戦後レジーム(体制)』からの新たな船出」を打ち出している。安倍氏は、かねてから「戦後日本の枠組みは憲法はもちろん、教育方針の根幹である教育基本法まで、占領時代につくられた」(近著『美しい国へ』)と、現行憲法と教育基本法を目の敵にし、「自らの手で、白地からつくりだす」ことを政治家としての使命にしてきた。
     政権構想では集団的自衛権に触れていないが、安倍氏は9条改憲を先送りし、「解釈改憲」でその行使を容認する。そして、新憲法の制定へ。  歴代首相の中でも際だって危険な人物が首相になろうとしている。
    ■安倍氏、″首相在任中の改憲″に意欲
     8月22日の自民党南関東・北関東ブロック合同大会で、安倍官房長官は「新しい憲法を制定すべく、政治スケジュールに乗せるためのリーダーシップを発揮すべき時がやってきた」(毎日)と表明した。
     この発言は、改憲を安倍政権の最大課題に位置づけ、首相在任中にも改憲を実現しようとするもくろみにほかならない。
     安倍政権が誕生すれば、今月下旬に招集される臨時国会では、改憲の動きをいっそう加速させるため、国民投票法案や教育基本法改悪案の強行をはかってくるであろう。
    ■麻生外相、解釈変更で集団的自衛権を行使
     自民党の総裁選に名乗りをあげている麻生外相は、8月27日のNHKやフジテレビの番組で、集団的自衛権の行使に関し「あるのに使えないという憲法解釈をしている。できるように解釈を変えた方がより現実的だ」(共同)と主張した。
     他の総裁選候補では、安倍官房長官が麻生外相と同じ立場を取っており、谷垣財務相は、憲法を改正して容認すべきだと主張している。
     いずれにせよ、誰が総裁=首相になっても、アメリカと一緒に海外で武力を行使し、「戦争する国」をつくることになる。
    ■鳩山幹事長、民主党も改憲大綱を作成
     民主党の鳩山幹事長は8月25日の記者会見で、安倍官房長官が憲法改正を政治スケジュールに乗せる考えを示したことに対し「民主党も遅れてはならない」「憲法改正に向けた大綱のようなものを考えていく必要がある」(NHK)と延べ、来年あたりに改憲に向けた大綱を取りまとめたい考えを示した。
    ■9条改憲先取り 自民党の「海外派兵恒久法」
     自民党の防衛政策検討小委員会は8月30日、自衛隊の海外派兵をいつでも可能とする「国際平和協力法案」(恒久法)の条文案を了承した。
     8月31日付の毎日新聞は「憲法9条改正に匹敵する法案」とし、「実現すれば憲法改正しなくても他国の軍隊並みの国際協力活動に道を開く」と指摘している。
     派兵する条件に、国連決議や国際機関の要請がなくても、「我が国が特に必要と認める事態」をあげており、政府の判断で派兵できる。自衛隊の活動地域は「非国際的武力紛争地域」としており、「国際的」な武力紛争が起こっていない地域であれば、地球上いずこにも派兵することができる。
     具体的な活動内容として、これまで認められていない安全確保活動(治安維持活動)や警護活動、船舶検査活動もできる。
     その際、武器の使用を拡大し、正当防衛に限定せず認めた。
     安倍官房長官も「恒久法」の整備を急ぐ考えを示している。
    (中)
    2006年8月29日号
    ■閣僚・党幹部の改憲政権#ュ言いろいろ
     《安倍晋三官房長官》「憲法改正についてしっかりと議論したい。私たちの世代に残された大きな宿題」(7月28日、9月の自民党総裁選に向け全国10ヵ所で開催するブロック大会の皮切りとなる東京大会で=毎日)
     《谷垣禎一財務相》「(憲法解釈上禁じられている集団的自衛権の行使は)認めていく必要がある。憲法改正の手続きをきちんと取って、国民の合意を形成するのがオーソドックスだ」(1日、国会内で記者団に=毎日)
     《枝野幸男・民主党憲法調査会長》「(憲法改正論議について)どこかの党が主導したら進まない。政権として(改正を)進めたいという安倍晋三さんが自民党総裁になったら、憲法の論議は止まる」(6日、民主党が全国各地で開催している憲法対話東海集会で=朝日)
     《中川秀直・自民党政調会長》「(次期政権について)次の党総裁は2期6年の本格政権を目指し、少なくとも2期目までには『憲法改正政権』として改正のスケジュールや方向性を固めるべき」(8日、東京都内の講演で=毎日)
    ■斎藤貴男著『ルポ 改憲潮流』を読む
     ジャーナリストの斎藤貴男氏が今日の改憲への潮流について、さまざまな領域での動きを丹念に取材し、検証した「ルポ改憲潮流」を出版した。
     著書のなかに、読売新聞社の朝倉敏夫・論説委員長のインタビューが掲載されている。社論を率いる責任者の話だけに興味深いものがある。その一部を紹介しよう。
     《自民党の新憲法草案》うちは10数年来、憲法改正のキャンペーンをしてきたわけですから、ある種の感慨を覚えています。…わが社の―特に第3次の試案と比べてもらえば、ほとんど同じ内容ですよ。
     《自民党と読売新聞の考え方》ほとんど変わらない。われわれは早い段階から、いわば激励をしてきたわけだから、そんなに違うはずがないんです。もともとの問題意識が似ているわけだから。
     《前文》現憲法の前文が、アメリカの各種政治文書を貼り合わせただけの代物だというのは明々白々だから。…あんなみっともないもの、そのままでいいはずがない。
     《9条問題》9条の2項は誰が見たってデタラメだから。法律不信、憲法不信の根源です。
     《憲法学者と立憲主義》憲法学者というのは、伝統的に現行憲法ファン学者であってね。逆に言えば、ある時期まで、そうでなければあの世界で生きていけなかった。ギルド社会の話ですよ。そこもわが社が変えたと自負するものです。
    ※『ルポ改憲潮流』・岩波新書・定価(本体740円+税)
    (中)
    2006年8月8日号
    ■公明党、改憲案とりまとめを先送り
     公明党の憲法調査会(座長=太田昭宏幹事長代行)は7月12日、9月30日の全国大会で発表する予定だった改憲案のとりまとめを先送りすることを決めた。全国大会では「加憲の基本理念や対象となるテーマを提示する」(公明新聞)にとどめる。
     公明党は改憲案のとりまとめ時期を明確にしていないが、太田氏は「国民投票法案の成立が一つの目安」としている。
     国民投票法案の成立が見通せない中で改憲案を発表すれば、同党が改憲に突き進んでいると見られ来夏の参院選にも悪影響を及ぼしかねないと判断したとみられている。
    ■額賀防衛庁長官 海外派兵の恒久法を
     陸上自衛隊がクウェートまで撤退したのを受け、現地を訪れていた額賀福志郎防衛庁長官は7月17日、記者会見で自衛隊の海外派兵をいつでも可能にするための恒久法について「自衛隊が機敏に対応できるよう一般法的なものをつくることが望ましい。国会の場で議論してもらいたい」(日経)と述べ、恒久法の制定に意欲を示した。
     いつでも、どこでも、何でも、米軍と一緒に海外で軍事行動をともにする恒久法の整備は、自民党が6月に素案をまとめており、その条文化を急いでいる。
    ■改憲総理″登場か
     「ポスト小泉」レースの先頭を走る安倍晋三官房長官が、「闘う政治家」(批判を恐れず行動する政治家)―でありたいと願う自らの政治信条をつづった著書『美しい国へ』(文春新書)を出版した。9月総裁選へむけて公表する政権構想のもとになるとみられる。
     著書のなかで安倍氏は「戦後日本の枠組みは、憲法はもちろん、教育方針の根幹である教育基本法まで、占領時代につくられた」との認識を示し、「国の骨格は、日本国民自らの手で、白地からつくりださなければならない」と述べ、改憲論を展開している。
     まず、やり玉にあげるのは、侵略戦争の反省の上に立った前文。「敗戦国としての連合国に対する詫び証文″のような宣言」などとやゆし、憲法の平和主義、基本理念をかなぐり捨てている。
     集団的自衛権の行使については「権利はあるが行使できない、とする論理が、はたしていつまで通用するのだろうか」と政府の憲法解釈に異論を唱え、「権利があっても行使できない―それは、財産に権利はあるが、自分の自由にはならない、というかつての禁治産者″の規定に似ている」と攻撃する。
     また、交戦権を認めていない9条2項についても「我が国の安全保障と憲法との乖離を解釈でしのぐのは、もはや限界にある」として、9条改憲を明確にしている。
     改憲を次期政権の構想にかかげる安倍氏が、“天下取り”に挑む。
    (中)
    2006年7月25日号
    ■「北朝鮮脅威」を利用 在日米軍再編に拍車
     「恫喝に国の守りを固めよ」「脅威への備えを迅速かつ的確に」(産経)、 「重大な軍事挑発だ」「防衛手段整備が緊要」(読売)―ミサイル発射を「北朝鮮脅威」に結びつけて騒ぎ立てるマスコミの有り様には、もっと恐ろしいものを感じる。
     さっそく、額賀防衛庁長官は、6日の衆院安全保障委員会で、ミサイル防衛について「監視レーダー網整備とともに、迎撃面も米国と協調して一刻も早く形をつくりたい」(共同)と強調した。
     額賀氏は9日、記者団に「独立国として限定的な(敵地)攻撃能力を持つことは当然だ」と延べ、ミサイル発射場などを先制攻撃する能力の保持を検討すべきだとの考えを示した(時事)。麻生外相も同日のNHK番組で敵基地攻撃能力は必要との見解を示した。8日の民放テレビの番組では、民主党の枝野憲法調査会長が敵のミサイル基地攻撃は「専守防衛の範囲内」との認識を明らかにした。「攻撃は最大の防御」とばかり、自衛隊の機能を「専守防衛」型から対外侵略型に転換する機会にしようとしている。
     「北朝鮮脅威」を理由に憲法違反の有事法制がでっち上げられ、日米軍事同盟の変質強化が押し進められてきたが、いま、在日米軍再編や改憲先取り法制定を加速させることがあってはならない。
    ■余録
    ・「マガジン9条」に連載されている「森永卓郎の戦争と平和講座」(5日付)から、在日米軍への日本の負担額が、他の同盟国に比べ、いかに突出しているかというデータを紹介しよう。
     「アメリカ国防総省の『共同防衛に対する貢献』(04年版)というレポートによると、日本の駐留経費負担は、44億1334万ドルで、ドイツの2・8倍、韓国の5・2倍、イタリアの12倍。日本の駐留経費負担金額は、日本を除く26の同盟国全体よりも大きい」「日本に駐留する米兵の数が多いから負担が大きいわけではない。駐留米兵1人当たりの負担でみても、日本は10万6千ドルで、ドイツの4・9倍、韓国の4・9倍、イタリアの3・8倍になっている」「米軍駐留経費の何%を同盟国が負担しているのかでみると、日本は75%、ドイツは33%、韓国は40%、イタリアは41%と、やはり日本は突出している」
    ・「飾っておくだけでは役に立ちません。まして仕舞い込んではないも同然です。いつも持ち歩いて、絶えず意識し、現実と照合する。それが憲法を生かします」―少々遅くなったが、先月25日付の東京新聞社説「週のはじめに考える 憲法をポケットに」を紹介する。
     「日本国憲法を読めば、決して一国平和主義ではなく、非軍事的貢献で世界平和を構築することが、日本の責務であると理解できます。その責任を果たせずにいるのは、日本人が憲法を棚に飾るだけで、使いこなせなかったからでしょう。自民党政治による憲法棚上げを防げなかったのも同じ理由です」
    (中)
    2006年7月11日号
    ■国連決議なしで海外派兵可能 自民党が恒久法
     自民党は、自衛隊の海外派兵をいつでも可能とするための恒久法案の策定をめざしている。
     政府・与党は海外派兵のためにPKO法のほか、時限立法のテロ特措法やイラク特措法の制定を強行してきた。これまでのように派兵のたびに法律をつくるのではなく、恒久法を制定してアメリカの要求に迅速に応え、地球上いずこにおいても軍事行動をともにすることを狙っている。
     自民党素案によると、派兵する条件に、国連決議や国際機関からの要請がなくても、「日本として特に必要であると認める事態」をあげており、政府の判断で派兵が可能となる。活動を行う地域は「非国際的武力紛争地域」。「国際的」な武力紛争が行われていなければどこでも派兵できるようになっている。
     活動内容としては、これまで認められていない治安活動や警護活動もできる。その際、暴動に遭遇するなどの非常事態での武器の使用を認め、その基準を緩和している。
     自民党は7月中にも条文化する方針。改憲の先取り法案は許されない。
    ■2次案に集団的自衛権明記を 自民・船田氏
     産経新聞によると、自民党の船田元・憲法調査会長は6月21日、国会内で講演し、同党が昨年まとめた新憲法草案に集団的自衛権の行使が明記されていないことに関し「草案を改定する際には真っ先に取り組みたい」と述べ、第2次草案に集団的自衛権を明記する考えを示した。
    ■国会ルールを無視する国民投票法案
     6月1日の衆院本会議で与党と民主党がそれぞれ提出した国民投票法案は「単なる手続き法ではない。改憲準備法だ」と(前号参照)、両法案の本質を明らかにした辻元清美議員(社民党)は、同月15日の特別委員会でも「両法案とも国会運営の常道を踏み外している」と追及した。その要旨は次のとおり。
    ・両法案とも条文の中に国会法の一部改正を規定している。国民の意思を直接問う手続きと、憲法改正の発議要件や憲法審査会の設置など国会内の手続きを同一の法律で処理しようとするもので根本的な問題がある。
    ・国会法45条によれば、国会法の改正は議院運営委員会の所管であるから、議院運営委員会で審議するのが正当である。本特別委員会で国会法の改正まで審議できるというのは、国会運営の常道を踏み外している。
    ■余録
    ・毎日新聞が全国会議員を対象に実施(6月24日集計)した歴史認識などに関するアンケートによると、憲法9条の改正に賛成は50%で、反対は25%だった。集団的自衛権の行使については「認めるべきだ」が42%で、「現行通り禁じるべきだ」は41%だった。
     1項と2項を組み合わせた9条の改正については「1項、2項とも改めるべきではない」25%、「1項だけ」1%、「2項だけ」36%、「1項、2項とも」13%、「その他」15%だった。
    (中)
    2006年6月27日号
    ■「手続き法」ではない「改憲準備法」だ!
     「国民投票法案と言いながら、実際は直ちに憲法改正に着手していく『改憲準備法案』だ」―1日の衆院本会議で、社民党の辻元清美議員が、与党と民主党がそれぞれ提出した国民投票法案の狙いを鋭く突いた。
     そのからくりはこうだ。国民投票法案の中に組み込まれた国会法の改定によって両院に常設機関として「憲法審査会」を新設する(憲法審査会設置の部分は両案ともほぼ同じ内容である)。
     しかも、「憲法審査会」は、「憲法改正原案をつくり、提出することができる」権限が付与されており、会期中・閉会中を問わず、審査することが可能となっている。
     そして極めつけは、国民投票法が公布の日から2年後に施行されるのに対し、「憲法審査会」は公布後、初めて招集される国会から設置されることになっている点だ。
     辻元議員は「この法案が今国会で成立したら、法的には次の国会から憲法改正案づくりが始まる」と指摘し、「国民投票法案は単なる手続きで改憲議論とは切り離して制定すると言いながら、憲法改正原案の審査機関の設置まで盛り込み、改憲になだれ込む装置を兼ね備えた法律を制定しようとするものだ」と、与党・民主党案のねらい目を暴いた。
     両案とも秋の臨時国会に継続され、閉会中も審査される。
    ■余録
    ・朝日新聞の調査によると、「愛国心」を通知表の評価項目に盛り込んでいる公立小学校が、少なくとも13都府県39市区町村に190校あることがわかった。また、かつて盛り込んでいたが削除した学校は122校。
     190校以外にも兵庫県たつの市、太子町の計22小学校で教科学習ではなく「生活・行動のようす」の項目で「郷土や我が国の文化や伝統を大切に」することを評価対象にしているという。
     「愛国心通知表」が見られるようになったのは、02年度改定の学習指導要領で小学6年社会科に「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする」などの目標が書き込まれたことがきっかけ。
     小泉首相は、教育基本法改悪案をめぐる国会論議で「(通知表で)小学生を評価するのは難しい。あえてこういう項目を持たなくていい」と評価の必要性を否定したが、教育基本法改悪の先に見えてくるものは…。
    ・政府は9日、防衛庁を「省」に移行させ、イラク派兵などすべての海外派兵を自衛隊の付随的任務から本来任務に格上げするための防衛庁設置法や自衛隊法などの改悪案を国会に提出した。次期国会で成立をめざす。自衛隊は「専守防衛」の軍隊から海外で戦争する軍隊へ大変身していく。
     海外派兵を定める自民党の「恒久法」素案も明らかになった。
    (中)
    2006年6月13日号
    ■国民投票法案、いよいよ衆議院で審議入り
     自民、公明両党は5月26日、国民投票法案を国会に提出した。民主党も同日、国会に対案を提出。1日の衆院本会議で両案の趣旨説明と質疑が行われた。与党と民主党は憲法調査特別委員会の審議と並行し、修正協議による合意をめざす。
     与党案と民主党案には@国民投票の対象―国政の重要問題も含めるか、否かA投票権者の年齢―20歳以上か、18歳以上かB投票用紙への記載方法・白票の扱い―無効票か、反対票かC憲法改正の「過半数」の意義―有効投票総数か、投票総数かD公務員等・教育者の地位利用による国民投票運動禁止の是非―などの相違点がある。
     両案とも9条改憲に直結するもの。9条改憲・法案反対の声と運動を強め廃案に追い込もう。
    ■自民党 新憲法草案の9条バージョンアップ
     産経新聞によると自民党の船田元・憲法調査会長は5月25日、津島派の総会で講演し、同党が昨年まとめた新憲法草案について「(9条)1項はもう一度議論してバージョンアップしたい」と述べ、「2次草案」を策定する考えを示した。石破茂・元防衛庁長官が「(現行憲法と同じ)9条1項が残っており、集団的自衛権の行使が認められないとの憲法解釈が維持される可能性が高い」と指摘したことに、船田氏が同調したもの。
       自民党は9条1項を残しているから「憲法の平和主義は不変だ」と強弁しているが、早くも化けの皮がはげてきた。
    ■余録
    ・5月24日、参院本会議で自衛隊法改悪案が可決、成立した。陸上自衛隊の海外派兵の“特殊部隊”となる中央即応集団が新設される(今年度中)。日米が合意した米軍再編では米軍キャンプ座間(神奈川県)に司令部を置き、米本土から改編・移転される陸軍第1軍団司令部と同居する。
     自衛隊が米国の戦略に作戦段階から組み込まれ、日米軍事一体化が一段と進むことになる。 ・自民、公明両党は1日、与党安全保障に関するプロジェクトチームを開き、防衛庁を省へ移行する関連法案を今国会に提出する方向を固めた。防衛庁を「防衛省」に昇格させ、自衛隊の付随的な任務となっている国際平和協力活動を本来任務に格上げするもの。 
     「国際平和協力活動」を口実に、アメリカの先制攻撃戦争を支持しイラクに自衛隊を派兵している。中央即応集団は、海外派兵の中核部隊として新設された。
    (中)
    2006年5月30日号
    ■〈国民投票〉与党単独提出へ 民主は対案
     自公民3党は、衆院憲法特別委で論点整理の協議を重ねながら今国会への国民投票法案の共同提出を目指してきた。しかし、民主党の小沢一郎代表が共同提出を否定し(9日)、16日の同党役員会では、「論点整理を経てもなお相違点が残っている」として共同提出拒否を正式に決定した。また、与党が法案を提出した場合は対案を提出する方針も確認。
     これを受けて与党は、19日の与党協議会で月内にも与党だけで法案を提出する方針を決めた。今後は3党の修正協議で法案の成立をめざす。
     いよいよ、改憲手続き法案をめぐる攻防は重大な局面を迎えた。
    ■憲法記念日―地方紙の「社説」にみる
     昨年11月、自民党が新憲法草案を発表した際、本欄で鋭い批判を展開した6地方紙の社説を紹介した。改憲の本丸が9条であることは明らか。憲法記念日に6地方紙はなにを論じたのか。
     権力にすり寄りがちの全国紙に比べ、地方紙の論調は骨太だ。
     北海道新聞は強調する。「今の憲法は、戦争の反省を踏まえた、世界に対する不戦の誓いであり、この精神は忘れてはならない」、9条は「『戦争放棄』の第1項を『戦力不保持・交戦権の否認』の第2項で、不戦の決意を具体的なものにしている」と。
     「いま改正へ向かう危うさ」と題し、「憲法論議をいま加速させれば、平和の理念は足元をもう一段、掘り崩される」と警鐘を鳴らすのは信濃毎日新聞。「日本の憲法は世界に通じる普遍性を持っている。自信を持って、理念を強化し、新たな力を吹き込むことを考えたい」と訴える。
     東京新聞も、「歴史の歯車を逆転させてはいけません。憲法の役割が変質するのを見過ごすようでは、平和の時代を生きることのできた者の次世代に対する責任が問われます」と警鐘を鳴らす。
     神戸新聞は、「政治の動きは急だ」、「先を急ぐ政治と民意との間が広がっているのではないか」「改正は『国際貢献』を旗印にするが、どこまで説得力があるのか。9条を見直して、この先、アジア各国との関係をうまくやっていけるのだろうか」と、懸念を示す。
     改憲の狙いは「やはり9条」と捉え、「9条の1、2項は、戦争は人類の破滅につながるという、ヒロシマ・ナガサキの体験に基づいており、平和憲法の核となる部分である。論議を深めていくうえで、決して忘れてはならない」と論陣を張るのは中国新聞。
     「復帰後、憲法の恩恵にあずかった県民こそ、存在の重さをよく知っている」とする琉球新報は、「(世界に)誇れるはずの憲法が『古着』扱いされ、『実態に合わない』と批判される」、しかし「60年にわたり国のよりどころであり続け、日本の針路を正してきた憲法を軽々しく扱ってはならない」と警告する。「世界各地で紛争が頻発する現状では、むしろ『日本国憲法』は輝きを増している。『戦争放棄』の精神を世界に向けて発信すれば、子供たちに『愛国心』教育など必要ない」と、憲法の存在価値を力説する。
    ■余録
    ・朝日新聞は3日、世論調査の結果を発表した(カッコ内は05年調査)。改憲賛成が55%(56)、反対が32%(33)。改憲の焦点である9条について74%(76)が「日本の平和と繁栄に役立ってきた」と9条の役割を高く評価し、「役立ってこなかった」は20%(同)。9条改憲賛成が43%(1項だけ変える9、2項だけ16、1項・2項とも18)、反対は42%(二択だった05年の調査では賛成36、反対51)。
    (中)
    2006年5月16日号
    ■予断を許さない国民投票法
     衆院憲法調査特別委員会は4月27日、国民投票法案の焦点になっているメディア規制について放送(13日)、雑誌(20日)、新聞(27日)の代表を参考人として呼び、意見聴取を終えた。
     共同通信によるとメディア側からは「憲法21条(言論、表現の自由)の精神に反する」と反対論が相次いだため4月27日の同特別委理事懇談会では、自民、公明が18日にまとめた法案骨子(自民党が12日に決定した骨子素案をほぼ踏襲したもの)に盛り込まれたメディア規制をさらに緩和することで自公民3党が大筋で一致した。
     しかし、@投票権者の年齢(20歳以上か、18歳以上か)A法案の対象を憲法改正に限定するか、一般的国政問題にも広げるかB白票を有効票に入れるか―について与党と民主党の調整はつかなかった。  一方、参院憲法調査会(4月26日)で民主党は、「国民的論議が成熟していない。今国会で成立させるのはもってのほかだ」と述べ(NHK)、今国会の成立に反対する立場を示した。
     法案の今国会への提出・成立に向けた攻防が激しさを増すなか、情勢は予断を許さない。
    ■自民、民主が場外戦
     共同通信加盟社論説研究会の「憲法問題各党討論会」(4月24日)で、国民投票の投票年齢をめぐって自民、民主が場外戦を展開した。
     自民の船田元憲法調査会長が「当面は20歳以上。将来は18歳以上を努力規定に」と主張したのに対し、民主の枝野幸男憲法調査会長は「18歳成人が世界の常識だ」(共同)と応酬した。
    ■民主党、憲法改正案を来年中に
     民主党は、4月22日の徳島市を皮切りに全国主要都市で「憲法対話集会」を開催し、昨年発表の「憲法提言」をもとに党員や支持者の意見を聞くことにしている。この取り組みに関連して、鳩山由紀夫幹事長は4月21日の記者会見で、「(憲法改正案の)条文化の作業については、来年にはまとめてゆくことが必要ではないか」との見解を示した(同党HP)。
     また、枝野幸男憲法調査会長も22日、徳島市内の会見で、前日の鳩山幹事長発言を受けて、「条文の形で示した方が党の考えが分かりやすいものに限定したうえで、条文化の作業に着手する」(同党HP)との考えを明らかにした。
    ■余録
    ・米国の領土―グアムに建設する米軍基地のため に、国民の巨大な税金が投入される。沖縄の基地負担の軽減を口実にして。「前代未聞である」(朝日新聞・4月25日付社説)。
     地元紙・沖縄タイムスは「政府は『沖縄の負担軽減のため』と、第3海兵遠征軍の司令部要員を削減するが、グアムに移っても実戦部隊である第3海兵遠征旅団は司令部ともども沖縄に残る。事故や犯罪を繰り返してきた実戦部隊による県民負担は変わるものではない」(3月9日付社説)と批判している。
     グアムの海兵隊基地建設は、沖縄の負担を軽減するためではない。アメリカが行う先制攻撃戦争のためであり、その基地づくりに9条を持つ日本が、血税を出すことは許されない。
    ・「戦争する人間」づくり(愛国心教育)をめざし、教育の国家統制を強める教育基本法改悪案が4月28日、国会に提出された。会期延長問題がからみ、今国会で成立するかは不透明。
    ・自民党の内閣・国防部会合同会議は4月28日、防衛庁が今国会の提出を目指す防衛省昇格関連法案の原案を了承した。省名は「防衛省」としている(読売)。
    (中)
    2006年4月25日号
    ■自民が骨子案、3党協議のはずみを狙い
     自民党憲法調査会は12日、「憲法改正手続きに関する法律案」(仮称)の骨子案をまとめた。04年12月に自民、公明両党が合意した与党案をもとに、「その後の自民・公明・民主3党の協議を踏まえて取りまとめたもの」(同党HP)。
     当初の与党案は、国民投票に関するものだけであったが、骨子案には国会の発議手続きとして、憲法改正案の提出には衆院100人以上、参院50人以上の賛成が必要であること、また「憲法改正案を審議する『憲法審査会』を衆参両院の常設機関として設置し、国民投票を行う際に改正案の内容を国民に広く周知する機関として『憲法改正案広報協議会』を設けることなどが」(同HP)新たに盛り込まれた。
     国民投票制度に関しては、与党案にあったメディア規制は「報道機関の自主的取り組み」に委ねると変更され、投票日の7日前からテレビやラジオのCMを禁止する項目を新たに加えた。民主党が主張している@「18歳以上」の投票年齢については「20歳以上」のままとしA憲法改正以外の国民投票制度の創設については触れていない。
     船田元会長は、「この案を公明党とすり合わせたうえで、民主党との協議を始めたい。あくまで自民・公明・民主の3党で今国会に提出をし、成立を期したい」(同HP)と強調。3党協議にはずみをつけるのが狙い。
    ■国民投票法案 参院でも論点協議開始
     参院憲法調査会は19日、国民投票法制の主要論点について各党が意見表明を行い、26日には自由討議を行う予定。
     一方、衆院憲法調査特別委員会は13日、「国民投票制度とメディアとの関係」について参考人質疑(NHKと民放連の代表)を行い、理事懇談会では、事務局がまとめた「論点一覧表」に対して各党が意見を述べた。
    ■余録
    ・防衛省か、国防省か―
    防衛庁は12日、今国会への提出をめざす防衛省昇格関連法案の骨子案を与党に提示した。
     「骨子案は、@防衛庁設置法を省設置法に改正A自衛隊法を改正し、自衛隊の国際平和協力活動などを本来任務に格上げ―が柱だ」。省の名称は「『防衛省』を軸に、与党協議も踏まえ検討する」とした(読売)が、「『国防省』との意見があることも付記」(共同)。
    ・教育基本法改「正」に向け自公両党は、調整が難航していた「愛国心」をめぐる表現について「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とすることで決着した。 本音はあくまでも「愛国心」であり、表現をいかに工夫しようとも、国民には小手先の修正としか映らないのではないか(毎日・社説)。
     創価学会幹部は「言葉は独り歩きする。一部の人たちはどんどん解釈を曲げてきた歴史がある」(朝日)と。
    改正案の提出は、早くても5月の連休前後か。
    ・読売新聞(4日)とNHK(11日)が、世論調査の結果を発表した。
    《読売新聞》調査期間=3月11、12日・面接(カッコ内は05年3月12、13日・面接の結果)
    ・憲法改正に賛成56%(61)、反対32%(27)
    ・9条について―これまで通り解釈や運用で対応する33%(28)、改正する39%(44)、厳密に守る21%(18)
    《NHK》調査期間=7〜9日・電話(カッコ内は05年1月8〜10日・面接の結果)
    ・憲法改正に賛成42%(62)、反対19%(17)、どちらともいえない32%(14)
    ・9条の改正に賛成24%(39)、反対39%(39)、どちらともいえない28%(14)
    (中)
    2006年4月11日号
    ■憲法特別委 国民投票法案めぐり緊迫
     3月16、23日に開催されるはずだった憲法調査特別委員会の理事懇談会は、国民投票法案の提出を焦る自民党幹部の強硬発言(4月初旬に国会提出、与党単独提出もなど)に野党側が反発し、2度にわたって法案の基礎をつくる論点協議に入ることができなかった。
     30日の特別委員会は国民投票法案について自由討議を行った。その後に開かれた理事懇談会に同委員会事務局から「論点一覧表」が示され、論点協議を開始した。
     特別委員会は毎週木曜日に開催されており、緊迫した情勢が続く。
    ■「前原ビジョン」?と党内論争
     民主党の前原代表は、偽メール問題の責任をとって辞任した。前原氏は、9条2項の削除や集団的自衛権行使の容認などを柱とする「外交・安全保障ビジョン」の提起と徹底した党内論議を呼びかけていたが、その論議も活発化しつつある。
     読売新聞によると同党の中堅・若手議員でつくる「リベラルの会」がまとめた提言案は、「集団的自衛権は行使しない」「9条2項は、1項とともに原理を定めたものとして維持する」と明記するなど、前原氏の主張に真正面から反対する立場を明確にしている。
     また、「リベラルの会」代表世話人である近藤昭一、平岡秀夫両衆院議員は、共同執筆の論文「民主党が目指すべき安全保障」を「世界」(4月号)に掲載している。
     民主党は、昨年10月に公表した「憲法提言」では「集団的自衛権の行使を認めるか否か」について結論がでておらず、今後の党内外の論議を踏まえ、最終のとりまとめをするとしている。
    ■余録
    ・アメリカのアーミテージ前国務副長官は読売新聞と会見し、日本に対して「集団的自衛権行使に踏み切れ」と提言した2000年10月の「アーミテージ報告」の続編を4月末までに出すと語った。同氏は憲法9条を「目の敵」にしてきた。
    ・自衛隊は3月27日、創設以来初めて陸海空3自衛隊の指揮・命令を一本化する統合運用体制に移行した。統合幕僚会議を廃止し、統合幕僚監部を新設、一人の指揮官(統合幕僚長)が3自衛隊を指揮することになる。
     海外派兵―日米軍事一体化に備え、自衛隊をいっそう迅速かつ効果的に動かせる体制が整う。統合運用体制は9条の破壊そのものである。
    ・自民、民主、国民新党などの国会議員でつくる「教育基本法改正促進委員会」は3月23日、「新教育基本法案」と題する教育基本法改正案を公表した。教育の目標に「愛国心の涵養」と明記するなど保守色を強調している(朝日)。同会には378人が参加。
    (中)
    2006年3月28日号
    ■国民投票法案 衆院憲法特別委で論点協議
     衆院憲法調査特別委員会は9日、国民投票法案に関して自民、民主両党が基本的な立場を説明し、質疑を行い議論を開始した。16日の特別委では公明、共産両党が基本的な意見を表明し、その後の理事懇談会から論点整理の協議に入ることになっていたが、与党側が4月初旬にも国会提出したいなどとしていることに野党側が反発し、論点整理に入ることができず、先送りされた。
     法案づくりに向けては自公民3党協議会の設置が協議されていたが、2月に入って民主党が「協議は国民に開かれた公式の場で」との方針を打ち出したため、理事(懇談)会で議論することになっていた。
     9、16両日の特別委で、自公両党は「04年12月にとりまとめた与党案に固執しない。修正に柔軟に応じる」姿勢を表明しているが、3党間では、すでに水面下の調整を続けてきており、主な論点(投票権者の年齢や投票方式、運動規制、報道規制など)について与党側が民主党案に歩み寄っている。
    ■メール騒動で「前原ビジョン」先送りか?
     民主党の前原誠司代表は7日の記者会見で、今国会中の取りまとめを目指していた、9条2項の削除や集団的自衛権行使の容認を含む外交・安全保障ビジョンについて、メール騒動を理由に「タイミングを慎重に判断したい」と述べ、先送りの可能性を示唆した(朝日)。前原代表は、「ビジョン」の取りまとめに「首をかける」とまで明言している。
     一方、同日開かれた外務防衛部門会議では、前原代表の「中国脅威論」を踏まえた党見解について「メール問題で党が揺れている時期にまとめる必要がない」(共同)などの反対が相次ぎ、意見集約ができなかった。
    ■余録
    ・ 韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は1日、日本の植民地支配からの独立を目指した「3・1独立運動」(1919年)の記念式典で演説し、小泉首相に靖国神社参拝の中止を重ねて求め、「日本が普通国家、ひいては世界の指導的国家になろうと試みるならば、法を変え、軍備を強化するのではなく、まず人類の良心と道理にかなった行動をし、国際社会の信頼を得なければならない」(韓国紙「朝鮮日報」日本語版)と述べ、日本の改憲の動きを批判した。
    ・毎日新聞の世論調査によると、改憲賛成が65%で反対は27%だった。一方、「戦後日本の平和維持や国民生活の向上に現憲法が果たした役割」について80%が「役立った」と回答。
     焦点である9条については改憲反対が41%、賛成は49%(1項だけ改める8%・2項だけ21%・1項、2項とも20%)だった(質問が二者択一だった05年9月の調査では反対62%、賛成30%)。
    (中)
    2006年3月14日号
    ■ままならぬ?国民投票法案の3党協議
     民主党の簗瀬進憲法調査会会長代理(参院議員)は、改憲派議員でつくる憲法調査推進議員連盟の総会(2月22日)で「国民投票法案に関する自公民3党協議会設置を拒否する考えを与党側に伝えた」(産経)。
     同党の憲法調査会は先に、3党協議会設置について@協議は国民に開かれた公式の場で行うべきA衆院では憲法調査特別委員会の理事間協議の場が適当B参院の協議の場は、参院側で相談―などの方針を確認している。
     このような状況の中で、しんぶん赤旗によると、自民党の船田元氏(憲法調査会長)は、2月23日の衆院憲法調査特別委員会理事会で、国民投票法案の論点を同理事会・懇談会で協議することを提案し、民主党も大筋で了承した、という。協議開始の時期については、中山太郎委員長は「予算審議のめどをみて協議してほしい」と促した。
     また、自民党の船田氏は2月26日、大阪市で開かれた国民投票法案についての公開討論会(「真っ当な国民投票のルールを作る会」主催)で、「(通常国会会期末の)6月までに何が何でも(成立させる)という気持ちはない」と述べ、今国会での成立にこだわらない考えを示した(朝日)。自民党は、あくまでも3党合意によって、衆参とも3分の2以上で成立させるために民主党との調整を優先する考えである。
    ■自民党憲法調査会が「第2次草案」づくり?
     東京新聞によると、自民党憲法調査会(船田元・会長)は、昨年11月に策定した新憲法草案を全面的に見直した「2次草案」の作成に着手する方針を固めた、という。
    第2次草案をまとめる時期は、正式には9月に誕生する新総裁と協議するが、同調査会は総裁選を待たず、早急に論点整理の議論は開始する方針。
     船田氏は同紙のインタビューで「(新憲法草案は)必ずしも自民党らしいものではなかったという受け止めが、党内にはある」「現在の草案を1次草案とし、修正を加えて2次草案で勝負したい」と明言。
     再検討の対象として@前文については、草案ではほとんど盛り込まれていない日本の伝統、文化、国柄についての記述を書き加える方向A9条については、草案で明記した自衛のための「自衛軍」が集団的自衛権を行使することを条文の中に盛り込むべきかどうかB権利義務については、「国防の責務」など、国民の責務規定の追加―などが議題となる予定。
    (中)
    2006年2月28日号
    ■自民・船田憲法調査会長の「理想的な日程」
     国民投票法案の国会提出をめぐる自公民3党の動きが注目されるが、読売新聞は「自・公・民3党 憲法調査会会長・座長に聞く」を連載した(2月4、7、9日付)。
     そのインタビューで自民党の船田元会長は、国民投票法案について @3月末までに自公民3党で法案の要綱作成、党内手続きを終え議員立法で衆院に法案提出 A4月末までに衆院通過 B5月の大型連休後に参院で審議入り、という「理想的な日程」(船田氏)を示しており、 憲法改正に向けては「通常国会で国民投票法を成立させたうえで、政党間協議の入り口まで今年後半にはたどり着き、来年、本格的な協議に入りたい」としている。
    ■憲法9条で国が滅びる―石破茂・元防衛庁長官
     宝島社発行の雑誌が「憲法9条改正後のニッポンの軍隊!」を特集し、石破茂・元防衛庁長官のインタビュー「憲法9条を変えないと、戦争になる!」が掲載されている。
     そのさわりを紹介する。
     「若い世代の人たちに言いたいのは、『憲法を変えないと戦争になるぞ』ということ。今の憲法のままだと、侵略戦争をしかけようという側からすればとても魅力的に映る」「侵略を企図している国からすれば『(日本が)憲法を改正するまでに事を起こさないと』と思うかもしれないじゃないですか。主権者たる国民やその代表者である政治家が軍の動かし方を知らないと、いつか起こるかもしれない戦争に負けるぞ、国が滅びるぞ。それがなぜなのかをわかってもらいたいと思います」(同誌125頁)。
    ■余録
    ・自民党は昨年の総選挙マニフェストで「国際協力に関する一般法(国際協力基本法)を制定するなど、迅速な対応が可能となるよう検討する」とし、自衛隊の海外派兵をいつでもできるようにするための法整備を掲げているが、その具体化が始まっている。
     同党の防衛政策検討小委員会は8日、一般法について勉強会を開催。会議の中で石破茂委員長は「一般法の大枠について夏ごろまでをめどに同委員会で取りまとめを行う考えを示した」(自民党HP)。
    ・陸上自衛隊が渡米し、米海兵隊の手ほどきで上陸作戦の訓練を受けた(1月9日〜27日)。昨秋は米陸軍第一軍団の基地で市街戦訓練を実施。海外派兵の法整備や改憲を先取りするかのように、海外で米軍とともに行動できる陸自の部隊づくりが進んでいる。
    (中)
    2006年2月14日号
    ■自民、国民投票法案で3党協議会設置確認
     自民党の新憲法起草委員会は先月31日、国民投票法案の現状について意見交換を行い、「今国会で同法案を(自民・公明・民主)3党で提出・成立させるため、3党協議会設置に向け調整を行っていく考え」(自民党HP)を確認した。
     産経新聞は、1月中にも開催するはずだった3党の協議開催のメドが立っておらず、国民投票法案に積極的な衆院側と慎重な参院側の温度差が主な原因であるとし、国民投票法の制定が憲法改正につながるとして消極的な議員が参院民主党に存在するのが最大の理由だ、と報じている。
     参院は、国民投票法案を審議する特別委員会を、未だ設置していない。
    ■民主、3月中に基本政策―党内対立先鋭化
     民主党の前原誠司代表は先月20日の記者会見で、集団的自衛権行使の容認を含む基本政策を「3月中に執行部内でまとめ、4月から意見集約のための党内論議に入る方針」を明言した(共同)。
     一方、同党内の政策勉強会「リベラルの会」は「前原代表の安保・外交路線と異なる政策提言を3月中にまとめることで合意した」「会は専守防衛を掲げ、集団的自衛権の行使に反対」(朝日)。
    ■教育基本法改悪―与党 半年ぶりに議論再開
     通常国会では、「国民投票法案」や「教育基本法改正案」「防衛省設置法案」「自衛隊法改正案」「米軍再編推進関連法案」など改憲・戦争体制づくりに連動する悪法が予定されている。
     自民、公明両党は1日、与党教育基本法改正に関する検討会を半年ぶりに開き実質的な議論を再開した。公明党が難色を示している「愛国心」の表記などが議論の焦点となり、今国会中の意見集約を目指す。
    ■連合、9条「改憲」案を事実上“凍結”
    連合は1月19日、第4回中央執行委員会を開き、9条改憲に踏み込んだ「国の基本政策に関する連合の見解(案)」の取り扱いについて協議したが、意見の一致がみられないため「一元的な考え方へ集約・対応することは現段階では控える」と事実上の“凍結”方針を確認した。
     「見解(案)」は昨年10月の定期大会で、意見が割れたことから、大会承認を見送り、議論を継続するとしていた。 
    ■余録
    ・政府は、自民、公明両党との調整がつけば、防衛省設置法案(防衛庁の「省」への格上げ)とともに、自衛隊の国際平和協力活動(海外派兵)を「本来任務」とするための自衛隊法改悪案の今国会提出を狙っている。
    ・昨年4月に提出された衆院憲法調査会報告書が英語(全文)、中国語及び韓国語(あらまし)に訳され、同調査会のホームページにアップされた。
    (中)
    2006年1月24日号
    国民投票法案めぐる正念場へ
    ■憲法公布60年―正念場がやってくる
     憲法公布から60年目の06年も改憲の動きは一段と活発化するだろう。
     昨年暮れ、自公民3党は、国民投票法案の通常国会での成立を目指すことに合意した。3月末(予算成立後)の提出を予定し、法案の本格的な協議に入っており、憲法をめぐる攻防は大きなヤマ場を迎える。
     公明党は、10月に予定している全国大会で「加憲」案をまとめる。
     太田昭宏憲法調査会座長は昨年末、日本記者クラブの講演で「自衛隊の存在の明記や国際貢献のあり方についても『この1年間で何らかのものを出す』と述べ」(公明新聞)、「加憲」の形での9条改憲の方向を明らかにしている。
     民主党は、集団的自衛権行使の容認などを含む基本政策を上半期に取りまとめる。
     民主党の定期大会(昨年12月16、17日)では、前原誠司代表の米国での講演(シーレーン防衛強化や集団的自衛権の行使など)に批判が相次ぎ、前原氏は「結党10年になっても基本政策が固まりきれていないことが最大の弱点だ」と強調(読売)、近く党の「外交安保ビジョン」を提起し、徹底した党内議論を行うと表明。大会後の記者会見では「来年の通常国会中に一致を図る。バラバラだと言われない状況にしたい」(共同)と述べ、基本政策の取りまとめに強い決意を示している。
    ■異常な改憲発言集
    《赤松正雄・公明党憲法調査会事務局長》
      ・「憲法9条に(1項、2項はそのままにしておき)あらたに3項(筆者注=自衛権)をつけ加えるべきだ」「国際平和協力活動を積極的に日本は行うべきだというのを、4項に入れたらどうか」 (月刊「マスコミ市民」12月号)
    《舛添要一・自民党新憲法起草委事務局次長》
    ・「国民投票で過半数の支持が不可欠である。9条の1項を残すのは当然である」(日本青年会議所発行「JC」bS)
    ■2005年―主な改憲の動き(下)
    〈7月〉
     7日 自民党新憲法起草委、「起草委員会要綱」第1次素案を発表
    〈8月〉
     1日 自民党新憲法起草委、「起草委員会要綱」に基づいて条文化した「新憲法第1次案」発表
     8日 衆院解散
    〈9月〉
     11日 総選挙投・開票、自公が改憲発議に必要な3分の2以上の議席獲得(327議席)
     17日 民主党の新代表に選出された前原誠司氏、就任会見で「9条改憲」を強調
     22日 衆院、憲法調査特別委員会設置を議決
    〈10月〉
     6日 連合第9回大会、9条改憲に踏み込んだ「国の基本政策に関する見解」案の承認を見送り
     28日 自民党、新憲法起草委総会と総務会を相次いで開き、「新憲法草案」を決定
     31日 民主党、憲法調査会総会を開き、「憲法提言」を了承
    〈11月〉
     5日 公明党、全国代表者会議を開き、06年秋をめどに「加憲」案をまとめることを確認
     22日 自民党、結党50年記念党大会を開き、「新憲法草案」を正式に発表
    〈12月〉
     9日 民主党の前原誠司代表、ワシントンで講演し、シーレーン防衛強化や集団的自衛権行使のための憲法改正を強調
    小泉首相、前原氏の集団的自衛権行使の発言について、記者団の質問に「自民党と協力できる点がある」と答える
     20日 自公民3党の衆院憲法調査特別委員会理事らが、国民投票法案を来年の通常国会に議員立法で提出し成立を目指すことで一致
    (中)