「新社会兵庫」 3月24日号
 新型コロナウイルス対策から国の姿勢がよく見えてくる。対策費の総額も、香港や韓国は1兆円を超しているが、日本はわずか153億円と桁違い。マスクの例も解かりやすい。さいたま市で備蓄マスクの配布対象から朝鮮幼稚園を除外していたという差別の実態が明らかになった▼自給率が低いのは食料だけではなく、100円ショップの品物・衣料品でもメイドイン海外。外国人労働者を国内外で安く使い儲ける企業。新型コロナウイルスの教訓から、困った時こそ助け合える外交が求められる▼催事の中止が続く。3月11日、東日本大震災の被災地でも追悼式が中止されたり規模が縮小された。避難者は今なお5万人に近いとのこと。津波で失われた命やまちのことについて、11日以外はあまりにも報道が少なかった。多くの犠牲者が出た自治体のドキュメンタリーを見たが、今ようやく当時の話ができると語っていた。「原発さえなかったら……」と自ら命を絶った牧場主のことを思い出す▼汚染水の海洋放出案は漁業者の不安をさらに大きくしている。今、若狭の老朽原発の再稼働を関電と政府は画策しているが、この9年間の大きな犠牲から学んだことは何だったのか。許してはならない。
社会的・経済的弱者を直撃した新型コロナウィルス
―新型コロナウィルス 労働・雇用ホットラインから見えるもの―
 突然、安倍首相が要請した「一斉休校」は教育現場のみならず、国中を大混乱に陥れている。こうした状況下で、ひょうごユニオンは3月6目、県パートユニオンネットワーク、NPOひょうご働く人の相談室、NPOひょうご労働安全センターと連携し、「新型コロナウイルス 労働・雇用ホットライン」を開設した。その目的は、いま労働現場で起こっている問題を正確に把握することが大切だと考えたからだ。当日は、テレビ局6社の報道があり、65件の相談が寄せられた。相談はいまも継続中で3月10日現在83件となっている。 この中には県外からの相談も含まれる。
相談内容の特徴
 相談者の内訳は、男性36人、女性40人、性別末記入7人。雇用形態では正規は2件にとどまり、契約社員、パート、派遣など非正規の割合が圧倒的に多い。そしてフリーランス・個人請負、人材派遣センター、経営者からの相談も目立った。今回のような「非常事態」になれば、真っ先にダメージを受けるのは不安定雇用労働者であることが改めて浮き彫りになった。
 4月1日から「不合理な待遇差」を禁じるパートタイム・有期雇用労働法が施行されるが、コロナウイルス問題の影響で正社員と非正規の間に新たな格差が顕著になっている。
 ホットラインで明らかになったことの第1は、イベシト中止、学校一斉休校措置が経済活動の急激な縮小を招いていることだ。その結果、流通、小売り、飲食、娯楽、交通などの分野で事業悪化がすすみ、深刻な生活不安・雇用不安を生み出している。
 第2は、雇用形態でいえば、契約社員、パート、派遣などの不安定雇用労働者を直撃する形で不安が広がっている。同じ休業でも「正規には休業手当があるが非正規はない」という訴えも多い。
 第3は、学校の一斉休校は給食従事者や校務員、スクールバス関係者らの休業問題と、子ども保護者の休業問題を生じさせている。保育所や学童保育の労働者はその狭間で苦労している。
 第4は、政府の緊急支援策も「泥縄式」で公平性を欠き、混乱を生んでいる。たとえば、休校にともなう保護者の「休業補償」でも会社と雇用瀾係がある労働者は日額8330円の補償があるが、なぜフリーフンスは4100円なのか。申請方法はどうするのか。保護者とは別に登録派遣やフリーランス・個人請負に助成制度はないのか、という問い合わせである。  第5は、使用者の「安全配慮義務」に関する問題である。マスクとアルコール消毒液の不足が言われているが、介護施設や学童保育、保育所でも確保できていない実態が明らかになっている。
 私たちとしては、上記の相談内容をとりまとめ、早急に雇用・労働問題を中心に行政として取り組むべき課題を兵庫県と兵庫労働局に申し入れることとしている。
「コロナ」対策より「自己保身」対策?
 2月29日の記者会見で、首相は一斉休校について「時間をかけているいとまはなかった」と釈明した。しかし国内で感染者が判明したのが1月16日。それ以降、一体何をしていたのか。「首相動静」によると、新型ロナウイルスの感染が深刻になる2月中も頻繁にお友達や企業経営者、与党議員らと夜の会食を重ねている。その首相が一転、専門家の意見も聞かず一斉休校に踏み切ったのは、海外からの批判と内閣支持率の急落に危機感を持ったからだ。
 緩慢な政府の「コロナ対策」や「一斉休校」措置は、窮地に立った安倍政権の「疑惑隠し」と指摘する識者は多い。前川善平さんはツイッターにこう書き込んでいる。「やっぱり新型コロナウイルスは、アベ政権にとって神風だ。『緊急事態』で国民の支持を取り付け、野党の追及を鈍らせ、野党の足並みを乱すことにも成功している。桜を見る会の私物化も、前夜祭の公選法違反疑惑も、東京高検検事長の違法定年延長も、国民の関心の外へ追いやられてしまった。」
 転んでもただでは起きないのが現政権だ。感染対策の失敗を棚に上げ、こんどは「国民の不安感」に乗じて「緊急事態宣言」の法整備を打ち出心た。最長2年間、外出や移動の自由、集会や言論、報道の自由さえ制限できる事実上の戒厳令だ。それを国会承認もないまま内閣の「政令」に委ねることになる。
 安倍政権のもとで、今、国民の命と暮らし、自由と民主主義は後のない危機に直画している。深刻化する「コロナ不況」のもとで非正規、正規を問わず、解雇、失業問題が本格化するのはこれからだ。
 労働組合の存在が問われている。あきらゆず声を上げよう。労働者のたたかいはそこからしか始まらない。(3月12日記)   
岡崎進(ひょうごユニオン委員長)
会社の不誠実と闘う決意
 今回は、不当労働行為の救済申し立てを県労働委員会(以下、県労委)に行うことになった新浪花運輸分会の報告をしたい。
 同分会は、一昨年8月に賃金と労働条件の改善についての相談を受けて組合への加入となり、会社側へユニオン加入通知と要求書を提出して交渉を開始した。
 昨年には会社側が県労委に申し立てた「あっせん」もあった。内容は解決金の支払いや、ユニオンへの丁寧な説明と良好な労使関係の構築を会社側へ求めたもので、ユニオンとしても受け入れた。そして、早期の妥結を求めた要求書を会社側に提出して交渉を再開した。 2名の組合員は「俺たちが納得できるように答えてほしい」と回答を求めたが、会社側は昨年末の12月に妥結することなく、一方的に賃金を支給してきた。ユニオンは会社側へ抗議を行うとともに、県労委への不当労働行為の救済申し立てを行うこととした。  3年に及ぶ団体交渉を行なってきたが、会社側の対応は許せないと県労委での闘いを2名の組合員は決意してくれた。
 いま、この問題を精一杯闘わなければと思っている。
 また、芦屋市水道労働組合(私の出身組合)の仲間たちも、誠実な団体交渉の実施を求めて県労委での救済申し立てを闘っている。いまは県労委による和解勧告を受け、協議が進められているところだ。
 この仲間の闘いに学びながら、私たちの新浪花運輸分会の取り組みを進めていきたい。私たちの県労委の闘いが今後どう進展していくかはこれからの取り組みにかかっている。芦屋地域の仲間に訴え、広げ、支えてもらうことだ。あわせて県下のユニオンや仲間のみなさんへご支援をお願いして闘いを強めていきたい。
 小畑広士(ユニオンあしや委員長)
例年と違う今年の春
 2020年3月、今年の春は例年と違う。
 3月の初めの今頃ならあちこちから匂ってきていた、いかなごのくぎ煮を作るあの匂いが今年はどこからも匂ってこない。年々漁獲量が減ってきていたが、今年はさらに減ったようだ。2月29日に解禁したものの、あっという間に3月6日には終漁日を迎えた。実質2日間の操業だったとニュースで見た。気候変動の影響だろう。値段も年々高くなり、庶民の手には入らないものとなってしまった。
 さらに今年は新型コロナウイルス感染症のため、町の風景が変わってしまった。それまでグルメ三昧の生活を送っていた安倍総理に批判の声が届き、「やってる感」を出そうと思ったのか、突然の全国一斉の休校要請。日本中がびっくり仰天した。平日なのに学校に子どもの姿が見られない。学校に行けなくなった子どもたち。子どもも大人もストレスを抱え込む。図書館、勤労会館など私がよく利用している施設も軒並み休館。あちこち出かけていた私だが、予定がキャンセル続きで家にいる時間が長くなった。そこで、パソコンで国会中継を見るのが日課のようになってしまった。
 その国会、実に酷い。「桜を見る会」前夜祭、ホテルニューオータニで5千円で立食パーティーができると思う人はいないだろう。それでも嘘を言い続ける安倍晋三。椅子の陰に隠れて答弁を書く官僚、それを当たり前であるかのように平然と待っている北村大臣。森大臣は、何が何でも黒川検事長に定年延長をさせようとその場限りの言葉を並べ、国会を混乱させている。気分が悪くなったのは茂木大臣の態度と仕草。東京高検検事長の定年延長問題で、国家公務員法の延長規定が検察官には「適用されない」とする政府解釈を「現在まで続けている」という答弁を撤回した人事院の松尾給与局長を犬でも追い払うような手つきで「帰れ、帰れ」と怒鳴ったのだ。クルーズ船の業務に携わっていた検疫官に「防護服は必要ない」と言った加藤厚労大臣もひどい。1日6千件できると言ったPCR検査数が1千件しかできていないことを追及されると「能力と、全部できるかどうかは別の問題」と、責任逃れの発言。これが国会か。議論されている内容も国民の暮らしに全く目を向けないものだが、それ以前に人間を尊重するという姿勢に欠けた人たちが決めていることが恐ろしい。
 それにしても、新型肺炎対策で日本と各国の対応の違いにあ然とする。台湾は感染拡大の食い止めに成功したと言われている。武漢市当局が原因不明の感染症発生を認めた昨年12月31日、台湾当局が即座に武漢からの直行便に対して検疫を始めた。蔡英文総統が中国に忖度せず、感染拡大の食い止めを優先した素早い対応が評価されている。
 国内でも和歌山県は感染の増加が食い止められているが、疑わしい人すべてにPCR検査をした対応がよかったと言われている。
 政治のトップに立つ人の姿勢によって、そこに住む人の命が左右される。今の安倍政権では私たちの命も健康も保障されない。やっぱり安倍総理、辞めてもらわなきゃ。そこに行きつく。                        
(M・S)