2019年12月24日号
■首相強気 改憲「必ず私の手でなし遂げる」 総裁4選論も再燃
 「桜疑獄」から逃げ回った安倍首相。臨時国会は野党の会期延長要求を拒否し、12月9日に閉会した。
だが、「桜」から逃げ回った安倍氏は、改憲に関しては一歩も引かない。
 野党の結束で、臨時国会においても憲法審査会での自民党改憲案の提示を阻まれ、国民投票法改定案の採決を阻止された(5国会連続で見送り)。2021年9月末までの総裁任期中に国会で改憲を発議し、国民投票まで実施するのは、「政治日程上、非常に厳しい」状況に追い込まれていることは明らか。
 安倍氏は、臨時国会閉会直後の記者会見で「たやすい道ではないが、必ずや私の手で成し遂げていきたい」と明言し、「(来年の)通常国会の憲法審で憲法改正原案の策定を加速する」(毎日)と、改憲への執念をむき出しにした。
 その翌日(12月10日)、総裁任期中の改憲が厳しい状況にあることを意識してか、麻生副総理兼財務大臣は記者会見で「任期中にできる当てがないなら、対策を考えるのは当たり前ではないか」(同)と、また二階幹事長も「任期中にかなわない場合は、その時の政治情勢や国会日程をにらんで対応することが大事だ」(同)と述べ、総裁4選を強く示唆した。
 どの世論調査でも安倍政権の下での改憲反対が賛成を上回っている。国民の意思に逆らう安倍改憲の暴走は許されない。来年の通常国会に向けて世論と運動をいっそう広げていこう。
■2019年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
・4日 安倍首相、年頭記者会見で「具体的な改憲案を示し、国会で活発な論議を通じ、国民的な議論や理解を重ねていくことが国会議員の責務である」と改憲への決意を表明
・16日 自民党の下村憲法改正推進本部長、「新元号がスタートする歴史的な年に、憲法改正の流れをつくりたい」と強調
・28日 第198通常国会開会 安倍首相、施政方針演説
〈2月〉
・24日 辺野古新基地建設県民投票、「反対」票が72・2%を占める
〈3月〉
・1日 玉城沖縄県知事、安倍首相と会談し、辺野古新基地建設県民投票の結果を通知
・22日 沖縄県、辺野古新基地の埋め立て承認撤回の効力を国土交通相が一時停止したことを不服として、国を相手に取り消しを求めて福岡高裁に提訴
・25日 政府、辺野古新基地建設で土砂投入を再開
〈4月〉
・22日 立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の野党5党、戦争法を廃止する2法案を参院に共同提出
〈5月〉
・3日 72回目の憲法記念日 日本会議が主導する「公開憲法フォーラム」で、安倍首相はビデオメッセージで「2年前、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと申し上げたが、今もその気持ちは変わらない」と表明
・9日 衆院憲法審査会、民放連の幹部はCM規制は「表現の自由」に抵触し、自主規制はできないと表明。立憲民主党の枝野代表は自主規制をしなければ国民投票法には欠陥がある。現行法の下での国民投票実施に反対を表明
・29日 立憲民主党など5野党・会派の党首会談、夏の参院選で全国に32ある1人区のうち30選挙区で野党統一候補を擁立することで合意(後日、残る2選挙区でも合意)
 「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)から13項目の要望を受け、各党首らが署名し、政策協定を結ぶ
〈6月〉
・26日 通常国会閉会
(中)
2019年12月10日号
■国民投票法改定案 5国会連続採決阻止 参院憲法審は実質審議なし
 自民党は、今国会で国民投票法改定案を速やかに成立させ、自衛隊明記などの改憲案を衆院憲法審に提示することを目指していた。
 野党は、「与野党の合意もなく、一方的な採決は絶対許さない」「CМ規制の改定案(国民民主党提案)も合わせて審議を行う」ことを要求し、会期末(12月9日)ぎりぎりまで徹底抗戦。自民党が採決を断念せざるを得ないところまで追いつめた。
 昨年6月の改定案提出以来、5国会連続で採決を阻止したことになる。参院の憲法審は、一度も実質審議が行われなかった。
 安倍首相が目指す総裁任期中の改憲への道のりは険しさを増す。
■戦争法違憲訴訟 東京地裁判決、安倍政権に忖度し司法の使命否定
 戦争法違憲訴訟は、全国22地裁に25件起こされ、各地の原告は眄人にのぼっている。
 4月の札幌地裁の判決に続いて東京地裁(11月7日)でも「言語道断」(原告弁護団声明)の判決があった。いずれも控訴中である。
 「安保法制違憲訴訟の会」によると残る各地もヤマ場を迎えており、「来年は判決の年になる」という(朝日)。大阪地裁では1月に判決が言い渡される予定。前橋地裁と横浜地裁での証人尋問では、元法制局長官の宮崎礼壹氏が「安保法は違憲」と証言した(同)。
 原告らは、集団的自衛権の行使を認めた戦争法は違憲であり、施行によって平和的生存権や幸福追求権(13条)などの人格権、憲法改正決定権が侵害されたと訴えた。
 地裁の判決は、「違憲の新安保法制法(戦争法)の制定・施行が不法行為であるとして国家賠償を求めた原告らの訴えを、新安保法制法の違憲性には何ら言及せずに、原告らが侵害されたと主張する権利・利益が国家賠償法上の保護利益にあたらない等という理由で棄却した」(原告弁護団声明)。
 判決は、平和的生存権について「個々の国民に対して平和的生存権という具体的権利はない」と指摘する。憲法前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。平和的生存権は主にここから導き出されている。「このような『平和』の捉え方は特異なものであって、平和的生存権の憲法規範としての意義を放棄したものといわざるを得ない」(同声明)。
 また、判決は、人格権についても訴えを退けた。戦争に巻き込まれるおそれがあるとの原告の訴えについて、「わが国が他国から武力行使の対象とされているものとは認められ」ないとした上で、原告らの人格権の侵害がないと判断した。
 弁護団声明は、「今回の判決は、司法の使命の否定であると同時に、憲法の理念を根底から否定し、戦争へと舵を切ろうとする国策による憲法の破壊・蹂躙に、司法が積極的に手を貸すものといわざるを得ない」と、断じている。
(中)
2019年11月26日号
■多くの国民は性急な改憲論議を望んでいない NHK世論調査
 安倍・自民党は、21年9月までの総裁任期中の改憲実現を目指して憲法審査会における議論の推進に躍起になっている。
 ところが、NHKが実施した(11月8〜10日)世論調査によると多くの国民が性急な改憲論議を望んでいないことが明らかになった。国会で議論を早く進めるべきかどうかの問いに「早く進めるべき」の回答は33%。逆に「早く進める必要はない」は32%と拮抗しているが、「議論をする必要はない」の22%と合わせると54%が改憲論議の推進・必要性を認めていない。
 日本世論調査会の調査では、国会で改憲論議を「急ぐ必要はない」は69%と、7割に近い(「東京」10月13日付)。ちなみに9条の改憲が「必要ない」との回答は56%にのぼっている。
 国民が、国会における改憲論議も、9条などの改憲も望んでいないのは明白だ。
■自民党 改憲集会を全国会議員に指示 報告義務付け引き締め図る
 自民党は、全国各地で憲法集会を開催し、改憲の世論を喚起し、改憲機運の盛り上げを狙う。
 党憲法改正推進本部は10月25日付で、全国会議員に「地元選挙区で憲法改正論議の必要性を訴える集会を開くよう指示した」(日経)。
 30〜40人の小規模な集会をきめ細かく開くよう求めている。集会開催後1週間以内に、党本部に向けた報告書の提出を義務付けている(同)。
 自民党は、今国会で国民投票法改正案を速やかに成立させ、自衛隊明記など改憲4項目を憲法審に提示することを目指している。
 衆院憲法審は、改正案の採決を求める与党と、テレビCМ規制の議論先行を求める野党の抵抗で停滞を続けていたが11月7日、約2年ぶりに欧州視察の報告に絞り自由討議を行った。引き続き14日にも欧州視察に関する自由討議を行った。
 立憲民主党は、愛知県の国際芸術祭の補助金不交付など表現の自由に関する問題とCМ規制を合わせて議論すべきであると主張しており、今後の審議日程は見通しが立ってない(11月13日現在)。衆院憲法審の定例日は木曜日。国会会期末の12月9日までに定例日は数回しかない。
 野党は、国民の多数が改憲を望んでいないもとで、改憲原案の発議を任務とする憲法審を動かさないよう頑張れ。
■中東派兵 憲法学者123人が反対声明
安倍政権の中東方面への自衛隊派兵の検討について、憲法学者123人が反対声明を発表した。
 声明は、戦争法制の下で、@米軍に攻撃があった場合に日本の集団的自衛権の行使につながる、A米軍の武器等防護など自衛隊が米国の戦争と一体化する、B自衛隊がホルムズ海峡で機雷掃海を行えば、攻撃を誘発しかねない―と指摘。9条の平和主義に反し、自衛隊員の生命・身体をいたずらに危険にさらすと述べ、反対を強く訴えた。
(中)
2019年11月12日号
■「党一丸」 自民、世論喚起へ全国で改憲集会
 安倍首相(総裁)は9月に内閣改造と自民党役員人事を行ったが、記者会見で新4役は、「党一丸となって憲法改正を動かす」と口をそろえた。
 臨時国会の衆参の代表質問や予算委員会の基本質疑に立った自民党議員は口をそろえて改憲を要求し、強調した。これに応えるかのように安倍首相はとくとくと持論を展開。まさに、党一丸になった改憲の推進である。
 憲法改正推進本部は10月11日、全体会合を開き、全国各地で憲法集会の開催を進めるため、「遊説・組織委員会」の新設を決めた。改憲をテーマとした地方政調会と合わせ、全国各地で改憲の世論を喚起し、機運を盛り上げる狙いだ。
 二階幹事長が会長を務める和歌山県連は、先陣を切って「憲法を考える県民集会」を開催。安倍首相はビデオメッセージを寄せ、「現行憲法制定から70年が経過し、時代にそぐわない部分は改正すべきだ」(時事)と訴えた。安倍氏は、かねてから「最も時代にそぐわない条文は9条だ」と主張し、9条を目の敵にしてきた。
 毎日新聞は「会場には『自衛隊の明記、憲法改正』と書いたのぼり旗が並び、支援者ら約1600人が参加」と報じている。二階氏はこれまで、表立った形で改憲に絡む姿勢は示さなかったが、あいさつで「今後このような集会が全国で行われていくはずだ」(同)と強調。
 自民党は和歌山集会を手始めに幹部らが積極的に全国各地に出向き遊説・集会などを展開する。下村選対委員長や稲田幹事長代行は各県連主催の会合などで改憲に関する講演を重ねている。
 自民党政調会は10月28日、改憲をテーマとした地方政調会をさいたま市で開いた。岸田政調会長は「国会が議論すらしないのであれば、国民が意思表示する場を損なうことになりかねない」(日経)と述べ、「憲法が前提とする時代背景は大きく変化した。令和の時代の憲法のあり方を考えてもらう契機にしたい」(同)と強調した。衆院憲法審査会の与党筆頭幹事を務める新藤政調会長代理が改憲4項目を説明。地方政調会は11月に広島県、12月には福島県で開く予定だ。
 こうした安倍首相や自民党の改憲への動きは極めて危険である。多くの国民は9条の改憲を望んでいない。「安倍改憲ノー」の世論と運動を盛り上げることが急務である。
■辺野古新基地訴訟 沖縄県が上告
名護市辺野古の新基地建設をめぐり、「沖縄県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決を『違法な国の関与』として裁決の取り消しを求めた訴訟で、訴えを却下した福岡高裁那覇支部の判決を不服とし」(沖縄タイムス)、沖縄県は10月30日、最高裁に上告した。
 国民(私人)の権利・利益を救済するために行政不服審査法がある。県は、行政不服審査制度を利用できないはずの沖縄防衛局が、私人になりすまして制度を利用したことは違法だと訴えたが、高裁は県の訴えを却下していた。
(中)
2019年10月22日号
■安倍首相 任期中改憲に異様なこだわり
 憲法が制定されて最初の国会から200回目となる国会が開かれている。その国会の所信表明演説で、首相は「令和の時代の新しい国創りを、皆さん、共に進めていこうではないか」「その道しるべは、憲法である。令和の時代に、日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会である。私たち国会議員が200回に及ぶその歴史の上に、しっかりと議論していく。皆さん、国民への責任を果たそうではないか」と、与野党議員に改憲論議を呼びかけた。憲法尊重擁護義務や三権分立の原則を踏みにじり、侵略戦争の反省のうえに立った憲法の精神に反するものである。
 首相の自民党総裁任期満了まで2年を切った。 悲願とする9条改憲の実現にとって、首相の当面する課題は、今国会で国民投票法改正案を速やかに成立させ、自衛隊明記など改憲4項目を憲法審に提示することである。改憲原案の議論や改憲発議、国民投票の手続きを考えれば、残り任期から逆算して今国会がタイムリミットとなる。
 代表質問で首相は「参院選や最近の世論調査で示された国民の声は、憲法改正の議論を行うべきだというものだ」、だから「野党もそれぞれの(改憲)案を持ち寄り、活発な議論を行うべきだ」(時事)と繰り返し答弁している。任期中改憲に躍起になっている焦りだ。勝手に改憲の期限を切っているのは首相。両院の総議員の3分の2以上が発議するのであって、首相に発議する権限はない。
 参院選の結果が改憲議論を進めよというのが国民の声だというのはとんでもない話だ。重要なことは、改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2を割ったことである。「性急な改憲はヤメロ」というのが民意である。
 また、首相は野党に「対案を出せ」と挑発している。「憲法を改正することについて説得的な理由を示せない安倍首相に『対案』など必要ない。むしろ、『対案』を出せという恫喝的な議論の仕方に対して、浮足立って『対案』を出そうとする方が問題である」(早稲田大学 水島朝穂氏のホームページ)。
 変える必要がないと言っているものにとって対案などあろうはずがない。現行憲法こそが、対案である。いま、憲法に密接にかかわる問題が噴出している。憲法審は、改憲の議論ではなく、憲法をいかに守り、生かすかこそを議論すべきだ。
■沖縄に新型中距離ミサイル配備計画
 琉球新報は「中距離核戦力(INF)廃棄条約が8月2日に破棄されたことで、条約が製造を禁じていた中距離弾道ミサイルの新型基(核弾頭積載可能)を、米国が今後2年以内に沖縄はじめ北海道を含む日本本土に大量配備する計画があることが2日までに分かった」と報じた。
 また、同紙は「配備されれば基地機能がいっそう強化され、核戦争に巻き込まれる恐れが高まり、沖縄の基地負担が飛躍的に増す」と強調している。
(中)
2019年10月08日号
■改憲論議加速 改憲推進本部長に細田氏 衆院憲法審査会長は佐藤氏
  自民党は9月24日、総務会を開き党憲法改正推進本部長に細田前本部長を充てる人事を正式決定した。衆院憲法審査会長には佐藤元国対委員長。
 安倍首相にとって9条改憲実現に向けた当面の課題は、通常国会で改憲論議がまったく進まなかった衆参の憲法審査会での審議を加速し、推し進めることである。
 再登板の細田氏は昨年、9条への自衛隊明記など安倍首相の意向に沿って改憲4項目を取りまとめている。佐藤氏は、官邸に直結し、国対委員長として2015年の戦争法の強行採決を指揮した張本人である。
■戦争法強行から4年 自衛隊の活動範囲拡大 「いずも」攻撃型空母へ
  「多くの若者らが連日、国会周辺で抗議の声を上げていた。国会内でも怒号が飛び交う中、自民、公明両党などが『数の力』で押し切った。直前の世論調査で6割超が成立に反対していたにもかかわらず、である」(9月24日付・神戸新聞社説)。
 2015年9月19日、自民、公明などが集団的自衛権などの行使を認めた戦争法の成立を強行してから4年が過ぎた。
 戦争法の本質は、自衛隊の武力行使を認め、武力で他国を防衛する集団的自衛権の行使を可能にし、戦争法と新ガイドラインによって、地球の裏側であっても米軍支援を可能にすることである。
  4年の間にいくつかの分野で具体化が進んでいる。「重要影響事態法」を踏まえた初の日米軍事訓練(16年)や海外での武器使用要件を拡大し、「駆け付け警護」の新任務を付与した南スーダンPKO派兵(16年)、米艦や米軍機を「防護」する「武器等防護」の実施(17年2件、18年16件)、また戦争法の新任務である「国際連携平和安全活動」を初適用してイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団(МFO)」への派遣(19年、МFOはPKOと異なり国連が統括しない米軍主導の多国籍軍)など、米軍とともに海外で戦争する国づくりが進んでいる。
 さらに、新防衛大綱(18年)に基づいて、F35Bステルス戦闘機搭載を可能にする「いずも」の改修費31億円を計上(2020年度概算要求)。歴代内閣が「憲法上許されない」としてきた「いずも」の攻撃型空母への転換である。
 立憲野党は戦争法廃止法案を2度(16年2月と今年4月)国会提出したが与党が審議に応じなかったため、審議されないまま廃案になった。いま開かれている臨時国会で、立憲野党は再提出を含め戦争法の問題点を改めて追及する構えだ。
 「安保法制違憲訴訟の会」では9月12日現在、全国の原告数7704名が計22地裁・25裁判を闘っている。東京で3つ、広島で2つの裁判が進行中。札幌地裁は原告側敗訴のため控訴している。また、「戦争法は憲法違反」の判決を求める署名活動にも取り組んでいる。 院内外の闘いを盛り上げ、安倍9条改憲阻止・戦争法廃止を一刻も早く 勝ちとる必要がある。
(中)
2019年9月24日号
■改憲シフト=再改造内閣  12閣僚が日本会議議連幹部 改憲阻止の運動と世論を高めよう
 安倍首相(総裁)は9月11日、内閣改造と自民党役員人事を行った。改憲発議を目指して側近を多数起用した内閣改造、党人事である。
 首相は改造後の記者会見で、「令和の時代の新しい日本を切り開いていく。その先にあるのは、自民党立党以来の悲願である憲法改正への挑戦だ。必ずや、成し遂げていく」(官邸HP)と任期中の改憲を強調した。
 再改造内閣では、首相を含め20人中12人を「日本会議国会議員懇談会」(日本会議議連)の幹部で固めた。
 また、党4役の人事では議連副会長の下村前憲法改正推進本部長は選対委員長に就任。参院幹事長には独自色の強い参院自民党への影響力の強化を狙って首相側近の世耕前経済産業相が就いた。
 新4役は記者会見で「党を挙げて憲法改正に向けて努力を重ねたい」と口をそろえた。10月に予定されている臨時国会が重要な闘いの場となる。改憲発議阻止の大衆運動と世論をさらに盛りあげていかなければならない。
■底抜けの軍事予算 大軍拡路線強行
  防衛省の2020年度概算要求は5兆3223億円と過去最大となった。本年度当初予算比1・2%増で、2012年12月の第2次安倍政権発足後の2013年度から8年連続の増額となり、大軍拡路線を突き進んでいる。米軍再編関係経費などは額を明示しない「事項要求」としているが、仮に本年度予算と同額を計上した場合5兆5000億円台になる。
 護衛艦「いずも」の空母への改修費31億円を計上。「いずも」に搭載する短距離離陸・垂直着陸できる米国製ステルス戦闘機F35Bの6機分の取得費846億円を盛り込んだ。
 「いずも」の空母化は、戦争法に基づき他国を攻撃する米軍のF35Bの着艦や洋上給油も可能になる。いよいよ日米軍事一体化が進む。
■結論ありき 辺野古軟弱地盤「技術検討会」
 辺野古新基地建設をめぐり、防衛省は埋め立て予定海域の大浦湾側に広がる軟弱地盤の改良工事について、地盤工学の専門家らでつくる「技術検討会」の初会合を開いた。
 検討会は大学教授ら8人で構成。委員長に清宮理早稲田大名誉教授を選んだ。防衛省は検討会の議論を踏まえ、地盤改良に入るために計画変更を沖縄県に申請する。
 沖縄タイムスは「8人のうち、清宮委員長を含む4人が国土交通省と防衛省にかかわりがある。2人が現職で、残りの2人が過去に勤務経験があった」と報じている。同紙は「委員らは利害関係者というべきではないか。客観的な提言や助言ができるか極めて疑問である」と指摘し、新基地建設を後押しする機関というほかないと断じている。
 検討会は、辺野古新基地に「お墨付き」を与えることがねらいだろうが、沖縄県は県民投票や県知事選挙などで何度も示された民意を尊重し、防衛省の「変更申請」を承認することはない。
(中)
2019年9月10日号
■改憲に執念燃やす安倍首相 野望を許さない国民の意思は明白
 安倍首相はG7サミット閉幕直後の記者会見で、9月に内閣改造・自民党役員人事を行うと明言した。「安定と挑戦の強力な布陣を敷く」(時事)と強調。「強力な布陣」とは、改憲論議加速のためのより強力な改憲シフトを敷こうということだ。
 一方、7月の参院選の結果、その後の世論調査で改憲反対の国民の意思は明白だ。秋の臨時国会で安倍内閣を退陣に追い込もう。
■イージス・アショア 秋田市と山口県萩市配備にこだわるわけ
  陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備をめぐり、防衛省は外部に委託して9月にも再調査を行い、結果が出るまで半年以上かかるとしている(8月24日・NHK)。
 防衛省は、秋田市と萩市の陸上自衛隊演習場をイージス配備の適地とした。ところが、データの誤りや二転三転する説明で、適地とする根拠が崩れた。秋田県では7月の参院選で配備反対を訴えた野党統一候補が勝利し、山口県でも町をあげての反対運動が続いている。再調査の上、地元をなんとか説得しようという魂胆が見え見えである。
 なぜ、配備先を2地点にこだわるのか。
 東京新聞の「私説・論説室」の記事を紹介しよう。論説委員の半田滋氏は、米国の保守系シンクタンク「戦略国際問題研究所」の「太平洋の盾・巨大なイージス艦としての日本」との論考を引用し、「米国防衛のため」と断じる。「日本のイージス・アショアは、米国が本土防衛のために高価なレーダーを構築する必要性を軽減する」「ハワイ、グアム、東海岸、その他の戦略的基地などの重要地域を弾道ミサイルなどから守るため、イージス・アショアを使うことができる」。
 半田氏は、「この論考からもイージス・アショアが米国防衛に貢献するのは間違いないだろう」と強調する。実際、防衛省がこだわる秋田市、萩市の陸自演習場は、北朝鮮からハワイやグアムに向かうミサイルの軌道上に位置していると言われる。
 6千億円もの巨額な税金を投じて導入する必要はない。
■空母「いずも」 米軍機が先行利用 海兵隊総司令官「目標は米軍使用」
 「事実上の空母に改修される海上自衛隊『いずも』型護衛艦をめぐり、日本側が3月、米軍首脳に対し、米軍機が先行利用する見通しを伝えていたことがわかった。航空自衛隊への戦闘機F35Bの配備に先立って空母化を進め、米軍との連携を強化する方針だ」(朝日)。
 また、米海兵隊トップのバーガー総司令官は8月21日、東京都内で記者会見し、「自衛隊の(F35B)のパイロットが米海軍の艦艇に着艦し、米海兵隊のパイロットが海自の艦艇に着艦する。これが目標だ」(同)と語り、米軍の使用の可能性を明言した。バーガー氏の発言は極めて重大だ。戦争法に基づいて自衛隊が米軍の戦争に参戦し、空母「いずも」が米軍のF35Bの出撃拠点になる危険性を裏付けるものだ。
(中)
2019年8月27日号
■ワイルドな安倍改憲 強行姿勢と焦りをあらわにした萩生田発言
 先の通常国会で衆参の憲法審査会の議論が進まなかったことに焦りをみせる自民党の萩生田幹事長代行は、参院選直後のネット番組で「憲法改正をするのは総理ではなく国会で、最終責任者は総理ではなく議長」と主張。衆院の大島議長について「立派な方だが、どちらかというと調整型。議長は野党に気を使うべき立場だが、気を使いながら(憲法審査会の)審査はやってもらうように促すのも議長の仕事だ」と指摘し、「今のメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長において憲法改正シフトを国会が行っていくのは極めて大事だ」(朝日)と述べた。とんでもない暴言だ。安倍改憲のために衆院議長まで意のままに動かすぞという恫喝にほかならない。野党からは「言語道断だ」と猛烈な批判、与党内からも強い異論・批判が続出した。
 改憲右翼団体「日本会議」の国会議員懇談会の政策審議会副会長を務める萩生田氏は、首相の「伝声管」とも言われる側近中の側近。4月にも、ネット番組で憲法審査会の運営を「新しい時代(令和)になったら少しワイルドな憲法審を自民党は進めないといけない」などと強調し、批判を浴びている。今後、「ワイルドな憲法審」は衆院議長まで手を出すことになる。萩生田氏の一連の発言は、首相の意向とは無関係ではない。
 参院選直後の記者会見で、首相は「改憲の議論をすべきという国民の審判は下った」と強弁した。しかしながら自民党は大きく議席を減らし、参議院での単独過半数を失い、かつ改憲勢力は3分の2の議席を下回った。民意を最もよく反映する比例代表の改憲勢力の絶対得票率(全有権者に占める比率)は27・5%だった。  参院選の結果は、民意が改憲を望むものでないことがはっきりした。参院選後の世論調査でも、「安倍政権下の改憲」反対が56%(共同通信).を占め、「安倍首相に一番力を入れて欲しい政策」で改憲が社会保障などに比べ喫緊の課題でないことがはっきりと示された。
 改憲勢力3分の2を失い、国民世論とも大きくかい離する安倍改憲路線は、早くも行き詰まりをみせている。改憲への強硬姿勢と焦りをあらわにする首相だが、9月前半に予定されている内閣改造・自民党役員人事でどんな改憲シフトを敷くのか?秋の臨時国会が重要な闘いの場となる。
■軍事予算 最大の5兆3千億円超を概算要求
 共同通信の報道によると「防衛省は2020年度予算の概算要求で、過去最大となる5兆3千億円超を計上する方針を固めた。宇宙やサイバー空間など新領域の強化、最新鋭ステルス戦闘機F35を含む米国製の防衛装備品(兵器)の調達などに充てる。北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射への対処策も盛り込む」。
 軍事費は2012年の第2次安倍内閣発足以降、7年連続で増額。今年度当初予算は5兆2574億円。安倍政権の下で軍事費が聖域とされ、ドンドン増え続けている。
(中)
2019年8月13日号
■アベ「勝利」宣言? 総裁任期中の改憲を明言
 参院選直後の記者会見で、安倍首相は「私たちは勝利を収めた。憲法改正について議論すべきという国民の審判は下った。令和の時代にふさわしい憲法改正案の策定に向かって、わが党は強いリーダーシップを発揮していく」(テレ朝・報道ステーション)と語り、改憲への執念をむき出し「私の使命として、残された(総裁の)任期の中で、憲法改正に挑んでいく」(朝日)と強調した(総裁任期は2021年9月まで。これまでの「20年の新憲法施行」目標を後ろ倒しさせた)。
 今回の参院選で重要なことは、改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2を割ったことである。この審判は、改憲の期限まで設け、突進している安倍さんに「あんまり急ぎはんな」というのが多くの国民の声であろう。3分の2割れこそが民意。安倍氏はこの声(民意)をきちんと受けとめるべきだ。
 また、この成果をもたらすうえで、市民と立憲野党の共闘が大きな役割を果たした。32の1人区の全てで統一候補を実現し、前回(16年)の11議席には及ばなかったが、イージス・アショアの配備が大争点となった秋田、辺野古新基地ノーの民意を改めて示した沖縄など10選挙区で大激戦を制して勝利。野党ばらばらで戦った13年の当選2議席から10議席に躍進した。
 自民党は「勝利」したと言えるのか?
 自民党は比例代表で240万票減らし、選挙区の絶対得票率(全有権者に占める比率)は18・9%にすぎず、第2次安倍内閣発足後に行われた参院選3回、衆院選2回で、2割を切ったのは今回が初めてである。比例代表の絶対得票率も第2次安倍内閣発足以降最低の16・7%に落ち込んだ。また、改選議席を10議席減らし、参議院での単独過半数を失った。どこから見ても「勝利」とは言えない。
 選挙における民意を最もよく反映する比例代表をみると自民、公明、維新の「改憲勢力」の絶対得票率は27・5%(前回31・6%、497万票減)で、「憲法改正について議論すべきという国民の審判が下った」などといえたものではない。公明党の山口代表も「(参院選の結果を)『憲法改正について議論をすべきだ』と受け取るのは強引だ」(日経)と指摘している。
 安倍氏の言う「勝利」は、与党が過半数の議席を確保したということにすぎず、選挙の結果は先に見たとおりである。とはいえ、結果がどうであれ、安倍氏の早期改憲発議を目指す考えに変わりはなく、引き続き改憲にむけての策動を強めてくる。
 早くも、3分の2を回復するために国民民主党に手をのばす。市民連合と5野党・会派が合意した「政策協定」の第1項で「安倍政権が進めようとしている憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす」ことがうたわれている。「政策協定」に沿って対応するのが筋である。
■国民は改憲を望んでいない 世論調査
 参院選直後に朝日、読売、共同通信の全国世論調査が公表された。
朝日は「安倍首相に一番力を入れて欲しい政策」は「年金などの社会保障」が38%で最も高く、「憲法改正」の3%が最も低かった(5択)。
 読売では「安倍内閣に、優先的に取り組んでほしい政策」を6項目から選択、「年金など社会保障」は41%で、「憲法改正」は3%だった。
 共同は「安倍内閣が、優先して取り組むべき課題(2つまで)」は9項目のうち「年金・医療・介護」は48・5%となり、「憲法改正」は最も低い6・9%だった。なお、安倍政権下の改憲に「反対」は56・0%で、「賛成」は32・2%だった。
(中)
2019年7月23日号
■軍事同盟は“血の同盟” 安倍9条改憲のネライは「集団的自衛権のフルな行使」 フジテレビ党首討論で本音
 安倍首相のかねてからの持論―「日米安保条約を堂々たる双務性にしていく」、「軍事同盟というのは“血の同盟”です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです」、「双務性を高めるということは、具体的には集団的自衛権の行使だと思います」(『この国を守る決意』2004年)。
 トランプ米大統領の、日米安保条約は「不公平な条約」との発言が物議をかもしているが、参院選真っ最中の7月7日、フジテレビの党首討論で安倍9条改憲の真の狙いが鮮明になった。
 共産党の志位委員長は安倍氏の著書『この国を守る決意』を示し、安倍氏が「完全な双務性」を目指していたことを指摘。「全世界に展開している米軍に事があった時に、米軍のために血を流してたたかう自衛隊にしていこうということになる。これは憲法を変える本当の目的だということがトランプ発言で浮き彫りになった」とただした。
 安倍氏は「憲法の制約があって完全な双務性にすることはできない。集団的自衛権のフルな(全面的な)行使はできないというのがいまの私の考え方であり、日本の立場である」と主張した。戦争法は、解釈改憲で集団的自衛権の行使を認めているが限定的な行使にとどまっている。
 志位氏は「憲法の制約があってフルの集団的自衛権が発動できない。発動するためには憲法を変えなければならない」(安倍首相に忖度したのか司会者によって安倍・志位氏の論戦はここで打ち切られた。フジテレビ・参院選2019)。
 憲法の制約があって「完全な双務性」「集団的自衛権のフルな行使はできない」―これらを可能にすることが9条改憲の理由であることを首相自ら認めたものである。前号の本欄で「くるくる変わる”アベ改憲“の理由」を掲載したが、首相がこれほどまで明確に改憲の目的を公の場で語ることはなかったことだ。
■安倍首相 CM規制の議論に応じる
 安倍首相は「憲法を議論する政党か、憲法を議論しない政党かを選ぶ選挙だ」と繰り返し主張してきた。しかし、これは争点にもならない巧妙なすり替えにほかならない。真の争点は、いうまでもなく9条を変えるのか否かであった。
 原稿の締め切りとの関係で、参院選の結果はわからない。ところが、安倍首相は早々と先の通常国会における憲法審査会での改憲論議が、立憲野党の抵抗で進まなかったことを意識してか、NHK番組で「(与党の国民投票法改正案の)採決が嫌であれば、採決しないで待って、CM規制を議論すればいい」と述べ、野党側が求めるCM規制の議論に応じる考えを示した(朝日)。
(中)
2019年7月02日号
■くるくる変わる“アベ改憲の理由” 6年半にわたる首相発言
 「9条は戦後日本の平和主義の根幹をなす。その重みを踏まえた熟慮の跡もなく、事実をねじ曲げる軽々しい改憲論は、いい加減に慎むべきだ」(2019年2月14日付朝日社説)。
 今年1月の衆院本会議で、安倍首相は「6割以上の自治体が、自衛官募集の実施を拒否している。残念と言わざるを得ない」「この状況に終止符を打つために自衛隊の存在を憲法に位置付けることが必要」と訴えた。
  6割以上が拒否というのは曲解。9割が防衛省の求める情報を提供しており、残りの1割も拒んだわけでなく、離島で募集適齢者が少ないなどの理由で、自衛隊側が要請しなかったという。
 安倍氏が再登板したのは12年末。以来、安倍氏は改憲のハードルを下げるために「最初に行うことは96条の改正だ」と記者会見や国会答弁で繰り返し発言した。しかし、「裏口入学」「姑息な手段」「立憲主義の破壊」など、世論の高まりで棚上げに追い込まれた。  「憲法学者の7割、8割の方々が(自衛隊を)違憲と言っている。その記述は教科書の中にもある。そういう状況を変えていくことは私たちの世代の責任だ」(17年5月9日参院予算委員会)、「近年の調査でも、自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は2割にとどまっている。多くの教科書に自衛隊の合憲性には議論がある旨の記述があり、その教科書で自衛隊員のお子さんたちも学んでいる」(19年1月30日衆院本会議)。合憲とする政府見解とともに違憲論を記述しているが、違憲と断定している教科書はない。またもや事実をねじ曲げる改憲論だ。
 「かわいそうだから改憲」?―首相は自衛隊の憲法への明記に絡んで、「自衛官が息子に『お父さん、憲法違反なの』と尋ねられ、息子は涙を浮かべていた」(毎日)などの話をよく持ち出し、情緒的に改憲を訴えている。 国会でも取り上げられ、「実話か」との野党質問に首相は「実話であり、防衛省から聞いた話だ」「資料を出せというのであれば資料を出す」(19年2月13日参院予算委員会)。
 当初は直接聞いた話と説明。後日、秘書官からのまた聞きだったと修正した。(東京)。 「今年に入って安倍首相が言い出した改憲の根拠は、事実を歪曲し、論理も破綻している。首相の改憲論の底の浅さを、改めて示したと言うほかない」(同、朝日社説)。
■資料 「市民連合」と5野党・会派の「政策協定」(抜粋)
 「政策協定」は、前回参院選より踏み込んだ内容になっており、立憲主義の立場を貫き、国政の根幹部分である憲法、沖縄、原発、消費税で足並みがそろった。これは大きな前進である。
 1 安倍政権が進めようとしている憲法「改定」とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす。
 2 安保法制、共謀罪法など安倍政権が成立させた立憲主義に反する諸法律を廃止する。
 4 沖縄県名護市辺野古における新基地建設を直ちに中止し、環境の回復を行う。さらに、普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進める。日米地位協定を改定し、沖縄の人権を守る。また、国の補助金を使った沖縄県下の自治体に対する操作、分断を止める。
 6 福島第一原発事故の検証や、実効性のある避難計画の策定、地元合意などのないままの原発再稼働を認めず、再生可能エネルギーを中心とした新しいエネルギー政策の確立と地域社会再生により、原発ゼロ実現を目指す。
 8 2019 年10月に予定されている消費税率引き上げを中止し、所得、資産、法人の各分野における総合的な税制の公平化を図る。
(中)
2019年6月25日号
■通常国会 国民世論と立憲野党の結束で自民党改憲案の提示阻止
 「(国民投票法改正案の今国会成立について)今の段階ではもう厳しい」「会期を延長しても(対立は)打開される状況でなく、憲法審のための延長は考えられない」(毎日)―6月26日の会期末まで3週間を切る中で、自民党の下村改憲推進本部長が記者団に語った弁である。
 今国会中に、継続審議になっている改憲手続法改定案(国民投票法)を1日も早く成立させ、憲法審に自民党の改憲4項目案を提示し、改憲論議の本格化を狙った自民党の野望は、改憲を望まない国民世論と改憲手続法をめぐって結束した野党の抵抗で崩れた。
 次は市民と野党の共闘で夏の参院選での勝利だ。
 衆院憲法審査会は、2017年11月を最後に今年の5月9日まで実質審議のない開店休業を続けてきた。5月16日の憲法審は(定例日は毎週木曜日)、幹事の選任のみで26秒で終了した。
 これ以降、6月13日まで4週続けて憲法審は開催されず、こう着状態に陥った。
 憲法審の攻防は、改憲手続法でも公選法並みの投票の利便性をはかる(駅や商業施設への共通投票所の設置など)与党の改定案と、資金力の多寡などでCМ量が賛否どちらかに偏らないよう改憲手続法のCМ規制の充実を求める野党とが激突したまま会期末を迎えた。秋の臨時国会へと攻防は続く。
 「重大な欠陥」がある改憲手続法は、第1次安倍内閣の下で07年5月、自公の度重なる暴挙によって成立した。議員立法でありながら参議院では18項目の付帯決議を採択。最低投票率の是非、公務員・教育者に対する規制の検討などがいまだ解決されていない。
 14年6月の一部改正の際にも衆・参憲法審査会で計27項目の付帯決議が採択されている。欠陥だらけの改憲手続法をそのままにして、与党の改定案を急いで成立させる理由はない。
■野党共闘VS自民党 対決軸鮮明に 参院選
 改憲の命運がかかった参議院選挙が公示される。自民党と市民連合・5野党の参院選公約が発表され、両陣営の対決軸が鮮明になった。改憲に関連する公約はつぎのとおり。
〈自民党〉
 国民のための憲法論議を丁寧に深めつつ、憲法改正原案の国会提案・発議を行い、国民投票を実施し、早期の憲法改正を目指します。
 ※「早期」の実現を明記。下村改憲推進本部長は「(2020年を)入れたいのはやまやまだ」と語っている(東京)。「早期」にの文言に20年新憲法施行が含まれていると見るべきだ。
〈野党共闘の「政策協定」〉
 安倍政権が進めようとしている憲法「改定」、とりわけ第9条「改定」に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす。
 ※市民連合と5野党が合意した「政策協定」は、憲法や沖縄など国政の根幹部分で足並みを揃え、前回の参院選より大きく前進した内容となった。32すべての1人区で統一候補も決まった。
(中)
2019年6月11日号
■安倍政権打倒へ 参院選1人区―30選挙区で統一候補 市民連合と13項目の「政策協定」
 立憲民主党など5野党・会派の党首が5月29日、国会内で会談。
 安倍政権打倒をめざし、夏の参院選で全国に32ある1人区のうち19選挙区で野党統一候補を擁立することで合意した。すでに合意している11選挙区とあわせ30選挙区となった。残る鹿児島、宮崎選挙区でも早期合意を目指す。
 「政策協定」については、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)から13項目の要望を受け、各党首らが署名した。市民連合と野党が政策協定を結ぶのは2016年の参院選、17年の衆院選に続き3度目。
 30選挙区の内訳は、立憲民主7、国民民主6(見込み1を含む)、共産3、無所属14となり、共産は20選挙区で候補を取り下げる。
 市民連合と5野党・会派が合意した「政策協定」では、安倍9条改憲・発議の阻止、安保法制など立憲主義に反する諸法律の廃止、辺野古新基地建設中止と普天間基地の早期返還を実現し、撤去を進める、いまの状況下の原発再稼働を認めず原発ゼロを目指す、消費税10%の中止と税制の公平化をはかる―ことなどが確認された。国政の根本問題で立憲野党が足並みをそろえたことは大きな前進である。
 市民連合の山口二郎法政大教授は会談の冒頭、「候補者の一本化や立憲野党の共通政策をまとめるのは、参院選挙のスタートラインに過ぎない。ここから野党と市民がともに力を合わせて戦っていきたい」と訴えた。立憲民主党の枝野代表は、「政策についての合意は大事なスタートラインだ。参院選を通じて、新しい政治を大きく一歩前へと進めていきたい」と決意を表明。共産党の志位委員長は、「2つの合意は、市民と野党の共闘で参院選挙をたたかう上での本当に重要なスタート台になり、画期的な合意になった。勝利につなげるために頑張りぬきたい」と、会談後の記者会見で決意を述べた。
■「早期改憲目指す」 自民参院選公約に明記
 参院選に向けて安倍首相と自民党が改憲の動きを強めている。
毎日新聞などによると自民党は、安倍首相が掲げる「2020年新憲法施行」を念頭に、夏の参院選公約に「早期の憲法改正を目指す」と明記する方向で調整を進めている。
 「初めての憲法改正を目指す」とした17年衆院選の公約よりさらに踏み込む。17年衆院選と同様に、公約の柱の一つとして重点項目に掲げる。
また、昨年3月にまとめた4項目の改憲条文案(自衛隊の明記・緊急事態条項の創設・教育の充実・参院選の「合区の解消」)を列記した。今国会での成立が見通せない国民投票法改正案についても「早期成立を目指す」と盛り込んだ。
 自民党は改憲に向け、衆院の小選挙区ごとに推進本部を設け、資料や大量のビラを発行し、世論の喚起に躍起だ。
(中)
2019年5月21日号
■首相 9条改憲への執念むき出し “来年施行変わらない” と明言
 安倍首相は72回目の憲法記念日となる5月3日、日本会議が主導する「公開憲法フォーラム」にビデオメッセージを寄せ、改元を「新たな時代のスタートライン」として改憲論議を促進し、首相自身が目標とする2020年の新憲法施行について「今もその気持ちに変わりはない」(NHK)と明言した。
 また、「憲法に自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打つため、先頭に立ち責任を果たす決意だ」(同)とも強調。改憲への執念をむき出しにした。
 首相は2年前の「公開憲法フォーラム」で、自衛隊明記の9条改憲と2020年の新憲法施行を提唱。これを受けて自民党は昨年3月に4項目の改憲条文案(自衛隊の明記、緊急事態条項の創設、教育の充実、参院選「合区」の解消)をまとめた。首相は憲法審での提示に再三意欲を示したが、立憲野党の抵抗と国民世論によって改憲4項目案は今日まで衆参の憲法審で1回も議論が行われていない。
 改憲集会に首相がビデオメッセージを寄せ、天皇の交代と改元にからめて改憲を訴えるなど、天皇の政治利用である。断じて許されない。
■改憲機運「高まっていない」72% 自衛隊明記「わからない」32%
 5月3日の憲法記念日を前に毎日、朝日新聞社は憲法に関する全国世論調査を行った。
 毎日では、安倍政権の下での改憲に「反対」が48%と、「賛成」31%を上回った。無党派層では「反対」が56%を占め、「賛成」は21%だった。
 安倍9条改憲案に対しては「反対」28%、「賛成」27%と拮抗するなか、最多は「わからない」の32%だった。3000万人署名など草の根運動に取り組んできたが9条改憲の危険性がまだまだ浸透しきれていない弱さが明らかになった。
 朝日では改憲機運がどの程度高まっているかについて尋ねているが、「あまり」と「まったく」を合わせた「高まっていない」は72%を占めた。安倍首相は2020年新憲法の施行をめざすが、国民の意識は高まっていないことが改めて明確になった。
 改憲については「反対」47%で「賛成」は38%だった。
 9条改憲に対しては「反対」64%が「賛成」28%を大きく上回った。ところが安倍9条改憲案については「反対」48%が、「賛成」42%を上回っているものの、「9条改憲」の賛否の差に比べ、その差が縮まっている。
■「憲法を守り…… 」と「憲法にのっとり……」
 天皇が交代した。新天皇の即位の「おことば」が、前の天皇の「おことば」と比較され、批判もされている。ここでは、鋭い指摘をしている「琉球新報」の社説(5月2日付号)を紹介したい。
 前天皇が1989年に即位した際には「皆さんとともに憲法を守り、これに従って責務を果たす」と述べていた。新天皇は「憲法にのっとり、象徴としての責務を果たす」と述べた。新天皇の「おことば」は閣議決定されたもの。なぜ、「守り」が「のっとり」に変わったのか?
 社説は「天皇には憲法尊重擁護の義務があり、憲法に対するスタンスは不変であるはずだ。政権の意向が加わり、ニュアンスを弱めたのであれば、遺憾と言うほかない」と指摘。ちなみに、2012年の自民党の改憲草案では、99条の「憲法尊重擁護義務」から「天皇又は摂政」が削除されている。
 「自らの政治的意図に沿う形で、天皇を利用しようともくろむ恐れがないとも限らない」、「政治利用の前例をつくると際限がなくなる」「かつて天皇の名の下に戦争に突入し、おびただしい数の命が失われたことを忘れてはならない」と警鐘を鳴らす。
(中)
2019年4月23日号
■戦争法施行3年 自衛隊、新任務次々に 加速する日米軍事一体化
 違憲の安保法制=戦争法は3月29日、施行から3年を迎えた。岩屋防衛相は同日の記者会見で、「3年間で日米同盟はより強固になり、抑止力は向上した」と安保法制の意義を強調した。
安倍・自公政権は憲法に真っ向から背く安保法制=戦争法を質問権も、採決権も奪い、暴力的なやり方で委員会採決を強行し、2015年9月19日未明の参院本会議で強行成立させた。
 戦争法の重大な問題は、自衛隊の武力行使を認め、武力で他国を防衛する集団的自衛権の行使を可能にしていることである。また、戦争法と新ガイドラインによって、地球の裏側であっても米軍支援を可能にしていることである。
3年間にわたる「戦争する国づくり」を整理し、改めて検証したい。
《日米軍事一体化加速》
 戦争法の一つである「重要影響事態法」を踏まえた初の日米共同統合演習を実施(2016年10月)。政府が「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と判断すれば、自衛隊が地球規模で米軍に対する後方支援活動(兵たん)を行うことができる。
 自衛隊が平時から米国の艦艇などを守る新任務「武器等防護」の実施は18年に16件に達し、16年のゼロ、17年の2件から急増し、日米の軍事一体化が加速している。
 “ヘリ空母”と呼ばれる「いずも」が房総半島の沖合で米海軍の補給艦を防護した(17年5月)。
 海上自衛隊は、米艦防護の任務中、米艦に対する偶発的な攻撃や妨害行為があれば、武器を使って反撃できる。集団的自衛権行使の3要件を満たさなくても武器使用が認められているために「集団的自衛権の抜け道」になっており、米軍の戦争に参戦する危険が高まる。
《戦争法で初の派兵》
 戦争法に基づき、海外での武器使用要件を拡大し、「駆け付け警護」(新任務)を付与した自衛隊を南スーダンPKOに派兵した(16年11月)。海外での武器使用の危険が高まったが、自衛隊の宿営地を挟んで戦闘が発生し、「PKO参加5原則」が崩壊したため、撤退を余儀なくされた(17年5月)。
《「いずも」、空母に改修》
 新防衛大綱(18年12月閣議決定)に基づく海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の「空母」への改修が日米軍事一体化を一層加速させる危険がある。政府は米国から短距離の滑走で離陸や垂直着陸が可能なステルス戦闘機F35Bを42機購入し、「いずも」への搭載を狙っている。同時に「いずも」から米軍F35Bの出撃も狙っている。政府はこれまで専守防衛のもと攻撃型兵器の保有を禁じており、大陸間弾道弾や長距離戦略爆撃機、攻撃型空母を例示してきた。「いずも」の攻撃型空母への改修は許されない。
《多国籍軍に派兵》
 新任務の実績づくりに前のめりな政府は、新任務「国際連携平和安全活動」を初適用し、エジプト・シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする「多国籍軍・監視団」(MFO)への派遣を決定した(19年4月)。MFOは、PKOと異なり国連が統括しない多国籍軍である。これは米軍主導の多国籍軍参加への布石である。現時点では派遣は司令部要員2人のみ。
 戦争法には、集団的自衛権の行使など、9条が禁じる海外での武力行使を可能にする仕掛けがさまざまに盛り込まれている。「国際連携平和安全活動」もその一つである。国連が統括しない活動に自衛隊を派兵し、治安活動と駆け付け警護などの活動を行う。武器使用基準を拡大し、任務遂行型の武器使用を認めている。「殺し・殺される」危険がさらに高まる。
(中)
2019年3月26日号
■与党 憲法審査会の早期開催狙う
 衆院憲法審査会の与党幹事らは、2019年度予算案の衆院通過を受け、憲法審の3月開始を申し合わせ、早期開催を狙っている。
 自民党は、改憲4項目の一つである9条への自衛隊明記よりも、「教育無償化・充実強化」の訴えに力を入れている。「わかりやすいテーマで国民の関心を高め、野党が国会での議論を拒めない雰囲気をつくる狙いもある」(読売)。
 下村・自民改憲本部長は地方の講演で「教育の充実」を訴え続けている。3月13日の衆院文部科学委員会では「教育無償化・充実強化」の改憲案を力説した。立憲野党の抵抗で憲法審査会の開催めどがたたないからといって憲法審無視の態度は許されない。焦りの表れであろう。
 一方、安倍首相は13日の参院本会議で、「国民のため命を賭して任務を遂行する自衛隊員の諸君の正当性を憲法上、明文化し、明確化することは国防の根幹に関わることだ」と強調。重ねて9条改憲への執念を示した。
■軟弱地盤改良に3年8ヵ月 防衛省が試算
 辺野古新基地建設に伴う軟弱地盤の改良工事に、3年8ヵ月かかると防衛省が試算していることが明らかになった。
 新聞報道によると日米両政府が合意した2022年度の辺野古基地の実現は難しく、2020年代半ば以降になるとみられている。政府計画では埋め立てに5年、滑走路の建設などに3年かかるが、地盤改良工事の期間が加わるほか、政府が設計変更の申請を行っても玉城知事は拒否するであろう。
 大規模な改良工事を要する大浦湾一帯の軟弱地盤は防衛省のボーリング調査で判明した。これまで軟弱層の深さは約70メートルとされていたが沖縄防衛局の追加調査によって、最も厚い軟弱な層は水深約90メートルにまで達していることが分かった。
 最深90メートルの軟弱地盤、技術的にも不可能とされる改良工事。政府は、沖縄県民投票で示された民意を踏まえ、ただちに工事を中止するべきだ。
■「兵器爆買い法案」 衆院可決 後年度に大きな「ツケ」
「兵器爆買い法案」と言われている防衛調達特別措置法改定案が3月12日、衆院本会議で可決された。自民、公明、維新の会などが賛成し、立憲民主、国民民主、社会民主は反対した。
 今回の改定で、3月に失効する特措法を2024年3月末まで5年間延長した。最新鋭ステルス戦闘機F35などの購入に備えた措置である。
 財政法は国による支払期間を原則5年以内と定めている。特措法は、高額兵器をまとめ買いするには適さないとして5年間から10年間に引き伸ばしたもの。
 後年度に「ツケ」を回すことは米国製兵器の購入費の増大につながる。「ツケ」が増大し、生活関連予算が圧迫されることによって、結局、国民に負担がはねかえってくることになる。
(中)
2019年3月12日号
■「基地建設強行は憲法の重要な原理を侵害、空洞化するもの」
(小見出しは、辺野古新基地建設の強行に反対する憲法学者131人の声明。本小欄2月12日付号)。
・投票資格者 115万3591人
・投票総数 60万5385票(投票率52・48%)
・反対 43万4273票(71・74%)
・賛成 11万4933票(18・99%)
・どちらでもない 5万2682票(8・70%)
・無効票 3497票(0・58%)
 2・24「沖縄県民投票」の結果である。反対票は昨年秋の知事選で玉城候補が獲得した得票数(39万6632票)を大きく上回り、県内41市町村のすべてで「反対」が「賛成」を大差で上回った。
 沖縄県民の揺るぎない民意は明白である。安倍政権は、沖縄県民の民意を重く受け止め、辺野古新基地建設の埋め立て工事を直ちに中止すべきである。
 沖縄の声(地元2紙)を聞いてみよう。
 琉球新報社説は(2月25日付号)は、「名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で、反対の民意が明確に示された」と指摘し、「2月24日は沖縄の歴史の中で特筆すべき日になった」と県民投票の結果を高く評価。その上で、「政府は、新基地建設工事を直ちに中止すべきだ」「米軍普天間飛行場は、県内移設を伴わない全面返還に方針を転換」 せよと強調。そして、「県民投票を機に、基地問題を自分の事として考える人が全国で増えたのなら、投票の意義はさらに高まる」と新基地建設問題を全国的なものにすることを訴えている。
 沖縄タイムス社説は(2月25日付号)、「辺野古埋め立てについて、県民投票で沖縄の民意が明確に示されたのは、今度が初めてである」「このことは安倍政権の強引な埋め立て政策が民意によって否定されたことを意味する」と主張。『軟弱地盤の改良工事に伴う工事の長期化』という点からも、県民投票で示された『明確な民意』という点からも、新基地建設計画は、もはや完全に破たんした」と強調し、政府に対して「直ちに工事を中止し、県と見直し協議に入る」ことを求めている。
 安倍政権が沖縄の民意を無視するのであれば、今度は4月と7月の政治決戦で本土側の回答を出す番だ。
■普天間基地の運用停止 政府は約束破る
 2013年12月に、仲井真元知事が辺野古埋め立てを承認する条件として、5年以内の普天間の運用停止を安倍首相と約束。沖縄県と政府は期限を19年2月末としていた。
 2月28日、その期限が切れた。「5年間では宜野湾市内の保育園、小学校へのヘリの部品落下など事故が相次いだ。安倍晋三首相は当時の仲井真弘多知事との約束を実現しておらず、危険性除去の遅れの責任が問われる」(沖縄タイムス)。
 ところが、政府は翁長前知事の埋め立て承認取り消しなどがあったためとして、「実現が難しくなった」と辺野古反対の県政に責任を転嫁している。無責任内閣も極まれりだ。
■陸自 国連が統括しない多国籍軍へ派遣
「政府は(2月)27日、国家安全保障会議(NSC)を首相官邸で開き、エジプトとイスラエルの国境地帯での停戦維持を監視する「シナイ半島多国籍軍・監視団(MFO)」に、4月にも陸上自衛隊員2人を司令部要員として派遣することを決めた」(時事)。戦争法で認められた「国際連携平和安全活動」(新任務)の初適用であり、国連が統括しない多国籍軍へ派遣することになる。
 MFOは1982年から展開している。
(中)
2019年2月26日号
■安倍首相 自衛官募集発言 改憲論の耐えがたい軽さ
 まず、少々長くなるが朝日の社説(2月14日付号) を紹介しておこう。「自衛官募集に自治体の協力が得られないから、憲法9条に自衛隊の明記が必要だ―。今年に入って安倍首相が言い出した改憲の根拠は、事実を歪曲し、論理も破綻している。首相の改憲論の底の浅さを、改めて示したと言うほかない」(冒頭部分)。
 首相は2月10日の自民党大会で、9条改憲に重ねて意欲を示したが、「(自衛隊の)新規隊員募集に対して都道府県(市区町村の事実誤認)の6割以上が協力を拒否している悲しい実態がある」「この状況を変えようではありませんか。憲法にしっかりと自衛隊を明記して、違憲論争に終止符を打とうではありませんか」(毎日)などと述べた。
 6割以上が協力を拒否しているというのは曲解である。実際には9割が防衛省の求める情報を提供している。残る1割も拒んだわけではなく、離島で募集適齢者が少ないなどの理由で、自衛隊側が要請しなかったという。
 首相は2月13日の衆院予算委員会で「住基台帳の膨大な情報を自衛隊員が手書きで写している。これも(協力に)含めるのは誤りだ」と答弁し、閲覧は「協力」に当たらないと主張した。
 朝日の社説は、最後に「9条は戦後日本の平和主義の根幹をなす。その重みを踏まえた熟慮の跡もなく、事実をねじ曲げる軽々しい改憲論は、いい加減に慎むべきだ」と警告している。
■辺野古軟弱地盤、最深90メートル 新基地建設は極めて困難
 琉球新報によると、辺野古新基地建設に伴う「大規模な改良工事を要する軟弱地盤が大浦湾一帯に存在する問題で、最も厚い軟弱な層は水深約90メートルにまで達していることが、分かった」。これまで軟弱層の深さは約70メートルとされていたが、沖縄防衛局が追加調査したところ、さらに20メートル深い層が見つかったという。
 政府は、地盤改良工事で「金属性パイプに砂を流し込んで地中に砂だけでできたくいを埋め込む方法で、大浦湾に砂ぐいを計7万6699本打ち込む工事を検討している」(同紙)。
 専門家の鎌尾彰司日本大学理工学部准教授(地盤工学)は「政府が計画する地盤改良工事について『水深90メートルまでの地盤改良工事は知る限り例がない。国内にある作業船では難しいのではないか』と指摘している」(同紙)。砂ぐいに使う砂量は東京ドーム約5杯分に相当する。地盤改良区域は、新基地建設の埋め立て区域の4割近くになる。
 玉城デニー知事は「まさにわれわれが(埋め立て承認)撤回の事由に挙げていた軟弱地盤の存在を、国が認めた。政府は即刻工事を中止して県と協議するべきだ」(同紙)と、工事中止を訴えており、政府が近く設計変更申請を行っても知事が承認するはずがない。
 2月24日、辺野古への移設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票の審判がくだされる。
(中)
2019年2月12日号
■安倍首相 施政方針演説で改憲への執念表明
 勤労統計の不正・偽装問題や辺野古新基地建設の強行など多くの課題が山積する通常国会の激しい論戦が展開されている。
 国会冒頭の施政方針演説で安倍首相は、「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待する」(官邸HP)と言明。「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り拓く。皆さん、共に、その責任を果たしていこうではありませんか」とも述べ、またしても衆参本会議の場で改憲論議の加速を呼びかけた。
 昨秋の臨時国会の所信表明演説では、各党に具体的な改憲案を持ち寄るよう呼びかけ、三権分立を蹂躙して事実上立法府に改憲の号令をかけるようなものだと問題になった。首相の強硬な改憲姿勢が国民世論と野党の強い反発を招き、自民党は改憲案提示の断念に追い込まれた。首相の改憲への執念に変わりはないが、臨時国会のように過剰に改憲で国会介入することは引っ込めたようだ。通常国会でも改憲発議を阻止しなければならない。
 夏の参院選が重大な決戦の場となる。野党5党・1会派の党首会談で「32の1人区全てで、候補者を1本化する」ことが合意された(1月28日)。市民と野党の共同で改憲勢力の3分の2議席を阻止しよう。
■多国籍軍へ陸自派遣 戦争法の初適用
 日経新聞によると政府は、「エジプト東部のシナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の活動を監視する『多国籍軍・監視団』(MFO)の司令部要員として陸上自衛隊員を派遣するための調査を始めると発表した」。
 実現すれば戦争法で認められた「国際連携平和安全活動」の初適用となり、国連が統括しない多国籍軍へ派遣することになる。国際連携平和安全活動は、戦争法の一環である国連平和維持活動(PKO)協力法で定めた新たな任務である。
 MFOは1979年にエジプトとイスラエルが結んだ平和条約を受けて1982年から展開している。米英など12ヵ国、約1700人が参加し停戦を監視している。
■辺野古新基地建設強行 憲法研究者131人が反対声明
 安倍政権は、昨年の沖縄県知事選挙で示された辺野古新基地建設反対の民意を切り捨て、昨年12月、辺野古沿岸部に土砂を投入し、続いて軟弱地盤があるために着工できていない大浦湾側で新たな護岸に着手した(1月28日)。今月24日の県民投票を前に工事を加速させることで県民の諦めを誘う狙いであろう。
 このような中、全国の憲法研究者131人(1月24日現在)が、反対声明を発表した。声明は、「基地建設強行は基本的人権の尊重、平和主義、民主主義、地方自治という、日本国憲法の重要な原理を侵害、空洞化するものである」と強調。基地建設を強行し続ければ「日本の立憲民主主義に大きな傷を残すことになる」と指摘し、ただちに辺野古埋め立てを中止するよう要求している。
(中)
2019年1月22日号
■野党と市民の力で9条改憲阻止・立憲勢力躍進の年に
 安倍・自民党は昨年の臨時国会で、9条改憲を含む4項目の改憲案を提示し、今年の通常国会での改憲発議、国民投票を目論んだが、野党の結束と安倍改憲反対の国民世論に阻まれて憲法審査会で実質的な議論を一度も行うことができなかった。提示は1月下旬予定の通常国会に先送りされた。
 一方で、安倍首相は臨時国会直後の記者会見で「2020年に新しい憲法を施行させたい気持ちは今も変わらない」と明言。6日放送のNHK「日曜討論」でも同趣旨の発言を繰り返しており、改憲への執念は変わらない。
 さらに首相は5日、地元(下関市)の会合で「ことしは新しい時代の幕開けとなる年でもあり、憲法改正を含め新たな国づくりに挑戦する1年にしていきたい」(NHK)と決意を表明している。
 安倍・自民党は、改憲発議を強行する姿勢を崩していない。「選挙イヤー」と言われる2019年は、最大の正念場を迎える。とりわけ、夏の参院選の結果はその後の政治状況に大きな影響を与える。なんとしても改憲勢力の議席を3分の2以下に追い込むことである。
 「3000万人署名」運動や前回の参院選、昨年の総選挙など野党共闘の貴重な経験を生かし、また、その基盤となる春の統一地方選挙で前進し、2019年を安倍改憲阻止の年にしよう。
■2018年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・5日 国民投票法改正案、憲法審で審議入り
・20日 安倍首相、記者会見で自民党改憲4項目案に関して「(各党間で)取りまとめを加速すべきだ」と発議に向けた議論の促進を呼びかける
〈8月〉
・8日 辺野古埋め立て承認撤回を前に、翁長雄志沖縄県知事が死去
・12日 安倍首相は、講演で「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と、秋の臨時国会に自民党改憲案を提出すると明言
・28日 2018年版「防衛白書」、閣議で了承
・31日 沖縄県、辺野古埋め立て承認撤回
〈9月〉
・3日 安倍首相は「自衛隊高級幹部合同」で、「全ての自衛隊員が強い誇りをもって任務を全うできる環境を整える。その責任を果たしていく」と力説
・20日 安倍首相、自民党総裁に3選
・30日 沖縄県知事選、翁長知事の遺志を継いだ玉城デニー候補が圧勝
〈10月〉
・2日 第4次安倍改造内閣発足
・17日 沖縄防衛局、石井国土交通相に対し「埋め立て撤回」の執行停止を申し立て
・24日 第97臨時国会開会
 安倍首相、衆参本会議で所信表明演説。改憲に関して「私たち国会議員の責任を、共に果たしていこう」と呼びかけ、三権分立を蹂躙し事実上、立法府に改憲の号令をかける重大発言
・30日 安倍首相、衆参代表質問で、首相が改憲を訴えるのは「憲法99条違反ではない」と答弁
 石井国土交通相、辺野古埋め立て承認撤回の執行停止を決めたと発表
〈11月〉
・1日 沖縄防衛局、辺野古基地建設工事再開
・29日 森衆院憲法審会長は、通常国会初めての審査会を職権で開催。野党は、与野党の合意がない強引な運営に抗議し欠席。実質的な審議は行われず
〈12月〉
・10日 安倍首相、記者会見で2020年新憲法施行について「今も気持ちは変わらない」と強調
・14日 政府、辺野古に土砂投入を強行
・18日 政府、「防衛大綱」と「中期防」を閣議決定
(中)
2018年12月25日号
■改憲案提示阻止 通常国会・参院選でさらに安倍政権を追い詰めよう
 臨時国会は、衆参の憲法審査会で実質的な審議が1度も行われないまま終わった。
 安倍・自民党政権は9条改定など4項目の改憲案を提示し、来年の通常国会での改憲発議、国民投票を目論んでいたが、野党の結束と安倍改憲反対の世論の力で改憲スケジュールを狂わせた。
 それでも首相は臨時国会が閉会した12月10日夜、「2020年に新しい憲法を施行させたいとの気持は今も変わらない」(共同)と述べた。改憲の旗は簡単におろさない。
 また、萩生田光一幹事長代行は12月9日のNHKの番組で、通常国会で憲法9条など「4項目(の党改憲案)を提案する」(日経)と明言。
 来年の通常国会、そして引き続く参院選が重要な戦いの場となる。安倍政権退陣の声をいよいよ大きくし、安倍首相の野望を打ち砕くチャンスだ。
■2018年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
・4日 安倍首相は年頭記者会見で、「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民に提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」と改憲への強い決意を表明
・12日 二階・自民党幹事長、年内をめどに改憲発議を目指す意向を示した
・22日 196通常国会開会
 安倍首相は施政方針演説で「各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待している」と改憲議論の加速化を促す
・24日 安倍首相、衆院本会議で、自衛隊の存在を憲法に明記しても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と明言した
〈2月〉
・7日 井上・公明党幹事長は記者会見で9条改憲に関して「丁寧に議論を進めるべきだ」と強調
・9日 自民党憲法改正推進本部(改憲本部)、9条改憲について議論
〈3月〉
・15日 自民党改憲本部は全体会合で、9条改憲で「2項維持・自衛隊明記」(執行部案)、「2項維持・自衛権明記」「2項削除・国防軍保持」などの条文案を提示。執行部案を念頭に一任取り付けを狙ったが、異論が続出し意見集約ができず
・22日 自民党改憲本部全体会合で異論が続出。執行部は議論を打ち切り、強引に細田本部長への一任を決定
・25日 自民党大会、9条改憲について、集団的自衛権を憲法上も認める「たたき台素案」を党務報告として提案
〈4月〉
・2日 小野寺防衛相、「ない」としていたイラクに派兵した陸自の日報が保管されていたと発表
〈5月〉
・25日 自民党は、「いずも」の「空母化」などを明記した新「防衛大綱」への提言案をまとめる
〈6月〉
・13日 米朝首脳会談
・27日 自民、公明、日本維新の会、希望の党の4党は国民投票法改正案を国会に提出    
(中)
2018年12月11日号
■野党結束 自民の改憲段取り狂わす 臨時国会
 「改憲シフト」で、改憲論議の加速を狙って臨時国会に臨んだ自民党。国民投票法改正案を呼び水に、改憲4項目を提示し、その先に、国会での改憲発議、国民投票を狙っていた。
 ところが、立憲野党の抵抗で衆院憲法審査会が同党の思惑通りに進まず、森会長は、会期末が迫る11月29日、今国会初めての審査会を職権で開催。審査会では新しい幹事の選任のみを行った。自民党の改憲案提示は来年の通常国会に先送り。
 立憲野党は、与野党の合意がない強引な運営に抗議し、欠席した。安倍・自民党を改憲策動断念に追い込もう。
 9条改憲に慎重な公明党の山口代表は講演で(11月26日)、「国民の理解が成熟しなければならないが、十分ではない。国民にとっての優先順位もかなり低くなっている」と指摘し、「来年は政治課題がめじろ押しだ。憲法改正について合意を熟成する政治的な余裕はなかなか見いだしがたいと述べ、来年、国会で改正を発議するのは難しいという認識を示した」(NHK)。
 また、斉藤幹事長は講演で、「党内に(9条改正の)必要はないという意見が強くあると述べ、9条改正について改めて慎重な姿勢を示した」(日経)。
 公明党は、戦争法で限定的集団的自衛権は認めたが、安倍9条改憲が全面的な集団的自衛権の行使につながることに警戒感を持っている。
■聖域化する軍事予算の流れを追う
 「安倍政権で初めて5兆円を突破し、増大し続ける防衛費。官邸主導で米国から高額兵器を次々と輸入、攻撃型ミサイルの導入計画も進める。聖域化する予算の流れを追い、専守防衛を逸脱するかのように、米軍との一体化を急激に進める政権の内実を報告する」  東京新聞は、11月13日付号から10回にわたり「税を追う 歯止めなき防衛費」を連載している。ここでは、その最終回「辺野古基地建設 県民抑え 際限なき予算」の要旨を紹介する(全記事は同新聞のHPで)。
 11月1日から海上工事が2カ月ぶりに再開。美(ちゅ)ら海(うみ)は再びフロートで仕切られた。
 新基地建設が本格化した2014年度以降、海上保安庁の警備に加え、民間の警備艇が24時間態勢で監視している。海上警備と陸上警備の予算は15〜17年度の3年間の総額は260億円に上る。「1日2000万円の警備費」。
 会計検査院が海上警備費を調べると、防衛局は「業務の特殊性」を口実に国の単価ではなく業者の見積もりをそのまま採用していたことが発覚。15〜16年度で計1億8800万円を過大発注していた。
 政府が当初、想定した総事業費は3500億円以上。巨額の税金を垂れ流しながら、今後いくらかかるのか、見通しさえ国民に明らかにしようとしない。(辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票は、来年2月24日に実施される)
(中)
2018年11月27日号
■下村暴言 野党の反発で改憲論議進まず
 先の第4次安倍改造内閣と自民党役員人事は、露骨な「改憲シフト」であった(前々号10月23日付)。安倍首相は、衆院憲法審査会の与党筆頭幹事に新藤義孝元総務相、党憲法改正推進本部長に下村博文氏と「腹心」2人を起用し、改憲論議の加速を狙っていた。
 ところが、衆参両院の憲法審査会は、改憲4項目の条文案の提示を目指す自民党と、安倍政権下の改憲に反対する野党が対立。衆院は週1回の定例日(木曜)であった11月8日の審査会は野党の抵抗で見送られた。これに対する下村氏の野党への暴言が飛び出した。
「率直に議論さえしないなら国会議員として職場放棄ではないか。高い歳費をもらっているにもかかわらず、職場を放棄していいのか」(毎日)
野党6会派の国対委員長と衆院憲法審幹事は13日、国会内で会談、「下村発言で信頼関係は崩れたので審議に応じられる状況ではない」(日経)との認識で一致。15日の憲法審も見送られた。改憲論議の加速を狙ってスタートした「改憲シフト」だったがとっぱなからつまずくことになった。
 自民党は、改憲手続法改正案を呼び水に憲法審を動かし、憲法9条など4項目の条文案を提示する段取りだったが、下村暴言によって、今のところ条文提示の見通しは立っていない(11月15日現在)。
 立憲民主党は、「議論に応じたとしても、国民投票を巡るテレビCM規制をじっくり検討する立場で、自民党に条文案提示の機会を与えないのが基本戦略だ」(東京)。
■自民党 全ての小選挙区支部に改憲推進本部 日本会議と連携も
 自民党は、全国の小選挙区支部(289)ごとに「憲法改正推進本部」を年内に設置するよう求めた。要請文は、全ての小選挙区に憲法改正推進本部を設置する目的を「研修会の開催や国民運動を推進するため」としている。
 また、「わが党の憲法改正案に共鳴する民間団体の要請に応え……国民投票に向けた世論喚起を推進する連立会議の設立に ご協力頂くよう」要請している。この民間団体とは、改憲・右翼団体「日本会議」のことであろう。改憲に向けた動きは急ピッチである。
 安倍首相の意向を忖度しすぎ、焦りのあまり、前述のような大失態を演じた下村氏は、小選挙区ごとの憲法改正推進本部づくりの「全国行脚」の第1弾として、北海道で講演。「自衛隊は国民の9割が認めており、合憲化させるべきだ」と改憲の必要性を訴え、「憲法はその国の理想を描くもの。当時の憲法は独立国家の憲法ではなかったと思う」と主張(朝日)。
 下村氏は講演後、国会の改憲論議について「安倍政権のもとでは議論したくないと思っている人が多い。自民党全体でしっかり対応しながら、『安倍色』を払拭していくことが必要だ」と語った(同)。今さら安倍カラーは隠しようがあるまい。そんな姑息な手は通用しない。
(中)
2018年11月13日号
■代表質問 憲法の本質論議逃げる安倍首相
 安倍首相の10月24日の所信表明演説に対し、枝野立憲民主党代表が首相の憲法認識をただしたが、答弁・見解の表明はなかった。
 枝野氏は、首相が「国の理想を語るものは憲法」と述べたことに関連して憲法の本質論議に挑んだ。「憲法の本質は、国民の生活を守るために、国家権力を縛ることにこそある」(立憲民主党HP、以下同じ)と首相の憲法認識を批判し、「総理、憲法とは何か、一から学び直してほしい」と切り込んだ。
 さらに、「あらゆる権力は『憲法によって制約、拘束される』という立憲主義を守り回復することが、近代国家なら当然の前提である」。よって、「憲法に関する議論は、立憲主義をより深化・徹底する観点から進めなければならない」と強調し、「憲法を改定することがあるとすれば、国民がその必要性を感じ、議論し、提案する。草の根からの民主主義のプロセスを踏まえて進められるべきであ」って、「縛られる側の中心にいる総理大臣が先頭に立って旗を振るのは論外だ」と断じた。
 問われていないことに自説をとうとうと述べる首相だが、枝野氏の批判に対して答弁・反論は一言もなかった。「憲法を一から学び直せ」と批判され、立憲主義を理解しない首相には憲法を語る資格などない。
■安倍首相 改憲へ常軌を逸した暴走 国会に対して改憲号令
 安倍首相は10月24日の衆参本会議で所信表明演説を行った。改憲について「憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ねていく」(官邸HP)と述べ、「私たち国会議員の責任を、共に、果たしていこう」と呼びかけ、三権分立を蹂躙して事実上、立法府に改憲の号令をかける重大発言をした。
 10月30日の衆参両院の代表質問で、立憲民主党の吉川参院議員と共産党の志位委員長が、国会に対して改憲の具体的な議論を呼びかけた所信表明演説をただした。
 首相は、99条違反について「99条は憲法改正について検討し、主張することを禁止する趣旨のものではない」(東京新聞)と強弁。また三権分立については「国会議員の中から指名された私(首相)が、国会に対して議論を呼び掛けることは禁じられておらず、三権分立の趣旨に反するものではない」(同)と主張した。
 首相の見解に対して、早稲田大学の水島朝穂教授は「99条は憲法の『最高法規』の章(第10章)にあり重い。改正手続きを定めた96条は国会にのみ発議権を委ねている。首相が国会に対し、過剰に改憲で介入することは96条、99条の趣旨に反する」(同)と指摘。 首相が改憲の執念をむき出しにしてきた。首相就任以来、秘密保護法や共謀罪法、戦争法など違憲立法を強行し、憲法を破壊。9条への自衛隊明記は憲法破壊の総仕上げだ。主戦場となる憲法審査会の幹事を首相側近で固めている。憲法審査会を動かしてはならない。
(中)
2018年10月23日号
■臨時国会 改憲発議に大きな関門 総力戦で安倍改憲を阻止しよう
 「昨年の総選挙において、自衛隊明記を含む4項目の公約を示し、力強い支持を得ることができた。そして、党内においては今回の総裁選挙で、次の国会に改正案を提出できるよう、党を挙げて取り組むべきであると主張し、勝利を得た。結果が出た以上は、議論を深めて、作業を加速させていく」「国会の第1党である自由民主党がリーダーシップをとって、次の国会での改正案提出を目指していく」(官邸HP)―。10月2日、自民党新執行部と改造内閣を発足させた直後の安倍首相の記者会見の発言だ。「自民単独でも改憲発議に向けて突っ走るぞ」という勢いである。
 多くのマスコミが「改憲シフト」と報じている。公明党所属の閣僚を除く、19人の閣僚中14人が改憲右翼団体「日本会議」の議連に加盟している。
 自民党の人事では、改憲の論議を含めた党の意思決定機関である総務会長には、加藤勝信氏を起用した(3月の党大会に報告された改憲4項目案は、総務会の議決を経ていない)。  党の改憲原案を取りまとめる憲法改正推進本部長には、穏健派とされる細田博之氏から、強引なやり方をためらわない腹心の下村博文氏に代えた。
 「常識が通用しない」と言われる安倍首相。自らの野望を成し遂げるために、改憲発議を強行するようなことがあれば、野党や国民世論を敵にまわすことになる。そこで、来年の統一自治体選挙や参院選に向けて、選対委員長の甘利明氏をはじめ、首相の盟友、側近を起用して選挙への対策も万全を期していると言われる。
 しかし、発議提出の前には大きな関門がある。
 まず第1は、自民党内がまとまっていないことである。改憲4項目案は党内の議論が集約できず、総務会の議決を見送っている。党内でも慎重な対応を求める意見がある。
 石破元幹事長は「党内にもいろんな考え方がある。きちんとした民主主義のプロセスで議論するべきだ」(時事)と、首相の姿勢をけん制した。大島衆院議長は「与野党で十分に議論し、幅広い合意形成を」(NHK)、小泉元首相は「自民党だけでできるわけない。与野党が協力してやらなきゃ」(時事)と。
 第2は、公明党が改憲原案づくりの事前協議を拒否していることである。内閣改造後の記者会見で、山口代表は「自民党が国会に具体案を出す前に協議して案を固めていく手法を考えていない。国会の憲法審査会で議論していくのが基本だ」(NHK)と述べ、自公の事前協議を重ねて否定した。また、党内には「来年の統一地方選挙や参議院選挙が控える中で、拙速に憲法改正論議を進めるべきではないという慎重論も根強く」(同)ある。  第3は、臨時国会では、通常国会で継続審議となっている国民投票法改正案の扱いがある。枝野立憲代表は、テレビCМ規制について「この話に決着をつけるだけでも、少なくとも来年の夏までかかる」(共同)と発言。徹底抗戦を宣言している。
 大きな関門を開くために10月5日、改憲4項目案の国会提出に意欲を燃やしてきた首相が、公明党との事前協議を断念し、「臨時国会では、改憲原案の『提出』でなく、同党の改憲案の『説明』を目標とする意向を示した」(東京)。マスコミでは「提出」から「説明」にトーンダウンしたと報じた。印象操作を得意とする首相一流の「隠す、誤魔化す、ウソをつく」という姑息な手口かもしれない。
 臨時国会は、9条改憲発議を巡る重大な決戦の場となる。多くの国民が安倍改憲に反対している。国民世論をバックに全力をあげよう。
(中)
2018年10月09日号
■許すな臨時国会提出 安倍・自民9条改憲案
 自民党総裁選で3選を果たした安倍首相は、悲願である任期中の改憲実現に本腰を入れる。
 「70年以上1度も実現してこなかった憲法改正に挑戦し、新しい国造りに挑む」(毎日)、 「憲法改正は総裁選の最大の争点だった。力強い支持を得たと考えている。結果が出た以上、党として改正案の国会提出に向け対応を加速する」(同)
総裁選直後の記者会見で表明した安倍首相の異常な決意(執念)である。
 安倍・自民党の9条改憲案は、9条の2を新設し、「前条(9条1項、2項)の規定は……必要な自衛の措置をとることを妨げず……そのための実力組織として…… 自衛隊を保持する」と明記するものであり、現行憲法9条2項を死文化し、自衛隊の海外派兵と集団的自衛権の合憲化を目論むものである。
 「3000万人署名」の運動と力をフルに発揮し、臨時国会に改憲案提出の暴走を止めよう。
■陸自、多国籍軍へ派兵検討 戦争法の新任務
 戦争法(安保法)の強行成立から3年が経った。朝日新聞は社説(9月19日付)で「安倍政権は自衛隊と米軍の一体化を急ピッチで進め、新任務の『実績』作りに前のめりである」と指摘し、「これ以上、既成事実を積み重ねるべきではない。安保法の見直しが急務だ」と提言している。 東京新聞も社説(同日付)で「安倍政権が成立後の3年間に進めたのは、安保法の既成事実化と自衛隊の活動領域の拡大、その裏付けとなる防衛費増額である」と主張している。
  政府はこの間、南スーダンPKO部隊への新任務「駆け付け警護」を付与、海自の護衛艦による米艦防護など戦争法の新任務の既成事実化を着々と進めてきた。今度は、新任務「国際連携平和安全活動」を初適用し、「エジプト・シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視活動をする『多国籍軍・監視団』(MFO)に、陸上自衛隊員の派遣を検討している」(東京)ことが判明した。年明け以降に司令部要員として陸自幹部数人を派兵するという。将来的に部隊の派兵も視野に入れている。
  戦争法には、集団的自衛権の行使など、9条が禁じる海外での武力行使を可能にする仕掛けがさまざまに盛り込まれている。「国際連携平和安全活動」もその1つである。国連が統括しない、PKOとは関係のない活動に自衛隊を派兵し、治安活動と駆け付け警護などの活動を行う。また、地域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護などを行う任務もある。さらに、武器使用基準を拡大し、「自己保存型」の武器使用だけでなく、「業務を妨害する行為を排除するための武器使用」(任務遂行型)を認めている。
 シナイ半島北東部では軍などを標的にしたイスラム過激派のテロが頻発している(毎日)。自衛隊をMFOに派兵し、治安活動などによって自衛隊員が「殺し殺される」戦闘を行うことになる危険は高い。多国籍軍への派兵は絶対許されない。
(中)
2018年09月25日号
■安倍首相、憲法99条土足で踏みにじる暴言 自衛隊高級幹部への訓示で“改憲決意”表明
 安倍首相は9月3日、防衛省で開かれた「自衛隊高級幹部会同」で訓示し、「時には心無い批判にさらされたこと(自衛隊違憲論のこと)もあったと思う。自衛隊の最高指揮官として、忸怩(じくじ)たる思いだ」と語り、「すべての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える。これは、今を生きる政治家の責任である。私はその責任をしっかり果たしていく決意だ」と力説した。
 訓示は「憲法改正」という言葉こそないが、かねてから首相は「自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」と繰り返し発言し、そのため、9条に自衛隊を明記する改憲を主張してきた。「環境を整える」とはそれ以外の何物でもない。
 憲法遵守を「服務の宣誓」で誓って任務に就き、政治的中立の自衛隊員に、安倍9条改憲を訓示するなど言語道断である。
 また、首相は訓示の冒頭で「自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣として、一言申し上げたい」と述べており、これまでのように首相と自民党総裁の使い分けは通用しない。憲法99条の「国務大臣と国会議員の憲法尊重義務」を土足で踏みにじる暴言であり、絶対に許されないことである。
 首相の宿願である9条に自衛隊を明記する改憲は、自衛隊を憲法上「合憲」とすることにとどまるのか。今年3月の自民党大会に報告された9条改憲案は、9条の2を新設し、その1項で「前条(現行憲法9条1項、2項)の規定は……必要な自衛の措置をとることを妨げず……そのための実力組織として……自衛隊を保持する」と明記するものであり、「自衛の措置」とは「自衛権」のこと。個別的自衛権だけでなく集団的自衛権も認めるものであった。憲法9条2項は死文化され、自衛隊の海外派兵と集団的自衛権の合憲化を目論むものであった。
 異常な首相の訓示は、9条を変え、他国を相手に「殺し殺される」(普通の)軍隊への道である。自衛隊員一人ひとりに覚悟を求める呼びかけなのだろうか?
■国民は改憲を望んでいない 朝日・毎日の世論調査
 前号の小欄で共同通信社と日本経済新聞の世論調査を紹介したが、このほど毎日新聞と朝日新聞が実施した世論調査でも改憲を急ぐ安倍首相の政治姿勢と国民世論が大きくかい離していることが明らかになった。
 毎日の調査によると、改憲案を秋の臨時国会に提出したいとする安倍首相の発言に、「賛成」は20%にとどまり、「反対」の38%が上回った。「わからない」も33%おり、国民の理解が広がっていないことが明らかになった。
 また、総裁選後の新総裁(首相)に期待する政策は、「景気対策」など9項目中、改憲は9番目だった。
 朝日の調査でも、改憲案を次の国会に提出することについて、「反対」49%が、「賛成」32%を上回った。自民支持層に限ると「賛成」53%、「反対」31%だったが、無党派層では、「反対」57%が「賛成」18%を大きく上回った。男女別では、男性の「賛成」40%、「反対」49%、女性では「賛成」25%、「反対」49%だった。
 また、総裁選で争点として一番議論してほしいテーマ(6択)で、安倍首相が意欲を燃やす「憲法改正」は最も低かった。
 多くの国民が改憲を望んでいないことは明らかである。
■首相訓示 新防衛大綱にも言及
 安倍首相は、自衛隊高級幹部への訓示で、年末に策定する新防衛大綱にも言及した。
 「今までの常識はもはや通用しない」と強調し、「これまでの延長線上ではなく、大局観ある、大胆な発想で考え抜いてほしい」と指示した。
(中)
2018年09月11日号
■北朝鮮「脅威」、米朝首脳会談後も変化なし ねらいは地上イージスの導入 防衛白書
 小野寺防衛相は8月28日の閣議で、2018年版「防衛白書」を報告し、了承された。
 北朝鮮の核・ミサイル開発について、米朝首脳会談後の現在においても「わが国の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっている」と指摘。そのうえで、白書は「弾道ミサイルの防衛能力の向上は喫緊の課題である」とし、地上から迎撃する「イージス・アショアを導入すれば、わが国を24時間・365日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できる」と、導入の必要性を強調している。
 また、白書は年末に予定される「防衛計画大綱」の見直しについて、「防衛力の『質』及び『量』を必要かつ十分に確保することが不可欠である」とし、「サイバー空間や宇宙空間など、新たな領域の活用が死活的に重要で、能力向上に本格的に取り組んで行く必要がある」との軍拡方針を示した。
 白書は北朝鮮の「脅威」をことさら強調し、米国から巨額で購入する「イージス・アショア」の導入を狙っているのではないか。
■改憲急ぐ安倍首相 国民世論と大きなかい離
 安倍首相は「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と、秋に予定される臨時国会に自民党の改憲案提出を明言している。総裁選に圧勝し、改憲論議を加速させる魂胆である。しかし、直近の報道機関の世論調査では、改憲を急ぐ安倍首相の姿勢が、国民世論とかい離している実態が明らかになった。
 共同通信社が8月25、26日に実施した世論調査によると、秋の臨時国会に改憲案を提出したいとする安倍首相の提案に「反対」が49・0%で、「賛成」の36・7%を12・3ポイント上回った。
 同趣旨の問いに日本経済新聞の世論調査(8月24〜26日実施)では、「反対」が73%で「賛成」の17%を大きく上回った。
 読売新聞(8月24〜26日実施)では、提出時期について「秋の臨時国会」が18%、「来年前半」が12%、「来年後半」が11%、「再来年以降」が14%、「改憲案を提出する必要はない」は31%だった。
 安倍自民党の9条改憲案について共同通信によると、「2項を維持して自衛隊明記」は40・0%、「2項を削除し自衛隊を戦力として位置付ける」は17・8%、「自衛隊を明記する改憲は不要」は30・9%だった。また、新総裁に期待する政策でも改憲は9項目中の8番目に過ぎず、多くの国民は改憲を望んでいない。
 安倍自民党総裁候補(首相)は先月末、同党第2派閥の麻生派から「国民投票を来年夏の参院選までに行うよう求める」提言を受け取り、「基本的に考え方は全く同じだ」(東京)と賛同し、「国民投票」にも期限を設けた。総裁選に圧勝すれば、来年中にも国民投票を実施したい魂胆であろう。
 報道機関の世論調査から安倍首相の拙速な改憲論議に強い抵抗感を見て取ることができる。国民世論を背に、安倍9条改憲阻止、安倍政権打倒の秋(とき)にしよう。
(中)
2018年08月28日号
■改憲のキバむき出し 安倍首相 臨時国会に改憲案提出を明言
 安倍首相は8月12日、地元の山口県下関市内で産経新聞社の路線に賛同する任意団体「『正論』懇話会」で講演し、「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」「自民党の憲法改正案を次の国会に提出できるよう取りまとめを加速すべきだ」(NHK)と主張し、秋に予定される臨時国会への改憲案提出を明言した。
   自民党憲法改正推進本部は、改憲4項目の議論を重ねてきたが9条改憲については、3月党大会直前になっても異論が続出したため議論を打ち切り、強引に細田推進本部長への一任を決めた。大会では二階幹事長は、党務報告で「『たたき台素案』を得ることができた」と報告。4項目の改憲案は議決機関の決定は得ていない。
 さらに首相は、総裁選挙に向けて石川県の国会・県会議員らと首相公邸で面会し、「何としても自分が首相の間にやり抜きたい」(産経)と語り、改憲意欲をむき出しにした。  また、自民党の細田憲法改正推進本部長も、先の通常国会で憲法論議が進まなかったことを念頭に、「秋の臨時国会での論議を促進する」と決意を表明している。
 これに対し、総裁選への立候補を表明している石破元幹事長は記者団に、党改憲案の国会提出について「まだ党議決定も何もしておらず、もう一度きちんと議論することが必要だ。党議決定のプロセスが必要だ」(NHK)と指摘。さらなる党内議論の必要性を強調し、9条改憲より参院合区の解消や緊急事態条項の新設を優先すべきだという考えを示した。9条2項を削除し、国防軍保持の改憲案が石破氏の持論である。
 現在、改憲勢力は衆参両院で国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持しているが、発議を19年夏の参院選よりも前にしたいのが安倍首相の本音であろう。
 いよいよ秋の臨時国会が焦点となる。そして、来年の通常国会から7月の参議員選挙へと、安倍改憲を阻む重要な局面を迎えることになる。
◇   ◇   ◇
■沖縄 8・11県民大会決議(抜粋)
 沖縄県民の命とくらし、沖縄の地方自治と日本の民主主義と平和を守るためこの不条理に対し全力で抗い続ける。以下、決議し、日米両政府に強く抗議し、要求する。
(1)ジュゴンやウミガメなどの生きていくための豊かな海草藻場や希少なサンゴ類の生息環境を破壊する土砂投入計画を直ちに撤回すること
(2)大浦湾側には活断層の疑いがあり、その付近の海底には、超軟弱地盤が存在する。辺野古新基地の立地条件は成り立っていない。建設計画を直ちに白紙撤回すること
(3)沖縄高専、久辺小・中学校、集落は、米国の安全基準である高さ制限に抵触している。児童生徒と住民の生命と財産を脅かす新基地建設を直ちに断念すること
(4)欠陥機オスプレイ配備を撤回し、米軍普天間基地を即時閉鎖・撤去すること
(5)欠陥機オスプレイの国内における飛行を直ちに全面禁止すること
(中)
2018年08月14日号
■通常国会の9条改憲発議阻止 「3000万人署名」の前進と6野党・会派が結束 次は秋の臨時国会が焦点
 「私たちは、今期の通常国会での『改憲発議』を阻むことに成功した。しかし、安倍自民党は、なお『年内発議』を断念していない」「この夏から秋にかけての私たちの行動が、まさに正念場を迎える。秋の臨時国会に再び署名の山を積み上げ、『3000万人署名』の力を示そう」(安倍9条改憲NО!全国市民アクションの7・22声明から抜粋)。
 国会が召集された1月22日、安倍首相は自民党の両院議員総会で「いよいよ実現する時を迎えている。責任を果たしていこう」と自民党議員にゲキを飛ばしたが、野党の抵抗で憲法審査会は、憲法論議の入り口に入ることもできなかった。
 そればかりか自民党は自衛隊明記などの改憲4項目について、今国会で目指した各党への提示さえできなかった。また、論議を前に進める呼び水にしようと狙った改憲手続き法改定案も継続審議を余儀なくされた。
 それでも、安倍首相は年内発議の執念を隠さない。事実上閉会した7月20日の記者会見で首相は、「自民党の憲法改正案を速やかに国会に提出できるよう取りまとめを加速すべきだ」(朝日)と改憲の執念をむき出しにした。
さらに自民党は9月総裁選後の臨時国会で、継続審議となっている改憲手続き法改定案を速やかに成立させ、自民党改憲案の議論に入ることを狙っている。
 立憲民主党などの野党は国民投票運動のテレビCMの規制強化などを訴えて抵抗する構えである。
 「全国市民アクション」の声明が訴えているように、秋の臨時国会が焦点となる。発議を阻止できれば、安倍自民党の改憲の野望は非常に実現困難になる。臨時国会に再び署名の山を積み上げ、「3000万人署名」の力を示す秋(とき)だ。
■北朝鮮 これまでにない脅威 防衛白書素案に
 防衛白書の素案が明らかになった。
 NHKによると、北朝鮮をめぐっては、日本を射程に収める弾道ミサイルの実戦配備の現状などを踏まえれば、「これまでにない重大かつ差し迫った脅威であることに変化はない」として、「イージス・アショア」の導入などを通じて、「弾道ミサイル攻撃への総合的な対処能力を強化していく」と強調している。
 しかし、いま朝鮮半島の情勢は、南北会談や米朝会談など平和へと舵が切られている。
■希望の党 自衛隊明記の9条改憲案決定
 希望の党は、このほど開いた党大会で、9条改憲案を決定し、発表した。
 9条改憲案は、現行の9条2項を全面削除し、自衛隊の保持を明記。3項に文民統制の条文を追加した。自衛隊は首相が「最高の指揮監督権」を持ち、国会が「統制する」と規定。
 参院では自公両党と日本維新の会を合わせても3分の2に1議席足りない。希望の党の参議院議員3人を加えれば3分の2を超える。
(中)
2018年07月24日号
■いま、重大な岐路に 「3000万署名」をやり抜き、改憲発議阻止へ
 「国民投票法案が審議入り 今国会での成立は見送りでも」、「自民あて外れ 野党反発、改憲協議入れず」、「改憲4項目 自民、今国会提示を断念 衆院憲法審、野党が反発」―7月5日の衆院憲法審査会を受けた朝日、毎日、東京新聞の見出しである。
 7月5日、衆院憲法審査会が開かれた。改憲手続き法(国民投票法)改定案を提出した自民、公明、日本維新の会、希望の党の4党を代表し、自民党の細田・憲法改正推進本部長が趣旨説明を行ったが、質疑はなく、わずか5分で終了した。野党の拒否で今後の日程も決まらなかった。
 改定案は、秋の臨時国会に先送りされ、安倍首相の年内改憲発議の野望に狂いが生じてきた。
 今国会における衆院憲法審は、新党・国民民主党の新幹事を選出した5月とこの日のわずか2回で、実質審議はゼロ。参院も森友・加計問題が国会の焦点になる前の2月に自由討議を1回行っただけである。
 立憲民主、国民民主両党は「カネの力」で投票結果に影響を与えかねないテレビCМの規制を要求している。
 自民党は、改憲手続き法の改定案を1日も早く成立させ、自衛隊明記など「改憲4項目」の論議を前に進める呼び水にしようと狙ったが野党の抵抗で憲法審の開催もままならず、この間、憲法審の幹事懇談会が与野党の合意がないまま会長職権で開かれるなど自民党はいら立ちを募らせている。
 秋の臨時国会が大きなヤマ場となる。「安倍9条改憲NО!全国市民アクション」は、3000万人署名達成を目指して「アピール」を発表した。
 アピールは、「年内発議の最大の関門であった通常国会では、私たちは発議を止めることができた。次の焦点は、今秋に予定される臨時国会。ここでも発議を阻止できれば、安倍自民党の改憲の野望は非常に実現困難になる」と述べ、「目標の3000万人を早期に達成すれば、安倍自民党の憲法改悪の野望にとどめを刺すことが可能になってきた」と強調し、奮闘を訴えている。
 署名の第4次集約は、9月30日。
■大軍拡鮮明に 軍事費0・8%から1%超に
 毎日新聞によると「政府は、2019年度から5年間の次期中期防衛力整備計画(中期防)で、防衛関係費(米軍再編関連経費を除く)の伸び率を現行の年0・8%から1%超に拡大する方針を固めた」という。
 安倍自民党政権は集団的自衛権の行使容認〜戦争法の成立強行〜大軍拡など「戦争する国」づくりを一段と強化している。
 次期中期防ではイージス・アショアだけでも2基で2千億円超、1発30億円超の迎撃用ミサイル「SMBブロック2A」、1機百数十億円のF35A(8機決定・数十機の追加)やF35Aより高額なF35Bの導入など、超高額な支出が見込まれている(毎日)。
 戦争法廃止、軍事大国化反対の世論と運動が必要である。 
(中)
2018年07月10日号
■改憲手続法 小手先の改定ではなく、抜本的な見直しを
  延長国会では改憲手続法(国民投票法)改正も焦点になっている。 今国会では憲法審査会の実質的な審議が一度も行われていない。自民党は、憲法審を少しでも動かし、自民党の改憲案を中心に改憲論議を進めたいところだったが、立憲民主党などが「憲法審査会でまず改憲手続法の改正を優先させるべきだ」としたため、自民はこれに応じざるを得なかった。
 自公両党が合意した国民投票法改正案は、2016年の公職選挙法の改正内容に沿って、国民投票法を改めるもの。駅や商業施設への共通投票所設置や投票の開始・終了時間の弾力化、遠洋航海中の洋上投票の対象者拡大など7項目にわたる。
 もともと改憲手続法は、第1次安倍内閣の下で2007年5月に自公両党によって強行採決されたもので、参議院の採決では、極めて異例な「3つの附則」と「18項目の付帯決議」がつけられるという「欠陥法」だった(同法は2010年5月施行)。
附則は、@投票年齢の見直しなど、A公務員の運動自由化のための措置、B重要問題についての一般的国民投票の検討であり、18の付帯決議は、最低投票率の導入の検討や教育者・公務員の地位利用の規定、テレビ・ラジオの有料意見広告問題など、重要な事項の再検討を要求したものだった。
 「欠陥法」は、第2次安倍政権下の2014年6月、自民、民主など与野党8党の賛成で、一部「改正」され成立した。しかし、根本的な欠陥(重要問題)は放置されたままだった。社民、共産は反対した。
 前述のとおり、与党の改正案は、 附則や付帯決議で指摘されている改憲手続法の根本的な欠陥について回避し、枝葉末節の部分だけを取り上げ、審議が停滞している憲法審再開の呼び水にしたい思惑が見え見えである。
 例えば、国民投票をめぐるテレビ広告の費用に上限が設けられていないために(CMの規制がない)、資金力のある団体の主張が投票結果に影響を与えかねないことなど、「カネの力」で国民投票がゆがめられてしまう恐れもなしとはしない。2015年の大阪都構想住民投票で、「推進派は約1カ月で数億円をつぎ込み、橋下氏のテレビCMを精力的に放送。冷静な議論より資金力がものをいう懸念が広く共有された」(6月22日付・毎日社説)。
 憲法審は、小手先の法改正でごまかすべきではない。与党が改憲手続法の抜本的な再検討に反対するわけは、安倍首相が企てる改憲スケジュールが大幅に狂いつつあるからであろう。
 改憲手続法の抜本的な見直しなしには、国民投票がゆがめられてしまう。国民投票運動の公平・公正を保障する抜本的な見直しを強く求めていこう。
自民、公明、日本維新の会、希望の党の4党は6月27日、国民投票法改正案を衆院に提出し、今国会での成立を目指す。立憲民主と国民民主は与党の共同提出の呼びかけに応じなかった。共産、社民はもともと反対。
(中)
2018年06月26日号
■「専守防衛」の原則投げ捨て、「軍事大国」へ 自民・防衛大綱提言
 自民党は、政府が年末に策定する「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(中期防)への提言を安倍首相に申し入れた(提言の内容は前号の小欄参照)。
 提言は、現在の安全保障環境を「戦後最大の危機的情勢」と位置づけ、これまでGDP比1%以内を目安としてきた軍事費を、NATO(北太平洋条約機構)が2%の達成を目標にしていることを「参考」に一層の拡大を求めている。
 さらに提言が、海上自衛隊最大の「いずも」の改修を念頭に「多用途運用母艦」(攻撃型空母)とその搭載機としてF35B最新鋭ステルス戦闘機の導入を盛り込んでいることも重大である。また、敵基地攻撃能力の必要性を訴え、巡航ミサイルの保有検討の促進を求めている。
 他国への軍事攻撃を可能とする自民党の提言が 憲法に違反するのは明白であり、戦後の防衛政策の基本を転換する画策に他ならない。情勢の流れに逆行するものだ(下記「防衛の基本政策」参照)。
 安倍政権復帰後初めての13年度予算から軍事費は6年連続増額され、現在5兆円を突破している。NATOなみのGDP比2%にすれば10兆円超になる。軍事大国化への道は到底認めるわけにはいかない。
 軍事費を聖域として戦争に突き進んだ「いつか来た道」を歩むことを許してはならない。
《参考―防衛の基本政策》
〈専守防衛〉
 専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。
〈軍事大国とならない〉
 軍事大国という概念の明確な定義はないが、わが国が他国に脅威を与えるような軍事大国とならないということは、わが国は自衛のための必要最小限を超えて、他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しないということである。(いずれも2017年版防衛白書から)
■9条改憲阻む世論大きく 全国市民アクション1350万人分国会提出
 安倍9条改憲NО!全国市民アクションは6月7日、4月末までに集約された「安倍9条改憲NО!憲法を生かす全国統一署名」の第1次提出集会を衆院議員会館で開催した。
 会場には段ボール箱260個が山積みされ、当日に各地、各団体から持ち込まれた署名用紙の束も加わった(市民アクションHP)。野党4党・2会派の代表に署名を手渡し、「9条変えるな」「3000万人署名を1日も早く達成しよう」とコールした。
 5月以降の1カ月間にも各地で署名が増え続け、1500万人を超えたと推測されており、通常国会に提出できなかった分は、秋の臨時国会に提出することになっている。
 事務局では今後も署名活動を継続し、署名用紙を逐次、全国市民アクションに送付するよう呼びかけている。
(中)
2018年06月12日号
■衆院憲法審査会 与野党綱引き 実質審議入り見通せず
 衆院憲法審の与野党筆頭幹事が5月29日、国民投票法改正案の取り扱いをめぐって協議した。自民党は「審査会を来月7日に開き、改正案の趣旨説明と質疑を行うことを提案した」(時事)が、立憲民主党は「他の野党の手続きの遅れを理由に困難との認識を示した」(同)。
 与党は、駅や商業施設への共通投票所設置や遠洋航海中の洋上投票の対象者拡大など8項目の改正案をまとめている。
 立憲党は、国民投票をめぐるテレビ広告の費用に上限が設けられておらず、資金力のある団体の主張が結果に影響を与えかねないとしてCMの規制など踏み込んだ改正を求めている。与党は拒否。
 与野党の調整が長引けば、今国会中の憲法審で自民党が3月の党大会でまとめた改憲4項目の審議に入るのは困難になる。
 衆・参憲法審のHPは「開会予定の審査会はありません」(5月31日現在)と表示している。
■防衛大綱 自民提言案 空母も、巡航ミサイルも、F35Bも持つ 大軍拡すすめ、「専守防衛」の原則投げ捨て
 「未曽有の財政難をよそに防衛費を聖域化し、専守防衛の原則から逸脱する軍拡路線であり、到底認められない」―5月30日付・朝日新聞社説の書き出しである。
 自民党の安全保障調査会と国防部会は先月25日、合同会議を開き、政府が年末決定する予定の新らたな「防衛計画の大綱」と中期防衛力整備計画(中期防)に反映する提言案をまとめた。
 歴代政権は「自衛のための必要最小限度」を超える攻撃型兵器の保有を禁じてきたが、その具体的な例の1つが攻撃型空母であった。提言は「空母」の明記を見送り、「多用途運用母艦」に改め、海上自衛隊最大の艦船「いずも」を念頭に「既存艦艇の改修を含めた導入の検討を進め、早期実現を図る」とした。
 同鑑に搭載するF35B最新鋭ステルス戦闘機の取得を盛り込んだ。F35Bは、短距離の滑走で離陸や垂直着陸ができる。対地攻撃を行うF35Bの運用は、「いずも」を違憲の攻撃型空母に変ぼうさせるものである。
 また、提言は、敵基地攻撃能力の必要性を強調し、「巡航ミサイルなどの保有について検討を促進」と明記している。さらに、「弾道ミサイルのほか、敵の航空機や無人機、巡航ミサイルなどに総合的に対処する統合防空ミサイル防衛(IAMG)の体制構築」も打ち出した。
 現在の安全保障環境を「戦後最大の危機的情勢」とし、これまで防衛費をGDP比で1%以内を目安としてきたが、提言は1%の突破を求めた。5兆円台に膨らんだ防衛費を、北大西洋条約機構(NATO)なみの2%を「参考」として例示している。10兆円規模に倍増しろというもの。
 戦争法の成立を強行した自民党。5年ぶりに見直す「防衛大綱」はキバをむきだしてきた。専守防衛の原則をこともなげに投げ捨て、大軍拡路線を推し進め、軍事大国への道を突き進む。
(中)
2018年05月29日号
■いらだつ自民党 憲法審査会をめぐる攻防
 自民党の高村副総裁は、記者団に「審査会が動いていないことは困ったことだと思う」「今年中の発議を諦めていないが、できないのであれば、来年のできるだけ早い時期にと考えている」(NHK)と述べ、立憲など野党の抵抗で、改憲論議がままならないことへのいらだちを見せた。
 安倍首相は憲法記念日の5月3日、改憲右翼団体の日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などが開いた改憲集会にメッセージを出し、「自衛隊違憲論が存在する最大の原因は、憲法にわが国の防衛に関する規定が全く存在しないことにある」(朝日)と持論を繰り返した。
 多くの国民は、メディアの世論調査でも明らかなように安倍政権下の改憲に反対している。9条への自衛隊明記が、3原則の一つである「平和主義」を根底から覆すことになるからである。戦前の歴史への反省を否定する道であることを理解しているからにほかならない。
 自民は憲法審を開き、同党がまとめた改憲4項目の条文案(たたき台素案)の議論に1日も早く入りたいのが本音であろう。だが、国会における与野党の対立が激化し、憲法審開催もままならない。
 自・公は5月15日、憲法審開催の呼び水にしようと改憲手続法の改定案を合意した。洋上投票の拡大など8項目からなる。5月17日の衆院憲法審の幹事会に提示した。
 幹事会後に開かれた今国会初の憲法審は、国民民主党結成に伴う新幹事の選任のみに終わり、実質審議は行われていない。参院は5月23日に憲法審。幹事選任で審議なし。
  野党は抵抗の姿勢を崩していない。(5月17日記)
■戦争法で「戦闘を伴う任務遂行」増大 陸幕作成文書に明記
 安倍政権は2015年9月19日に安保法制(戦争法)の成立を強行したが、その直後に開かれた「防衛相直轄の会議用資料に『戦闘を伴う任務遂行』の可能性が高まる」(東京新聞)と記載されていることが、5月11日の衆院外務委員会で明らかになった。外務委で共産党の穀田議員が示したのは、陸自の陸上幕僚監部が作成した「陸幕施策等説明」という表題の文書。
 文書は戦争法に基づく集団的自衛権の行使について「米軍、他国軍との共同作戦、武力行使を伴う任務遂行の可能性は増大する」と指摘している。
 また、PKOの新任務(駆け付け警護など)により「武力行使を伴う任務遂行の可能性が増す」と記述している。
 安倍首相は、戦争法の審議を通じて「集団的自衛権の行使は限定的で、米軍の戦争に巻きこまれることはない」と明言。「平素から訓練が可能になりリスクは下がる」と答弁してきた。
 この政府の見解は文書の内容とまったく異なる。文書によれば、政府は戦争法によって「自衛隊員が戦闘に加わるリスクを認識していたことになる」。
 それ故、一連の陸自日報の隠ぺいが行われたのではないか。戦争法は廃止するしかない。
(中)
2018年05月15日号
■ 憲法施行71年 年内発議めざしうごめく自民党
 内閣支持率が急落し、政権の足元が揺らぐ中、自民党は年内の改憲発議を目指し蠢動している。
 憲法改正推進本部の細田本部長は日本記者クラブで記者会見し、「政治情勢にかかわらず憲法改正を目指す」と強気な発言。「国会で議論されるのが正しい民主主義だ……各党との憲法審査会での協議を早期に開始したい」(NHK)と呼びかけた。
 また、公明党や立憲民主党が、憲法審査会で改憲手続法の改正を優先させるべきだとしていることについて、「国会で協議することはやぶさかではない」(毎日)と要求を受け入れ。応じなければ改憲論議が遅れると判断したようだ(5月3日現在、衆参の審査会日程は未定)。
 一方、安倍首相は4月20日、党所属の都道府県議を対象にした研修会で「自衛隊の違憲論争に終止符を打とう」と持論を繰り返した。改憲スケジュールが厳しくなっている中、「みなさんとともに新しい日本をつくりあげていきたい」(毎日)と協力を求めた。研修会は、国民投票で過半数の賛成を得るには、有権者と日常的に接している地方議員の理解を深める必要があるとみて開かれたもの。
■自民改憲4項目 すべてで「反対」が「賛成」を上回る 共同通信世論調査
共同通信社は4月25日、郵送方式で実施した憲法に関する世論調査の結果をまとめ、発表した。
 それによると、自民党が目指す改憲4項目すべてで「反対」や「不要」の否定的意見が上回り、世論の理解が得られていない現状が明らかになった。
 9条改憲に反対は46%、賛成44%で拮抗した。教育充実のための改憲は不要70%で、必要28%に大差をつけた。
 9条改憲に次いで自民党が重視している緊急事態条項の新設については、内閣の権限強化・私権の制限に反対は56%、賛成42%。参院選の合区解消については、62%が改憲不要とし、33%が必要とした。
  民党が年内の改憲発議を視野に2020年の改正憲法施行を目指していることについて反対が62%、賛成は36%だった。安倍首相の下での改憲に61%が反対し、賛成は38%だった。 安倍政権下の改憲反対が60%を超えているが、本丸である9条改憲の賛否が拮抗している。「3000万署名」の成功をはじめ、安倍9条改憲の危険性を訴える学習会や集会、街頭宣伝などの諸活動が喫緊の課題となる。
■導入予定のミサイル 「敵基地攻撃」可能
 毎日新聞は、米軍のシリア攻撃で、「日本政府が導入する方針の航空機搭載型の長距離巡航ミサイルが使われた。政府は、このミサイルを離島防衛などのため敵の対空ミサイル射程外から攻撃する『スタンドオフ・ミサイル』と位置づけているが、敵基地攻撃が可能であることが実証された形だ」と報じた。
 自民党の安全保障調査会は、9条の制約上、保有できないとしてきた「敵基地反撃能力保有」の検討を提言している。
(中)
2018年04月24日号
■ いま、重大な岐路に 「3000万署名」をやり抜き、改憲発議阻止へ
 相次ぐ公文書の改ざんや隠蔽によって、安倍政権の足元が大きく揺さぶられているなか、安倍首相は国会答弁で、「自衛隊の違憲論争に終止符を打つのは、防衛政策の基本ではないか」「現行憲法で積み重ねた安全保障の原則は変わらない」「(国民投票で改憲案が否決されても)自衛隊の合憲性は揺るがない」(4月9日の参院決算委員会)……改憲に強い意欲を示し、強気の答弁を繰り返している。
 自民党の細田憲法改正推進本部長は共同通信のインタービューに応じ(4月10日)、「連立与党の公明党、野党の日本維新の会などの協力に期待感を表明する一方、森友学園や自衛隊の日報隠蔽などの問題が収束しなければ協議は進みにくいとの認識を示し、改憲発議の時期は『白紙』と強調した」。
 また、「憲法9条への自衛隊明記など4項目の条文案は、他党との協議を通じて改憲原案を作成するための『たたき台』と説明。『修正はこれからの話し合いだ。そこは柔軟だ』と述べた」。
 細田氏は、「年内発議」など、改憲スケジュールも大幅に後退を余儀なくされている現状を認めている。自民党は先の党大会で改憲4項目の条文案決定に至らなかったが、各党協議などに提示する「たたき台素案」をまとめている。
 こうした中、公明党は、改憲手続法(国民投票法)について「事前に決められた投票所以外でも投票可能な『共通投票所』を駅の構内やショッピングセンターなどに設置できるようにする」(NHK)など同法の改定を自民党に求めている。山口代表は「国民投票法が、きちんと整備されることが優先課題だ」(同)と指摘し、憲法審査会で先行して議論すべきだとしている。
 立憲民主党は、「国民投票をめぐるテレビ広告の費用に上限が設けられていないため、資金力のある団体の主張が結果に影響を与えかねない」(同)などと指摘し、改定案の国会提出を検討している。
 今後、改憲手続法改定の取り扱いが、改憲論議の進展に影響を与えることも予想される。  自民党が、9条に自衛隊を明記するなどの「たたき台素案」をまとめたことは重大である。憲法はもっとも重大な岐路に立たされている。
 「たたき台素案」の危険性については、前号の本小欄でも指摘しているが、「9条の2」を新設し「前条(9条1項、2項)の規定は……必要な自衛の措置をとることを妨げず……そのための実力組織として…… 自衛隊を保持する」と明記することで9条1項、2項を死文化し、戦争法で「限定的」とされた集団的自衛権のフルスペック(制約のない全面的な)行使にまで道を拓くことを狙っている。
 多くの国民は、森友・加計疑惑、公文書改ざん、自衛隊の日報隠蔽など安倍政権の悪政に怒っている。安倍内閣糾弾の闘いと一体になって、「3000万署名」をやり抜き、9条改憲の発議を阻止する大きな世論をつくりあげることである。
(中)
2018年04月10日号
■安倍・自民9条改憲案2項空文化 歯止めなき海外での武力行使
  「いよいよ、結党以来の課題である憲法改正に取り組むときがきた。自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」―3月25日に開いた自民党大会における演説で、安倍首相は9条改憲への異常な執念を示した。
 採択された2018年度運動方針では第1項目で「憲法改正案を示し、改正実現を目指す」としたが、「大会では具体的な条文案を示さず、了承手続きもなかった」(東京)。党内や与党内での異論が強かったということであろう。
 二階幹事長は党務報告で改憲4項目の「『条文イメージ・たたき台素案』について、一定の方向性を得ることができた」(同党HP)と報告している。
 憲法改正推進本部は、「9条1、2項を残し、自衛隊を明記する」安倍改憲案に沿って、昨年6月から改憲4項目(@9条への自衛隊明記A緊急事態条項の新設B参院選挙区の合区解消C教育無償化)について議論を重ねた。
 もちろん改憲の本丸は9条である。
 推進本部は当初、「2項を維持して『9条の2』を新設した上で、『必要最小限度の実力組織』として『内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する』」とする案で集約する段取りであったが、3月15日の全体会合では「定義があいまい」などの反対意見が相次いだ。
 このため、大会を直前にした3月22日の全体会合では、「必要最小限度の実力組織」という表現を削除し、「必要な自衛の措置をとる」に置き換えた案が示されたが、それでも異論が続出したため推進本部の執行部は議論を打ち切り、強引に細田本部長への一任を決めた(参考)。
 二階幹事長は党務報告で、「今後、『たたき台素案』をもとに衆参の憲法審査会で議論を深め、各党や有識者の意見も踏まえ、憲法改正原案を策定し、憲法改正の発議を目指す」と強調した。
 歴代政府は、戦力不保持の2項があるために、自衛隊を「軍隊ではない」「自衛のための必要最小限度の実力組織である」から合憲だとしてきた。「必要最小限度の実力組織」という文言を削除し、「必要な自衛の措置」に置き換えれば、合憲の根拠を投げ捨てることになり、「専守防衛」の放棄につながる。
 自民党が、9条に自衛隊を明記するなどの「たたき台素案」をまとめたことは重大である。「自衛の措置」とは「自衛権」であり、個別的自衛権だけでなく集団的自衛権も含まれる。戦争法で容認している集団的自衛権の行使を憲法上でも認めることになる。
 さらに、9条2項が海外での武力行使を許さない歯止めになってきた。新設された9条の2の1項は「前条(9条1項、2項)の規定は……必要な自衛の措置をとることを妨げず……そのための実力組織として…… 自衛隊を保持する」と規定。憲法9条2項は死文化され、海外での武力行使の歯止めがはずされてしまう。
 危険極まりない安倍・自民改憲を断じて許してはならない。
 9条に象徴される徹底した平和主義は、多くの国民から、そして国際社会からも幅広い支持を受けている。「9条の心」を世界にはばたかせることこそ、いま、日本がとるべき道である。
《参考》
 各党協議などで自民党が提示を想定している9条改憲の「たたき台素案」(現行9条を残して、9条の2を新設)
 第9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
 2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
■防衛大綱 自民提言案―敵基地攻撃能力 空母・F35B保有を提唱
 自民党安全保障調査会は3月20日、政府が年末の決定を目指す新たな「防衛計画の大綱」に向けた提言の骨子をまとめた。
 提言は、空母の導入や艦上で短距離離陸・垂直着陸が可能な最新鋭F35Bステルス戦闘機の取得を明記した。政府は、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」などの「攻撃型空母」への改修を検討しており、搭載されるF35Bは対地攻撃を主任務とする。
 さらに、提言は政府が憲法9条の制約上、保有できないとしてきた「敵基地反撃能力保有」の検討や、「弾道ミサイルのほか、敵の航空機や無人機、巡航ミサイルなどに総合的に対処する統合防空ミサイル防衛(IAMD)の態勢構築」(毎日)を盛り込んだ。
 自衛隊の装備体系が大きく変質され、9条の改憲策動と一体になって「戦争する国」づくりへ突き進んでいく。
(中)
2018年03月27日号
■安倍9条改憲は平和主義を根底から破壊 7つの条文案提示
  自民党憲法改正推進本部は3月15日の全体会合で9条改憲について議論した。会合では条文案として、「2項維持・自衛隊明記」が3案、「2項維持・自衛権明記」が2案、「2項削除」が2案の計7案を提示(別表参照)。
 細田本部長らは安倍首相の意向に沿って「2項を維持して『9条の2』を新設した上で、『必要最小限度の実力組織』として『内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する』」(東京)とした別表@案で一任取り付けを狙ったが、石破元幹事長らの抵抗が強く、この日の意見集約を見送った。20日にも全体会合を開く方針。
 「2項維持・自衛隊明記案」は「幅広い理解が得られる現実的な案だ」などといった賛成意見が優勢だったようだ。
 一方、「2項削除案」を唱えている石破氏らは「必要最小限度だから戦力ではないと分かる人はどこにいるのか」(毎日)「必要最小限度という表現を憲法に書くと防衛力を過度に制約しかねない」(東京)などとする反対意見も相次いだ。
 7つの条文案のいずれも憲法9条の平和主義を根底から破壊するもので、断じて許されない。「3000万人署名」をなんとしても成功させ、安倍首相と自民党の改憲への野望を打ち砕こう。(3月16日記)
《別表》自民9条改憲7案(要旨)
●2項維持・自衛隊明記
@必要最小限度の実力組織として、自衛隊保持(「9条の2」を新設)
A前条(現行9条)の範囲内で、各行政各部の一として自衛隊を保持(9条の2)
B前条(現行9条)の規定は自衛隊保持を妨げない(9条の2)
●2項維持・自衛権明記
C前2項の規定は自衛権の発動を妨げない(3項新設)
D前2項の規定は自衛権の行使を妨げず、そのための実力組織を保持
●2項削除
E総理を最高指揮官とする国防軍を保持(9条の2)
F陸海空自衛隊を保持(9条2項)
■小野寺防衛相 「いずも」の「攻撃型空母化」研究認める F35B搭載
 小野寺防衛相は参院予算委員会で(3月2日)、「海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦(「いずも」など)についてステルス戦闘機F35Bを搭載する空母化が可能か調査研究していることを初めて認めた」(毎日)。
 敵基地攻撃能力をもつF35Bは、短距離の滑走で離陸や垂直着陸が可能な最新鋭の戦闘機。艦艇に離発着できるよう「いずも」の「攻撃型空母」への改修を検討している。
 政府はこれまで専守防衛のもと攻撃型兵器の保有を禁じており、大陸間弾道弾や長距離戦略爆撃機、攻撃型空母を例示している。政府が年末の決定をめざす「防衛大綱」に対する自民党の提言骨子案が明らかになった。「敵基地攻撃能力保有の検討」や「F35Bの取得」などを要請している。
 憲法違反の「攻撃型空母」保有への検討は許されない。
(中)
2018年03月13日号
■石破氏 「党決定なら従う」 9条改憲原案の意見集約が加速
 9条2項の削除か、維持かで対立していた自民党の憲法改正推進本部の9条改憲原案(条文案)の意見集約が加速することになろう。
 2項削除の急先鋒であった石破・元幹事長は2月27日、国会内で記者団に、安倍首相提案の改憲案(1、2項をそのままにして自衛隊を明記)が正式に決まった場合、「従うのは党員としての義務だ」と明言した。石破発言を受けて、難航している党内の条文案の意見集約が進む公算が大きくなった。
 同時に石破氏は自民案が党大会(3月25日)でまとまった場合でも「(2項削除)の持論は封印しない」とも語っており、9月の総裁選に出馬し9条改憲を争点にすると表明した。
ちなみに、石破氏は推進本部に提出した「9条改正案」を自身のブログで公表している。
 2項を削除して「陸海空自衛隊を保持する」と明記。2012年の党改憲草案で「国防軍」とした部分を変更し、自衛隊の国会による統制や、最高指揮官を内閣総理大臣とする規定なども盛り込んだ。
 2月28日の推進本部の全体会合は、焦点の「自衛隊の明記」について議論を促進するために党所属の国会議員から条文案を募った100を超える案を5つに類型化して議論した。2項を維持する案が最も多かったという。
 細田本部長は「3月中旬に9条を課題とした全体会合を再び開き、2項維持を含めた具体案を提示する」(日経)と表明。石破氏は、全体会合の様子を「一定の方向に収れんする感じではない」と記者団に説明(毎日)。
 3月25日の党大会までに改憲案の集約を目指す。
■まず9条加憲、次に2項削除 自民党の船田氏9条改憲の本音語る
 自民党の船田・憲法改正推進本部長代行は2月15日の国会内集会でビデオ出演し、かねてから唱えている9条の「2段階改憲論」をあからさまに語った。
 船田氏の「2段階改憲論」は、まず安倍首相が提案している9条1、2項をそのままにして自衛隊を書き込むことによって2項を空文化し、次の段階で2項を削除するというシナリオを描いている。安倍9条改憲の隠したかった手の内を正直に語ったことになる。「2段階論」は改憲右翼団体「日本会議」から出ている。
 安倍首相は、「自衛隊を明記してもその任務や権限に変わりはない」と繰り返し国会答弁しているが、大きなウソであることが明らかになってきている。
 9条に明記される自衛隊はこれまでの自衛隊ではない。いまや自衛隊は2015年に制定された戦争法によって変質しており、集団的自衛権の行使が容認された自衛隊である。いつでも、どこでも海外に出かけて行って、米軍のあらゆる戦争を支援することができる新しい自衛隊である。
 たんに自衛隊の存在を書き込むだけという現状維持的なものではない。安倍9条改憲は戦争への道であり、憲法の平和主義を根底から破壊するものである。
(中)
2018年2月27日号
■安倍首相のおかしな改憲発言 誤魔化しの手口は許さない
 「自衛隊の存在を憲法に明記してもしなくても、明記した改憲案が国民投票で承認されてもされなくても何も変わらないのなら、改憲案を発議し、国民投票にかける意味がどこにあるのか」―2月10日付「東京新聞」の社説である。
 前号の本小欄でも触れているが、 安倍首相が混乱した国会答弁を繰り返している。 @自衛隊を明記してもその任務や権限に変わりはない(1月24日の衆院本会議、2月5日の衆院予算委)、A自衛隊が合憲であることは政府の一貫した立場である。明記案が国民投票で否定されても合憲性は変わらない(2月5日の衆院予算委)……と。
 それならば、安倍首相は何のために改憲を提案しているのか、何のために850億円もの巨費をかけて国民投票を実施するというのか―誰が、どう考えてもおかしい。答弁の混乱は安倍改憲に道理がないことを示すものである。
 他方、安倍首相が得意とする国民を言いくるめるための誤魔化しの手口でもある。集団的自衛権の行使が容認されている自衛隊を明記すれば9条の意味は大きく変わり、空文化する。
 長くなるが2月9日付の「朝日新聞」社説を引用する。
「両者(2項維持論と削除論)が矛盾しないはずがない。まず首相案で一歩踏み出し、いずれは2項を削除して各国並みの軍隊をめざす方向に進むということなのか。『変わらない』と言い続ければ、改憲の必要性は見えにくくなる。といって改憲の意義を明確にしようとすれば、どう『変わる』のかを国民に説明しなければならない。自民党の改憲論議は、深いジレンマに陥っている」―と指摘している。
■安倍9条改憲阻止 3000万人署名で世論喚起を
 安倍9条改憲の野望を阻止する上で世論の動向が重要だ。ここに、全国で取り組まれている3000万人署名運動の大きな意義がある。
 共同通信社の全国世論調査(2月12日付「東京」)によると、自民党が改憲論議で集約しようとしている9条2項を維持したまま自衛隊の存在を明記する(安倍首相案)への賛成は38・3%(無党派層30・5%)だった。2項を削除し自衛隊の目的・性格を明確化する(2012年の自民党改憲草案)は26・0%(同24・3%)で、自衛隊明記の改憲は必要ないは24・9%(同31・3%)だった。
一方、安倍首相の下での改憲に反対は49・9%(1月の前回調査54・8%)で、賛成は38・5%であった。
 さらに年代別に見ると2項維持支持は30代以下の若年層で47・0%に達しており、60代以上の高年層は30・7%に止まっている。改憲は必要ないの答えは若年層で16・3%しかなく、高年層では32・4%。
民意は割れており、安倍9条改憲案は広がりを見せていない。自民党内の意見集約も難航している。
(中)
2018年2月13日号
■「実現する時」 アクセル踏み込み続ける安倍首相 改憲発議に執念
 通常国会が開会した1月22日、自民党の両院議員総会で、安倍首相は党総裁として「わが党は結党以来、憲法改正を党是として掲げ、長い間議論を重ねてきた」と強調し、「私たちは政治家だから、それを実現していく大きな責任がある。いよいよ実現する時を迎えている。責任を果たしていこう」(東京)と自民党議員にゲキを飛ばした。
 一方、この後の施政方針演説では「国のかたち、理想の姿を語るのは憲法である。各党が憲法の具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において、議論を深め、前に進めていくことを期待している」(官邸HP)と議論の加速化を促した。
 演説に対して立憲民主党の枝野代表は、「国の理想の姿を語る」という首相の憲法観を「近代国家では主権者が政治権力を制限するルールだ。理想の姿は、各政党が綱領や政策で示していくものである」と反論し、特異な憲法観では「まっとうな議論ができるはずもない」(同党HP)と首相の間違った憲法観を批判し、「向こうの土俵にはのらない」(毎日)と明言した。
 安倍首相が演説で、各党に改憲の具体案を提示するよう求めたことについて、与党の公明党の山口代表は、「白紙で臨む。憲法審査会の議論がどうなるかをよく見て対応を考えたい」(産経)と語り、首相ペースで改憲論議が進むことをけん制した。
 安倍首相は1月24日の衆院本会議で(各党代表質問)、9条2項を維持し、自衛隊を明記した場合、「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」(日経)と明言した。
 ところが、30日の衆院予算委では、9条1、2項を残し自衛隊を明記する“安倍9条改憲案”について「2項を変えれば、書き込み方でフルスペック(全面的)の集団的自衛権の行使が可能になる。2項を残すという私の提案では、2項の制限がかかる」(毎日)と説明し、2項を残せば限定的な集団的自衛権の行使にとどまると強調。戦争法で認めている集団的自衛権の行使を憲法に明記すると言うにひとしい。重大なことを企んでおきながら、どこが「任務や権限に変更がない」と言えるのか。
 首相は、国民を言いくるめるためのごまかしの議論がお好きなようである。歴代総理大臣の中で、これほどしれっと大ウソをつく首相も珍しい。多くの国民は安倍政権下の改憲を拒否している。
■自民党 3月の党大会までに改憲案を策定
 自民党の憲法改正推進本部は1月31日、今年初めての全体会合を開き、党内の意見集約ができていない緊急事態条項の新設について議論した。政府への権限集中や私権制限は見送り、国会議員の任期延長に限定する案への一本化をはかろうしたが、賛否が割れ、意見集約を先送りした。3月25日の党大会までに改憲案を策定するため9条改憲案とともに意見集約を急ぐ。
 石破元幹事長は、政府への権限集中などを盛り込んだ2012年の党改憲草案の議論を要求。
(中)
2018年1月23日号
■改憲発議阻止へ 正念場の年
「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」(憲法前文)
◇            ◇
 安倍首相は自民党の仕事始めで(1月5日)、1955年の「保守合同」にふれ、「占領時代に作られた憲法をはじめ、さまざまな仕組みを、安定した政治基盤の中で変えるために合同したのであり、時代に対応した国の姿、理想の形をしっかりと考え議論していくことが、私たちの歴史的な使命だ」(NHK)と強調。年頭記者会見(1月4日)から改憲への異常な執念をあらわにしてきた。「政権は今年を『勝負の年』と位置付ける」(朝日)。
 自民党の憲法改正推進本部は、昨年末にまとめた改憲4項目の「論点整理」をもとに月内にも意見集約の作業に入り、通常国会への改憲原案(条文案)の提出を目指す。
 国民の多数は改憲を望んでいないことは世論調査などでも明らかである。日本世論調査会が先月実施した世論調査によると、安倍首相の下での改憲に53%が反対し、国会論議については67%が「急ぐ必要はない」と答え、53%が9条改憲に反対している。
憲法施行71年目になる2018年は、憲法をめぐり、日本の命運を左右する年になる。立憲野党の共闘を前進させ、すでに全国で繰り広げられている「3000万人署名運動」に全力をあげ、地域・職場で草の根運動を積み上げ、改憲案の発議を阻止することが最重要課題となる。
◇            ◇
■2017年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・2日 自民党、都議選で歴史的惨敗
・7日 国連、核兵器禁止条約を圧倒的多数で採択
・11日 共謀罪法施行
・24日 辺野古新基地建設で沖縄県は国を相手に岩礁破砕の差し止め訴訟を起こす
・26日 海上自衛隊、戦争法に基づく米艦防護の共同訓練実施を発表

〈8月〉
・3日 第3次安倍内閣第3次改造内閣発足
・4日 小野寺防衛相、「敵基地攻撃能力」の保有の検討を表明
・8日 2017年度防衛白書発表 
〈9月〉
・5日 自民党の石破元幹事長は、9条2項を改めて自衛隊を明記するよう提起
・28日 衆院解散
 民進党は両院議員総会で、新党「希望の党」から立候補させる合流方針を了承
〈10月〉
・2日 自民党、改憲を重点項目に格上げした総選挙公約発表
 民進党の枝野代表代行、新党「立憲民主党」を結成すると表明
・10日 第48回総選挙公示
・22日 総選挙投開票
改憲勢力(自民、公明、維新の会、希望の党)が議席の8割を占める
〈11月〉
・1日 第195臨時国会開会 第4次安倍内閣発足
・7日 公明党の山口代表、自民党との改憲協議に否定的な見解を示す
・16日 自民党の憲法改正推進本部、総選挙で中断していた議論再開
・21日 安倍首相、参院本会議で自衛隊の存在を憲法に明記しても「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と答弁

〈12月〉
・6日 立憲、共産、自由、社民、「無所属の会」は、共謀罪法の廃止法案を衆院に共同提出
・15日 安倍首相、防衛大綱について「従来の延長線上ではなく、真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」と大幅見直しを明言
・20日 自民党の憲法改正推進本部、全体会合を開き、改憲4項目の「論点整理」を承認
(中)