2015年12月22日号
■私たちはあきらめない! 戦争法廃止・立憲主義回復・安倍政権打倒
 憲法に真っ向から背く戦争法は成立したが(9月19日)、国民の批判と反撃は止まらない。戦争法廃止を求める運動は、毎月19日の統一行動や2000万人統一署名など国会周辺や全国津々浦々で積み上げられている。
 来夏の参院選に向けて大衆運動の輪を広げるため、さらに奮闘しよう。
■2015年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
・1日 安倍首相、年頭所感で「さらに大胆に、さらにスピード感を持って改革を推し進める」と決意を披歴
・8日 政府・自民党は、自衛隊の出動要件として、新たに「存立事態」を自衛隊法などに盛り込む方針を打ち出す
・26日 第189通常国会開会
〈2月〉
・2日 安倍首相、参院予算委で「集団的自衛権の行使は地理的制約を設ける必要はない」と答弁
・4日 安倍首相は、船田元・党憲法改正推進本部長と会談。最初の改憲発議の日程を来年夏の参院選後とする考えで一致
・13日 自民、公明両党の「安全保障法制整備に関する与党協議会」開始
・16日 安倍首相は衆院本会議で、「恒久法」の制定を強調
〈3月〉
・12日 政府は、「周辺事態法」を改定し、従来の「周辺事態」に代えて「重要影響事態」の概念の創設方針を固める
・13日 政府は、国連が統括しない有志連合などの「国際的な平和協力活動」にも参加できるようPKO協力法の改定案をまとめる
〈4月〉
・9日 2015年度予算が成立
・27日 日米両政府、日米軍事協力指針(ガイドライン)の再改定合意
・28日 ホワイトハウスで日米首脳会談
〈5月〉
・11日 自民、公明両党が「安保法制与党協議会」で、関連法案の全条文に最終合意
・12日 中谷防衛相、参院外交防衛委で「専守防衛」の定義に集団的自衛権の行使も含まれると明言
・14日 政府、臨時閣議で安全保障関連法案(戦争法案)を決定
・15日 政府、戦争法案を国会に提出
・19日 衆院本会議、戦争法案に関する平和安全法制特別委員会の設置を議決
・26日 戦争法案、衆院本会議で審議入り
〈6月〉
・2日 自民党の憲法改正推進本部、最初の改憲条項を「緊急事態」や「環境権」などに絞り込んで党内論議を深める方針を確認
・3日 憲法学者173人が、戦争法案に反対し、速やかな廃案を求める声明発表
・4日 衆院憲法審査会、参考人として出席した憲法学者3人が口を揃えて戦争法案は「違憲」と宣告
・5日 衆院特別委で中谷防衛相は、集団的自衛権の行使は「あくまで自衛の措置であり、違憲ではない」と強調
・6日 「立憲デモクラシーの会」、「立憲主義の危機」をテーマに集会を開催
・8日 安倍首相、内外記者会見で、戦争法案は「違憲」との指摘に対し、「憲法の基本的な論理は貫かれている」と反論
・15日 「安全保障関連法案に反対する学者の会」、法案は9条に違反するとして廃案を求める声明発表
・18日 日本弁護士連合会、戦争法案は「違憲」だとして法制定に反対する意見書発表
・22日 衆院特別委、参考人質疑で元法制局長官2人を含む野党推薦人は「憲法違反」と糾弾
・22日 衆院本会議、9月27日までの会期延長を議決
・26日 安倍首相、衆院特別委で戦争法案は「砂川判決に沿ったもので合憲」と強弁
(中)
2015年12月8日号
■安倍首相 「緊急事態条項」の創設に執念 戦争法と一体で戦争する国へ
 安倍首相は、参院予算委員会の閉会中審査(11月11日)で、現行憲法に規定がない「緊急事態条項」について「緊急時に国民の安全を守るために、国家、国民自らがどのような役割を果たすべきかを憲法にどう位置付けるかは、極めて大切な課題だ」(毎日)と強調し、「緊急事態条項」の創設に執念を見せた。
 「緊急事態条項」は緊急時における政府の権限を規定するもので、東日本大震災と福島原発事故が発生して以降、改憲派は盛んに「緊急事態条項」の創設を主張しているが、災害対策に名を借りて戦時への備えを進める意図がある。パリでのテロ事件におけるフランス政府の「非常事態宣言」の発令を受け、「緊急事態条項」創設の動きが一段と強まる恐れがある。
 自民党の改憲草案を見てみよう。98条は「内閣総理大臣は、わが国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において……緊急事態の宣言を発することができる」と規定している。また、「緊急事態」は100日間の継続が可能であり、国会の承認を得れば延長も可能とも規定している。長期間にわたって、内閣に権力が集中し、人権が抑圧される。
 99条では「内閣は法律と同一の効力を有する政令」を制定することができるとして、さらに国民には「国その他公の機関の指示に従わなければならない」との義務規定が設けられている。
 緊急権条項濫用の苦い経験を踏まえて、現行憲法には規定がない。9条で軍隊を持たない、戦争をしない国が「緊急事態条項」を持たないのは当然のことであろう。まさに「緊急事態条項」の創設は、戦争法と一体で「戦争する国」づくりを推し進めるものである。災害対策は現行法の運用で十分に対応できる。
■「共謀罪」 またまた浮上 これまで3度廃案
 「自民党の高村副総裁は党の役員連絡会で、フランス・パリで起きた同時テロ事件を受け、テロなどの計画の謀議に加わった場合に処罰の対象となる『共謀罪』を新設するなどの法整備を急ぐ必要があるという認識を示した」(NHK)。政府・与党から「共謀罪」の創設を狙う発言が相次いでいる。
 犯罪を実行しなくても計画を話し合うだけで処罰対象にする「共謀罪」の新設をめぐる「組織犯罪処罰法」の改正案はこれまで3回、国会に提出されたが、いずれも国民の強い反発を受け、廃案になっている。
 「共謀罪は国際組織犯罪防止条約を批准するための制度として提案されたが、この条約はテロ対策とはまったく関係ない。共謀罪をテロ対策として提案することは、無理やりなこじつけといわざるを得ない」「わが国では、組織犯罪集団に関連した主要犯罪は既に未遂以前の段階から処罰できる体制がほぼ整っているので共謀罪は必要ない」(日弁連共謀罪法案対策本部副本部長の海渡雄一弁護士・東京新聞)
(中)
2015年11月24日号
■安倍首相が本音 9条改憲で集団的自衛権行使の全面的な容認へ
 政府は、衆・参における戦争法案の審議で、憲法上許されないとしてきた集団的自衛権は、他国を武力で守る「フルセットの集団的自衛権」であって、他国が攻撃され日本の存立が脅かされる場合に認められる「限定的な行使」(自国を守るための集団的自衛権)は容認できるとの憲法解釈(合憲論)を繰り返した。
 ご案内のとおり、歴代の政府・法制局は集団的自衛権の行使容認は、限定的と称するものも含めて一貫して違憲としてきた。
 憲法53条に基づく5野党の臨時国会の召集要求に、安倍内閣と与党が応じようともしない中で、11月10日に開かれた衆院予算委員会の閉会中審査で「限定容認」の問題が取り上げられ、戦争法の成立もあってか安倍首相の本音が正直に出た。
 民主党の岡田代表は、自民党の改憲草案で「自衛権の発動」を規定している9条2項に関連して「9条を変えて、集団的自衛権を限定なく認めるということか」と追及。安倍首相は「(9条2項は)国際社会における標準の集団的自衛権の行使を認めたものである」と明言した。
 岡田氏が「国連憲章上認められた集団的自衛権の行使を限定なく認める憲法にするということか」と念押ししたが、安倍氏は否定しなかった。また、岡田氏は戦争法について、次の国会で「憲法違反の部分を白紙に戻す法案を提案する」と表明した。
■平時から日米軍事一体化―ガイドラインと戦争法の具体化推進
 日米両政府11月3日、4月に再改定した日米軍事協力の指針(ガイドライン)に明記された「同盟調整メカニズム」を設置した。新ガイドラインと戦争法の具体化であり、日米軍事一体化をさらに推し進めるものだ。
 「同盟調整メカニズム」は「日米の外交・安全保障を担当する局長級らが政策面の調整を行う『同盟調整グループ』、自衛隊統合幕僚監部と太平洋軍司令部が運用面の調整を行う『共同運用調整所』、自衛隊と米軍の各部隊が連携する『調整所』で構成される」(東京新聞)。
 従来もあったメカニズムは日本への武力攻撃や周辺の事態などの有事に限定されており、新メカニズムは常設となり、有事に限らず平時から、自衛隊と米軍の一体化が加速される。集団的自衛権の行使もメカニズムで調整する。緊急事態への対処方針を定めた「共同計画」を日米の制服組が作ることも決まっている。
 沖縄タイムスは11月5日の社説で「自衛隊が地球的規模で軍事行動する米軍の下請け機関になってしまうのではないか……文民統制(シビリアンコントロール)がなし崩しにされるのではないか」「同盟調整メカニズムでは米軍が事実上の指揮権を握り、自衛隊はその指揮下に組み込まれてしまわないか危惧する」と重大な問題点を指摘している。また、条約とは違って国会の承認を必要とせず、外交上の行政文書で日本の防衛政策を事実上規定することになることも大きな問題である。
(中)
2015年11月10日号
■戦争準備着々と 部隊行動基準の改定や訓練
 政府は、戦争法の来年3月までの施行に向け、部隊行動基準や武器使用基準の改定など戦争準備を着々と進めている。
 南スーダンで展開しているPKO部隊の任務に「駆け付け警護」の追加が検討されているが、戦争法の初めての適用となる。
 「邦人救出」に備えた計画策定や日米共同での警戒監視活動(南シナ海)、「平時の米艦防護」の運用方法なども策定する。
 部隊が戦闘を開始すべき事態やその際の武器使用基準など、指揮官の裁量の範囲を定める「部隊行動基準」(ROE=交戦規定)の改定も検討する。
 海外派兵された自衛隊員の武器使用は「自己保存型」―正当防衛と武器防護のために限られている。戦争法では、「駆け付け警護」や米軍等の武器防護の任務遂行のための武器使用など著しく拡大した。自衛隊の任務拡大に伴い、他国部隊の戦闘に参加する「駆け付け警護」では、武装勢力による妨害を排除するための「任務遂行型」の武器使用が可能になった。部隊の準備訓練が行われることとなる。
 さらに、「防衛省の外局『防衛装備庁』が(10月)1日に発足。日米両国の連携は、軍事訓練だけでなく、武器調達の面でも強まる」(東京新聞)。
 中谷防衛相は10月23日の記者会見で「航空自衛隊が導入する空中給油機の機種を米ボーイング社のKC46Aに決定したと発表した」(毎日)。戦争法が施行されると、発進準備中の戦闘機への給油が可能になる。
 新機種は複数の給油方式に対応でき、オスプレイを含め、給油できる米軍機が広がる。中谷氏は会見で「主要な米軍機に給油可能になる。日米の相互運用や訓練などには有意義な機種だ」と強調。
■辺野古新基地 民意踏みにじり強権発動
 「恒久的な基地を何が何でも沖縄に押し付けるのだという政府の最後通牒とすらいえる。不当であるのはもちろん、多くの県民の思いを踏みにじるもので断じて容認できない」「今後も、辺野古に新基地はつくらせないという公約の実現に向け、全力で取り組む」―と、翁長知事は、10月27日の記者会見で、国が県の埋め立て取り消し処分の効力停止と地方自治法に基づき知事に代わって取り消し処分を撤回する「代執行」手続きを閣議決定したことを受け、辺野古新基地建設反対の強い決意を表明した。
 権力むきだしの国に対する対抗措置として県は第3者機関の国地方係争処理委員会に審査を申し出る。主張が認められなければ国を提訴する。
 一方、県が国の是正勧告や指示に従わない方針であるため、国は埋め立て承認を「代執行」するため県を提訴する。
 問答無用。国は10月29日、民意を無視し、本体工事の着工を強行した。
 辺野古新基地建設をめぐる県と国の争いは、法廷闘争が不可避となった。オール沖縄の民意は揺るがない。戦争法廃止の闘いをさらに前進させ、沖縄の県民ぐるみの闘いと連帯しよう。
(中)
2015年10月27日号
■戦争法適用 南スーダンPKOで初 「駆け付け警護」で高まる危険
 政府は、戦争法を9月30日に公布し、来年3月までの施行に向けた準備を急ピッチで進めている。安倍首相は戦争法の成立を踏まえ、国連演説で「PKOにもっと幅広く貢献する」(9月30日)と言明した。
 戦争法の初めての適用は、南スーダンのPKOに参加している自衛隊の任務を拡大し、「駆け付け警護」の追加を検討している。「駆け付け警護」は、他国部隊が武装勢力に攻撃された際、自衛隊が現場に駆け付け、武器を使って守る任務(戦闘任務そのもの)。任務追加のため「防衛省を中心に新たな武器使用基準を踏まえたROE(部隊行動基準)の改定や隊員の訓練、PKOの派遣計画変更などに取り組む」(東京新聞)。
 南スーダンでは、政府と反政府勢力との武力衝突で内戦状態にある。自衛隊が「駆け付け警護」を行えば、「殺し、殺される」事態が起こりうる。戦死者がでる危険が格段に高まる。
■辺野古埋め立て承認取り消し 沖縄2紙の社説を読む
 翁長知事は10月13日、仲井真前知事の辺野古埋め立て承認を正式に取り消した。沖縄の地方紙(琉球新報、沖縄タイムス)の社説を紹介しよう。
 琉球新報は承認取り消しを「沖縄の将来を見据え、新基地建設阻止への決意を示す意義ある一歩」だと評価し、今後の進展について「裁判などで問題解決までには長い道のりが予想される。だが、新基地建設反対の民意は圧倒的であり、土地を同意なく奪って建設した普天間飛行場の形成過程からしても、理は知事にある」と見通している。
 そして、「(辺野古)新基地は完成までに10年かかるとされる。……政府が真剣に(普天間基地の)危険性除去を考えるならば、直ちに普天間飛行場を閉鎖すべきだ」と厳しく批判。その上で「新基地建設は沖縄だけの問題ではない。……新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。……優れて国民的問題だ」と断じ、日本国民全体が応えていかねばならない大きな課題を提起した。
 沖縄タイムスも埋め立て取り消しが「新基地建設阻止に向けたスタートであり、むしろこれからが本番である」と強調。「これを機会に米軍駐留と負担について国民的議論を巻き起こす必要がある」と訴えている。
 政府の行政不服審査法に基づく手続きについては「三権分立の趣旨からしても行政府の中ですべてを決めるやり方は乱暴だ。第三者機関である国地方係争処理委員会や高等裁判所の判断に委ねるのが筋である」と指摘。「何度民意を示しても一顧だにせず辺野古の陸でも海でも公権力を強引に行使し、……問答無用とばかりに作業を強行する。そのようにして新基地を建設し、他国の軍隊に差し出そうとする主権国家がどこにあるだろうか。このような事例が他府県のどこにあるだろうか」と政府を厳しく糾弾した。
(中)
2015年10月13日号
■戦争法廃止・安倍内閣打倒に向けた新たなたたかいへ
「違憲」「違憲」と唱え続けよう
 安倍・自公政権は憲法に真っ向から背く戦争法を質問権も、採決権も奪い、暴力的なやり方で委員会採決を強行し、9月19日未明の参院本会議で強行成立させた。
 「戦争法案廃案」「9条壊すな」の声は全国津々浦々に広がった。衆議院の憲法審査会に参考人として出席した3人の憲法学者が、口を揃えて「集団的自衛権行使は憲法違反」と断じたことをきっかけに反対運動の輪が急速に広がり、大規模な運動に発展した。これは60年安保闘争以来である。
 しかも、反対運動は、憲法前文にある「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうに決意し」た国民・主権者一人ひとりが違憲立法の廃案をもとめて自覚的、自発的に立ち上がったことによって支えられている点で、今後の戦争法廃止・安倍内閣打倒の闘いにとって画期的な意味を持っている。
 このエネルギーは違憲の戦争法を廃止し、立憲主義を回復する大きな力となる。すでに戦争法廃止に向けた新たな闘いが始まっている。戦争法成立直後から国会周辺や各地で、廃止を求める行動が繰り広げられている。
 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は毎月19日の国会前行動や廃止署名の全国展開を提起した。
 戦争法に対して、圧倒的多数の憲法学者や元最高裁長官、元内閣法制局長官、日弁連と52弁護士会などが憲法違反を宣告した。戦争法に対するさまざまな違憲訴訟が準備されている。
 また、学生らでつくるシールズは、「選挙に行こう」「賛成議員は落選させよう」を合言葉に落選運動を呼びかけている。
 さらに、安倍内閣不信任案を共同提出した野党の間で「戦争法廃止法案」の国会提出が検討されている。そして、集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の「閣議決定」を撤回し、戦争法を廃止する決定打は、まずは来夏の参院選で戦争法廃止を掲げる政治勢力が多数を占めることであろう。そのための野党協力の協議が開始されている。
 ずっと、ずっと、違憲、違憲と言い続け、創意工夫しながら、さまざまな運動を起こしていくことが大切であろう。
 「憲法98条 この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」
■沖縄県知事 国連で演説 辺野古阻止訴え
 9月22日(日本時間)、翁長知事はスイス・ジュネーブの国連人権理事会で演説し、名護市辺野古への米軍基地建設強行は人権侵害に当たり、あらゆる手段で阻止することを国際社会に訴えた。
《国連演説要旨》
 沖縄県内の米軍基地は、第2次世界大戦後、米軍に強制接収されて出来た基地です。沖縄が自ら望んで土地を提供したものではありません。沖縄は日本国土の0・6%の面積しかありませんが、在日米軍専用施設の73・8%が存在しています。
 戦後70年間、いまだ米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続けています。
 このように沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされています。
 自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか。日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を一顧だにせず、……辺野古新基地建設作業を強行しようとしています。あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟です(沖縄タイムス)。
(中)
2015年9月22日号
違憲立法を断固拒否する

■参院特別委参考人質疑 大森元内閣法制局長官「憲法解釈変更は無効」
 9月8日の参院特別委の参考人質疑で、大森政輔元内閣法制局長官は、集団的自衛権の行使を容認した「閣議決定」(昨年7月)について「憲法9条の下で許容できる余地はない。内閣が閣議決定でなし得る範疇を超えた措置で無効だ」(毎日)と明言し、違憲との認識を示した。元内閣法制局長官が、衆参の法案審議を通じて違憲と指摘したのは大森氏で3人目である。
 自民、公明両党は同特別委での参考人質疑終了後、法案採決の前提となる中央公聴会の日程(9月15日)を突然提案し、野党が激しく抗議する中、委員長が職権で議決を強行した。(9月10日記)
 法案は廃案しかない。しかし、仮に強行成立すれば、違憲の閣議決定と戦争法制を葬る闘いは続く。来年の参議院選挙は極めて重大な闘いである。
 戦争法案反対の運動は、かつてない規模と広がりを見せた。憲法前文にある「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうに決意し」た主権者一人ひとりが違憲立法に反対して立ち上がったからだ。この力に、国民世論に依拠して参議院選挙で自公政権に終止符を打つことだ。そのための、あらゆる努力が私たちに求められている。
■「安保関連法案は違憲」 山口繁元最高裁長官も
 安倍首相らは「憲法の番人は最高裁であり、憲法学者ではない」などの発言を繰り返してきた。
 戦争法案の参院審議が大詰めを迎える中、ついに元最高裁長官の山口繁氏が「安保関連法案は違憲」と断言し、政府が砂川判決や72年政府見解を法案合憲の根拠としていることについて「論理的な矛盾があり、ナンセンスだ」と厳しく批判した(「朝日新聞」9月3日付、共同通信配信「毎日新聞」9月9日付)」。
 要旨を紹介しよう。
 ―集団的自衛権を認める立法は違憲
 「少なくとも集団的自衛権の行使を認める立法は、違憲と言わねばならない。我が国は集団的自衛権を有しているが行使はせず、専守防衛に徹する。これが憲法9条の解釈です。その解釈に基づき、60余年間、様々な立法や予算編成がなされてきたし、その解釈をとる政権与党が選挙の洗礼を受け、国民の支持を得てきた。この事実は非常に重い」
 「9条の骨肉と化している解釈を変えて、集団的自衛権を行使したいのなら、9条を改正するのが筋であり正攻法でしょう」
 ―72年政府見解は個別的自衛権行使に限定
 「1972年の政府見解で行使できるのは個別的自衛権に限られると言っている。自衛の措置は必要最小限度の範囲に限られる、という72年見解の論理的枠組みを維持しながら、集団的自衛権の行使も許されるとするのは、相矛盾する解釈の両立を認めるものでナンセンスだ。72年見解が誤りだったと位置付けなければ、論理的整合性は取れない」 
 ―立憲主義や法治主義の建前が揺らぐ
 「今回のように、これまで駄目だと言っていたものを解釈で変更してしまえば、なし崩しになっていく。立憲主義や法治主義の建前が揺らぎ、憲法や法律によって権力行使を抑制したり、恣意的な政治から国民を保護したりすることができなくなってしまう」
 ―砂川判決は集団的自衛権を意識していない
 「旧日米安全保障条約を扱った事件だが、そもそも米国は旧条約で日本による集団的自衛権の行使を考えていなかった。集団的自衛権を意識して判決が書かれたとは到底考えられない。憲法で集団的自衛権、個別的自衛権の行使が認められるかを判断する必要もなかった」
(中)
2015年9月8日号
■自衛隊内部文書 「重大な国会軽視で、軍部独走」  憲法学者が緊急声明
 自衛隊の統合幕僚監部が戦争法案の成立を前提に、部隊運用計画を記載した内部文書が明らかになった問題で、憲法学者有志は8月21日、記者会見を行い「国会の厳正なる対応を求める緊急声明」を発表した(賛同69人)。
 声明は、「文書は、単に法案成立前に関係官庁が一般的な『分析・研究』を行なうことを越える重大な問題をもっている」と指摘し、「合憲性に深刻な疑義のある法案について、その成立を何らの留保なしに予定して検討課題を示すことは、憲法政治上の重大な問題である」と告発した。
 また、声明は「日米防衛協力の指針」(ガイドライン)が「日本の防衛当局にとっての最上位規範であることを露骨に示すものである」と批判し、「ガイドラインは、政府がアメリカと結んだ政策文書であって、国会の審議や合意を経たものではない。……重大な国会軽視であり、独走であると言わねばならない」と指弾。
 さらに文書が、ガイドラインにも記されていない米軍・自衛隊の指揮系統の中枢となるACM(同盟調整メカニズム)内の「軍軍間の調整所」設置などを検討課題としていることについて、「この文書が法案内容を自衛隊トップに単に周知するための一般的な『分析・研究』文書ではなく、法案成立を前提に自衛隊がとる運用施策を特定の対外政策に結びつけ、速やかに実現することを促す文書であることを示している」「これは議会制民主主義のプロセスよりも防衛実務の事情を優先した対応といわざるをえず、『軍部独走』という批判をまぬがれない」と断じた。
 安倍政権下で、自衛隊が独走し、米軍とともに海外で戦争するための法案の危険性が、いよいよ明白にはなっている。
■政府の国会論議ボロボロ 「存立危機事態」の認定要件で答弁修正
 8月25日の参院安保法制特別委員会で、集団的自衛権行使を可能とする存立危機事態の認定について中谷防衛相は、「武力攻撃を受けた他国からの要請や同意がなければ存立危機事態は認定されない」と修正した。
 これまで政府は「集団的自衛権の行使には、攻撃を受けた国の要請または同意が必要」であるが、要請などは「事態の認定には必要ない」との答弁を繰り返してきた。
 戦争法案の柱である集団的自衛権行使の基本にかかわる答弁が揺らぎ、「根幹部分で政府の認識に曖昧さがあることを露呈した」(共同)。
中谷氏は、答弁の修正を行ったものの法案の規定に明記することは否定した。
 戦争法案が成立すれば、政府の裁量で、なんとでも解釈変更ができることになる。
 また、同特別委で中谷防衛相は、集団的自衛権を行使する存立危機事態における他国軍支援(後方支援)の根拠となる「米軍等行動関連措置法案」に、自衛隊員の安全確保にかかわる規定がないことを認めた。
 安倍首相は、衆院本会議(5月15日)で、自衛隊の安全確保の規定は「全ての法案の中に忠実に、かつ明確に盛り込まれた」と説明していた。
 他国軍支援を定めた重要影響事態法案や国際平和支援法案には、自衛隊の活動を「円滑かつ安全に実施する」などの規定が盛り込まれている。
 中谷氏の答弁は従来の説明とは矛盾しており、審議はたびたび中断したが、中谷氏は「規定はないが、安全に配慮する」「運用で安全を確保する」と強弁した。
 他国軍支援活動(兵たん)は、武力行使そのものであり、自衛隊への危険性は格段に高まる。日本は敵国となり、「殺し、殺される」危険が現実のものとなってくる。
(中)
2015年8月18日号
■戦争法案 参院でも違憲性いよいよ明白に
 衆議院の強行採決に対する国民の怒りと闘いがこれまでにない広がりを見せる中、参院における法案審議が本格化している。政府・与党は9月中旬の成立を狙っており、廃案の闘いはいよいよ正念場を迎える。
 参院審議の主要な論点をあげてみる。(8月3日記)
〈法案の違憲性〉
 衆院に続いて法案の違憲性が相次いで指摘されている。政府は、多くの憲法学者が「集団的自衛権の根拠にならない」と批判している「砂川判決」と「72年政府見解」を持ち出し、「憲法の範囲内だと自信を持っている」と強弁し、破綻した議論にしがみついている(7月14日付号の小欄参照)。
〈集団的自衛権限定行使〉
 政府は、これまで歴代政権が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権は、他国を武力で守る「フルスペック(全部)の集団的自衛権」だと主張し、他国が攻撃され日本の存立が脅かされる場合に認められる「限定的な行使」は容認できるとの憲法解釈を繰り返している。
 民主党の福山議員は、「限定的な集団的自衛権についての国会論議は過去にこれまで何回もあった」と指摘し、「限定容認」も否定した過去の政府答弁や内閣法制局長官の答弁をいくつか例に挙げ、「政府・法制局は限定的な集団的自衛権行使も一貫して違憲とし、否定してきた」と追及。
 横畠内閣法制局長官は、「昨年7月(閣議決定)以前の答弁は、政府として限定的集団的自衛権の観点は持ち合わせていなかった」と衆院における答弁を繰り返し、安倍首相も「閣議決定以前はフルスペックの集団的自衛権のみについて答弁している」として政府が「限定容認」を否定したことはないとの認識を示した。
 歴代政府・法制局答弁との矛盾が明らかになり、憲法解釈の脆弱さが浮き彫りとなった。
〈存立危機事態〉
 安倍首相は当初、ホルムズ海峡の機雷掃海を存立危機事態―集団的自衛権行使の代表例として打ち上げた。その後、根拠が失われつつある中で「典型例ではなく、海外派兵の例外」と修正。続いて持ち出された事例が南シナ海での機雷掃海である。衆院では否定的な答弁だったが、参院では「武力行使の新3要件に当てはまれば対応していく」と、これまた軌道修正した。
 存立危機事態―集団的自衛権発動の要件が極めてあいまいで、歯止めがないため政府の裁量で際限なく広がっていく。
〈兵站は米軍の武力行使と一体化〉
 共産党の小池議員は、兵站(軍事支援)についてテロの標的となり、3千人超の死傷者を出したアフガン戦争やイラク戦争の実態を明らかにしながら、従来の非戦闘地域から戦闘地域での兵站を行う戦争法案の危険性を浮き彫りにした。
 安倍首相は「戦闘地域とならない地域を実施区域に指定し、安全な場所で後方支援を行う。武力行使と一体化しない」と答弁。「法案のどこにも書いてない」とただされると、中谷防衛相は「法案に記述はない」と認めた。
 また、小池氏は海自の内部資料を提示しながら、米軍ヘリが敵の潜水艦を攻撃し、敵潜水艦の魚雷の射程外で待機している海自の護衛艦で燃料の補給を受けた後、再び攻撃に向かう―と指摘したことに対し、防衛相は「戦闘現場―魚雷などの攻撃を受けない安全な場所で活動を行う」と答弁し、問題はないとの認識を示した。さらに、防衛相は「米軍のミサイルや戦車の運搬」「ロケット弾や戦車砲弾などの運搬・提供」について「法律上排除していない」と答え、可能とした。
 これは、どう見ても米軍の武力行使との一体化であり、米軍と一緒に戦争しており、憲法違反は明明白白である。
(中)
2015年7月28日号
■怒 怒 怒……戦争法案の強行採決を糾弾し、違憲立法を断固拒否する
 国民の声や憲法学者の忠告も聞かず、最高裁の判断をねじ曲げ、国会論議の積み重ねをかえりみず、ただただ戦争への道を突っ走る安倍晋三。55年前、岸信介首相が退陣に追い込まれた日と同じ7月15日、安倍・自公政権は、違憲の戦争法案を強行採決した。歴史的暴挙に対する怒りを込め、違憲立法廃案の声をあげ続けよう。
■集団的自衛権の行使容認で「自衛隊合憲」の論拠はくずれた
 戦争法案が、自公の数の力で衆院を通過した。あらためて憲法9条と自衛権・自衛隊について振り返ろう。
 憲法制定当時の政府の憲法解釈は、自衛隊を持つことはもちろん、自衛権すら憲法上認められないというものであった。しかしながら、アメリカの対日政策の変更、とりわけ日本に対する再軍備要求によって、9条の解釈を変更して自衛隊を創設した(1954年)。
 政府の解釈は、@9条は戦力を持つことを禁じている、A9条は独立国家に固有の「自衛権」を放棄したわけではない、Bしたがって、この「自衛権」を行使するための手段として「自衛のために必要な最小限度の実力」(自衛力)を持つことは9条に違反しない、C9条2項が保持しないとする「戦力」とは「自衛のために必要な最小限度」を超える実力のことである、Dよって自衛隊は、「自衛のために必要な最小限度の実力」であって憲法の禁ずる戦力ではない―という論拠で自衛隊は合憲であるとした。
 以上の政府の憲法解釈で明らかなように、その根っこにあるのは、9条のもとにおいて許される自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の実力にとどまるべきものであるということである。したがって、わが国が直接攻撃されていないにもかかわらず、 他国を武力で守る集団的自衛権は「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲」を超えるものであり、憲法上許されない(81年政府答弁書)。
 ところが、ご案内のように安倍・自公政権は、立憲主義と恒久平和主義を踏みにじり、歴代政権の憲法解釈を、一内閣の独断で変更し、戦争法案へと突っ走った。
 本題に戻るが、「必要最小限度の範囲」を超える集団的自衛権の行使は憲法上許されない―これは、「政府の自衛隊合憲論の核心なのである。つまり、自衛隊合憲論といわゆる『集団的自衛権』否認論というのは、論理的に合体していたのである。逆にいえば、いわゆる『集団的自衛権』の行使を容認したなら、これまで政府が言ってきた『自衛隊合憲』の論拠は完全に吹っ飛ぶことになる。いわゆる『集団的自衛権』の行使容認は、従来の政府見解との論理的整合性すらなく、憲法9条に関する従来の政府解釈(それ自体、正当な憲法解釈とは言えないが)を前提にしたとしても、明らかに『違憲』である」(法学館憲法研究所ホームページ/浦部法穂の「大人のための憲法理論入門」より)。
(中)
2015年7月14日号
■戦争法案「合憲」の政府弁明 「黒を白」と言いくるめる論理破綻
 圧倒的多数の憲法学者から戦争法案「違憲」と宣告された安倍政権。「違憲」「廃案」の国民世論が高まるなかで、「合憲」の弁明に躍起だ。
 政府は、性懲りもなく戦争法案合憲の根拠として「砂川判決」と「72年政府見解」を持ち出した。
 「集団的自衛権について砂川判決から何かを読み取れる目をもった人は眼科病院に行ったらいい」(砂川事件弁護団)。
 元被告らの弁護団は「集団的自衛権のあり方やその行使に関して触れるところは全くない」とする抗議声明を出し、「国民を惑わすだけの強弁にすぎない」と批判し、法案の撤回を求めている。
 声明は裁判の争点として「第1に、日米安保条約に基づく米軍駐留は憲法9条2項の『戦力不保持』原則に違反するか、そして第2に、米軍駐留は憲法9条(全体)や前文等の趣旨に反するかの、2つの争点についてなされており、それに尽きている」と指摘。政府が合憲の根拠として判決文から引用する「わが国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」という判示について、「わが国の個別的自衛権を指すものであることは、『わが国が、自国の』とする文辞からしても、また、それが位置づけられている文脈(論脈)からしても疑問の余地はない」と明言している。
 裁判の当事者である元被告らでつくる「伊達判決を生かす会」も声明を発表。「集団的自衛権について審理されたものではない」「最高裁判決の悪用に抗議する」とした。
 砂川判決は1959年。政府の言い分どおり、判決が集団的自衛権の行使を容認しておれば、その後に出された1972年政府見解で「憲法上許されない」とは言わなかったであろう。昨年7月の「閣議決定」まで、歴代政権は72年見解を堅持してきた。
 「武力行使の新3要件」の根拠とされる72年政府見解の論理は、@憲法は自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じていない、A自衛の措置は、外国の武力攻撃によって国民の権利が根底からくつがえされる急迫、不正の事態に対処するためのやむを得ない措置として必要最小限度の範囲にとどまるべきである、B他国への武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は、憲法上許されない―というものである。
 72年見解の全体が「基本的な論理」であり、「集団的自衛権は憲法上許されない」と結論付けている。ところが、昨年の「閣議決定」はBの「結論」と、結論を導く@とAの「基本的論理」を切り離して、「安全保障環境の根本的な変容」を理由に結論だけを180度転換した。
 政府は「基本的論理」を維持しているから「従来の政府解釈の範囲内」と強弁している。衆院憲法審査会で早稲田大学の長谷部恭男教授が「従来の政府見解の基本的な枠組みでは説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがす」(毎日)と指摘したが当然である。時の政権の判断次第で「結論」の内容が変わりかねないことになる。
 さらに、政府は衆院特別委で「安保環境の変容」について、いつから、何をもって、日本の存立を脅かすと判断したかを問われても明確な答弁はできなかった。また、「存立危機事態に陥った国があるか」と問われて「例をあげるのは困難だ」と答弁したが、法律をつくる根拠となる事実がないということだ。
 黒を白と言いくるめる類いの議論である。でたらめなこじつけで従来の政府解釈を踏みにじることは許されない。
 違憲の戦争法案は撤回、廃案しかない。
(中)
2015年7月14日号
■戦争法案「合憲」の政府弁明 「黒を白」と言いくるめる論理破綻
 圧倒的多数の憲法学者から戦争法案「違憲」と宣告された安倍政権。「違憲」「廃案」の国民世論が高まるなかで、「合憲」の弁明に躍起だ。
 政府は、性懲りもなく戦争法案合憲の根拠として「砂川判決」と「72年政府見解」を持ち出した。
 「集団的自衛権について砂川判決から何かを読み取れる目をもった人は眼科病院に行ったらいい」(砂川事件弁護団)。
 元被告らの弁護団は「集団的自衛権のあり方やその行使に関して触れるところは全くない」とする抗議声明を出し、「国民を惑わすだけの強弁にすぎない」と批判し、法案の撤回を求めている。
 声明は裁判の争点として「第1に、日米安保条約に基づく米軍駐留は憲法9条2項の『戦力不保持』原則に違反するか、そして第2に、米軍駐留は憲法9条(全体)や前文等の趣旨に反するかの、2つの争点についてなされており、それに尽きている」と指摘。政府が合憲の根拠として判決文から引用する「わが国が、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと」という判示について、「わが国の個別的自衛権を指すものであることは、『わが国が、自国の』とする文辞からしても、また、それが位置づけられている文脈(論脈)からしても疑問の余地はない」と明言している。
 裁判の当事者である元被告らでつくる「伊達判決を生かす会」も声明を発表。「集団的自衛権について審理されたものではない」「最高裁判決の悪用に抗議する」とした。
 砂川判決は1959年。政府の言い分どおり、判決が集団的自衛権の行使を容認しておれば、その後に出された1972年政府見解で「憲法上許されない」とは言わなかったであろう。昨年7月の「閣議決定」まで、歴代政権は72年見解を堅持してきた。
 「武力行使の新3要件」の根拠とされる72年政府見解の論理は、@憲法は自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じていない、A自衛の措置は、外国の武力攻撃によって国民の権利が根底からくつがえされる急迫、不正の事態に対処するためのやむを得ない措置として必要最小限度の範囲にとどまるべきである、B他国への武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は、憲法上許されない―というものである。
 72年見解の全体が「基本的な論理」であり、「集団的自衛権は憲法上許されない」と結論付けている。ところが、昨年の「閣議決定」はBの「結論」と、結論を導く@とAの「基本的論理」を切り離して、「安全保障環境の根本的な変容」を理由に結論だけを180度転換した。
 政府は「基本的論理」を維持しているから「従来の政府解釈の範囲内」と強弁している。衆院憲法審査会で早稲田大学の長谷部恭男教授が「従来の政府見解の基本的な枠組みでは説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがす」(毎日)と指摘したが当然である。時の政権の判断次第で「結論」の内容が変わりかねないことになる。
 さらに、政府は衆院特別委で「安保環境の変容」について、いつから、何をもって、日本の存立を脅かすと判断したかを問われても明確な答弁はできなかった。また、「存立危機事態に陥った国があるか」と問われて「例をあげるのは困難だ」と答弁したが、法律をつくる根拠となる事実がないということだ。
 黒を白と言いくるめる類いの議論である。でたらめなこじつけで従来の政府解釈を踏みにじることは許されない。
 違憲の戦争法案は撤回、廃案しかない。
(中)
2015年6月23日号
■衆院憲法審査会 憲法学者3人 口を揃えて「戦争法案は9条違反」
 6月4日の衆院憲法審査会に参考人として出席した憲法学者3人が口を揃えて戦争法案について「違憲」と宣告。衆院憲法審査会の場で、法案の根幹に「レッドカード」を突きつけた。
 長谷部恭男・早稲田大教授(自民党推薦)―「集団的自衛権行使は憲法違反だ。従来の政府見解の基本的枠組みでは説明がつかず、法的安定性を大きく揺るがす」(毎日)
 小林節・慶応大名誉教授(民主党推薦)―「憲法9条は海外で軍事活動する法的資格を与えていない。仲間の国を助けるために海外に戦争に行くのは憲法違反だ」(同)
 笹田栄司・早稲田大教授(維新の党推薦)―「内閣法制局と自民党が(憲法との整合性を)ガラス細工のようにぎりぎりで保ってきた。しかし今回、踏み越えてしまった」(同)
 法案の正当性が揺らいでいる。「違憲立法」であるかどうかが国会論戦の焦点となる。(6月10日記)
■憲法研究者 戦争法案反対・すみやかな廃案を求める声明発表
 6月3日、憲法研究者173人が、衆院で審議中の戦争法案に反対し、すみやかな廃案を求める声明を発表した。
 声明は、安保関連法案(戦争法案)について「これまで政府が憲法9条の下では違憲としてきた集団的自衛権の行使を可能とし、米国などの軍隊による様々な場合での武力行使に、自衛隊が地理的限定なく緊密に協力するなど、憲法9条が定めた戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認の体制を根底からくつがえすものである」と断じている。
 廃案を求める理由として、法案策定までの手続きが立憲主義、国民主権、議会制民主主義に反すること。
 また、法案の内容が憲法9条その他に反すること―9条違反の主要な3点として、@歯止めのない「存立危機事態」における集団的自衛権行使、A地球のどこででも米軍等に対し「後方支援」で一体的に戦争協力、B「武器等防護」で平時から米軍等と「同盟軍」的関係を構築―をあげている。
 さらに、声明は法案の前提となっている昨年7月1日の閣議決定と日米ガイドラインをただちに撤回するよう求めている。
 声明に対する賛同者は6月10日時点で217人に。
■戦争法案 「違憲」「廃案」の声高まる
 「憲法第9条に真正面から違反する」―として、日本弁護士連合会は5月29日開催の総会で、「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」を採択した。
 宣言は戦争法案について、「日本国憲法前文及び第9条が規定する恒久平和主義に反し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものであり、立法により事実上の改憲を行おうとするものであるから、立憲主義にも反している」としている。
 社会文化法律センターなど法律家6団体が2日、戦争法案の廃案を求める「共同アピール」を発表した。アピールは「広範な国民とともに、日本を戦争する国にする法案の即時廃案を求める」と強調。
 立憲政治の回復をめざして行動する憲法学者や政治学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」(共同代表・樋口陽一東大名誉教授ら)は6月6日、シンポジウム「立憲主義の危機」を開いた。
 佐藤幸治京大名誉教授(憲法学)は基調講演で、「日本国憲法はグローバルスタンダードの憲法になっており、第2次世界大戦の大悲劇を受けて捉え直された立憲主義を良く具現化している」と指摘。「根幹を安易に揺るがしてはならない」(東京新聞)と、憲法の根幹にある立憲主義を脅かす改憲の動きを批判した。
(中)
2015年6月9日号
■ヤッパリ! 正体は「平和安全法制」という名の戦争法案
 羊頭狗肉―法案の名前に「平和と安全」という言葉をまぶし、国民を騙そうとすることをいう。別名「偽装表示」ともいう。
 「平和安全法制」という名の「戦争法案」の衆院審議が始まっているが、5月28日までの3日間の論議をつうじて「平和安全法制」の正体が明白になってきている。  安倍首相は、法案への国民の反発を抑え込もうと「専守防衛は不変」「海外派兵は憲法上、一般に許されない」などと答弁しながら、ホルムズ海峡の機雷除去など海外で武力行使する集団的自衛権行使の例外をどんどん広げている。
 また、米軍や他国軍への軍事支援を拡大し、活動地域を「戦闘地域」にまで広げておきながら「自衛隊員のリスクは増大しない」「 (法的根拠なしに)戦闘がないと見込まれる場所」と繰り返している。
 首相は「一般に」「例外として」などを乱発しているが、法案が成立さえすれば、後は「何でもあり」の魂胆が透けて見える。
 重大な問題は、政府の裁量で「存立危機事態」や「重要影響事態」の判断が際限なく広がることだ。政府は「すべての情報を総合して判断する」と繰り返し強調している。われわれは秘密保護法でチェックが制約される。
 稀代の悪法は廃案しかない。
■切れ目のない戦争へ/一目でわかる戦争法案
(1)集団的自衛権の行使
〈何が変わる〉
 集団的自衛権が行使可能に=自衛隊法、武力攻撃事態法の改定→武力攻撃・存立危機事態法に
〈何をする〉
・日本が武力攻撃されていなくても時の政府が、「新3要件」に基づき「存立危機事態」と判断すれば、米国など他国を防衛する集団的自衛権を発動し、地球上のどこでも武力行使が可能に ・政府想定では、ホルムズ海峡に機雷が敷設されるエネルギー危機も「存立危機事態」と判断し、中東地域での機雷掃海などの武力行使も可能に
〈何が問題〉
・憲法を根底からくつがえし、米国のあらゆる戦争に自衛隊が参戦 ・「存立危機事態」―武力行使の要件が、極めてあいまいで歯止めがない。政府の裁量で集団的自衛権の発動、武力行使が際限なく広がる
(2)軍事支援の拡大
〈何が変わる〉
 自衛隊の後方支援(軍事支援)の拡大=自衛隊法、PKO協力法、周辺事態法などの改定と新法「国際平和支援法」の制定。周辺事態法の改定→重要影響事態法に
〈何をする〉
・現行の周辺事態法から「わが国周辺の地域」を削除。また現行法にある「後方地域」を外し「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と政府が判断すれば、地球規模で米軍や他国軍を軍事支援
・新法「国際平和支援法」は米軍や他国軍への戦争支援のために、いつでも、どこでも、どんな戦争にも自衛隊を派兵するもの
・「イラク特措法」などにあった「非戦闘地域」(「戦闘地域に行かない」)を削除し、戦闘地域でも活動が可能
・弾薬の提供や武器の輸送を解禁
・PKOでの「任務遂行のための武器使用」を追加し、巡回・警備活動などの治安維持活動や他国部隊を防護する「駆けつけ警護」の任務が可能に
・国連が統括しない活動に参加
・(グレーゾーン事態)日本の防衛に関わる活動に従事する米軍や他国軍の武器を防護するための武器使用
〈何が問題〉
・戦地に自衛隊を派兵し、「殺し、殺される」戦闘を行うことに
・新たな活動の拡大によって自衛隊への危険性は格段に高まる
(中)
2015年5月26日号
■切れ目ない戦争へ 戦争法めぐる攻防本格化
 集団的自衛権の行使を具体化するための戦争法案をめぐる攻防が本格化する。
 政府は、新設する「国際平和支援法」(海外派兵恒久法)と、自衛隊法や武力攻撃事態法など10の現行法の改定案を一括した「平和安全法制整備法」の2本の法案を国会に提出。
 すべてが、自衛隊が世界中であらゆる米国の戦争に参加し、軍事支援をする法制である。会期を大幅延長してでも戦争法案の成立を狙う。
 集団的自衛権行使の法制化は、現行の武力攻撃事態法の中に「存立危機事態」が盛り込まれ、「武力攻撃・存立危機事態法(事態対処法)」に改定される。この法律には、@武力攻撃事態等(武力攻撃事態と武力攻撃予測事態)とA存立危機事態の2種類の事態が並列されている。「存立危機事態」とは、「武力行使の新3要件」の「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とされ、時の政権が「存立危機事態」と判断すれば、他国を防衛する集団的自衛権を発動し、武力行使が可能となる。「存立危機事態」の判断は政府の裁量で際限なく広がっていく。
 3つの海外派兵法制で自衛隊の派兵が歯止めなく拡大する。
 周辺事態法は、名称を「重要影響事態法」に変え、抜本的な改定を行っている。「日本の平和および安全の確保」が名目でありながら、現行法から「わが国周辺の地域」を削除し、また、現行法にある「後方地域」を外すことによって「重要影響事態」と認定さえすれば、地球規模で米軍や他国軍への軍事支援を行うことになる。
 後方支援活動の内容は現行法の補給、輸送などに「弾薬の提供」「発進準備中の戦闘機への給油、整備」なども加わる。
 新法の「国際平和支援法」は、米軍や他国軍への戦争支援のために、いつでも、どこでも、どんな戦争にも自衛隊を派兵するもの。国際社会の平和と安全を脅かす事態(国際平和共同対処事態)で発動。「テロ特措法」などにあった「非戦闘地域」の制約がなくなり、戦闘地域でも活動が可能となる。
 「重要影響事態法」と同様、後方支援活動(兵たん支援)は、武力行使そのものであり、自衛隊への危険性は格段に高まる。ましてや「テロ特措法」などにあった「戦闘地域に行かない」という歯止めを外せば、日本は敵国となり「殺し、殺される」危険が現実のものとなってくる。
 PKO協力法の改定では、国連が統括しない人道復興支援活動や治安維持(安全確保)活動を追加し、武器使用の権限を拡大して「任務遂行のための武器使用」を容認。「駆けつけ警護」として「平和維持活動等に従事する関係者の生命及び身体の保護」も追加する。
 国連が統括しない多国籍軍での活動である「国際連携平和安全活動」への任務拡大で、これまでの活動と比べて武力勢力などと衝突する危険が質的に高まる。<
(5月11日記)
■明文改憲への策動 国民愚ろうの「お試し改憲」
 衆院憲法審査会は5月7日、改憲に関する自由討議を行った。明文改憲に向けて改憲原案のテーマの絞り込みを急ぐ自民党の提案によるもの。自民党の船田元議員は、最優先で議論すべきテーマとして「緊急事態条項」「環境権」「政規律条項」をあげ、改憲原案の取りまとめを強調した。緊急事態条項については共産党を除く各党が言及した。
 9条改憲の本音を隠し、政党や国民が受け入れやすいテーマで、最初の改憲原案をつくろうという魂胆である。改憲先にありきの「お試し改憲」は許されない。
(中)
2015年4月28日号
■あらゆる米国の戦争を支援し、参戦する戦争法とガイドライン再改定の策動
 戦争法制の整備と日米防衛(軍事)協力のための指針(ガイドライン)の見直し作業が一体のものとして進んでいる。
 自民、公明両党は4月14日、安保法制(戦争法制)をめぐる与党協議を再開した。3月20日に合意した両党の法制の骨格を踏まえ、政府が作成した法案原案を協議している。4月下旬には合意し、政府は5月の連休明けの閣議決定をめざし、国会提出する。6月24日までの会期の大幅延長を狙う。
 いよいよ、5月国会が、憲法の恒久平和主義と立憲主義に違反し、戦後70年の安保政策を根本的に転換する戦争法案阻止闘争の正念場となる。
 一方、自衛隊と米軍の協力のあり方や役割分担を定めるガイドラインの再改定については、4月8日の中谷防衛相とカーター米国防長官の会談で、両政府が協議を加速させることで一致した。今月27日に開く外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)で正式に合意する見通しである。
 昨年10月に公表されたガイドライン再改定の「中間報告」には、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の内容を適切に反映することや「周辺事態」という地理的限定を外し、日米軍事協力を地球規模に広げることなどが盛り込まれている (本紙が読者の手元に届く時点では、再改定の内容も明らかになっているであろう)。

■読売・全国世論調査 9条明文改憲反対が6割
 読売新聞社は毎年、憲法に関する全国世論調査を行っているが、3月23日付紙面で郵送方式による(1月28日〜2月28日)調査結果を発表した(カッコ内は昨年)。
 それによると、改憲賛成は51%(42%)、反対は46%(41%)、それぞれ9%、5%増えた。
 9条改憲については、「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」35%(30%)。「これまで通り解釈や運用で対応する」40%(43%)と「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」20%(17%)で、その合計は60%。9条の明文改憲反対派は昨年と同様。
 9条1項の改憲に賛成は14%で、反対は84%。2項については賛成46%で、反対は50%と接近している。
 集団的自衛権を限定的に使えるようになったことを、「評価する」が53%で、「評価しない」の45%を上回った。
 読売調査の度に思うことだが、9条1項と2項の改憲反対の差が34%もあることである。1項の「戦争放棄」を現実のものとするために、「戦力不保持」「交戦権否認」を規定した2項がある。2項が海外での武力行使を許さない歯止めになってきた。1項と2項が不可分一体であることの意義をもっと、もっと世論に働きかける活動が求められていないか。
 9条に関する世論調査の結果にも明らかなように、われわれは、まだ、9条の明文改憲を許していない。「戦争する国」への暴走を止めよう。
(中)
2015年3月24日号
■安保法制の与党協議 切れ目のない「戦争への道」 いよいよ明確に
 政府は3月6日、集団的自衛権の行使を具体化する自民、公明両党の安保法制協議で、「武力行使の新3要件」に基づく集団的自衛権が行使できる状況を「新事態」(仮称)と定義し、自衛隊法と武力攻撃事態法に盛り込む改定案を初めて正式に示した。
 「新3要件」は、他国に対する武力攻撃が発生し、日本が攻撃されていなくても、日本の存立や国民の生命が根底から覆される明白な危険が生じれば集団的自衛権の行使は可能とした。
 他国を武力で守る集団的自衛権行使の法制化であり、首相が自衛隊に防衛出動を命令する。「新事態」の名称は「存立危機事態」とする方向で調整。
 与党協議は2月13日から始まったが、4回目にして政府が想定する安保関連法案(戦争関連法案)の大枠がほぼ示されたことになる。「切れ目のない安保法制」を口実にして、「歯止めのない戦争法制」がつくられる。
 与党協議で明らかになってきた安倍政権の「安保法制」をおさらいする。
<周辺事態法の改定>
 日本周辺の有事に、自衛隊が米軍に輸送や補給などの支援を行う根拠法。
 政府の提案は、「我が国周辺の地域」という地理的制約を撤廃し、周辺以外にも自衛隊を派兵。米軍以外の他国軍への支援も可能にする。武器・弾薬の提供も認める。イラク特措法などに明記されてきた「戦闘地域に行ってはならない」との歯止めを外し、「戦闘地域」での活動を可能とする。
<恒久法の新設>
 政府の判断で、いつでもどこでも派兵を可能とする新法=恒久法の制定を目論む。
 政府案は、米軍中心の「有志国連合」や戦闘に参加している他国軍への支援を明記。自衛隊の活動範囲を制約してきた「非戦闘地域」の概念を取り払い、「現に戦闘行為を行っている現場」(昨年7月の閣議決定)以外ならどこでも活動できる。
周辺事態法と恒久法で地球上いたるところに派兵し、米軍のあらゆる戦争を支援することが可能となる。
<PKO協力法の改定>
 現行法は、武器使用を正当防衛などの「自己保存」目的に限定。 「事態発生時に迅速に対応する」ためとして武器使用権限を拡大。「駆けつけ警護」や「任務遂行のための武器使用」も認める。
<集団的自衛権行使の法制化>
 前述のように、「新3要件」に基づく自衛隊法と武力攻撃事態法の改定で自衛隊が海外で武力行使ができるようにする。
 他国を防衛する集団的自衛権の行使は自衛隊の「主たる任務」に加わる。
<その他>
 以上のほか、政府は与党協議に、米軍以外の艦船や武器なども防護対象とすることや在外邦人の救出、強制的な船舶検査、他国軍との物品役務相互提供協定の適用対象拡大などの検討を提案。
憲法の恒久平和主義と立憲主義に違反し、日本の安全保障政策を根本的に転換する「戦争法」に「断固反対」の声をつきつけよう(3月12日記)。
(中)
2015年3月10日号
■地球規模で自衛隊を海外派兵 戦争関連法案で歯止めがなくなる
 自民、公明両党は、集団的自衛権行使容認を具体化するための戦争関連法案の与党協議を本格化している。
 政府は2月20日の与党協議に、自衛隊の海外派兵に関する法整備として、@周辺事態法の改定、A恒久法の新設、BPKO協力法の改定の素案を提案した。
 周辺事態法は、朝鮮半島や台湾海峡有事などを想定し、1999年に制定。「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と規定し、日本への武力攻撃が行われていなくても、武力介入する米軍に自衛隊が輸送や補給などの軍事支援を行う根拠法となっている。
 政府の提案は、「我が国周辺の地域」という地理的制約を撤廃し、日本周辺以外にも自衛隊の派兵地域を広げ、米軍以外の他国軍への支援も可能とする。また、支援内容もこれまで認められていない武器・弾薬の提供もねらっており、派兵にあたっては国連決議も必要ないとしている。
 いつでもどこでも自衛隊を海外派兵するための「恒久法」は、自民党政権が長年その成立を目指してきたが、アフガン戦争の際のテロ特措法やイラク戦争でのイラク特措法など自衛隊の派兵に合わせて時限立法の特別措置法で対処してきた。
 しかし、特措法では国会審議に時間を要し、機動的な対処ができないとして、政府の判断でいつでもどこでも派兵を可能とする新法=恒久法の制定を目論む。
 政府の素案では、米軍中心の「有志国連合」や戦闘に参加している他国軍への支援を明記。自衛隊の活動範囲を制約してきた「非戦闘地域」の概念を取り払い、「現に戦闘行為を行っている現場」(昨年7月の閣議決定)以外ならどこでも活動できる。
 周辺事態法で地理的制約を撤廃し、「非戦闘地域」の概念を取り払えば、自衛隊を地球上いたるところに派兵し、米軍のあらゆる戦争を支援することが可能となる。
 PKO協力法の改定で、政府は、これまで武器使用を正当防衛などの「自己保存」目的に限定してきたが、「事態発生時に迅速に対応する」ため、武器使用権限を拡大するとしている。「駆けつけ警護」や「任務遂行のための武器使用」も認めることになる。
 戦争関連法案で集団的自衛権行使の法的根拠は、自衛隊法や武力攻撃事態法の改定に盛り込む。
 安倍内閣が閣議決定した「武力行使の新3要件」で、他国に対する武力攻撃が発生し、日本が直接攻撃を受けていなくても、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」が生じれば武力の行使=集団的自衛権の行使はできるとした。このような事態を「存立事態」と定義し、自衛隊法や武力攻撃事態法に盛り込む。
 「明白な危険」の判断を行うのは、ときの政権である。武力行使の範囲が際限なく広がっていく(2月10日付の小欄参照)。
(中)
2015年2月24日号
■安倍首相 改憲発議は来年夏の参院選後に
 安倍首相は2月4日、船田元・党憲法改正推進本部長と首相官邸で会談し、最初の改憲発議の日程について来年夏の参院選後とする考えで一致した。改憲発議の日程について首相が言及するのは初めて。自民党が改憲に向け、本格的に動き始めたもので重大である。
 船田氏は会談後、記者団に、改憲テーマについて、今国会中に憲法審査会で議論を始めたい意向を示した。
 自民党は昨年の衆院憲法審査会に、武力攻撃や大規模な自然災害で個人の権利を制限する「緊急事態条項」や次世代への負担先送りを制限する「財政規律条項」、国や国民の環境保全への責任を定める「環境権」を提示。共産、社民党を除く7党が必要性について言及している。
 9条改憲が本丸であろうが、いきなり9条の改憲では国民の大きな反発を招く。国会(政党)や国民が賛成しやすいテーマに絞り込み、最初の改憲原案をとりまとめようという魂胆である。
 与党(自・公)の勢力は、衆院では3分の2を超えているが、参院では与党に維新や次世代の党を加えても3分の2に届かない。安倍首相は来年夏の参院選で議席を上積みし、発議に必要な3分の2議席の獲得を狙う。
 「自民党が憲法改正に向けて描く『ロードマップ』原案が2月7日、判明した」(産経)。それによると、秋の臨時国会=改憲テーマの絞り込み→来年の通常国会=憲法改正原案提出→参院選後の臨時国会=憲法改正発議→再来年国民投票実施―というもの。
■首相 集団的自衛権行使で「地理的制約ない」
 自民、公明両党は、集団的自衛権行使容認を具体化する戦争関連法案(安全保障関連法案)の本格的な協議を再開した。安倍内閣は、5月連休明けに法案の国会提出を狙う。
 一方、国会では補正予算を審議した衆参予算委員会で、安倍首相が「集団的自衛権行使で地理的制約を設ける必要はない」との認識を示すなど、安保法制整備の危険性が一層鮮明になった。
 首相は2月2日の参院予算委で、集団的自衛権行使に関連して「地理的にどこだから当てはまらない、近くなら当てはまる、ということではない」(時事)と述べ、地理的制約なしに地球上どこでも派兵できるとの考えを示した。
 また、首相は同予算委で「同盟国による先制攻撃をきっかけに生じた事態でも、武力行使の新3要件(昨年7月の閣議決定)を満たせば日本の集団的自衛権行使を排除しない」(共同)と強調。米国の先制攻撃によって生じた戦争であっても自衛隊が参戦することを明言した。
 さらに、「イスラム国」による日本人人質事件を口実に、首相は「自衛隊の持てる能力を生かし、救出に対応できるようにすることは国の責任だ」(毎日)と答弁し、安保法制整備への意欲を示した(1月29日衆院予算委)。
 政府は2月6日の閣議で、「イスラム国」のような国家と認めていない相手も集団的自衛権行使の対象となり得るとの答弁書を決定した。
(中)
2015年2月10日号
■15年度予算案 軍事費過去最高 「戦争する国」づくりを一層加速
 通常国会が始まっている(会期末6月24日)。前半には15年度予算案が、5月連休明けには戦争関連法案(安保法制整備)が論戦の焦点となる。
 15年度予算案は、大企業優遇・大軍拡・社会保障の大改悪など「安倍カラー」が鮮明になっている。その典型が軍事費。15年度は過去最大の4兆9801億円に達し、14年度補正予算案と合計すると5兆円を超える。12年の第2次安倍政権発足後、3年連続の増加となる。いまや軍事費は聖域扱いとなり、安倍軍拡路線が異常なほど突出している。
 その中身をみると、集団的自衛権行使を容認した閣議決定を踏まえ、「専守防衛」の理念が後ろに追いやられている。垂直離着陸輸送機オスプレイ(5機)や水陸両用車(30両)、無人偵察機「グローバルホーク」(3機)、新イージス艦、ステルス戦闘機F35(6機)― など、海外侵攻能力を高めるものが目立っている。
 その狙いは、「海外で戦争する国」づくりを一層加速することである。軍事大国への道を歩む安倍暴走政治予算を認めることはできない。
■通常国会 日本の進路を決める分岐点となる 戦争関連法を許すな!
 安倍政権は通常国会で、昨年7月に閣議決定した集団的自衛権の行使を可能にする安保法制整備(戦争関連法)を一気に推し進めようとしている。防衛省設置法や自衛隊法、武力攻撃事態法など10本を超えると見込まれている。安倍・自民党政権の狙いどおりに安保法制が整備されれば、通常国会が日本の進路を決める分岐点になるであろう。
 安倍政権は、国民の批判を恐れて統一自治体選挙後(5月連休明け)に、法案提出を先送りしたが、その骨格が明らかになってきている。
 安倍内閣と自民党は「集団的自衛権を行使する場合の自衛隊の出動要件として、新たに『存立事態』という概念を自衛隊法や武力攻撃事態法に盛り込む方向で調整している」(時事通信)。
 安倍内閣が閣議決定した「武力行使の新3要件」で、他国に対する武力攻撃が発生し、日本が直接攻撃を受けていなくても、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」が生じれば武力の行使=集団的自衛権の行使はできるとした。このような事態を「存立事態」と定義し、自衛隊法や武力攻撃事態法を改定する。
 ところで、「明白な危険」とは何かが明確ではない。その判断を行うのは、ときの政権である。自衛隊の海外での武力行使の範囲が際限なく広がっていく。
 一方、アフガン戦争やイラク戦争では、自衛隊の派兵に合わせて時限立法の特別措置法で対応してきたが、特措法では国会審議などに時間を要するため、安倍政権は、いつでもどこでも自衛隊を派兵できるようにするため、恒久法の制定を狙っている。
 国民的大運動で、戦争関連法を阻止しよう。
(中)
2015年1月20日号
■首相年頭所感=“新暴走宣言”より一層激化する国民との矛盾 全力で反撃の年に
 安倍首相は1日、年頭所感を発表した(官邸ホームページ)。
 年末の総選挙で「信任という大きな力を得て、今年は、さらに大胆に、さらにスピード感を持って、改革を推し進める」。そして、「日本を、再び、世界の中心で輝く国としていく」と決意を披歴した。
 解釈改憲で集団的自衛権行使を容認するという狼藉をやってのけた安倍首相のこと、明文改憲をも視野に入れ、「海外で戦争する国」づくりに向かって、さらに暴走を続けると宣言したことにほかならない。
 総選挙で公約がすべて支持されたわけではない。比例代表選挙で自民党の絶対得票率は16・99%にすぎず、とうてい「信任された」などと言えたものではない。
 また、改憲や安保政策(集団的自衛権)などは選挙で正面から論じられたわけでもない。公約には「集団的自衛権」の文字はなかった。選挙後の世論調査(共同通信)では、いずれも「反対」が過半数を占めた。
 安倍政権が暴走すればするほど、国民との矛盾はいよいよ深まり、激しくなってくる。2015年を反撃の年とするため、まなじりを決して抗っていかねばならない。
■2014年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・1日 安倍政権、解釈改憲で集団的自衛権の行使を容認する「閣議決定」を強行
・5日 公明党の山口代表、7・1閣議決定について「平和主義を堅持する結論を導いた」と評価
・14日 横畠内閣法制局長官、集団的自衛権行使を可能にする新たな武力行使3要件について、「憲法をめぐる議論と整合し、合理的な解釈の範囲内」と明言
〈8月〉
・5日 政府、閣議で2014年版「防衛白書」了承。集団的自衛権行使容認後、初の白書で13年版以前とは大きく一変
・18日 沖縄防衛局、民意を踏みにじり、辺野古沖の海底ボーリング調査開始
〈9月〉
・3日 第2次安倍改造内閣発足
・29日 第187臨時国会開会
・30日 安倍首相、衆院本会議で国連の集団安全保障について「政府が、武力行使の新3要件を満たすと判断すれば参加できる」と答弁
〈10月〉
・6日 安倍首相、衆院予算委で集団的自衛権を行使すると判断した情報が、秘密保護法によって国民に非公開になるとの認識を示す
・8日 日米両政府、ガイドライン再改定の「中間報告」を公表。「周辺事態」という地理的限定を外し、日米軍事協力を地球規模に広げる
・14日 安倍内閣、秘密保護法の運用基準と施行令を閣議決定
・21日 中央教育審議会、「道徳」の教科化を下村文科相に答申
〈11月〉
・6日 衆院憲法審査会、与野党7党が(共産党・社民党を除く)「緊急事態条項」の必要性に言及
・16日 沖縄県知事選挙、辺野古新基地建設反対を訴えた翁長雄志候補が大勝
・21日 衆院解散
〈12月〉
・2日 総選挙公示
・10日 特定秘密保護法施行
・14日 総選挙投開票、自公が3分の2超の議席を維持。辺野古新基地反対を訴える「オール沖縄」の4候補が完勝
・19日 日米両政府、ガイドラインの再改定時期を来年前半に延期すると発表
・24日 第188特別国会開会
 第3次安倍内閣発足。安倍首相、会見で改憲に関し「歴史的なチャレンジ」と語る
(中)
2014年12月23日号
■戦後70年―2015年こそ憲法と9条をめぐる正念場
 戦後最低の投票率となった総選挙で、自公は3分の2超の議席を獲得した。これによって安倍自公政権は、16年の参院選で与党が過半数割れしても、自民党だけで法案の衆院における再可決が可能となる。また、改憲の発議要件を衆院で満たすことになる。安倍首相にとっては思惑通りの大勝に終わった。
 異常だとまで言われた突然の解散・師走総選挙。安倍首相の本音は、表向きとは異なってアベノミクスは二義的なものであり、その化けの皮がはがれないうちに長期政権への基盤を固め、向こう4年間に明文改憲の悲願を達成したいということであろう。
 自民党はすでに衆院憲法審査会で「緊急事態条項」の新設を提案しており、2016年夏の参院選をめどに最初の改憲発議案とすることを狙っている。
 来年の通常国会では集団的自衛権の行使を可能にするための自衛隊法改定などの法整備(戦争法制)や「日米ガイドライン」の再改定が最大の焦点となる。総選挙の結果を受け、安倍自公政権はますます解釈・明文改憲へのアクセルを踏み込むであろう。
 さて、総選挙における民意を最もよく反映する比例代表をみると自民の全有権者に占める比率(絶対得票率)は16・99%にすぎない。自民の結果は「少数派」であり、国民の信任を得たとはとてもいえない。議席数は小選挙区制度によるものだ。
 戦後70年を迎える来年は、文字どおり憲法にとっての正念場となる。「安倍政治」にノーを突きつけた「多数派」の人々に依拠し、改憲阻止の戦線をますます広げよう。
■2014年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
・ 1日 安倍首相、年頭所感で「『積極的平和主義』こそが、『21世紀の看板』である」と強調
・17日 秘密法の年内施行に向け、秘密指定の基準などを検討する「情報保全諮問会議」が初会合
・19日 名護市長選挙、辺野古新基地建設反対の現職稲嶺氏が大差で勝利
・24日 第186通常国会開会
〈2月〉
・ 4日 安倍首相、衆院予算委で96条改憲を強調
・ 5日 参院予算委で安倍首相、集団的自衛権行使容認について、「政府の憲法解釈の変更で可能であり、憲法改正は必要ない」と明言
・12日 安倍首相、衆院予算委で集団的自衛権行使をめぐり、「(政府の憲法解釈の)最高責任者は私だ」と立憲主義を否定
・26日 小松内閣法制局長官、解釈変更による集団的自衛権行使を容認
〈3月〉
・ 5日 安倍首相、「自衛権発動3要件」の拡大解釈の検討を表明
・14日 参院予算委で安倍首相は「河野談話」は見直さないと言明
〈4月〉
・1日 政府、「武器輸出3原則」を撤廃し、輸出解禁の「防衛装備移転3原則」を閣議決定
・8日 安倍首相、民放番組で集団的自衛権行使の限定容認を明言
〈5月〉
・15日 安倍首相の私的諮問機関「安保法制懇」、集団的自衛権行使と国連の「集団安全保障」への参加を「憲法解釈の変更」で容認することを求める報告書を政府に提出
 安倍首相、記者会見で解釈変更による行使容認を検討すると表明
〈6月〉
・ 1日 菅官房長官、集団的自衛権行使容認を「日米ガイドライン」の再改定に反映すると表明
・13日 改憲手続き法改定案、参院本会議で可決、成立
・26日 公明党の山口代表、憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認を表明
(中)
2014年12月9日号
■「安倍改憲」 立憲主義への飽くなき攻撃―2年の大罪を検証する
 総選挙の真っただ中。14日に「安倍政治」に対する審判が下される。
 第2次安倍内閣発足から2年。“改憲のキバ”をむきだしにし、立憲主義の破壊攻撃を繰り返した。そのため、憲法は重大な岐路に立たされた。2年間の「安倍改憲」の大罪を検証しておきたい。
《96条改憲の策動》
 安倍首相は、12年末に首相に返り咲いた直後から、改憲のハードルを下げるために「96条改憲」を目論んだ。しかし、「裏口入学」「姑息な手段」「立憲主義の破壊」など、国民世論の高まりによって挫折に追い込まれた。
《戦争の司令部―国家安全保障会議設置を強行》
 秘密保護法と一体のものとして審議されていた「国家安全保障会議」(日本版NSC)設置法を、数の力で強行成立させた(13年11月27日)。
 NSCは、外交・軍事の司令塔として、平時にも有事にも対処する戦争の司令部の役割を担う。NSC設置法成立後、間髪入れずに、軍事大国をめざして「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」を閣議決定した(13年12月17日)。
 「安保戦略」は集団的自衛権の行使を視野に「積極的平和主義」を基本理念として明記。「安保戦略」は「専守防衛」や「軍事大国にならない」など歴代政権の防衛政策の基本方針(1957年閣議決定)に代わるものであり、戦後日本の安保戦略の大転換となる。
《国民の目・耳・口をふさぐ秘密保護法強行制定》
 安倍政権は、国民の知る権利や言論の自由など基本的人権を侵害する「特定秘密保護法」を、暴挙に暴挙を重ね強行成立させた(13年12月6日)。
 さらに、安倍内閣は、秘密の指定や解除のあり方を定めた運用基準と施行令を、秘密法の廃止を求めるものも含め約2万4千通のパブリックコメント(意見公募)が殺到したにもかかわらず、これらに目もくれず、根幹に触れない微修正で閣議決定した(14年10月14日)。施行は14年12月10日。
《究極の9条解釈改憲―集団的自衛権行使容認を閣議決定》
 安倍・自公政権は、立憲主義と恒久平和主義を踏みにじり、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した(14年7月1日)。
 憲法9条が許容する自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきであり、集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるため行使できない―これが歴代政権の一貫した憲法解釈である。
 国会審議もほとんどないまま、50年余にわたって積み重ねられてきた歴代政府の憲法解釈を、一内閣、それも安倍首相の私的諮問機関にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書に基づいて変えるという暴挙は、断じて許されない。
 政府は、集団的自衛権の行使を具体化するため自衛隊法改定などの法整備(「戦争法制」づくり)を準備しており、来年の通常国会後半に提案するとしている。
《ガイドラインの見直し―地球上いたるところで米軍支援》
 日米両政府は、「日米軍事協力の指針」(ガイドライン)の見直し作業を進めているが、「中間報告」を公表した(14年10月8日)。「中間報告」は、「周辺事態」という地理的限定を取り払い、日米軍事協力を地球規模に広げた。
 「安倍改憲」の大罪を俯瞰してきたが、以上のほか「武器輸出3原則」の撤廃と解禁、教育への権力介入(教育委員会制度の見直しや「道徳」の教科化など)、根本的な欠陥を放置した改憲手続法の改定など、憲法破壊の罪は重い。
 総選挙で鉄槌を下そう。
(中)
2014年11月25日号
■秘密保護法 安倍首相「私が指定した秘密を、私がチェックする」?
 特定秘密保護法の施行が迫る11月6日、学者や労働組合などでつくる実行委員会が全国から集めた反対署名約56万筆を、民主や共産、社民、生活などの国会議員に手渡した(東京新聞)。
 秘密保護法の施行が12月10日に予定されているが、11月4日の参院予算委員会で、共産党の仁比聡平議員によって秘密法の危うさが、あらためて浮き彫りになった。
 特定秘密は、内閣官房や防衛省、外務省などの「行政機関のトップ」によって指定される。
 指定が適正かチェックするのが、@内閣保全監視委員会(官僚のトップ=事務次官級で構成)A独立公文書管理監(官僚のナンバー2の人=審議官級で構成)B情報保全監察室(課長クラス20人程度で構成)。チェックするのは官僚のみ。“身内のチェック”で、外部チェックが働かない仕組みである。政府は、これを「重層的チェック」と強弁する。
 仁比氏は具体的な例をあげて告発した。外交・防衛の司令塔とされる国家安全保障会議(NSC)は内閣官房に属している。内閣官房の長は総理大臣である。NSCの特定秘密は安倍首相が指定して、安倍首相がチェックすることになる。
 「これが重層的なチェックなんですか」との追及に対して、安倍首相は「国民から選ばれた国会議員によって選出された私が、しっかりと国民の立場に立って、行政府が行った秘密指定をチェックしていく」と答弁にもならない答弁。何様のつもりか。
 さらに、首相は「民主主義の機能は選挙によって政権が交代する。政権が交代する中で、後の政権によって十分にチェックされる」とも答弁。「政権交代があるのだから秘密法に第三者のチェックは要らない、と言っているようなものだ。民主政治の仕組みを逆手に取った暴論であり、容認できない」(信濃毎日新聞社説)。
 政府の恣意的な秘密指定を防ぐためには、行政機関から完全に独立した「第三者機関」が必要である。稀代の悪法である秘密法は廃止するしかない。施行されたとしても、それで終わりではなく、廃止の声を上げ続けよう。
■日米軍事協力で常設機関 日頃から緊密な情報共有や調整
 日米両政府は、日米軍事協力の指針(ガイドライン)の見直し作業を進めているが、その柱となる「中間報告」(10月8日発表)は、自衛隊が米軍とともに「海外で戦争する国」に大きく踏みだすことを確認している。
 このほどNHKは、「ガイドラインの見直しに伴って、グレーゾーン事態などにも迅速に対応できるようにするため、自衛隊と在日米軍が日頃から緊密に情報共有や調整を行う常設の機関を置く方向で検討を進めている」と報じた。
 このため、現行のガイドラインよって有事に活用するために設けられている「日米共同調整所」を常設機関としたうえで、有事だけではなく日頃から情報共有や調整を行うとしている。
(中)
2014年11月11日号
■「道徳」教科化の狙い  国が価値観押しつけ  「戦争する国」へ思想統制
 文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」(中教審)は10月21日、現在は教科外活動として実施している小中学校の道徳を、国の検定教科書を使い、学習評価を行う正式な教科とするよう下村文科相に答申した。
 文科省は2018年度にも実施する予定で、道徳に関する学習指導要領の改定や教科書の検定基準づくりに入る。文科省作成の副教材「私たちの道徳」には「規範意識」や「愛国心」が柱として盛り込まれている。国の検定教科書の導入によって「政権が特定の価値観を押しつけ、子どもたちの思想統制につながるという懸念は根強い」 (東京新聞)。
 安倍首相は、かねてから「戦後日本の枠組みは憲法はもちろん、教育方針の根幹である教育基本法まで、占領時代につくられた」(2006年発行「美しい国へ」)と、憲法と教育基本法を目の敵にしてきた。第1次安倍内閣(06年9月)が真っ先に手をつけたのが教育基本法改悪で、愛国心条項を盛り込んだ。
 改憲は本年7月、解釈改憲で集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行し、「海外で戦争する国づくり」へ突き進んでいる。  道徳教育の強化は、06年の第1次内閣からの「宿題」として残されていた。このたびの「中教審」答申は、戦前の「教育勅語」―「修身」などによって子どもたちを戦争に駆り立てた軍国主義教育をほうふつさせる。
■秘密法 欠陥残ったまま運用基準を閣議決定
 安倍内閣は、国民の「知る権利」を侵害する秘密保護法を12月10日に施行するため、秘密の指定や解除のあり方を定めた運用基準と施行令を閣議決定した(10月14日)。
 運用基準については、法の廃止を求めるものも含め約2万4千通の意見が提出され、自民党の総務会でも問題点の指摘が相次いだ。政府はこれらを無視し、根幹に触れない微修正で閣議決定した。
 多くの団体が反対・廃止を求める「声明」を発表したが、ここでは日本弁護士連合会が指摘する「重大な問題」について、その要点を抜粋しておこう。
 @秘密指定できる情報は極めて広範であり、恣意的な特定秘密指定の危険性が解消されていない。A特定秘密を最終的に公開するための確実な法制度がなく、多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄されることとなる可能性がある。B政府の恣意的な秘密指定を防ぐためには……秘密指定行政機関から完全に独立した公正な第三者機関が必要である。……独立公文書管理監等の制度にはこのような権限と独立性が欠けている。C運用基準において通報制度が設けられたが、行政組織内での通報を最優先にしており通報しようとする者を萎縮させる。Dジャーナリストや市民を刑事罰の対象としてはならない。
 「声明」は、「まずは廃止し、国際的な水準に沿った情報公開と秘密保全のためのバランスの取れた制度構築のための国民的議論を進めるべきである」と訴えている。
(中)
2014年10月28日号
■地球上いたるところで米軍支援 ガイドライン再改定の狙い
 自衛隊と米軍の協力のあり方や役割分担を定めた「防衛協力の指針」(ガイドライン)の見直し(再改定)に向けた中間報告が10月8日に公表された。
 中間報告は冒頭で、安倍政権が集団的自衛権行使容認を強行した「7・1閣議決定」について「『指針』の見直しは、この閣議決定の内容を適切に反映し、(日米)同盟を強化し、抑止力を強化する」と明記した。自衛隊が米軍とともに「海外で戦争する国」へ大きく踏み出す第一歩となる。
 中間報告の狙いは、「周辺事態」という地理的限定を外し、日米軍事協力を地球規模に広げることである。朝鮮半島有事を想定して改定された(1997年)現行の「指針」は、日米軍事協力について、@平時A日本周辺の地域で日本の平和と安全に重要な影響を与える事態(周辺事態)B日本が武力攻撃された有事の3つに分けている。ところが、中間報告では「周辺事態」を削除し、3分類にかわって、@日本の平和および安全の切れ目のない確保A地域およびグローバルな平和と安全のための協力に見直されている。
 「周辺事態」では自衛隊の武力行使は認めていない。また、補給や輸送などの米軍支援は、戦闘地域と一線を画し、「後方地域」(非戦闘地域)に限って認めている。再改定によって地理的制約をなくしてしまい、集団的自衛権行使容認を反映すれば地球上いたるところで武力行使ができることになる。
 また、中間報告では「後方地域」が消え、「地域およびグローバルな平和と安全のための協力」の対象分野(7項目)の中に「後方支援」が明記されている。  「後方支援」は、国際法上、軍事行動そのものであり、米軍に対する後方支援は集団的自衛権の行使にあたる。「周辺事態」における武力行使を認めず、「後方地域支援」に限定している現行の「指針」を踏み越えるものである。
 国民には、未だ集団的自衛権の行使に関連する法整備の骨格すら示されていない。米国と合意して既成事実化することは断じて許されない。
■安倍首相が多用する「積極的平和主義」とは
 憲法や国際法、安全保障などの分野の専門家、実務家でつくる「国民安保法制懇」は先月末、安倍政権が7月1日に強行した集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を求める報告書を発表している。
 報告書は、最近、安倍首相が国の内外で多用している「積極的平和主義」にも触れている。第4項の「『積極的平和主義』の奇怪さ」から抜粋する。
 「集団的自衛権行使容認の論拠として、『積極的平和主義』なる奇怪な概念が提唱されている」が、「『積極的平和主義』とは、結局のところ、日本政府が正しいと考える事態を実現するために地球上のいたるところで実力を行使するという、およそ平和主義とは相容れない猛々しく危うい立場と見分けがつかない」「憲法9条の根幹にある平和主義を変質させ、否定するものでもある」と厳しく批判している。
(中)
2014年10月14日号
■軍拡路線まっしぐら 武器購入 新法案でまとめ買い拡大
 臨時国会が始まった(9月29日)。安倍首相は所信表明で「いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしは守り抜く。その決意の下、切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」ことに触れたものの、集団的自衛権という言葉はどこにも出てこなかった。憲法の解釈を変えてまで、行使容認を閣議決定し、戦後日本の「国のかたち」を大転換した、閣議決定後初めての国会である。首相自らの考えを示して堂々と国会論戦に臨むべきではないか。国民に対する「丁寧な説明」は、一体どこに行ったのか。
 東京新聞によると、防衛省は、自衛隊の高額な武器などを長期契約でまとめ買いできるようにするため、契約期間を最長10年にする特例法案を臨時国会に提出する方針を決め、会期中の成立をめざす。
 年度をまたいだ武器などの購入計画は、現行の財政法では5年が上限。
 法案が成立すれば、オスプレイや新型対潜哨戒機などの購入を予定している。集団的自衛権行使容認によって、軍事力拡大が一段と加速する。
■空疎な安倍首相の国連演説 「積極的平和主義」は国際公約に
 安倍首相は9月25日、国連総会で一般討論演説を行った。見せかけだけで、内容のともなわない空疎な演説を拾いあげてみよう。
〈その1〉「日本の未来は、既往70年(国連発足70年)の真っ直ぐな延長上にあります。不戦の誓いこそは、日本の国民が世々代々、受け継いでいく、育てていくものです」「日本とは、これまで、今、この先とも、積極的な平和の推進力です」
 *あの侵略戦争への反省とお詫びは?
〈その2〉「我が政府が旗印とする『積極的平和主義』とは実に、長年『人間の安全保障』の増進、すなわち人間を中心に据えた社会の発展に骨身を惜しまなかった我々が獲得した確信と、自信の、おのずからなる発展の上に立つ旗です」
 *「海外で戦争する国家づくり」―「戦争法制」整備へ暴走する安倍政権。言っていることと、やっていることが真逆ではないのか。
〈その3〉「国連がその発足70年を祝う明年の選挙で、日本は非常任理事国として、再び安全保障理事会に加わりたい」
 「21世紀の現実に合った姿に国連を改革して、その中で日本は常任理事国となり、ふさわしい役割を担っていきたい」
 *できもしないことを。拒否権を持つロシア、中国の支持は不可欠。首脳会談も開けない国の支持をどうやってとりつけるのか?
〈その4〉「20世紀には、ひとたび紛争が起きると、女性の名誉と尊厳が、深く傷つけられた歴史がありました」「21世紀こそ、女性に対する人権侵害のない世界にしていく。日本は、紛争下での性的暴力をなくすため、国際社会の先頭に立ってリードしていきます」
 *よく言うわ。開いた口がふさがらぬ。
(中)
2014年9月23日号
■「積極的軍事主義」路線さらに加速 第2次安倍改造内閣が発足
 3日、第2次安倍改造内閣が発足した。
 組閣後の記者会見で安倍首相は「『積極的平和主義』の旗を掲げ、世界の平和と繁栄に、これまで以上に貢献する」「その上で、いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしを断固守り抜く決意で、切れ目のない安全保障法制の整備を加速させる」と強調。解釈改憲で集団的自衛権の行使を容認した7月の閣議決定を踏まえ、自衛隊を具体的に動かすための違憲の法整備(「戦争法制」づくり)を急ぐ考えを示した。
 安倍氏の口癖となった「積極的平和主義」は「海外で戦争する国づくり」に他ならない。憲法の平和主義を投げ捨て、軍事力の行使をいとわない安全保障戦略は、「積極的軍事主義」と言い換えるしかない。改造内閣は「安倍路線」をいっそう加速させる戦後最も危険な内閣だ。
 その布陣をみても明らかである。安倍首相を含む閣僚19人中、15人が「日本会議」のメンバーである。「日本会議」は日本の侵略戦争を正当化・美化する「改憲・右翼団体」「ウルトラ右翼組織」などと言われている。
 また、「女性が輝く社会」の実現を掲げる改造内閣ではあるが、3人の女性閣僚が同組織のメンバーであり、保守派の急先鋒。「日本会議」は男女共同参画や夫婦別姓などに反対だ。
■沖縄統一自治体選挙 揺るがぬ新基地建設反対の民意
 沖縄では7日、27市町村で一斉に議員選挙が行われた。米軍普天間基地の移設先である名護市辺野古沖の埋め立てを仲井真知事が承認して以後、初めての統一自体議員選挙だった。
 名護市辺野古への移設(新基地建設)が最大の焦点となり、全国的に注目された名護市議選では、移設反対を貫く稲嶺市長を支える与党が、定数27議席中14議席の過半数を獲得し、11議席の野党を抑え勝利した。移設反対の公明は2議席獲得(移設問題以外は市長に是々非々の立場)。
 名護市での選挙では、稲嶺市長が初当選した2010年1月の市長選を含めてこれまで計4回の市長選と市議選で、移設反対の民意が示されたことになる(琉球新報)。
 菅官房長官は、記者会見で「辺野古移設は淡々と進めていきたい」と述べ、名護市民の民意を真っ向から否定した。これでは、「基地負担軽減担当相」でなく、むしろ「基地押し付け担当相」ではないか。
 名護市以外の市町村議員選挙でも、辺野古移設に反対する当選者が過半数を占めた。「琉球新報の立候補者アンケートによると、全当選者のうち208人(54%)が名護市辺野古への移設に反対し、県外・国外移設や無条件閉鎖を求めている。辺野古移設賛成は46人(12%)にとどまる」。
 安倍政権は、「オール沖縄」の声を尊重し、強引な辺野古移設作業を直ちにやめるべきだ。もし、民意を踏みにじるなら、辺野古新基地建設反対の圧倒的な世論で、11月県知事選挙に勝利することだ。
(中)
2014年9月9日号
■防衛省 過去最大5兆円超要求 軍事力強化へ
 新防衛大綱は、「防衛力の『質』と『量』を必要かつ十分に確保し、抑止力および対処力を高めていく」とし、軍拡志向をあらわにしている。
 日経新聞などの報道によると防衛省は、来年度予算案の概算要求で、過去最大となる5兆545億円を計上する。防衛費は2002年度をピークに減少傾向を続けていたが、第2次安倍政権が編成した13年度予算から増加に転じ、14年度も4兆8848億円に増額。
 最新鋭のステルス戦闘機F35(6機1249億円)をはじめ、長時間飛行できる滞空型の無人偵察機(3機540億円)の購入費を盛り込んでいる。
 さらに、新型輸送機オスプレイ5機や「水陸機動団」の上陸作戦に使う水陸両用車、国産のP1哨戒機20機、高性能対空ミサイルシステムを搭載したイージス艦、新型の早期警戒機などを計上する。
 解釈改憲で集団的自衛権の行使を容認した安倍政権は、安全保障環境の悪化を口実に、自衛隊増強・軍事力のいっそうの強化を急いでいる。「憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」(14年版防衛白書)とした「防衛の基本政策」を逸脱し、軍事大国への道を突き進むものだ。
■辺野古新基地建設 民意踏みにじり強行
 「あの美しい海に、ついに穴がうがたれた。(8月)18日、米軍基地新設に向けた調査のため、名護市辺野古の海の掘削を防衛省が始めた。県民の民意を踏みにじる反民主主義、自然環境を破壊して恥じない反理性主義と、いかなる意味でも許されぬ暴挙だ。遺憾だという常套句では足りぬ、強い憤りを禁じ得ない」(琉球新報社説)。
 「キャンプ・シュワブのゲート前には、民間警備員が立ちはだかり、その奧には県警機動隊員らが控えている。海上には、大幅拡大された立ち入り禁止海域にブイ(浮標)やフロート(浮具)を張り巡らし、海上保安庁のボートが厳重な警戒を続けている。こうした異常な状況下、辺野古の海にボーリング調査のくいが打たれた」(沖縄タイムス社説)。
 沖縄の民意は明白である。琉球新報社が行った直近の世論調査がある(8月23、24日実施)。
 それによると、普天間基地の名護市辺野古への移設について「移設作業は中止すべきだ」との回答が80.2%に上り、「そのまま進めるべきだ」は19.8%にとどまった。
 普天間基地の解決策では、県外・国外移設や無条件閉鎖・撤去を求める意見の合計が79.7%に達した(4月調査より6.1%増)。力づくで海底ボーリング調査を始めた安倍政権に対する不支持は81.5%に上る。
 辺野古新基地反対は、圧倒的な県民世論である。安倍政権が反対意見に耳を貸さず「強権を発動して民意を押しつぶそうとすればするほど、岩盤は一層固くなるだろう」(琉球新報社説)。
 辺野古新基地建設問題は、11月16日投開票の知事選の最大の争点になる。
(中)
2014年8月26日号
■14年版「防衛白書」 7・1閣議決定「歴史的な重要性を持つ」と強調
 政府は8月5日の閣議で、2014年版の「防衛白書」を了承した。解釈改憲によって集団的自衛権の行使容認が閣議決定されてから初めての白書である。13年版以前とは大きく一変した。
 白書は、行使容認の閣議決定を詳しく紹介し、「わが国の平和と安全を一層確かなものにしていくうえで、歴史的な重要性を持つ」と強調している。
 また、安倍内閣が「海外で戦争する国」づくりをめざして推し進めてきた防衛装備移転3原則や秘密保護法、国家安全保障会議の設置など、憲法の平和主義を根底から覆す安保政策の大転換を盛り込んだ。白書は、安倍内閣が憲法を踏みにじって強行してきた安保政策の転換を一つひとつ取り上げており、安倍カラーが色濃く反映されている。
 13年版までの白書では集団的自衛権行使について「憲法上許されない」と明記してきたが、14年版からは削除した。これまで「わが国に対する急迫不正の侵害があった」場合に限り武力行使が許容されるとしてきた自衛権発動3要件(個別的自衛権)に代わって、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、国民の生命、権利が根底から覆される明白な危険がある」場合にも必要最小限度の武力行使が許されるとした「武力行使」の新3要件を明記した。
 小野寺防衛大臣は、「防衛白書の刊行に寄せて」の中で、閣議決定により「発足60年の節目の年に、防衛省は新たな防衛力のあり方を実現するための第一歩を踏み出すことになる」と力説している。
 さらに、半世紀近く武器輸出を原則禁止してきた武器輸出3原則を廃止し、武器輸出を推進する防衛装備移転3原則も盛り込み、「米国およびそれ以外の諸国との防衛装備・技術協力をより積極的に進めていく」とした。
 昨年12月に成立し、国民の知る権利を侵す特定秘密保護法にも触れており、「安全保障上の秘匿性の高い情報の管理についての信頼を高め、関係国との間でより一層情報の共有を図る必要がある」と強調している(「専守防衛」と「集団的自衛権の行使」)。
 白書は例年どおり防衛の「基本政策」として「専守防衛」を明記している。
 白書によれば「専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ……憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう」と解説。また、安倍首相は、閣議決定後も「専守防衛は今後とも変わることはない」と国会答弁している。
 そうであるならば「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」した場合でも武力行使を認めた閣議決定と「専守防衛」は相いれない。集団的自衛権の行使を容認しておきながら「専守防衛」を言うのは詭弁でしかない。防衛政策を180度転換しておきながら、これまでと変わらないかのように装うのは国民世論を意識したゴマカシにほかならない。
(中)
2014年8月12日号
■7・1「閣議決定」事件 日米軍事一体化・自衛隊増強、「戦争法制」整備へまっしぐら
 憲法9条の縛りを解き、集団的自衛権の行使を容認した7月1日の閣議決定をうけ、安倍首相を先頭に「閣議決定」と「積極的平和主義」を各国でアピールし、トップセールスを展開する閣僚の外遊が盛んに行われてきた。ところが、「地球儀を俯瞰する外交」が首相の口癖だが、最も肝心なお隣の中国と韓国への訪問は、未だ見通しさえ立っていない。
 安倍首相はオーストラリア連邦議会で演説。「こと安全保障に関し、日本は長らく内向きだった。しかし日本には今や一つの意思がある。世界の恒久平和を願う国、世界有数の経済力を持つ国としてふさわしい貢献を、地域と、世界の平和を増すため行おうとする意思だ」(東京新聞)と語った。同紙は演説の内容を「首相は、平和主義に基づく戦後日本の安全保障政策は『内向き』であり、集団的自衛権の行使を認めたり、武器やその技術を輸出することこそが、日本にふさわしい貢献と言いたかったようだ」と評し、「軍事突出が過ぎないか、安倍外交を憂える」と警告している。
 防衛・安保を担う小野寺五典防衛相は、集団的自衛権行使容認の「閣議決定」を手土産に7月6日から13日まで8日間の日程でアメリカを訪問。
 12日(日本時間、以下同)、ヘーゲル米国防長官と会談。年末までに改定する自衛隊と米軍の協力のあり方や役割分担を定めた日米防衛協力の指針(日米ガイドライン)に、「閣議決定」を反映させることで一致し、9月にも中間報告をまとめることで合意した。
 会談後の共同記者会見でヘーゲル氏は「(閣議決定で)指針の歴史的な改定が可能になる」(産経)、「日本がより広範な活動に参加できるようになる」(東京)と、いっそうの日米軍事一体化を強調した。
 防衛省は7月18日、日米ガイドラインについて検討する省内の検討委員会を設置。政府見解をガイドラインに反映させる作業を進める。
 また、小野寺氏は米サンディエゴの海軍施設で上陸用装備を搭載できる「強襲揚陸艦」の海上自衛隊への導入を本格検討する意向を表明(8日)。強襲揚陸艦は「殴り込み部隊」といわれる米海兵隊などが奇襲上陸する際に使う。
 さらに、小野寺氏は9日、米フォートワースで、航空自衛隊が42機配備する予定の最新鋭ステルス戦闘機F35の製造工場を視察し、「1機あたりのコストが下がれば、(調達)機数を考えることも重要だ」(共同)と語り、計画機数を上回る配備に意欲を示した。
 11日にはワシントン近郊の国防総省でオスプレイに試乗。自衛隊は15年度からオスプレイを導入する計画だ(産経)。自衛隊の攻撃力は確実にアップする。小野寺氏は、オスプレイ試乗後、南部バージニア州の海兵隊基地でグラック司令官と会談。「水陸機動団」が2018年度までに陸自に新設されるのを見据え、技術や装備面での協力を拡大する方針で一致した(産経)。
 集団的自衛権の行使に必要な法整備はこれからだ。にもかかわらず小野寺氏の行使を前提にした言動は、「専守防衛」の基本方針を転換し、海外で戦争する「攻撃型」の自衛隊づくりに他ならない。
 一方、自衛隊法や周辺事態法などの改定と新法の制定など「戦争法制」づくりは、内閣官房の国家安全保障局の下で始まっている。すでに、自衛隊法の「防衛出動」の規定緩和や他国軍への自衛隊の後方支援で、これまで禁じてきた武器・弾薬の提供を可能とする新法の制定などをマスコミが報じている。
 立憲主義と恒久平和主義に反し、違憲の「戦争法制」は許されない。
(中)
2014年7月22日号
■解釈改憲の「閣議決定」は「烏」を「鷺」と言いくるめるようなもの 闘いはこれからだ
 「集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定は、立憲主義と恒久平和主義に反し、違憲である。かかる閣議決定に基づいた自衛隊法等の法改正も許されるものではない」(日弁連「会長声明」)。
 閣議決定ができても、自衛隊をすぐさま動かすことはできない。立法措置は憲法に真っ向から違反する。9条を否定する法の下剋上は断じて許されない。来年の通常国会には、具体的に動かすために自衛隊法など10数本の現行法「改正」案が提出されてくる。闘いはこれからだ。「長期のたたかいとなる」そのためには「改憲反対の共同闘争を更に厚く広く全国で組織しよう」(新社会党中央本部声明)。
■集団的自衛権行使容認の閣議決定 地方紙の社説が厳しい論陣張る
 安倍内閣が集団的自衛行使容認の「閣議決定」を強行した翌日(7月2日)、地方紙のほとんどが手厳しい批判の社説を掲げ、数紙を除いて反対を表明した。論点は、立憲主義と平和主義、武力行使の限定・歯止め問題、抑止力論など多岐にわたる。
 「戦後日本の平和主義を担保してきたこの憲法解釈が国民に是非を問うことなく、国会での議論もほとんどないまま、一内閣の閣議決定によって変更されるのは、『憲法クーデター』というしかない」と、沖縄タイムスが政府を指弾。東奥日報は「生煮えの議論で将来に禍根を残してはならない。憲法をないがしろにする閣議決定は撤回すべきだ」と一喝した。
 北海道新聞は「なし崩し的に自衛隊の海外での武力行使に大きく道を開く内容だ」「今回の決定は、とても歴史の審判に堪えられない。憲法の平和主義をねじ曲げ、国を誤った方向に導く」と痛烈に批判した。
 信濃毎日新聞は立憲主義に触れ「憲法は権力を縛るものなのに政権が思うまま解釈を変えられるのでは、意味がなくなる。今度の閣議決定は解釈改憲のあしき前例を作った」と。神奈川新聞も「正攻法の憲法改正を避け、我田引水の論理を構築して憲法の読み方を変えてしまった。立憲主義への重大な挑戦であり、政権が交代すれば解釈も変わるのであるなら無責任と言うしかない」と強調した。
 「歯止め」や「限定容認」については多くの社説が触れている。高知新聞は「集団的自衛権行使の問題は憲法9条の中核をなし、これまでの長年の国会論議でも、内閣法制局を中心に『行使できない』とする見解が平和主義の『砦』となってきた」と指摘。「いくら限定的な容認だとしても集団的自衛権の行使は、専守防衛からの逸脱であることに変わりはない」(宮崎日日新聞)。
 武力行使3要件の「『明白な危険』かどうか判断するための情報は、政府が握っている。拡大解釈で武力が行使される恐れは否定できず、外部から判断の是非も検証できない」(山陽新聞)。
 「日本が『悪魔の島』に 国民を危険にさらす暴挙」と琉球新報。「政府・自民党は新3要件をうたうことで『限定容認』を強調する。だがそれは偽装にすぎない」と厳しく批判。武力行使の拡大によって「無数の米軍基地が集中する沖縄は標的の一番手だろう。米軍基地が集中する危険性は、これで飛躍的に高まった」と指摘した。
 集団的自衛権の行使で「抑止力が高まる」と主張する安倍首相に、京都新聞は「むしろ中国と日米との緊張を高め、危機をあおる恐れが強い」と断じた。
 地元紙の神戸新聞は「いったん行使を容認すれば、自衛隊が戦闘行為に巻き込まれ、血を流す危険は高くなる」と指摘、「戦争に巻き込まれる恐れはなくなる」と会見で語った安倍首相に反論した。
(中)
2014年7月8日号
■解釈変更による武力行使3要件 憲法が「根底から覆される」
 「新たな提案を出したかと思えばすぐ引っ込める」「集団的自衛権など安全保障政策の与党協議の混迷は、もはや見るにたえない」(6月25日付「朝日新聞」社説)。 ―「見るにたえない」芝居がかった政府と与党の密室の協議で自民党の高村副総裁はまたもや、歴代政権が遵守してきた「自衛権発動の3要件」に代わって、閣議決定案の柱となる「新3要件」(武力行使の3要件)の修正案を提示した(6月24日)。
 修正された第1要件は「わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」。
 歯止めをかけたい公明党の意見を取り入れ、修正前の「他国」を「密接な関係にある他国」とし、「おそれ」を「明白な危険」に修正している。  しかし、「明白な危険」に表現を変更したとしても、その判断を行うのは、ときの政権である。歯止めになるどころか自衛隊の海外での武力行使の範囲が際限なく広がる。
 高村氏は記者会見で修正案には「政府が集団的自衛権に関係するとしている8事例すべてが視野に入っており、やらなければいけないことができなくなる可能性はないと判断した」(NHK)と述べており、何の歯止めにもならないことを認めている。
 第2の要件は「これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと」。
 「国の存立を全うし」が挿入され、「国民の権利を守る」を「国民を守る」に変更し、武力行使の目的をより広くしている。
 第3の要件は「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」。
 こうした3要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」に限られると解する。
 第3要件の内容は変更されていない。そして、3要件に基づく武力行使を「自衛の措置」と追加で明示した。「公明党が支持者に『あくまで日本の防衛のためで、他国防衛ではない』と説明するためだ」という(毎日)。
 また、高村修正案のほか「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」という別の文書では「憲法上許容される上記の『武力の行使』は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合もある」と記述されている中で「場合もある」がこそっと挿入されており、これによって自民党では国連の「集団安全保障」の容認も可能としている。
 公明党の党内手続きが終わり、与党合意が整えば7月初旬に閣議決定が行われる(6月26日記) 。
 ともあれ、閣議決定ができても、自衛隊をすぐさま動かすことはできない。秋の臨時国会には、具体的に動かすための新法や自衛隊法などかなりの数の現行法改悪案が提出されてくる。9条をなきものにする安倍路線に抗していかねばならない。
(中)
2014年6月24日号
■解釈で憲法を壊すな 国会無視、国民無視の暴挙は断じて許せない
 3月25日号の小欄で「集団的自衛権行使と自衛権発動3原則」を取り上げたが、要点を再掲したい。
 「自衛権の発動について歴代政権は、憲法第9条を前提として、@我が国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が存在すること、Aこの攻撃を排除するため、他の適当な手段がないこと、B自衛権行使の方法が、必要最小限度の実力行使にとどまること―の3要件が満たされなければ武力行使はできないとしてきた」「自衛権発動の3要件でとりわけ重要なのは@であろう。わが国が攻撃されていないにもかかわらず、わが国と密接な関係にある外国に加えられた武力攻撃を武力で阻止する集団的自衛権は、『わが国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)』には当たらず、自衛権発動の3要件に反することは明白。集団的自衛権の行使と自衛権発動の3要件とは相いれない。そのため、安倍内閣は『自衛権発動の要件』の拡大解釈を目論んでいる」
 国会会期末を目前にして自公両党協議の展開は目まぐるしい。「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」とする1972年の政府見解の都合のいいところだけを取り出して「自衛権発動3原則」の@項を変え、集団的自衛権を容認しようとしている。
 自民党の高村副総裁が提示した「新3原則」の@項は「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」としている(AB項はほとんど変わってない)。
 「権利が根底から覆されるおそれがある」かどうかの判定を行うのは時の政権。「限定的容認」ではなく、「無限定」になる。憲法の解釈を曲げては筋が通らなくなってしまう(6月14日日記)。
■改憲手続き法改定案が成立 根本的欠陥は放置何が何でも改憲へ
 改憲手続き法改定案は6月13日、参院本会議で自民、民主など与野党8党の賛成で可決、成立した。共産、社民は反対。改定案は、附則で規定されていた@投票年齢A公務員の国民投票運動の制限B国民投票の対象拡大―いわゆる「3つの宿題」に対応するためのもの。
 投票年齢は改定法の施行から4年後に「18歳以上」に引き下げる(選挙年齢の18歳への引き下げは棚上げにしたまま)。
 国民投票運動に関しては、「組織」が行う国民投票運動への規制が検討条項に盛り込まれている。労働組合やNPOなどの運動も「組織」として規制対象になり、広範に制限されかねない恐れがある。
 改憲手続き法は、議員立法でありながら参院で18項目にわたる付帯決議が採択され欠陥法といわれてきた。最低投票率設定の検討や公務員の運動規制、有料意見広告の野放しなどの根本的な欠陥を残したまま改定案は成立。何が何でも国民投票ができるようにすることを狙ったものだ。
■「教育委員会改悪法案」など悪法が次々成立
 教育委員会の独立性を損ない、国と首長の教育への介入に道を開くことになる「教育委員会改悪法案」(地方教育行政改悪法案)が6月13日、参院本会議で自民・公明や生活の党などの賛成多数で可決、成立した。
 希代の悪法・特定秘密保護法は廃止しかないが、衆院では特定秘密の運用を監視する「情報監視審査会」を衆参各院に常設する国会法改定案が6月13日の本会議で、与党などの賛成多数で可決、参院に送付された。今国会中に成立する見通し。審査会は特定秘密の解除など勧告できるが強制力はない。秘密指定を追認する機関をつくるようなもので、何の意味もない。
(中)
2014年6月10日号
■殺し、殺される国にしてはならない!
 明治から昭和にかけた戦争は「秘密保護」と国民弾圧の法規(軍機保護法や治安維持法など)で準備されてきた歴史がある。
 安倍自・公政権は昨年末、常軌を逸した国会運営で2つの戦争準備法を強行成立させた。国家安全保障会議(戦争の司令部)設置法と特定秘密保護法(知る権利を奪い、国民主権をないがしろにする弾圧法)の制定である。間髪入れずに、軍事大国をめざして「国家安全保障戦略」と「新防衛大綱」「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。
 加えて4月には「武器輸出3原則」の撤廃と解禁を閣議決定し、「戦争する国づくり」への道を掃き清め、憲法の平和主義を踏みにじった。
 残された最大の課題が集団的自衛権行使の容認である。
 5月15日、解釈改憲論者だけを集めた安倍首相の私的諮問機関「安保法制懇」が、集団的自衛権の行使と国連の「集団安全保障」(多国籍軍)への参加を「憲法解釈の変更」によって認めるよう求める報告書を提出した。
 これを受けて同日、首相は戦後の歴代政権の憲法解釈を180度転換し、これらを容認するという「基本的方向性」を明らかにした。与党は、首相の「基本的方向性」を踏まえた協議を行っており、与党の合意を取り付けて閣議決定を行う手順になっている。
 報告書は「憲法解釈の変遷」の項で「安全保障環境の大きな変化にかかわらず、その憲法論の下で安全保障政策が硬直化するようでは、憲法論のゆえに国民の安全が害されることになりかねない」と主張。憲法論とは、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」「海外派兵は違憲である」などとする歴代政権の憲法解釈のことである。このどこが硬直化しているのか。政府の解釈が「殺し殺される」国づくりを許さない歯止めになってきた。憲法の上に安保政策を置き、立憲主義を否定する暴論は許されない。
 また報告書は、集団的自衛権の行使について「必要最小限度の自衛権の行使には個別的自衛権に加えて集団的自衛権の行使が認められるべき」で、「政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能である」「憲法改正が必要だという指摘は当たらない」としている。政府が「解釈」を変えれば何でもできるということになれば、憲法はもういらないことになる。
 「必要最小限度」は言葉だけのゴマカシに過ぎない。限定的であれ、行使を認めれば9条の「歯止め」はなくなり、アリの一穴は必ず広がる。報告書は、行使発動の条件を列挙しているが、「政府が総合的に勘案しつつ、責任を持って判断すべき」としており、時の政権の判断によって、海外での武力行使は際限なく広がる。
 さらに報告書は、「軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置への参加」について「憲法上の制約はない」としている。歴代政権の憲法解釈を変えることによって「多国籍軍」への参加も認められる。
  密接な関係にある他国の防衛戦争に参加する集団的自衛権を行使すれば、相手国にとって日本は敵国となる。攻撃すれば攻撃されることを覚悟しなければならない。戦争に必要最小限はない。政府は、この集団的自衛権の危険な本質を覆い隠すべきではない。
 政府は5月27日、集団的自衛権行使などに関する自公の「与党協議会」に3分野・15事例を提示した。本丸の集団的自衛権行使にかかわるものは8事例、うち6事例が米軍支援となっている。
 米艦防護や弾道ミサイル迎撃など現実性が乏しい事例をあげて国民を惑わそうとするものである。 外交戦略ぬき、軍事優先の危険極まりない安倍路線にストップを。
(中)
2014年5月20日号
■政府の集団的自衛権行使容認への暴走計画
・5月中旬―「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が報告書提出
・5月中下旬―安保法制懇の報告書を受け、安全保障の法整備に関する「政府方針」を与党に提示→政府、与党協議
・今国会中(会期末6月22日)?に憲法の解釈変更を閣議決定(与党協議、政治状況によって先送りも)
・秋の臨時国会に、集団的自衛権の行使に関連する法案(自衛隊法や周辺事態法などの改定案)提出
 毎日新聞の憲法記念日を前にした世論調査によると、9条改憲賛成・反対の比率は、 昨年の調査では46%対37%で賛成派が多数だったが、今年の調査では36%対51%で反対派が逆転した。
 また、NHKの世論調査でも、明文改憲と解釈改憲反対が1年前の調査より大幅に増えている。
 9条の解釈改憲反対、海外で戦争する国づくり「ノー」の声は着実に広がっている。
■憲法記念日 地方紙の社説 にじみでる安倍政権への警戒感
 5月3日の憲法記念日。地方紙のほぼ全紙が憲法問題を取り上げ、改憲路線を突っ走る安倍政権に警鐘を鳴らしている。共通テーマは「平和主義の破壊」「立憲主義と解釈改憲」など(3紙から一部紹介)。
・きょう憲法記念日 平和主義の破壊許さない(北海道新聞)
 「安倍晋三首相は歴代政権が継承してきた憲法解釈を覆し、集団的自衛権の行使を容認する『政府方針』を、今月中旬にも発表する。自衛隊の海外での武力行使に道を開くもので、専守防衛を基本とする平和主義とは相いれない。9条を実質的に放棄する政策転換と言っても過言ではない」
・揺らぐ憲法 立憲主義の本旨、再認識を(河北新報)
 「集団的自衛権をめぐる問題は、容認の是非もさることながら、立憲主義の本旨と衝突する側面も軽視できない。事実上、政府の一存で『実質的な改憲』を行うならば、憲法自体への信頼性を深く傷付けよう。憲法は強大な『国家権力』を縛り、国民一人一人の『権利』『自由』を守る最高法規だ。閣議で都合良く解釈を変更し、自衛隊の運用などは別途、法改正で対応するというのであれば、権力の暴走を招きかねない」
・9条が問う 解釈の変更 民意を無視した改憲準備(信濃毎日新聞)
  「(集団的自衛権行使容認の)批判をかわそうと、政府や自民党はここに来て、『限定容認』論を持ち出している。公海上で米艦が攻撃された場合の自衛隊による反撃など具体的にケースを絞って『必要最小限度』の実力行使に含めようというものだ。……憲法上可能となれば、どんなケースを『必要最小限度』に含めるかは、政府の判断次第だ」
■「明文改憲」も、「解釈改憲」も 新憲法制定議員同盟が気勢あげる
 自民、公明、民主、維新の会、みんな、結いの党の改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は1日、「新しい憲法を制定する推進大会」を開き、改憲論議の促進を求める決議を採択し、改憲機運の盛り上げに気勢をあげた。
 決議は「安倍内閣での新憲法制定への歩みは必ずしも期待したほどには進んでいない」と安倍首相に注文をつけ、集団的自衛権の行使容認に関連して「憲法解釈見直しによる容認はやむを得ないが、改憲にブレーキがかかってはならない」とした。改憲派議員ら千人が参加。
 一方、自主憲法制定運動をさらに広げようと、日本青年会議所(日本JC)は2日、「全国一斉!国民による未来創造プロジェクト」を47都道府県で一斉に開催した。全国一斉に行うのは初めてのこと。
 改憲勢力の動きも活発化している。
(中)
2014年4月22日号
■集団的自衛権の「限定容認」は詭弁だ
 安倍首相は4月8日の民放BS番組で、集団的自衛権について「政府としては必要最小限の行使と考えている」と述べ、行使できるケースを限定して容認すべきだとの考えを明言した(時事)。
 一方、自民党では「安全保障法制整備推進本部」の初会合で(3月31日)、高村副総裁が砂川最高裁判決を根拠に提案した「限定容認論」が自民党内の大勢になろうとしている。安倍氏の発言は「限定容認」の考え方に沿って党内集約をはかる意向を示したものだ。
 こうした安倍自民党政権の大暴走に対する批判が急速に広がっている。
 法の番人として戦後50年以上の議論を積み重ねてきた内閣法制局の元長官・宮崎礼壹氏は毎日のインタビューで 「報道によると、政府内では憲法解釈の変更に理解を得やすくするよう、集団的自衛権を丸ごと容認するのでなく部分的に解禁しようという案が検討されているようです。しかし、集団的自衛権の問題は『我が国が直接武力攻撃されているわけでもないのに、他国の防衛のため武力行使をしてよいのか』という問題であって、どこかに線を引いて『ここまでは合憲、これを越えたら違憲』とできるような性質の問題ではありません」と集団的自衛権問題の本質に切り込み、「集団的自衛権の行使ができる国家にする必要が真にあるのなら、……国民に説明し、憲法改正の手続きを経るべきだ」と強調した。
 また、安倍首相や高村副総裁が唱える「限定容認」の根拠としている砂川判決について、朝日の社説は「集団的自衛権 砂川判決のご都合解釈」の見出しで「砂川判決が集団的自衛権を認めているならば、その後に確立されていった内閣の憲法解釈にも反映されて当然なのに、そうはなっていない。学説としてまともに取り上げられていない解釈を、あたかも最高裁の権威に裏付けられたかのように振りかざすのは、誤った判断材料を国民に与えることになりかねない」。そして「『立憲主義に反する』と批判される自民党にしてみれば、最高裁判決を錦の御旗にしたいのだろう。だが、こんなこじつけに説得力があるはずもない」と手厳しく批判している。
 国内世論に大きな影響力を持つ地方紙の論調も安倍政権の暴走を戒め、警鐘を鳴らしている(紙幅の関係で4月の社説の見出しのみ紹介)。
 信濃毎日新聞「自民党の論議 理屈まで強引ではないか」、北海道新聞「限定容認論は通らない」、京都新聞「砂川判例はそぐわない」、琉球新報「限定で本質隠すな」、東京新聞「限定容認という詭弁」、河北新報「限定容認、歯止めにならず」、沖縄タイムス「限定容認はまやかしだ」、神戸新聞「限定的でも無理がある」……など。
 そして、安倍改憲路線に民意は離れつつある。直近の朝日と毎日の世論調査の結果を紹介する。
〈朝日〉
・集団的自衛権の行使―賛成29%、反対63%(昨年56%)
・行使賛成(29%)のうち―憲法を変える56%、解釈を変更する40%(解釈変更に同意する人は回答者全体の12%)
・改憲―賛成44%、反対50%(97年以降は賛成が多かった)
・9条改憲―賛成29%、反対64%(昨年52%)
〈毎日〉
・集団的自衛権の行使―賛成37%、反対37%
・憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使する―賛成30%、反対64%
■改憲手続き法改定案 衆院に提出
 与野党7党(共産・社民党除く)は4月8日、改憲手続き法改定案を衆院に共同提出した。今国会中の成立を狙い、改憲の条件づくりを推し進めようとしている。
(中)
2014年4月8日号
■憲法解釈変更=集団的自衛権行使 自民党内に広がる異論や慎重論
 自民党は3月25日、集団的自衛権の行使容認を協議する新機関となる「安全保障法制整備推進本部」を設置した(毎日)。同本部は党則に基ずく党総裁の直属機関。
 執行部は、党内の慎重派を取り込み、集団的自衛権問題の意見集約の巻き返しを狙っている。また、慎重論が根強い派閥ごとの勉強会も活発化している。
 自民党は3月17日に総務懇談会を開催。懇談会で、村上誠一郎元行革担当相は「解釈変更(による行使容認)は立憲主義に反する。正面から憲法を改正すべきだ。このまま自衛隊法改正なら、反対票を投じざるを得ない」(毎日)と明言した。
 また、自民党の脇雅史参院幹事長はNHKの番組で、集団的自衛権の行使容認は「憲法9条と本質的に相容れない。……憲法との関係をしっかり議論する」(日経)と発言。
 党内や国会論議を十分深めないまま、憲法解釈の変更を先行する安倍内閣の方針に異論・慎重論が相次いでいる。
■読売・全国世論調査 9条明文改憲反対6割
 読売新聞社は毎年、憲法に関する全国世論調査を行っているが、3月15日付の紙面で2014年2月調査の結果を発表した(以下、3年にわたる調査を比較する)。
 それによると、改憲賛成は42%(昨年51%、一昨年54%―以下、並び順は同じ)となり、昨年、一昨年の調査から9%、12%も減少した。改憲反対は41%(31%、30%)で、それぞれ10%、11%増え、賛成、反対が拮抗した。
 9条改憲については、「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」は30%(36%、39%)。「これまで通り解釈や運用で対応する」43%(40%、39%)と「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」17%(14%、13%)で、その合計は60%(54%、52%)。9条の明文改憲反対派は60%に達した。
 安倍内閣の憲法破壊に対する世論の警戒感が反映されている。
 また、昨年来かまびすしく論じられている集団的自衛権について「憲法の解釈を変更して使えるようにする」が27%(27%、27%)で、「憲法を改正して使えるようにする」の22%(28%、28%)と合わせると、行使容認派は49%(55%、55%)。「これまで通り使えなくてよい」は43%(37%、37%)だった。
 安倍首相が異常なまでに執念を燃やしているにもかかわらず、「行使容認派」は6%減少し、半数を割り込み、逆に行使反対は6%増えた。
 ちなみに、他の報道機関の世論調査によれば、憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認について共同通信―「反対」51%、「賛成」38・9%、NHK―「反対」33%、「賛成」17%、「どちらともいえない」43%で、反対が賛成を上回っている。
 「海外で戦争する国づくり」に突進する安倍政権に対する批判の高まりである。国民世論をさらに盛り上げ、安倍政権の暴走にストップをかけねばならない。
(中)
2014年3月25日号
■集団的自衛権行使と自衛権発動3原則
 安倍首相は3月5日の参院予算委員会で、集団的自衛権の行使を容認するための解釈改憲に向けて、自衛隊の武力行使を限定した「自衛権発動の要件」の拡大解釈を検討していると明らかにした(東京新聞)。
 自衛権の発動について歴代政権は、憲法第9条が戦争放棄(第1項)、戦力の不保持と交戦権の否認(第2項)を規定していることを前提として@我が国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)が存在すること、Aこの攻撃を排除するため、他の適当な手段がないこと、B自衛権行使の方法が、必要最小限度の実力行使にとどまること―の3要件が満たされなければ武力行使はできないとしてきた。
 ところが、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の北岡伸一座長代理は先月、4月にも提出する報告書の概要で、集団的自衛権の行使を可能にするための5つの要件として@密接な関係にある国が攻撃された場合A放置すれば日本の安全に大きな影響がでる場合B当該国から明示的な支援要請がある場合C第3国の領空・領海など領域通過では許可を得るD首相が総合的に判断し国会承認を受ける―を報告書に盛り込む考えを示した。
 自衛権発動の3要件でとりわけ重要なのは@であろう。わが国が攻撃されていないにもかかわらず、わが国と密接な関係にある外国に加えられた武力攻撃を武力で阻止する集団的自衛権は、「わが国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)」には当たらず、自衛権発動の3要件に反することは明白。
 集団的自衛権の行使と自衛権発動の3要件とは相いれない(矛盾する)。そのため、安倍内閣は「自衛権発動の要件」の拡大解釈を目論んでいる。
■「武器輸出3原則」放棄 NSCが可否を判断
 政府は11日の国家安全保障会議(NSC)で、事実上いっさいの武器の輸出を禁じた武器輸出3原則を輸出容認に180度転換する新3原則を決定した。
 新原則は名称から「武器」を外し「防衛装備移転3原則」としている。与党の協議を経て、政府は3月中の閣議決定をめざす。
 新3原則は@国際的な平和や安全の維持を妨げる場合は輸出しないA輸出を認める場合を限定し、厳しく審査するB目的外使用や第3国への移転について適正管理が確保される場合に限る―が柱。
 輸出を認める場合の審査基準は「日本の安全保障に資するかどうか」など、非常に曖昧な内容。輸出の可否を判断するのは政府(NSC)であり、NSCが都合よく解釈すれば武器の輸出は拡大し、歯止めが利かなくなる。

 ※武器輸出3原則 @共産圏諸国A国連決議で輸出が禁止されている国B国際紛争当事国またはその恐れがある国―への武器輸出禁止(1967年・佐藤内閣)。その後、3原則の対象地域以外についても武器輸出を「慎む」として、全面禁止にした(1976年・三木内閣)。3原則の根拠は、憲法の掲げる平和主義である。

(中)
2014年3月11日号
■憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認 立憲主義の完全な破壊
 集団的自衛権の行使容認をめぐり、安倍首相の「(政府の憲法解釈の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って、その上で選挙で審判を受ける」(2月13日・衆院予算委)と、立憲主義を否定する危険な答弁に批判の声が広がっている。
 浦部法穂神戸大学名誉教授は「これまで違憲としてきたものを政府の解釈だけで合憲にするということ自体、『統治権に対する法的制限』としての立憲主義に反することなのだが、そんな意識は全くなく、選挙に勝てばどんな解釈もOK、といわんばかりの言いぐさである」と批判されている。
 「立憲主義」と「憲法解釈の変更」についての理解を深めるためにも、長い引用になり恐縮だが法学館憲法研究所HP「浦部法穂の憲法時評」を紹介させていただく。
 「政府や国会の解釈で憲法の意味が確定してしまうということになれば、『統治権に対する法的制限』としての立憲主義の意義は大きく失われることにならざるをえない。まさに統治権の主体であり中枢に位置する政府や国会が、みずからに対する制限の中身を決定できるということでは、制限の意味が実質なくなってしまうであろう」。
 「そこで、政府や国会が合憲と判断して決めたことであっても、それが本当に合憲といえるのかどうかを、厳密に法的に判断する機関と制度が必要となる。その制度が、こんにち各国で普遍的なものになっている違憲審査の制度であり、その機関が、日本国憲法のもとでは最高裁なのである。つまり、日本国憲法のもとで最終的な憲法解釈権をもつのは最高裁であり、政府や国会の憲法解釈は、言ってみれば暫定的なものに過ぎないのである。だから、最高裁が憲法解釈を変えるのと政府が(国会も同じ)憲法解釈を変えるのとでは、意味が全然ちがうのである。前者は、法的には確定的な効果をもつが、後者は、憲法の意味内容を確定的に変更するような法的効果をもつものではない。したがって、政府が憲法解釈を変えるだけで集団的自衛権の行使が可能になるなどということは、法理論的に成り立たない」。
 「統治権の主体である政府や国会が自分たちで勝手にその制約を緩めたりなくしたりしてしまうのは、明らかに立憲主義に反すること、言うまでもなかろう。その制約を緩めたりなくしたりできるのは、憲法制定権者である国民だけであり、唯一可能な道は憲法改正の手続を踏むことだけである」。
■安保法制懇報告書の骨子と「戦争する国づくり」への法整備が明らかに
 4月にも予定されている「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書の骨子と「戦争する国づくり」への法整備が明らかになった。
 北岡座長代理が記者会見で(2月21日)、集団的自衛権の行使を可能にするための5つの要件として、@密接な関係にある国が攻撃された場合、A放置すれば日本の安全に大きな影響がでる場合、B当該国から明確な要請があった場合、C第3国の領空・領海など領域通過には許可を得る、D首相が総合的に判断し国会承認を受ける―を報告書に盛り込む考えを示した(読売)。
 さらに、報告書提出後、政府が行使容認のための憲法解釈の変更を閣議決定し(4月〜6月)、周辺事態法やPKO法、自衛隊法の改定に着手する(秋の臨時国会以降)とした。
 これらの決定を受けて年末までに、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を再改定する。
 安倍首相は、自民党が選挙公約に掲げた国家安全保障基本法の制定にこだわらない姿勢をとっている(時事)。
(中)
2014年2月25日号
■“改憲のキバ”むきだし 首相の国会答弁
 安倍首相は、1月24日に開幕した通常国会の施政方針演説で集団的自衛権の行使について「安保法制懇の報告を踏まえ、対応を検討していく」と明言し、集団的自衛権行使容認への意欲をあらわにしていたが、その後の衆・参予算委員会でも、改憲や集団的自衛権、96条改定など改憲のキバ≠むきだしにした答弁を繰り返している。
 2月3日の衆院予算委で野党委員に憲法について問われ、「国家権力を縛るものだという考え方がある」「しかし、それは王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方であって、いま憲法というのは日本という国の形、理想と未来を語るもの」(朝日)と、不可思議な憲法観を国会の場で披露した。
 「たった3分の1の国会議員が反対することで国民投票の機会を奪っている」(2月4日、衆院予算委。毎日)と、改憲派からも「邪道」と批判され、トーンダウンしていたはずの96条改憲を、またぞろ主張しはじめた。
 また、同委員会で「現行憲法は、占領軍が原案を作った。成立から長い年月がたち、時代にそぐわない条文もある。憲法は、私たち自身で書いていく。この精神こそ、未来を切り開いていく」と持論を展開(同)。首相はかつて、時代にそぐわない条文の典型的なものとして第9条をあげている。
 歴代政権が行使できないとしてきた集団的自衛権の憲法解釈の変更になんのためらいもなく「集団的自衛権が行使できないことによるデメリットに直面している」と強調し、「政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能で、憲法改正が必要だという指摘は必ずしも当たらない」(2月5日、参院予算委。NHK)と述べ、9条改憲の手続きを経ることなく、解釈の変更で行使を認める考えを明言した。
 解釈変更を議論している「安保法制懇」は4月にも行使容認の報告書を提出する予定。
 さらに、「同盟関係ではなくても密接な関係にある国に対しては、集団的自衛権の権利を持っている。国際的な常識と言ってもいい」(2月7日、参院予算委。毎日)と主張。行使の対象を広げれば「地球の裏側」にも自衛隊が派兵されることになる。
 毎日は「集団的自衛権の行使 今は踏み出す時でない」と題する社説を掲げた。また、信濃毎日や琉球新報など、行使容認に警鐘をならす地方紙も増えてきた。日本を、「アベ色」に染めあげさせるわけにはいかない。
■教育への権力介入
 いま、教育に対して「安倍カラー」が濃厚に打ち出され、政府の介入が露骨になっている。教育委員会制度の見直しや教科書検定基準の改悪、そして中学・高校の学習指導要領解説書の改定である。
 解説書は、尖閣諸島と竹島を「わが国固有の領土」と明記。子供達に「固有の領土だ」という結論だけ押し付けて、政府の方針を明確にしていくというのではあまりに貧しい。これでは、戦前タイプの「教化」ではないのか(水島朝穂氏のHPから)。
(中)
2014年2月11日号
■集団的自衛権行使容認へ 究極の解釈改憲
 安倍首相は1月24日の施政方針演説で、歴代政権が行使できないとしてきた集団的自衛権について「集団的自衛権や集団安全保障などについては、『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の報告を踏まえ、対応を検討していく」と明言し、集団的自衛権の行使容認への意欲をあらわにした。
 首相が、第2次内閣発足以来の国会演説で集団的自衛権について言及したのは初めてであり、今国会中にも憲法解釈の変更に踏み切る構えが透けて見える。
 憲法解釈変更の時期について、菅官房長官は記者会見で「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)から「4月以降に報告書を受け取った後、与党と調整し対応を検討する」と述べており、安全保障を担当する礒崎首相補佐官は、今国会中の憲法解釈の変更と秋の臨時国会以降の自衛隊法の改定など関連法の整備を明言している。礒崎発言によれば、法制化(国家安全保障基本法)・立法改憲もなしに、閣議決定で解釈変更の結論を出すということになる。
 一方、首相は代表質問への答弁で、公明党に配慮して「期限ありきではなく、議論を深めていきたい」と述べるにとどめた。
 「安保法制懇」のメンバーは「安倍首相の人脈」で構成されている。その結論は自ずと明らかであろう。4月以降、「安保法制懇」の報告書が出れば、一気に動きだすことが見込まれ、「改憲の攻防」はいよいよ重大な局面を迎えることになろう。このまま安倍政権の暴走を容認するわけにはいかない。
 憲法9条が許容する自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきであり、集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるため行使できない―というのが歴代政権の一貫した憲法解釈である。戦争放棄と戦力不保持を定めた9条と、日本が直接攻撃されていないのに反撃できる集団的自衛権とは、相いれない。集団的自衛権は、「米国と手を携え」(施政方針演説)「海外で戦争する国」づくりの要である。これこそが首相が掲げている「積極的平和主義」に他ならない。
 60年余にわたって積み重ねられてきた歴代政府の憲法解釈を、1内閣、それも安倍首相の私的諮問機関にすぎない「安保法制懇」の報告書に基づいて変えることなど、とうてい許されようはずがない。言語道断である。
■稀代の悪法=秘密保護法は廃止しかない
 昨年末、国民の強い反対の声を踏みにじって自民、公明によって強行成立させられた秘密保護法廃止の運動が全国各地で取り組まれている。
 安倍政権は、秘密保護法の年内施行の準備のため1月17日、「情報保全諮問会議」の初会合を開いた。同会議は、「特定秘密」の指定や解除、秘密を扱う公務員らの適正評価の統一基準を議論する場にすぎず、秘密指定が適正かどうかをチェックする機関ではない。
 憲法違反の悪法の廃止をめざし、大衆運動の輪をひろげよう。
(中)
2014年1月21日号
■「軍事大国」への道 安保政策「3本の矢」
 「『強い日本』を取り戻す戦いは、始まったばかり」「世界の平和と安定に積極的な役割を果たす。この『積極的平和主義』こそが、我が国が背負うべき『21世紀の看板』である」(安倍首相「年頭所感」)。〔「積極的平和主義」―9条の縛りを解き、海外で戦争する国づくり〕
 安倍自・公政権は昨年、2つの戦争準備法(国家安全保障会議設置法と特定秘密保護法)を強行可決・成立させた後、「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。
 「安保戦略」は集団的自衛権の行使を視野に「積極的平和主義」を基本理念として明記。「戦略」は「専守防衛」や「軍事大国にならない」といった歴代政権の防衛政策の基本方針(1957年閣議決定)に代わるものであり、戦後日本の安保戦略の大転換となる。
 「戦略」を踏まえた「防衛大綱」と「中期防」では、基本理念に陸海空3自衛隊を一体的かつ迅速に運用する「統合機動防衛力」を掲げている。中国、朝鮮の脅威を口実に「水陸機動団」(海兵隊)の創設やイージス艦増強、「敵基地攻撃能力」保有の検討、オスプレイや無人偵察機の新たな導入など軍拡・軍備増強のオンパレードである。
 さらに、これまでの「節度ある防衛力の整備」との表現が消え、「防衛力の質および量を必要かつ十分に確保する」ことが盛り込まれ、軍事予算は年々膨らんでいく。
 憲法を踏みにじる安倍政権の安保政策「3本の矢」を断じて許せない。秘密保護法廃止の世論を盛り上げ、「海外で戦争する国」にしようとする策動に断固反対し、憲法を守りぬくために奮闘しなければならない。
◇            ◇
■2013年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・ 9日 防衛白書公表
・21日 参院選投・開票、自民が圧勝
〈8月〉
・ 2日 第184臨時国会開会
・ 8日 政府、内閣法制局長官の首をすげかえる
〈9月〉
・12日 「国家安全保障戦略」を議論する「安防懇」が初会合
・27日 安倍首相、国連総会で「積極的平和主義の旗を掲げる」と表明
〈10月〉
・ 3日 日米両政府、14年末までに「日米防衛協力の指針」の改定で合意
・15日 第185臨時国会開会
・25日 安倍内閣、特定秘密保護法案国会提出
〈11月〉
・ 7日 国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案、衆院本会議で可決
・26日 秘密保護法案、自民、公明両党とみんなの党、衆院特別委の質疑を打ち切り委員会と本会議で強行可決
・27日 国家安全保障会議設置法案、参院本会議で可決・成立
〈12月〉
・ 4日 国家安全保障会議が初会合
・ 5日 自民、公明両党、参院特別委で、秘密保護法案を強行可決
・ 6日 自民、公明両党、参院本会議で、秘密保護法案を強行可決・成立
 自民と公明両党、改憲手続き法改正案について、投票年齢を改正法施行後4年間は「20歳以上」とし、その後は「18歳以上」に引き下げることで合意
・13日 中央教育審議会、教育委員会制度改革案を下村文科相に答申
・17日 政府、国家安全保障会議と閣議で、「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を決定
・24日 2014年度政府予算案閣議決定。軍事費は2・8%増の4兆8848億円で、2年連続の増額
・26日 安倍首相、靖国神社参拝
・27日 仲井真沖縄県知事、米軍普天間基地の名護市辺野古移設に向けた国の公有水面埋め立て申請を承認
(中)