2009年12月22日号
■与党3党 国会法改定案 通常国会冒頭提出へ
 民主、社民、国民新の与党3党は7日、国会内で幹事長・国対委員長会議を開き、官僚答弁を禁止するなどの国会法改定案を次の通常国会冒頭に提出することで合意。国会答弁が認められている「政府特別補佐人」から内閣法制局長官だけを排除することも一致した。
 内閣の憲法解釈を担ってきた内閣法制局長官の発言を封じ、「政治判断で解釈していく」(平野官房長官)ことになれば歯止めのない解釈改憲の拡大につながる危険がある。
 小沢民主党幹事長は、同日の記者会見で「(与野党で協議し)どうしてもまとまらないときは最終的に多数決で決める以外にない」(時事)と表明し、来年の通常国会で成立を図る決意を示した。
■対米追従外交に風穴を開けよ 琉球新報社説
 普天間基地の「県外・国外移設」の公約も、その方向での米側との交渉が一向に見えてこない。
 琉球新報社説(7日付)は「鳩山由紀夫首相は自民政権と官僚が営々と築いてきた対米追従外交に風穴を開けるべく、まずは閣内の意思統一を図るべきだ」と忠言する。
 また、4日、5日と沖縄を訪問した岡田外相についても「米軍普天間飛行場問題について、行く先々で県内移設合意の不履行による『日米同盟の危機』を強調した。聞き役ではなく、まるで官僚に操られた危機煽り役≠セ」と決めつける。そして、県民の意思を実現しようとしない政府に「鳩山内閣は普天間撤去へ向け、政治主導の真価を発揮する時だ」と叱咤。
 正念場を迎えている普天間基地問題。県民の意思をもてあそぶようなことはやめるべきである。
■自民党 改憲論議スタート 憲法改正推進本部
 自民党は4日、憲法改正推進本部(保利耕輔本部長)の初会合を開き、改憲論議への取り組みを強化する方針を決めた。05年策定の「新憲法草案」の見直しも取り組む。  谷垣総裁はあいさつで「これからの党の旗印として、この問題を眠らせることなく、しっかり前に進めていきたい」(同党HP)と改憲への決意を表明した。  同本部は、「新憲法制定推進本部」と「憲法審議会」を統合したもの。
■2009年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
 5日 第171通常国会召集
 9日 自民・公明党、「与党海賊対策等に関するプロジェクトチーム」初会合/「安全保障と防衛力に関する懇談会」初会合
 28日 政府、ソマリア沖に海上自衛隊を派兵するため、海上警備行動を発令する方針を決定
〈2月〉
 20日 護衛艦2隻の派兵を前に、海自と海上保安庁の合同訓練
〈3月〉
 13日 政府、「海賊対処法案」を閣議決定、国会に提出/浜田防衛相、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令
〈4月〉
 15日 民主党、政府の「海賊対処法案」への修正案決定
 23日 自民・公明党、衆院で「海賊対処法案」の採決を強行、可決
〈5月〉
 15日 浜田防衛相、海上警備行動に基づき、海自のP3C哨戒機2機に派兵命令
 26日 自民党、新「防衛計画の大綱」に対する提言に敵基地攻撃能力の保有を明記
 28日 ソマリアに陸・海・空3自衛隊がそろい踏み
〈6月〉
 11日 自民・公明党、衆院本会議で憲法審査会規程を与党単独で採決強行、可決
 18日 「海賊対処法案」、参院で否決/衆院、3分の2以上の賛成で再可決、成立
(中)
2009年12月8日号
■民主党が「国会改革」案 政治主導で憲法解釈―「憲法とはいえない」
 民主党は11月16日の役員会で5項目の国会審議活性化案を了承した。
 5項目の中身は、@政府参考人制度の廃止A内閣法制局長官の国会答弁禁止B行政公務員、各界有識者、市民団体などから意見を聴取する場の設置C質問通告の厳格化D大臣政務官の増員(同党HP)。
 民主党案の最大の狙いは、小沢幹事長の持論に沿って、政治主導による国会審議活性化の名で「官僚答弁」を禁止することである。いまでも官僚は政府参考人と国会が認めない限り答弁は禁止されている。
 極めつけは内閣法制局長官の国会答弁の禁止であろう。内閣法制局長官は、公正取引委員会委員長や人事院総裁と同様、「政府特別補佐人」として答弁が認められている。
 内閣法制局は、これまで内閣の憲法解釈についての統一見解などを示してきた。自衛隊を合憲として認め、インド洋派兵やイラク派兵を合憲とするなど解釈改憲を積み上げ、憲法をねじ曲げてきた元凶である。が、一方で海外での武力行使や集団的自衛権の行使は憲法9条のもとでは禁止されているとの解釈を示し、武力行使に歯止めをかけてきた。
 内閣の憲法解釈を担当してきた内閣法制局長官の発言を封じ、「政治主導だから、政治判断で解釈していく」(平野官房長官)ことになれば解釈改憲の拡大につながっていく。内閣法制局長官の答弁禁止、法制局の廃止は、小沢幹事長の自民党時代以来の持論である。
 このような危険な動き対して、浦部法穂神戸大学名誉教授は、「憲法解釈を『政治判断』で行うというのは、『政治』の都合のいいように憲法を解釈するということである。時々の『政治』の都合でどうとでも解釈できるようなものは、もはや『憲法』とはいえない」と、鋭い指摘をしている(法学館憲法研究所HP「浦部法穂の憲法時評」)。
■日米首脳会談 アメリカの「核の傘」継承確認
 オバマ米大統領が11月13日、初来日。日米首脳会談では「核兵器のない世界」や地球温暖化防止交渉などに関する共同文書に署名した。
 重大なのは、「核のない世界」に向けた日米共同声明で、「両国政府は、日本国及びアメリカ合衆国並びにその他の米国の同盟国の安全保障をいかなる形においても損なわないことを確保しつつ、……核軍縮・核不拡散に関する……具体的行動をとる決意を表明する」 と謳われており、これは鳩山・民主党政権もまた、アメリカの「核の傘」(拡大抑止)の下にあり続けることを明確にしたことになる。
 また、鳩山首相は日米首脳共同記者会見で「安全保障の面から言えば拡大抑止、情報保全、ミサイル防衛の在り方、宇宙の利用といった様々な新しい安全保障のシステムを構築する必要がある」と表明し、新しい軍事同盟強化の方向を打ち出した。これでは、「緊密で対等な日米同盟」の方向が見えてこない。
(中)
2009年11月24日号
■小沢幹事長 「政治主導」に名を借りて解釈改憲の推進狙う
 民主党の小沢幹事長が執念を燃やしている国会改革の柱の一つは、政治主導―国会審議活性化の名で、国会法で「官僚答弁」を禁止することである。
 小沢氏は会見で、「内閣法制局長官も官僚でしょう。官僚は(答弁に)入らない」(朝日)と述べ、これまで政府の憲法解釈について国会答弁をしてきた内閣法制局長官の答弁も禁止する考えを示した。
 平野官房長官は4日の会見で「政治主導だから、政治判断で解釈していく」と表明し、鳩山政権が、憲法解釈について、内閣法制局長官の過去の答弁にしばられず、憲法9条などの解釈は政治主導で判断していくとの見解を示した(同)。また、同日の会見で鳩山首相も「法制局長官の考え方を金科玉条にするのはおかしい」(同)と述べた。
 内閣法制局は、これまで解釈改憲の積み上げによって自衛隊の海外派兵を推進する役割を担う一方で、海外での武力行使や集団的自衛権の行使は「9条違反」との見解をとり続けてきた。
 「国連の決議があれば海外での武力行使は何ら憲法に抵触しない」―小沢氏の持論である。法制局の9条解釈が気にくわない小沢氏は、03年の自由党首時代に「内閣法制局廃止法案」を提出している。
 小沢氏の言う「官僚答弁の禁止」はなにを狙っているのか。歴代の内閣法制局長官の憲法9条解釈を変更し、小沢氏の持論にもとづく解釈改憲を押し進めようとする極めて危険な動きである。
■沖縄の民意 基地建設「ノー」 合同世論調査
 毎日新聞と琉球新報が実施(10月31日と1日)した合同世論調査で、県民の70%が普天間基地の県外・国外への移設を求め、迷走を続ける鳩山内閣に対し県内移設に「ノー」を突きつけた。
 世論調査では「辺野古移設反対」が67%、「嘉手納基地統合反対」が72%に達し、北澤防衛相や岡田外相が検討している辺野古新基地建設と嘉手納統合に反対する民意があらためて明瞭になった。
 琉球新報社説(3日付)を引こう。「民主党中心の鳩山政権の対応は鈍い。選挙戦で県外移設を掲げながら、政権奪取後は正面から検討せず、県内に押し込める方策に知恵をめぐらす印象だ。それは有権者への背信行為ではないのか」「冷戦終結から20年。米海兵隊が沖縄に大挙して居座る理由は薄れた。米側がこだわる日米合意も『消費期限切れ』だろう。鳩山首相には沖縄の民意を踏まえて決断し、腰を据えて米側と交渉してもらいたい」。
■鳩山内閣―大臣語録
  • 岡田外相は4日の衆院予算委で、普天間基地問題をめぐり「政権公約と選挙中の発言はイコールではない」(共同)
  • 鳩山首相は4日、記者団に対し「少人数でもアフガニスタンに派遣するのは望ましくない」(朝日)
  • 鳩山首相は5日の衆院予算委で「日の丸、君が代は大変大事なものだ。強制的という話しではないが、必要なときに日の丸掲揚、君が代斉唱を指導する」(産経)
    (中)
  • 2009年11月10日号
    ■首相所信表明 普天間基地問題 「県外・国外移設」言及なし
     「シュワブ沿岸への移設が唯一の道」「普天間代替施設なければ海兵隊のグアム移転はない」―恫喝で沖縄県民の願いを封じ込めるゲーツ米国防長官の発言は容認できない。
     移設問題をめぐり首相や外相、防衛相の発言が二転三転し、足並みの乱れが続いている。首相は総選挙で普天間基地の「県外・国外移設」を訴え、連立3党は「米軍再編の見直し」で合意しているはず。
     首相は所信表明演説で「対等な日米同盟」について、世界の平和と安全に果す役割を「日本の側からも積極的に提言する」ことだと強調した。ところが、焦点の普天間基地問題について「地元(沖縄)の皆さまの思いをしっかりと受けとめながら、真剣に取り組む」と述べるにとどまり、具体策は示さなかった。三党合意の「見直し」には一言も触れていない。
     沖縄の思いはすでに明瞭である。沖縄タイムス社と朝日新聞社が実施した世論調査で(5月)、県内移設反対が68%を占め、賛成の18%を大きく上回っている。昨年の県議選で反対派が議席の過半数を占め、8月の総選挙では米軍再編を推進した自公の議席が沖縄県でゼロになった。
     「政府は米側の強硬姿勢にたじろぐことなく、腰を据えて交渉に当たってもらいたい」「県内移設は見直した方が持続可能な日米関係になる。政府は毅然とそう主張してもらいたい」(琉球新報社説)。
    ■政府 「防衛計画の大綱」 先送りを確認
     政府は10月20日に開いた安全保障会議で、防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の策定を来年の年末まで先送りする方針を確認した。
     現行の「防衛大綱」は2004年12月に決定、5年後の今年12月の改定を明記している。
     前麻生政権のもとで「安全保障と防衛力に関する懇談会」が「防衛大綱」の見直し作業に取り組み、専守防衛の再検討や集団的自衛権の憲法解釈見直しなどを提言している。
     鳩山内閣は「政権交代を踏まえて見直す必要がある」として、取りまとめを先送りし、新たな有識者による会議を設置するなどして議論を進め、来年の年末までに策定する(NHK)とした。
    ■岡田外相 「PKO5原則」見直し検討を指示
     岡田外相は10月21日、東京都内で講演し、国連平和維持活動(PKO)に積極的に参加するため、「PKO5原則」の見直しの検討を外務省に指示したことを明らかにした(朝日)。
     PKO協力法は、派兵の条件として、@紛争当事者間の停戦合意A受け入れ同意B中立性の厳守C以上の条件を欠いた場合の独自撤退D武器使用は生命防護に限定―の5原則を規定している。
     さらに岡田氏は、「(自衛隊の活用は)国連を前提として考えるべきだ。平和構築で役割が果たせないか法律の制定も含めて検討したい」と述べ、自衛隊海外派遣についての一般法(恒久法)を検討すべきだとの考えも表明した(毎日)。
    (中)
    2009年10月27日号
    ■普天間基地 腰がすわらない鳩山首相発言
     8月の総選挙で「米軍再編や在日米軍基地の見直し」を公約した民主党を中心とする連立政権が誕生した。一方で在日米軍再編を推進してきた自民、公明の衆院議席が沖縄県でゼロになった。
     鳩山首相は総選挙中に普天間基地の「県外・国外移設」を訴えた。ところが、この問題で首相は7日、在日米軍再編見直しのマニフェストについて「時間というファクターによって変化する可能性は否定しない」(毎日)と発言。発言は大きな方針転換―辺野古新基地建設を含む県内移設と受け取られ波紋を広げた。
     翌8日、首相は7日の発言を釈明する中で「前政権の下での(日米)合意をそのまま認めるという意味ではない」と述べ(同)、見解を修正した。首相の腰がすわっていない。
     また、この問題では、岡田外相は明確な方向性に踏みこまず、北澤防衛相は県外移設は厳しいとの認識を示しており、担当閣僚間でズレがある。
     「対等な日米同盟」をいうなら、「沖縄県民の思い」を米国にしっかり言わなければならない。
    ■海自のインド洋給油 来年1月撤退強まる
     パキスタン訪問中の岡田克也外相は12日、インド洋における海上自衛隊の給油活動について、今月末召集の臨時国会に「関連法案(来年1月15日に期限が切れる新テロ特措法延長案)提出の予定はなく、延長は困難になったとの見方を同行記者団に示した」(共同)。 岡田氏はこれまで給油活動継続について「絶対ノーとは言っていない」と含みのある発言をしてきたが、「産経」によるとパキスタン外相との会談で、@延長には新法が必要、A民主党は従来、国会で反対してきた、B与党の中で社民党が強く反対している、と説明したことを記者団に紹介している。
     「三党連立政権政策合意」は給油活動について直接言及していないが、幹事長級の政策協議で来年1月撤退が確認されている。
     自民党は、臨時国会に議員立法で延長法案の提出を検討している。公明党は給油継続を表明しているが、自民党の議員立法には同調しない姿勢を示している。
    ■「防衛大綱」改定 1年間先送りへ
     政府は防衛計画の大綱の改定と中期防衛力整備計画の策定を来年末に1年間先送りする方針を固めた。平野官房長官が9日、北澤防衛相と会談した際に「1年間先送りし、しっかりと検討すべきだ」との意向を伝え、北澤氏も了承した(朝日)。
     北澤防衛相は就任直後の記者会見で「大綱」の改定について「総理の指示により年内に間に合うよう準備を進める」と述べ、防衛省は作業を加速させていた。その際、防衛相は前政権の「安全保障と防衛力に関する懇談会」がつくった「報告書」を、新たに「懇談会」を設けて民主党の視点で見直すには「時間的に制約があるので、知恵を拝借できるものは、十分拝借する」との考え方を表明していた。
     「報告書」は「専守防衛」の再検討や集団的自衛権に関する解釈の見直しなどを提言している。まさに「海外で戦争する軍隊」づくりである。
    (中)
    2009年10月10日号
    ■3党連立政権と改憲策動との闘い
     民主、社民、国民新3党の連立政権がスタートして1ヵ月近くが過ぎた。明文改憲のレールを走り続けてきた自公政権に変わって、3党連立政権では改憲の動きはどうなっていくのだろうか。
     10項目を掲げている「連立政権樹立に当たっての政策合意」の9項(自立した外交)では、「緊密で対等な日米同盟関係をつくる」、「日米地位協定の改定を提起し」「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」ことなどを謳っているが、一方で「国際貢献」「国連平和維持活動」も確認されている。
     10項(憲法)では、憲法の3原則の遵守と「憲法の保障する諸権利の実現を第一とし、国民の生活再建に全力を挙げる」など、あたりまえのことしか書かれていない。
     具体的な方策がなんら示されていないため、どこまで本気で取り組むのか心許ない面もある。
     総選挙の結果、「新憲法制定議員同盟」所属の衆院議員が激減した(139議席→53議席へ)ことや憲法審査会の始動がそう簡単に進まないことなど、9条明文改憲の危機はとりあえず弱まったといっていいのではなかろうか。
     しかしながら、「寄り合い所帯」といわれる民主党内のさまざまな傾向は軽視できない。憲法・安保・防衛に対する立場は、改憲派から護憲派まで実に多様である。
     鳩山首相自身が「自衛軍の保持」を明記した「新憲法試案」を公表(05年)しており、小沢幹事長は「国連決議があれば、現憲法下でも海外で武力行使ができる」という持論を主張し続けている。
     共同通信社が行った候補者アンケートのうち民主党の当選者の憲法に向きあう姿勢は、何らかの改憲派が56・5%。その内訳で最も多かったのは「9条以外の部分改憲」35・4%、「9条を含め部分改憲」13・1%、「全面改憲」8・0%(「9条改憲」は21・1%)。
     民主党内の改憲派の動きを表面化させないためには、自公政権を退陣させた新しい政治情勢を生かしながら、国民世論を広め、「改憲手続き法」廃止などの運動をいっそう強化するしかない。
     もちろん、自民党や公明党など改憲勢力の巻き返しは必ずある。その動きに対する警戒を怠ることがあってはならない。
    ■気になる首相・外相・防衛相の発言録
    〈鳩山首相〉
  • 首相就任直前の9月12日、ラジオ番組で、憲法改正に関し「後生大事に憲法を一言一句変えてはいけないという発想はおかしい」(毎日)
  • 訪米中の9月22日、潘基文国連事務総長との会談で「平和維持活動(PKO)での我が国の人的貢献は十分でない。今以上に努力しなければならない」(朝日)
    〈岡田外相〉
  • 9月17日の記者会見で北朝鮮関係船舶の貨物検査を可能にする法案について「次の臨時国会で成立を目指したい」(時事)
    〈北澤防衛相〉
  • 9月17日の記者会見で防衛大綱の策定について「年内に間に合うよう準備を進める」(日経)
    (中)
  • 2009年9月15日号
    ■新議員 改憲賛成―68% 9条改憲反対―51% 毎日新聞調査
     8月の総選挙で民主党が圧勝し、10年続いた自公政権が瓦解した。
     選出された新議員は、来年5月から完全施行される改憲手続き法によって改憲論議や、ことの進み具合では改憲発議にも向きあうことになる。
     毎日新聞が行った全候補者アンケートの当選者に絞った再集計で、新議員の憲法に向きあう姿勢が明らかになった(当選者480人のうち477人が回答)。
     それによると改憲賛成は68%(前回当選者比16%減)、反対は18%(同10%増)だった。
     また、9条の改憲賛成は34%、反対は51%。
     集団的自衛権行使を禁じた政府の憲法解釈について「見直す必要はない」が50%で、「見直すべきだ」の37%を上回った。
    ■改憲政党のマニフェストから
     自公民3党のマニフェストから「改憲宣言」を記録しておこう。
    〈自民党〉
     憲法改正国民投票法の施行(平成22年5月)を控えて、衆参両院に設置された「憲法審査会」を早期に始動させ、「新しい国のかたち」をつくるための精力的な憲法論議を進め、立党50年記念党大会で公表した(05年)「自民党新憲法草案」に基づき、早期の憲法改正を実現する。
    〈公明党〉
     時代の進展とともに提起されている環境権やプライバシー権などを新たに憲法に加える「加憲」の立場をとっています。憲法第9条についても第1項、第2項を堅持した上で、自衛隊の存在や国際貢献等について「加憲」の論議の対象として慎重に検討していきます。
    〈民主党〉
     民主党は2005年秋にまとめた「憲法提言」をもとに、今後も国民の皆さんとの自由闊達な憲法論議を行い、国民の多くの皆さんが改正を求め、かつ、国会内の広範かつ円満な合意形成ができる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していきます。
    ■安保・防衛懇 「海外で戦争する国」づくり提言
     「防衛計画の大綱」の見直し作業を進めていた麻生首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」が麻生首相に報告書を提出した。
     報告書は、軍事政策の抜本的な転換を求めている。具体的には、@「国防の基本方針」の見直しA「専守防衛」の再検討BPKO参加5原則の見直しC恒久法の早期制定D敵基地攻撃能力保有の検討E集団的自衛権に関する解釈の見直しF「武器輸出3原則」などの修正G「非核3原則」の見直し…など、「大胆かつ重要な提言が多数含まれている」(読売社説)。
     これらはいずれも、憲法9条の壁が大きく立ちはだかり、歴代政府をして軍事政策の転換がはかれなかったものである。9条が歯止めになってきたこれまでの軍事政策に対する縛りを解き放すために、明文改憲を待たずに「解釈」を大幅に変え「海外で戦争する軍隊」づくりを企てている。
     民主党政権は、報告書をどう受けとめるのか。鳩山代表は報告書提出後の記者会見で「『自民党政権に対する提案』と指摘。『我々の視点を入れた見直しを人選を含めて行わなければならない』と述べ」(毎日)ている。
     見直しではなく、憲法9条に基づく平和外交への転換こそ重要である。
    ■民主党・鳩山代表 「核の傘」やむをえない
     産経新聞によると鳩山代表は総選挙最中の先月21日、民放番組で「今すぐ(米国の)『核の傘』から出るべきだと主張するつもりはない。北朝鮮情勢をみれば、ある意味ではやむをえないという認識はある」と述べ、米国の核抑止力の必要性を認めた。
    (中)
    2009年8月11日号
    ■防衛白書 中国や朝鮮の脅威を強調し軍事力強化へ
     防衛省は7月17日、09年版「防衛白書」を公表した。毎年刊行しており、35回目となる。
     白書は中国と北朝鮮の軍事脅威を煽り、軍備増強、海外派兵の常態化を強調している。
     防衛力の質的向上として、戦闘機(F‐15)の近代化改修、国際平和協力活動体制の充実・強化、弾道ミサイル、テロ、ゲリラや特殊部隊などによる攻撃など新たな脅威や多様な事態などへの対応、宇宙開発利用・海洋安全への取り組み、先進的な装備品の研究開発、米軍再編への取り組みなどの強化を推進する、としている。
     また、防衛力の整備に関してははじめて「宇宙開発利用に関する取組」の項目を設け、「安全保障分野における新たな宇宙開発利用を推進する」としている。
     さらに、白書は「あらかじめわが国が行う活動の内容などについて定めた一般的な法律を整備しておくことが、迅速かつ効果的に国際平和協力活動を行うために望ましい」と、海外派兵恒久法の制定に言及している。
     白書は防衛費が「7年連続のマイナスとなった」と指摘し、防衛費拡充の思惑もにじませている。
    ■「安保懇」 武器輸出3原則見直し提言へ
     読売新聞によると、麻生首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)が、北朝鮮や中国の脅威増大を受け、日米両国による武器の共同開発・生産などができるよう、武器輸出3原則の見直しを提言することが、明らかになった。
     8月上旬に報告書を首相に提出する予定。政府が年末に策定する新しい「防衛計画の大綱」に盛り込むよう求める。
     同「懇談会」は、1月に初会合を開き、現行「防衛計画の大綱」の見直し作業を進めていた。
     一方、日本経済団体連合会でも、年末の「防衛計画の大綱」の策定に向け、「わが国の防衛産業政策の確立に向けた提言」を公表した。
     「提言」は、武器輸出3原則等の見直しを求め、防衛産業の振興を通じた経済発展に向けて、政府の防衛産業政策策定の必要性を強調している。
    ■ぶれる民主党の安保・防衛路線
     民主党が政権交代を見据え、安保・防衛路線の転換を進めている。
     新聞各紙の「見出し」に見よう。
  • 「核持ち込ませず」見直しも(鳩山代表7/14NHK)
  • インド洋即時撤退は「白紙」(鳩山代表7/17産経)
  • 非核3原則の解釈「国民的議論を」(岡田幹事長7/18日経)
  • 給油撤退は公約に入れず(マニフェスト原案7/23NHK)
  • 海賊対策に海自容認(マニフェスト原案7/23読売)
  • 地位協定改定 後退 「抜本的」から米に「提起」(マニフェスト原案7/24毎日)
  • 特措法再改正示唆 インド洋給油、期限越えも(岡田幹事長7/25毎日)
    (中)
  • 2009年7月28日号
    ■「海賊」派兵法による部隊 ソマリア沖へ
     政府は6日、「海賊」派兵法(任務遂行のための武器使用)に対応できるよう訓練してきた部隊をソマリア沖に派兵した。
     海上自衛隊の護衛艦「はるさめ」「あさぎり」の2隻(自衛官約420人)が、横須賀、舞鶴両港から出港。自衛隊法にもとづいて活動中の部隊と交代し、24日から「海賊」派兵法を根拠法とする船舶の護衛活動を始める予定だ。
     さらに、政府は3日の閣議で、「新テロ対策特別措置法にもとづきインド洋で給油活動を行う海上自衛隊の派遣期間について、今月15日までとした実施計画を変更し、来年1月15日まで半年間延長することを決定した」(時事)。派兵規模や活動内容は変更なし。
    ■民主・鳩山代表 「核持ち込ませず」見直しを示唆
     NHKの報道によると民主党の鳩山代表は14日の記者会見で、核兵器を搭載したアメリカの船が日本に立ち寄ることを黙認する密約があったとする報道に関連し「必要性があったから、現実的な対応がなされてきた側面がある」と述べ、いわゆる非核3原則のうち、「持ち込ませず」については、現実を踏まえたうえで見直すべきではないかという考えを示した。
     また、鳩山氏は、元外務次官らが核密約の文書があったと証言していることについて「政府の答弁に矛盾が生じており、政府の統一見解をしっかり作り出していくことが肝要だ」と述べた。
     自民党の山崎拓外交調査会長は9日、都内の討論会で「北朝鮮の核開発を阻止する上で、米国の核抑止力として、核兵器を保有した米艦船の(日本への)寄港は容認されるべきだ」(時事)と主張。このところ、核密約の公表と併せた非核3原則(持たず、作らず、持ち込ませず)を骨抜きにする言動が強まっている。
    ■自公単独で貨物検査法案強行  解散で廃案に
     自民、公明両党は14日の衆院本会議で、「北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案」(貨物検査特措法案)を与党単独で採決を強行、可決したが、同法案は衆院の解散によって廃案となった。
     野党は、参院で首相問責決議案が可決され、麻生首相が衆院解散を宣言しているもとで、国会審議の条件がなくなったとして欠席した。
     同法案は、朝鮮の核実験などに対する安保理決議1847の「実効性を確保する」ことを目的としている。同決議は、「国連憲章7章41条に基づく措置を取る(非軍事的措置)」ことを明記し、国連加盟国に朝鮮船舶の貨物検査を要請している。
     さらに、同決議は「事態の平和的、外交的かつ政治的解決の約束を表明する」と述べ、「緊張を悪化させる恐れのあるいかなる行動も差し控える」ことを明確にしている。
     ところが貨物検査特措法案は、安保理決議が要請する措置が「海上保安庁で十分に対応可能」(公明新聞)であるにもかかわらず、自衛隊の出動に固執している。
     自衛隊が出ていけば軍事的な「緊張を悪化させる恐れ」がある。
    (中)
    2009年7月14日号
    ■「海賊」派兵法再議決強行 「数の暴力」常態化
     自民、公明両党は6月19日、参院で否決された「海賊対処」派兵法案を衆院本会議で再議決、成立させた。
     憲法は衆参両院における可決を法律成立の原則としている(59条1項)。
     「3分の2再議決」が常態化され、国会におけるまともな審議はなくなってきたのか。
     「海賊」新法については小欄でたびたび取り上げてきたが、同法が「任務を遂行するための武器使用」を認めていることは極めて重大である。9条にもとづく武器使用の制約を取り払えば、自衛隊の歯止めのない武器使用につながり、海外での武力行使に道を開く。「殺し殺される」事態も起こりうる派兵となる。
     ソマリア沖では現在、自衛隊法の海上警備行動にもとづき、陸海空3自衛隊の統合運用が行われている。
     「政府は新法に基づき、武器を使用して海賊を抑止する場面に備えて、機関銃や狙撃銃の訓練を受けた部隊」(産経)を新たに派兵する。7月下旬ごろ自衛隊法に基づき活動中の第1陣と交代する。
    ■軍拡路線鮮明に 新防衛大綱の基本方針
     共同通信は、 政府が今年末に決定する新「防衛計画の大綱」(2010〜14年度)の策定に向けた基本方針が判明したと報じた(6月21日配信)。
     それによると、中国の軍事的な台頭や北朝鮮の核、ミサイル開発を踏まえ、「装備、要員の縮減方針の転換を図る」と明示し、軍拡路線、防衛費の拡充を鮮明にした。
     「現在の防衛力による各種事態への対応力に限界があり、実効的な対応が必要だ」とし、具体的には、04年に策定した現大綱で定める陸上自衛隊の定員15万5千人を95年の16万人に引き上げるなど自衛隊員の増員を検討する。
     また、基本方針は「情勢の変化を踏まえた選択肢の確保」との表現で、敵基地攻撃能力の保有を検討する姿勢を明らかにした。
     さらに、「抑止力の強化」を重視し、ミサイル防衛(MD)システム強化の必要性を強調した。
     琉球新報社説(6月22日付)は、「(基本方針は)国是に反する軍拡宣言だ」と断言。そして「政府の対応策が、中国、北朝鮮を『挑発』し、日本国民に両国への『脅威』を煽り軍備増強へ―というのではあまりに短絡的だ」「外交努力を怠り、軍事力を頼みにした安全保障政策で、持続的に平和を維持、発展させた例など聞かない」と強調している。
    ■「骨太方針09」 初めて「防衛」が単独項目に
     6月23日、閣議決定された「骨太方針09」は、これまでなかった「防衛」という単独の項目を初めて設けた。
     骨太方針は「北朝鮮によるミサイル発射、核実験など厳しさを増す安全保障環境に適切に対処する」ため、「効率的な防衛力の整備を着実に推進する」と述べている。また、「米軍再編関連措置を着実に進める」ことなどを明記している。
     政府は、新防衛大綱を見通し、骨太方針の中で軍拡・防衛費の拡充に軸足を移した。
    (中)
    2009年6月23日号
    ■明文改憲に道開く 自公が審査会規程強行
     自民・公明両党は11日、衆院本会議で改憲原案の審議・提案権を持つ憲法審査会の規程案の採決を強行、与党単独の賛成多数で可決した。
     審査会は、改憲手続き法によって法的には設置(07年8月)されているが、野党の反対で定数や議決要件などを定める審査会規程が制定されず始動できない状態が続いていた。
     規程によって国会での改憲論議をスタートさせることができる。与党は参院側の規程制定の見通しがたっていないことから、衆院側の委員の選任を見合わせるとしている。
     改憲策動は新たな段階に入った。改憲阻止の闘いにいよいよ本腰を入れなければならない。 
    ■敵基地攻撃能力を 自民、防衛大綱提言決定
     自民党国防関係合同会議は9日、政府が年末に策定する新防衛計画の大綱への提言を決定した。
     提言は敵基地攻撃能力の保有を盛りこみ、保有する攻撃能力として巡航ミサイルや弾道型長射程固体(燃料)ロケットを明記している。
     敵基地攻撃能力の保有とは、まだ攻撃が行われていない段階で相手の基地を攻撃できる兵器を持とうということであって、「専守防衛の範囲(予防的先制攻撃は行わない)」などと言ってみても、先制攻撃に変わりない。政府が強調してきた専守防衛の立場からさえ逸脱している。
     提言は、敵基地攻撃能力保有のほか、憲法改正や軍事裁判所の設置、集団的自衛権の行使容認、国家安全保障会議(日本版NSC)新設、内閣直轄の情報機関の設置、武器輸出3原則の見直し、宇宙の防衛利用、恒久法の制定、防衛費の拡充―などを盛りこんでいる。
     自民党は11日、麻生首相(党総裁)に「提言」を提出した。麻生氏は「政府の方でも(有識者による)懇談会がある。その結果も踏まえて検討したい」(時事)と語った。
    ■宇宙の軍事利用へ 政府が基本計画決定
     政府の宇宙開発戦略本部(本部長=麻生首相)は2日、初めての宇宙基本計画を決定した。昨年8月に施行された宇宙基本法に基づき策定。
     宇宙基本法は、「これまで非軍事に限定されてきた日本の宇宙開発を公然と軍事利用に拡大する狙いで」、自民、公明、民主3党が、わずか4時間の国会審議で強行したもの。宇宙開発利用の目的に「安全保障」の分野を入れることで宇宙開発のあり方を180度転換した。
     基本計画では「ミサイル発射をいち早く探知できる早期警戒衛星開発に向けたセンサーの研究着手や、情報収集衛星(事実上の軍事偵察衛星)の拡充など、安全保障分野での宇宙利用にも道を開いた」(毎日)。
     計画では今後5年間で人工衛星など34機の打ち上げを目標に置き、そのための必要経費は、官民合わせて最大2兆5千億円(戦略本部事務局試算)。今年度の宇宙開発予算は当初で約3500億円。
     宇宙における軍拡基本法によって、憲法9条が踏みにじられ、宇宙の軍事予算が際限なく拡大されていく。
    (中)
    2009年6月9日号
    ■陸・海・空3自衛隊がそろい踏み ソマリア沖
     政府は5月28日、ソマリア沖に海上警備行動で護衛艦2隻(約400人)を派兵したのに続き、潜水艦や水上艦を探知・監視するP3C哨戒機2機やP3C警護と基地業務を担当する陸上自衛隊の中央即応連隊を、P3Cが活動拠点とするソマリア隣国ジブチの国際空港に派兵した(部隊は総勢約150人で、中央即応連隊は約50人)。それに、航空自衛隊も人員・物資などの輸送にあたる。P3Cの海外での実任務は初めて。
     3自衛隊が同時に派兵されるのも発足以来初めてのこと。早稲田大学の水島朝穂教授(憲法)は、「規模こそまだ小さいものの、陸海空3自衛隊の揃い踏みによる海外派遣という意味で、これは質的に重要な意味をもつ」(同氏のHP)と指摘する。
    中央即応連隊は、自衛隊の海外派兵主要任務化によって創設された精鋭部隊≠ナある。P3Cの拠点となるジブチ国際空港の警護が主任務で、初の実任務となる。ジブチ国際空港には米軍やフランス、ドイツ軍など複数の国の哨戒機もいる。ジブチでの行動は、今後の海外軍事任務強化への布石になるであろう。
    ■防衛大綱…自民 敵基地攻撃能力の保有提言
     自民党国防部会の防衛政策検討小委員会は5月26日、政府が年末に策定する新しい「防衛計画の大綱」に対する提言案をまとめた。海上発射型の巡航ミサイルの導入など敵基地攻撃能力の保有を提言している。
     同党は6月の上旬にも提言を決定し、政府に申し入れる。
     提言では、米国に向けて発射されたミサイルの迎撃など4類型について政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めるよう強調。
     また、ミサイル防衛(MD)システムでは、発射時の熱源を探知する自前の早期警戒衛星の研究・開発を提案。さらに、武器輸出3原則の見直しで、米国以外の企業との共同研究・開発、生産を可能とするよう求めた。
     極めつけは、共同通信によると、自衛隊の位置付けの明確化、軍事裁判所の設置などに向けた憲法「改正」も提唱していることだ。
     麻生首相は、敵基地攻撃能力をめぐる議論について、28日の参院予算委員会で「法理的には憲法で認められている自衛の範囲に含まれ可能だ」と明言(産経)した。
     戦争を放棄した平和憲法を持つ日本、軍事大国・海外で戦争する国に変える新防衛大綱づくりを見過ごしにはできない。
    ■民主・枝野氏 憲法審査会の「仕切り直しを」
     衆院議院運営委員会は5月28日、改憲原案の審査権限を持つ憲法審査会規程の制定をめぐり、民主党の枝野幸男氏(元衆院憲法調査会長代理)から意見を聴取した。
     時事通信によると枝野氏は「(国民投票法は)大方の合意形成がなされていたのに、(与党による)強行採決になった。仕切り直すべきだ」と批判、早急な規程制定に反対した。
     自・公両党は速やかな制定を求めている。
    (中)
    2009年5月26日号
    ■麻生首相 集団的自衛権の解釈変更検討へ
     麻生首相は4月23日、安倍晋三元首相の肝いりで設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の座長を務めた柳井俊二元駐米大使と会談し、集団的自衛権行使の容認を求めた報告書の内容について説明を聞いた。
     首相は、会談後記者団に「『安保法制懇の話がそのままになっているので話を聞いた。長い文章なので勉強しなければならないと思っている』と解釈変更に前向きな姿勢を示した」(産経)。報告書についても「きちんとした答えは作られており、内容もまとまったものがある」(同)とも述べた。
     首相は就任直後の昨年9月、「重要な問題で、基本的に解釈を変えるべきものだとずっと言っている」(産経)と語っている。
     集団的自衛権をめぐっては、「安保法制懇」が、米艦船が攻撃された場合の自衛艦の応戦や、他国軍を守るための武器使用(駆けつけ警護)、米国に向けて発射されたミサイルの迎撃などの4類型を議論。昨年6月、政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使の容認を求める報告書を福田前首相に提出したが、「お蔵入り」されたままとなっていた。
     「就任以来、首相は保守の政治家らしいことは、まだ、何もしていない。ひとつでもやる気を見せずにどうするのだ」と、極右の扇動家で知られる櫻井よし子氏から発破をかけられている麻生首相は、報告書を蔵から取り出し、集団的自衛権の行使に踏み切るというのか。
    ■改憲へ蠢き始めた安倍晋三元首相
     07年参院選で惨敗し、政権を投げ出した後は鳴りをひそめていた安倍晋三元首相の発言が目立ってきた。
     安倍氏は4月21日、自民党の議員連盟「北朝鮮に対する抑止力強化を検討する会」の講演で「日米両国が協力を深めつつミサイル防衛を機能させるためには、集団的自衛権の行使や敵基地攻撃能力の保有について議論しないといけない」(産経)と強調。
     また安倍氏は4月25日、愛知県での講演で「集団的自衛権の行使を含めた(憲法)解釈の変更を、私たちのマニフェストに入れて選挙に臨むべきだ」と述べ(朝日)、総選挙の争点にする考えを示した。
     講演に先立って安倍氏は22日、首相官邸で麻生首相と会談し、同様の考えを進言した。
    ■敵基地攻撃能力保有の議論を 首相諮問機関
     永田町周辺では、敵基地攻撃能力保有や核武装論が飛び出している。
     時事通信によると、麻生首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)の会合(4月24日)で、北朝鮮のミサイル発射≠踏まえ、発射基地への先制攻撃を想定した「敵基地攻撃能力」について「日本独自で、より進んだ危機管理能力を持つということで議論すべきだ」として、保有を検討する必要があるとの意見が出ている。
     「懇談会」は、今年末の新たな防衛計画大綱策定に向けた議論を進めている。
    (中)
    2009年4月28日号
    ■「海賊」法案審議入り 民主 武器使用拡大容認
     「海賊対処」派兵法案(以下、「海賊」法案) が14日、衆院本会議で審議入りした。与党・政府は同法案を審議する特別委員会を連日開催する構えで、月内の衆院通過を狙っている。
     「海賊」法案は、警護対象を「すべての国籍の船舶」に拡大している。すべての船舶を警護すれば歴代政府が違憲としてきた集団的自衛権の行使につながってくる。
     さらに、「海賊」法案は海外派兵で初めて、船舶警護―海賊対処の任務を遂行するために武器使用を認めている。「任務遂行のための武器使用」を認めるならば、9条を踏みにじり、歯止めのない武力行使に道を開く。
     民主党が15日の「次の内閣」で決定した修正点は、@海賊対処本部(本部長・首相)を設置し、自衛官に「海賊対処隊員」の身分を持たせる、A自衛隊派遣には国会の事前承認と事後報告を義務付ける(日経)―ことが柱。「海賊対処隊員」の身分を持たせたとしても海自の派兵に変わりはない。
     また、同党の直嶋正行政調会長は会見で、「海賊船への船体射撃など政府案の武器使用基準緩和について『変える必要はない』と述べ、容認する考えを示した」(同)。
     海外での武力行使に道を開く「海賊」法案を廃案に追いこまねばならない。
    ■憲法審査会の始動を 改憲派 規程議決に執念
     時事通信によると小坂憲次衆院議院運営委員長は14日の同委理事会で憲法「改正」原案の審査・発議権を持つ憲法審査会の規程について、「憲法記念日の前に本会議で決定できるよう協議いただきたい」と述べ、4月中の制定に向けて与野党の協議を要請した。各党は持ち帰っている。
     これに先立って、自民党の細田博之幹事長は10日の会見で、「法律上、憲法審査会を設置しなければならないにもかかわらず、与野党で合意できない情けない状態にある」「審査会を始めてはいけないというようなことは、まさに議会主義の否定だ」(自民党HP)と述べ、憲法審査会の始動を求めた。
     改憲原案の提案権を持つ憲法審査会は、07年8月の臨時国会で衆参両院に設置されたが、野党の反対で、審査会の委員数や運営方法などを定める規程がいまだに議決されず、活動が開始できない状態が続いている。
     改憲手続き法は、2010年5月18日から施行される。
    ■中曽根元首相 総選挙で憲法論議を
     自民、民主、公明、国民新各党の改憲派議員でつくる新憲法制定議員同盟(中曽根康弘会長)の2日の会合で、中曽根氏は「今度の総選挙は憲法問題にとって非常に重要な意義がある。各党が憲法を国民にどう訴えるかはっきりするからだ」と述べ(産経)、下火になっている改憲論議の盛り上げを呼びかけた。
    ■「読売」世論調査 改憲賛成が再び多数に
     読売新聞は3日付の紙面で「憲法」世論調査(面接方式・3月14、15日実施)を発表した。
     それによると、改憲賛成は51・6%で、改憲反対の36・1%を上回った。昨年3月の調査では、改憲反対が43・1%、改憲賛成は42・5%で、15年ぶりに反対が賛成を上回っていたが、再び改憲賛成の世論が多数を占めた。
     9条については、「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」は38%で、昨年から7%増えた。
     「解釈や運用で対応する」(33%)と「厳密に守り解釈や運用では対応しない」(21%)のいずれも昨年より減少しているが、その合計は54%(昨年比6%減)。9条の明文改憲反対が過半数を占めている。
    (中)
    2009年4月14日号
    ■海自護衛艦が任務開始P3C哨戒機も投入
     3月30日、海賊対策でアフリカ東部のソマリア沖に派兵された海自の護衛艦2隻が海上警備行動の任務を開始した。
     日本近海以外での海警行動は初めてであり、重武装した海賊との応戦ということになれば、海外での武力行使につながる可能性もある。
     防衛省は、「より広い海域を監視する能力がある海上自衛隊のP3C哨戒機も派遣する方向で検討を急いでいる」(NHK)。
     一方、後半国会では、任務遂行のための武器使用を認める「海賊派兵新法」が最大の焦点となる。
    ■海賊対策にひるむな 吠える櫻井よしこ氏
     極右の扇動家で知られる櫻井よしこ氏が、産経新聞の紙上で吠えている。題して「麻生首相に申す―海賊対策にひるむな」。
     まず、「自衛隊法などの信じ難くも時代遅れな規定や、チマチマとした愚かな法解釈の論議に、麻生太郎首相はとらわれてはならない」「保守の政治家として立ち枯れしてはならない。働き場所で、命をかけて働かずにどうするのだ」と発破をかける。
     「海自が他国の船を守れないなどということは、到底、許されない。守らなければ、日本の名誉は未来永劫失われる」。首相はこのような「事態の出来に耐えられるのか」と煽り、「(海自の)正当防衛、武器使用比例原則、人的被害は許されないなどの規定をそのままにして、一体、海自にどんな働きをさせようというのか。政治家はもっと、現場の自衛官の置かれる立場についてまじめに考える必要がある」と強調しながら、「これらの矛盾は、すべて、集団的自衛権に行き着く」と結論づける。
     そして、麻生首相に「国民の代表として、集団的自衛権の新解釈を打ち出すのだ」と強要。「問題がおきれば、(海賊新法が)成立しない可能性もある。だからこそ、新法を待たずに、首相が集団的自衛権の行使に踏み切ることが望まれる。就任以来、首相は保守の政治家らしいことは、まだ、何もしていない。ひとつでもやる気を見せずにどうするのだ」と、麻生首相を叱咤激励する。
     憲法や自衛隊法の規定、“チマチマした愚かな”法解釈の論議にとらわれず、海賊対策に名を借りて集団的自衛権行使へ一気に正面突破しろというのだ。
    ■政権交代で改憲論議促進 民主・鳩山幹事長
     民主党の鳩山幹事長は3月のメールマガジン(☆はあとめーる☆)で「これからの時代に相応しい憲法をつくることは急務」との認識を示し、「昨今の政治状況下で憲法改正の議論が全くなされる暇がないことは極めて不幸です」「それだけに、早く政権交代を実現させ、憲法の論議も可能になるような安定政局を作り出さなければなりません」と述べ、政権交代による改憲論議の促進を強調している。
     鳩山氏は、2005年に「新憲法試案」(前文と全16章137条)を公表。試案は、「国民統合の象徴である天皇を元首とする」「自衛軍を保持する」などを明記している。
    (中)
    2009年3月24日号
    ■違憲の「海賊」派兵法案国会提出 海自は一足早くソマリア沖へ
     政府は13日、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法案」(「海賊」派兵法案)を国会に提出するとともに、浜田靖一防衛相がソマリア沖の海賊対策を口実に、自衛隊法82条に基づく海上警備行動を発令し、海上自衛隊の護衛艦2隻が14日にソマリア沖に向けて出兵した。
     政府は「海賊」派兵法成立後には、派兵根拠を新法に切り替える方針。
     派兵新法の重大な問題として、前号の小欄で武器使用基準と船舶の保護対象の拡大をあげた。
     海上警備行動で保護の対象となるのは日本関係の船舶に限定されているが、派兵新法では保護対象を「すべての国籍の船舶」に拡大している。「すべての国籍の船舶」ということになれば、外国の船舶が襲撃されたときに海自の護衛艦が助けるようなことも起こりうる。これは、歴代政府が禁じてきた集団的自衛権の行使に道を開くものである。
     武器使用の問題は、その権限を一気に拡大したことである。
     海上警備行動の武器使用は正当防衛・緊急避難の場合に限られている。派兵新法では、海賊船が停船命令にもかかわらず民間船に接近してきた場合の船体射撃(人に危害を加える射撃)を可能としている。海外派兵で初めて、船舶を保護する(海賊行為に対処する)という任務遂行のための武器使用を認めた。
     政府はこれまで、任務遂行を阻止する企てに対する武器使用について「いわば自己保存のための自然権的権利というべきもの、これの枠を超えた武器使用となり…憲法第9条の禁ずる武力の行使に該当するということがないとは言い切れない」(01年12月6日・参院外交防衛委員会、津野修内閣法制局長官)との見解をとっている。
     任務遂行のための船体射撃(武器使用)を認めた派兵新法は憲法9条に違反する。海外派兵恒久法の「先駆け」にしてはならないし、また立法改憲を許すことがあってはならない。
    ■民主・前原副代表 海賊対処新法に賛成
     民主党の前原誠司副代表は5日、自民・公明・民主などの国防族でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」の総会で、政府与党が今国会で成立を目指す海賊新法について「ここに集まる民主党議員は賛成の立場と思う」(毎日)とあいさつ、成立に協力する意向を明らかにした。
     総会には民主党から前原氏を含め7人が出席(産経)。民主党の海賊新法への対応が注目される。
    ■護衛艦に特殊部隊「特別警備隊」も
     護衛艦に海上自衛隊「特別警備隊」も乗り込む。
     自衛隊の準機関紙「朝雲」によれば、特警隊は能登半島沖不審船事案の教訓・反省等から特別に編成された部隊。特殊な訓練を実施しており、いろいろな意味で高い能力を持っている。
     海自トップの赤星慶治幕僚長は「警告射撃に高い能力を活用したい」(毎日)と語っている。
    (中)
    2009年3月10日号
    ■海賊新法 武器使用の拡大容認 外国船も保護
     政府は2月25日、「与党・海賊対策等に関するプロジェクトチーム」(PT)で、海賊対策新法案の骨子案を示し、大筋で了承された。
     これを受け、政府は、さらに条文をつめた上で、3月上旬に国会提出する。
     海賊新法骨子案の特徴は、自衛隊法82条に基づく海上警備行動では保護対象となるのは日本関係の船舶に限定されているが、海賊新法ではすべての国籍の船舶に保護対象を拡大している。
     さらに重要な点は、武器使用権限を拡大したことである。武器の使用については正当防衛や緊急避難など警察官職務執行法7条を準用するほか、任務遂行のための船体射撃を認める規定が盛りこまれている。
     「海賊船が民間船に接近してきた場合、正当防衛や緊急避難に当たらない段階でも、海賊船が停船命令に応じず、他に手段がなければ、停船させるための船体射撃を可能とする」(読売)。「海賊船の接近自体を海賊行為と定義し、海賊が攻撃を始める前に停船目的で船体射撃できる」(東京)。
     任務遂行のための船体攻撃を可能にすることは、憲法が禁じている海外での武力行使となる。まさに、立法改憲そのものである。
    ■米領内(グアム)の基地強化 なぜ日本の税金を出さねばならないの?
     中曽根外相とクリントン米国務長官は2月17日、「在沖米海兵隊のグアム移転に関する協定」に署名した。
     なんと、経費の約6割に当たる61億ドルを日本側が負担するという。
     米海兵隊のグアム移転は、もともと米軍のグアムにおける基地大増強の一環である。「琉球新報」社説は「なぜ日本が、これだけの膨大な税金を米軍の新基地建設のために支出しなければならないのか」と前例のない措置に疑問を投げかけている。
     巨額の税金を投入するわけとして「沖縄の負担軽減」のためと説明されている。グアムに移転するからといって、沖縄の米海兵隊がいなくなるわけではない。計画では定数1万8千人を1万人残すというもの。しかし、沖縄に駐留している海兵隊員は約1万2、3千人といわれており、1万人残すということであれば、実際に削減されるのは司令部などの2、3千人ということである。
     これでは「負担軽減」とはとてもいえないだろう。琉球新報「社説」は「だとすれば『沖縄の負担軽減』の論理は、日本に巨額の財政負担を強いるための詭弁にすぎない」と決めつけている。
     ちなみに同紙が実施した県会議員へのアンケート調査ではグアム協定を「評価できない」と回答したのは60%だった。
     さらに協定は、普天間基地に代わる名護市辺野古の新基地建設を押しつけている。沖縄県議会は昨年7月、「名護市辺野古沿岸域への新基地建設に反対する意見書」を可決している。
     政府はA月24日、グアム移転協定批准承認案を閣議決定し、国会に提出した。
    (中)
    2009年2月24日号
    ■ソマリア沖派兵は「3月上旬」 浜田防衛相
     浜田防衛相は7日、訪問先のドイツで同行記者団に対し、海賊対策を口実にしたソマリア沖への海上自衛隊を派兵する時期について、「準備は着々と進んでいる。3月上旬には出せるようになる」(読売)と明言した。
     また、政府・与党が検討している海賊新法について、「艦船を派遣する前に、法案を国会に提出するのが先だ」(NHK)と述べるとともに、新法案の柱となる武器使用の拡大については「任務遂行のため、当然、広げてもらいたい。そうしなければ自衛官も判断できない」(NHK)と強調した。
     なお、防衛省は8日、海自派兵準備のための調査団をソマリア周辺国に派遣した。日程は20日までとなっている。
    ■蠢く「安保若手議連」 海賊新法で一致点を
     自民・公明・民主などの国防族議員でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」は5日、国会内で役員会を開き、政府が検討している海賊対策新法について、自・公・民3党が意見の一致点を見いだせるよう議論を急ぐ方針を確認した。
     役員会には、自民党の中谷元・安全保障調査会長や民主党の前原誠司・副代表、公明党の佐藤茂樹・安全保障部会長らが出席(中谷氏と佐藤氏はともに与党海賊対策プロジェクトチームの座長を務めている)。
     中谷氏は「海賊対策の新法をきちんとした形にするには、国会で論議する前から、超党派で法律の内容を詰め、しっかりしたものにしたい」(NHK)と期待を示しており、今後、武器使用の拡大などが議論の核心になる。
     なお、民主党は、総選挙協力や連立政権の相手としている社民党と国民新党がソマリア派兵に反対していることもあって明確な方針を未だ打ち出せていない。党内には賛否両論がある。
    ■日本経団連 改憲を優先政策に
     財界の総本山、日本経団連が「09年の政党の政策評価の尺度となる」10項目の「優先政策事項」を発表した。
     10項目ごとに政党の政策との「合致度」や「政策実現に向けた「取り組み」「実績」などを評価する財界による政党の「通信簿」で、09年の企業献金の基準になる。
     日本経団連は04年以降、毎年発表している。
     09年の「優先政策事項」の冒頭には「緊急・大型の経済対策による景気刺激・金融安定化と税・財政の抜本改革の推進」を掲げ、「外交・安全保障」の項では、「自衛隊の国際貢献推進」のため、「安全保障に関する基本法や国際平和協力に関する一般法の整備」などを求めている。改憲については「憲法審査会の早期開催などを通じ、各界各層における議論を喚起する」ことを要求している。
    (中)
    2009年2月10日号
    ■ソマリア沖海自派兵
    首相が準備命令 3月にも護衛艦出動
     麻生首相が、アフリカ東部ソマリア沖の海賊被害への対策を口実に、自衛隊法82条に基づく海上警備行動を発令して、海上自衛隊の派兵を検討するよう浜田防衛大臣に指示したのは昨年末の12月26日。派兵を急ぐ首相は1月28日、ソマリア沖への海自派兵に向けた準備を命令した。
     海賊行為はあくまでも犯罪であり、取り締まるのは警察(海上保安庁)の仕事。海上警備行動は日本近海を想定、これまでの政府見解を無視したものだ。
     それを国会でまともな議論もなく、民意も問わないまま、憲法違反の海外派兵を現行法で行う暴挙は断じて許されない。
     自民、公明両党は22日の「与党海賊対策等に関するプロジェクトチーム」(PT)で、海上警備行動を発令してソマリア沖に海自を派兵することを決定した。首相の準備命令はこれを受けたもの。
     与党PTが決定した「中間とりまとめ」は、議論の核心であり、重大な問題である武器使用については、正当防衛や緊急避難など警察官職務執行法7条で対処するとしているが、「(与党は)見解を統一できないまま、(具体的な)基準作成を防衛省に丸投げ。そして、その基準も隊員の安全を理由に非公開のため、国民に知らされることはない」「ある自衛隊幹部は、仮に基準が拡大されれば、次の海賊対策以外のオペレーションでも基準拡大を求める根拠になりうると話している」(TBS)。
     また、いつでもどこへでも派兵できる恒久法制定の地ならしにもなる。
     与党PTは、海上警備行動による海賊対策を「当面の応急措置」としており、新法「海賊行為への対処等に関する法律(仮称)」の3月上旬の国会提出を目指している。
     海自は、1ヵ月半程度の準備期間を経て、早ければ3月にもソマリア沖で活動を始める見通し。
     1割台の支持しかない麻生・自公政権の暴走を止めなければならない。
    ■防衛大綱見直し 海外派兵態勢の強化へ
     麻生首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・勝俣恒久東京電力会長)の初会合が1月9日、首相官邸で開かれ、04年に改定された現行「防衛計画の大綱」の見直し作業に着手した。6月をメドに報告書をまとめ、防衛省や安全保障会議で検討し、年末に閣議決定することになっている。
     麻生首相は懇談会で、「自衛隊の国際平和活動が本来業務になり、イラク、インド洋などで実績を積んできた。国際情勢が厳しくなるなか、防衛力の指針を改めて考える時期に来ている」(朝日)と強調しているが、大綱見直しの狙いが、自衛隊の海外派兵態勢の本格的な強化にあるのは明白。 
    ■オバマ米大統領 日本などにアフガン支援要請
     NHKによると、オバマ米大統領は1月22日の演説の中で、アフガン問題を重視する姿勢を示し、日本など友好国にさらなる貢献を求めた。具体的な貢献の内容は不透明だが、陸自の派兵もありそうだとしている。
    ■改憲の機運醸成―自民  憲法に触れず―民主
     1月18日、自民、民主両党はそれぞれ定期大会を開催した。
     自民党は運動方針で、憲法改正、安全保障などを列記したうえで「立党以来培ってきた知恵と勇気と行動力を総結集して、これらの重要課題に果敢に取り組んでいく」と強調。重点政策として、18歳以上の投票権の実現など改憲手続き法に沿った取り組みの強化と改憲への機運の醸成を掲げている。
     一方、民主党は、活動方針で憲法問題について触れていない。
    (中)
    2009年1月20日号
    ■ソマリア沖派兵検討 麻生首相が指示
     麻生首相は12月26日、アフリカ東部のソマリア沖の海賊被害への対策を口実に、自衛隊法82条に基づく海上警備行動を発令して、海上自衛隊の護衛艦を派兵する方向で検討するよう、浜田防衛大臣に指示した。
     さらに首相は、海賊対策の範囲を限定せず、外国船の護衛も可能とする一般法(新法)の制定を目指している。通常国会に提出しても成立のメドが立っていないため、新法制定までの「つなぎ」の措置として、海上警備行動発令による派兵の検討を指示した。
     また、4日の年頭記者会見で首相は、集団的自衛権の憲法解釈の変更について「重要な課題であり議論する必要がある。ソマリア沖の海賊対策も含めて具体的なことになってきているので、引き続き検討する」と述べた。 政府の、まず派兵ありきの対応は許されない。海賊はロケット砲などで武装しており、9条が禁じる海外での武力行使につながるものだ。
    ■2008年―主な改憲の動き(下)
    〈7月〉
    18日 政府、アフガニスタン本土への自衛隊派兵を当面、見合わせる方針を決定
    〈8月〉
    1日 福田改造内閣発足
    22日 7月のサミットにおける日米首脳会談で、福田首相が給油活動の継続を「約束する」とブッシュ大統領に明言していたことが明らかになる
    〈9月〉
    1日 福田首相、政権投げ出す
    5日 政府、08年版「防衛白書」を了承
    9日 新テロ特措法に関する与党プロジェクトチーム、同法の1年延長を確認
    24日 麻生内閣発足
    26日 麻生首相、国連総会の一般討論演説で「テロとの戦いに積極的に参加していく」と強調
     麻生首相、国連本部で記者団に対し、集団的自衛権の行使について「重要な問題で、基本的に憲法解釈を変えるべきものだとずっと言っている」と述べる
    〈10月〉
    2日 麻生首相、村山談話を踏襲すると明言
    3日 麻生首相、参院本会議で「恒久法」制定に積極的な考えを表明
    17日 麻生首相、衆院テロ特別委員会でソマリア沖などの海賊対策について自衛隊の艦船による護衛を検討すると表明
    20日 民主党の直嶋正行政調会長、衆院テロ特別委員会で「政権につけば憲法解釈を変更し、国連決議があれば海外で武力行使ができるよう法整備に着手する」と明言
    21日 新テロ特措法延長案、衆院で可決。民主党の対案は否決
    22日 新テロ特措法延長案、参院で審議入り
    31日 侵略戦争を美化する田母神「論文」発表
    〈11月〉
    26日 新憲法制定議員同盟が総会開催
    28日 政府、イラク派兵中の航空自衛隊に撤退命令
    〈12月〉
    12日 新テロ特措法延長案、参院本会議で否決。衆院本会議で再可決・成立
    16日 自民党の細田幹事長、各都道府県連に憲法改正担当の役員を置き、全国的な運動を展開すると発言
    17日 自民党の山崎拓前副総裁、自主憲法制定国民会議主催の会合で「大連立で3分の2を確保し、憲法改正を断行するときが来る」と強調
    24日 政府、インド洋での給油活動の半年間延長を決定(2009年7月15日まで)
    25日 第170回臨時国会閉会
    26日 麻生首相、海上警備行動を発令して、ソマリア沖への海自派兵を検討するよう指示
    (中)
    2008年12月23日号
    ■新テロ特措法延長案 衆議院で再可決強行
     新テロ特措法延長案は12日、参議院本会議で否決されたが、政府・与党は同日、衆議院本会議で再可決を強行、3分の2以上の賛成で成立した。
     参議院の意思とインド洋での給油活動の延長に反対する国民的世論を踏みにじる暴挙である。再可決は、新テロ特措法を成立させた1月11日の再可決に次いで2度目。
     アフガン戦争は泥沼状態に陥っており、「戦争でテロはなくならない」ことがはっきりしている。
    ■タカ派色強めた自民党の総選挙予定候補
     9月の麻生内閣発足後、朝日新聞社と東京大学・谷口将紀研究室が共同で次期総選挙予定候補者約900人を対象に意識調査を行った。
     それによると、安全保障・外交政策では、自民党はタカ派色を強めた。「集団的自衛権を行使すべきだ」では73%が賛成派で、05年総選挙の50%より増えた。
     民主党は「防衛力はもっと強化すべきだ」で賛成派が17%と05年総選挙の32%より減った。
    ■2008年―主な改憲の動き(上)
    〈1月〉
    4日 福田首相、年頭記者会見で自衛隊の派兵恒久法の制定について、積極的な姿勢を示す
    11日 参院本会議、新テロ特措法案否決。衆院本会議、与党が再可決強行、3分の2以上の賛成で成立
    15日 第168回臨時国会閉会。民主党提出の新テロ特措法の対案は継続審議に
    17日 石破防衛相、自衛隊にインド洋での給油活動再開のための派兵命令を出す
    19日 第169回通常国会召集。福田首相、施政方針演説で改憲について「今後は国会のしかるべき場において、改正するとすればどのような内容かなど、幅広い合意を求めて、真摯な議論が行われることを強く期待している 」と強調。派兵恒久法については「迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる『一般法』の検討を進める」と制定への意欲を表明
    22日 公明党、恒久法について本格的な議論を開始
    23日 福田首相、参院の代表質問で、憲法審査会の活動の早期開始に期待感を表明
    〈2月〉
    4日 自民党の憲法審議会、改憲手続き法実施に向け関連する法整備の議論始める
    10日 新憲法制定議員同盟、憲法審査会の早期活動開始を求める国会議員353名の署名を衆参両院議長に申し入れ
    13日 自民党、「国際平和協力の一般法に関する合同部会」の初会合、恒久法の検討に着手
    〈3月〉
    4日 新憲法制定議員同盟、総会で民主党幹部を初めて役員に取り込み、新役員体制をスタート
    〈4月〉
    8日 読売新聞世論調査、改憲賛成42・5%、改憲反対43・1%
    10日 自民党、恒久法に関するプロジェクトチーム立ち上げ
    17日 名古屋高裁、航空自衛隊の「米軍への空輸支援は憲法9条違反」と判決
    23日 自民、民主、公明の3党の議員でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が総会を開催し、3年ぶりに活動再開
    〈5月〉
    1日 新憲法制定議員同盟、「新しい憲法を制定する推進大会」を開催し、憲法審査会の早期始動を求める決議を採択
    3日 朝日新聞世論調査、9条改憲反対66%、9条改憲賛成23%
    23日 与党の恒久法に関するプロジェクトチーム発足、秋の臨時国会への法案提出をめざす
    〈6月〉
    13日 政府、イラク派兵の1年間延長(09年7月まで)とインド洋派兵の半年間延長(同1月15日まで)を決定
    19日 恒久法に関する与党プロジェクトチーム、通常国会中の法案要綱の作成を断念し、論点を列挙した「中間報告」をまとめる
    21日 第169回通常国会閉会 24日 首相の諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使の容認を求める報告書を福田首相に提出
    (中)
    2008年12月9日号
    ■海賊対策 まず海外派兵ありき
     アフリカ東部のソマリア周辺海域で、海賊による各国のタンカーや貨物船の被害が急増していることを受け、海上自衛隊の派兵が浮上している。
     共同通信(11月20日配信)によると、政府は、海上自衛隊の護衛艦を派遣するための「海賊行為防止活動特別措置法案」(仮称)の素案をまとめた。自衛官の正当防衛に加え、海賊が武力で抵抗した場合の武器使用を容認する考えを打ち出し、護衛対象に外国船も含めた。政府は来年の通常国会での法案提出をめざすという。
     海賊はロケット砲などで武装している。抵抗したら武力の行使を認め、外国船をも護衛するというのは、海賊退治に名を借りた9条破壊である。
     まず派兵ありきのやり方は許されない。
     朝日新聞の「海賊対策―日本ができる貢献もある」と題する社説(11月22日付)は、「根本的な解決策は、ソマリアの内戦を終わらせ、統治力のある政府を作り出すことだ」と指摘している。ソマリアでは90年代初めから内戦が激化し、無政府状態が続いている。
     海賊対策で開かれた紅海沿岸のアラブ6ヵ国のカイロ会議で(11月20日)、エジプト外務省高官は「海賊を減らすためにはほぼ無政府状態にあるソマリアの安定化が喫緊の課題として、国際社会が同国の暫定政府に人道、経済、政治各面で支援を提供することが大事との認識も示した」(CNN)。
    ■田母神「論文」事件 統幕学校 偏向カリキュラム見直しへ
     「武力こそ使わないものの、『懸賞論文』という『ペン』を使って政府や憲法を攻撃する、『平成の2・26』といえなくもない」(水島朝穂・早稲田大学教授)田母神「論文」事件。
     戦前のアジア侵略を否定する制服組トップ。田母神俊雄・前航空幕僚長が、統合幕僚学校長時代、その地位と職権を利用して、偏向した歴史観と国家観に沿った隊内の幹部教育が行われていることが明らかになった。統幕学校の講座「歴史観・国家観」は、田母神氏が学校長時代に新設したもので(03年度)、防衛省は外部講師の氏名を黒塗りで発表していた。
     田母神氏は、参院外交防衛委員会の参考人質疑で、歴史観や国家観のカリキュラムを設けたことについて、「日本の国をよい国だと思わなければ頑張る気になれず、悪い国といったのでは自衛隊の士気はどんどん崩れる。その意味できちっとした国家観・歴史観を持たせなければ国は守れない」(NHK)と開き直り、その態度は終始、傲慢・不遜なものだった。
     統幕学校は、陸海空各自衛隊の1佐、2佐クラスを対象にした将官・上級幕僚への登竜門。田母神「論文」と同様の幹部教育が行われているなら「偏った歴史観を持つ自衛隊幹部が量産され、第2、第3の田母神氏を生む仕組みが作られていることになる」(毎日新聞・11月12日付社説)。
     防衛省は11月19日、国会の求めに応じて、「歴史観・国家観」講座の講師名を明らかにした。公表された5人のうち3人は侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」メンバー。「つくる会」副会長の福地惇・大正大教授、同会理事の高森明勅・日本文化総合研究所代表、同会賛同者の井沢元彦氏(作家)、坂川隆人・元統幕学校教育課長、冨士信夫・元海軍少佐の5人。朝日新聞では、ジャーナリストの桜井よし子氏が加わっている。
     浜田靖一防衛相は11月21日の記者会見で、偏向カリキュラム問題について、「より幅広くバランスの取れた適切な教育を実施するよう、講師の選定も含めて科目の見直しを検討する」と述べた(読売)。
    (中)
    2008年11月25日号
    ■CH47輸送ヘリ アフガニスタンへ
     新テロ特措法延長案を審議している参議院外交防衛委員会(10月28日)で、浜田靖一防衛相は、陸上自衛隊の輸送ヘリ「CH47の整備、改修をできるだけ速やかに実施し、積極的にこれ(国際平和協力活動)に貢献できる体制をつくっていきたい」と述べ、アフガンへの派兵を目指していることが明らかになった。与党の質問に答えたもの。
     自衛隊のアフガン派兵は欧米の強い要求でもある。アフガンは全土が戦闘地域。米軍の武力行使と一体化するヘリ輸送は憲法違反である。
    ■ペシャワール会の中村哲氏「戦争でテロはなくならない」 参院委
     新テロ特措法延長案を審議中の参院外交防衛委員会は5日、ペシャワール会の中村哲現地代表らを参考人として招致し、意見を聴取した。
     ペシャワール会は、アフガニスタンで医療活動や干ばつ対策(水利事業)などに取り組んでいる。
     中村氏の冒頭陳述・質問に対する答弁の要旨は次のとおり。
    〈アフガンの現況〉
     アフガニスタンにとって最も脅威なのは大干ばつ。恐らく数十万人は生きて今年の冬を越せないだろうという状況にある。
     干ばつとともに、対テロ戦争という名前で行われる外国軍の空爆が治安悪化に拍車をかけている。私が25年いる中では最も治安が悪くなっている状態だ。
    〈自衛隊の派兵〉
     対日感情についても、少しずつ陰りが見えてきている。
     米軍の軍事活動に協力していることがだんだん知れ渡ってくるにつれて、私たちも身辺に危険を感じるようになった。
     治安問題は基本的に警察の問題であって軍隊の問題ではない。陸上自衛隊の派遣は有害無益、百害あって一利なしだ。 
    〈対話路線への転換〉
     カルザイ政権も、パキスタン側も同じ動きをしており、今もう戦争で事は解決しない、対話路線でいかないと駄目だということで対話が開始された。米軍もイギリスもそうであり、武力で勝たないという共通認識が広がりつつある。
    〈支援の道〉
     何をすべきかと同時に。何をしてはいけないかを明確にするだけで大きな方針が出る。対テロ戦争の破綻はだれの目にも明らかだ。
    水さえあればいろんなことがアフガニスタンでできる。このことに力を入れるべきだと宣言し、国際社会という、マジックのような言葉に踊らされずに、日本独自の道を見出すべきだ。
    〈戦争でテロ拡大〉
     軍事力で(テロは)絶対になくならない。ますます拡大していく。肝心の米軍自体が今、対話路線に切り替えつつある。
    〈外国軍への国民的感情〉
     ほとんどの人は反米的である。ただ、それを口に出すとアルカイダに通じているだとか、反米主義者だとかいう烙印を押される。それを恐れて黙っているだけで、内心アフガン人のほとんどは反米的である。
    (中)
    2008年11月11日号
    ■民主・直嶋政調会長 「政権につけば憲法解釈変更の作業に着手」
     民主党の直嶋正行政調会長が10月20日の衆院テロ特別委員会で「政権につけば憲法解釈を変更し、国連決議があれば海外で武力行使ができるよう法整備に着手する」と明言した。自民党の中谷元議員(元防衛庁長官)の質問に答えたもの。
     まず、中谷氏が「小沢党首が言われるように(国連決議があれば海外での)武力行使ができると、民主党が決定したと考えていいのか」と質問したのに対し、直嶋氏は「国連憲章42条の場合は可能である」と答弁。
     その上で、中谷氏は「民主党が政権につかれたら従来の憲法解釈を変えて内閣運営をされるかどうか」を質問。直嶋氏は「その方針に基づいて法律の整備が必要になるし、政権を担当させていただければ作業に着手するということになる」と答弁した。 続いて中谷氏が「憲法解釈を変えるととらえていいのか」とただしたのに対し、直嶋氏は「状況によって憲法解釈が変わるということはある。法整備をした上で対応したい」と述べた。
     歴代政府はこれまで、目的・任務が武力行使を伴う国連の活動に参加することは憲法上許されないとの解釈をとってきた。海外での武力行使を可能とする憲法解釈は、自民党さえもとっていない。
     憲法解釈の変更を国会の場で明言した直嶋発言は重大だ。9条をとっぱらい、「戦争する国、日本。」への道につながる。
     直嶋氏が強調している「法の整備」に関連する小沢党首の発言を紹介する。「憲法に逐条として出ていない部分について、自衛隊派遣のきちんとした原則を明記して憲法を補完する(安全保障)基本法が必要だ。そうしないと憲法を改正するまで憲法問題が続いちゃう。選挙で多数とれば、基本法を進めたほうがいい」(07年11月16日付「朝日新聞」)。
     かくして民主党の基本法は、憲法を変えることなく9条改憲を法律で行う立法改憲である。
    ■自民党 憲法審議会が活動再開
     日経新聞によると自民党は10月28日、憲法審議会(中山太郎会長)を開き、選挙権年齢などの18歳以上への引き下げについて議論を再開した。
    ■海賊退治に海上自衛隊派兵
     10月17日の衆院テロ特別委員会で、民主党が提案した海賊対策について、麻生首相は「アフリカのソマリア沖などで相次ぐ海賊事件への対応について、自衛隊の艦船がタンカーなどを護衛することも検討に値するという考えを示した」(NHK)。
     これを受け、自民党は10月24日、法整備に向けてプロジェクトチームの設置を決めた。
     「給油新法を改定するか、別の新法を作るかして、自衛隊法82条の海上警備活動、同81条の警護活動をアラビア海まで適用するというのだ。これでは邦人保護の名目で、自衛隊は世界中、どこにでも出動し、武力行使ができることになる」(「許すな!憲法改悪・市民連絡会」ブログ)。
    (中)
    2008年10月28日号
    ■新テロ法延長 民主の豹変に鋭い批判 地方紙
     新テロ法成立へ会期を2回延長し、異例の越年となった今年1月の臨時国会では徹底抗戦した民主党が、解散を優先させる党略から態度を豹変させ、早期採決を容認。このため、延長法案は今月中にも成立する見通しだ。
     また、衆議院の3分の2の再可決に反対の姿勢を示していた公明党も、早期解散の立場から再可決賛成の方針に転じた。
     地方紙の社説が方針を豹変させた民主党に厳しい批判を浴びせている。
     南日本新聞(10日付)は、「民主党の方針転換は、反対を貫いてきた法案の早期成立を事実上容認するものだ」とし、「早期解散と国際貢献問題の争点化回避のために早期採決に応じるというのでは、野党としての使命を放棄するようなものだ」と手厳しく批判している。
     「民主党は、新テロ特措法の対案を国会に提出、継続審議となっている。重要な対決法案の論議を選挙対策で回避するのでは、政権を担おうとする党として無責任ではないか」と決めつけるのは新潟日報(10日付)。新テロ法の争点として「政府案が海自の補給活動に限定しているのに対し、民主党案は民生支援に徹しながら、国連の活動の枠内で自衛隊もアフガニスタン国内に派遣できるという内容だ。これこそ総選挙で問われるテーマであろう」と指摘する。
     東京新聞(11日付)は「国論を二分する課題について、十分な議論もなく結論を急ぐのはいかがなものか」「本来は国民の理解が第一の重要課題なのに、自公の政権が説得の努力を重ねているようには見えない。民主党も安易に過ぎる」と自公民の態度を批判している。
     京都新聞(11日付)は「衆院選の争点ともみられるのに、あまりに軽い扱いであり、論議が尽くされるか心配だ」「民意を問う解散・総選挙のためとはいえ、民意からかけ離れた政争を繰り広げてはならない」と法案の徹底審議を求め、山陽新聞(13日付)は「法案の内容より、選挙の駆け引きに走って審議の形だけ整えたのでは本末転倒だ。政治を担う根本姿勢が問われる」と強調。
    ◇             ◇
     7年にわたるアフガニスタン戦争は、いま、泥沼状態に陥っており、「戦争でテロはなくならない」ことがはっきりしている。「(旧政府勢力)タリバーンとの和平論が急浮上している。カルザイ大統領はタリバーン指導者オマール師に政権参加を呼びかけ、米英でも政治的解決を支持する声が広がり始めた」(朝日)。
     アフガニスタンをめぐる新しい動きがあるとき、アメリカの戦争を支援する延長法案を強行することは許されない。徹底的な審議を行い、廃案にすることが筋である。
    ■首相 恒久法の制定を
     麻生首相は3日の参院本会議で、恒久法の制定について「迅速、効果的に国際平和協力を実施していくため望ましい。日本の基本方針を内外に示す上でも有意義だ」(産経)と述べた。臨時国会冒頭の所信表明演説では一言もふれてなかった。
    (中)
    2008年10月14日号
    ■所信表明演説 歴史認識や憲法に言及なし
     「かしこくも、御名御璽をいただき、第92代内閣総理大臣に就任いたしました」―麻生首相の初の所信表明演説(9月29日)は、まるで戦前の明治憲法下のような感覚で始まった。
     それだけに、戦後体制を敵視してきた首相の持論である歴史認識や憲法観がご披露いただけるものと思ったが、それらについて一言も語ることはなかった。
     本来、所信表明演説は、政権の課題や実現への道筋を国民に明らかにするためのものであろう。しかし、首相は総選挙を意識し、もっぱら民主党をはじめ野党への質問・攻撃を連発する異常な演説となった。
     首相は、国際貢献について、新テロ特措法にもとづくインド洋での給油活動を「わが国の国益をかけ、わが国自身のためにしてきた」と述べ、「国際社会の一員たる日本が、活動から手を引く選択はあり得ない」と明言。給油活動継続への執念を見せた。
     首相は所信表明に先立つ国連総会の演説でも、「国際社会と一体となり、テロとの戦いに積極参画してまいる」と述べ、給油活動継続への決意を表明した。給油活動の継続は国際公約になったと言える。
     国際公約によって安倍、福田の2代の首相が行き詰まり、政権を投げ出している。
    ■政府 新テロ特措法延長法案を国会に提出
     給油活動の継続に固執する政府は9月29日、解散含みの臨時国会に新テロ特措法延長法案(1年間延長)を提出した。
     衆院が解散になれば廃案になるが、政府としては、給油活動を継続する姿勢をアメリカをはじめ内外に示すことを狙っての提出だ。
    ■首相 集団的自衛権の憲法解釈変えるべき
     自民党の総裁選挙では何も言わなかった麻生氏が、首相になったとたん「集団的自衛権容認へ憲法解釈を変えるべき」と言い出した。
     麻生首相は、国連総会での演説後(9月25日)、記者団に、集団的自衛権の行使について「重要な問題で、基本的に(憲法の)解釈を変えるべきものだとずっと言っている」(産経)と述べた。憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使を容認すべきだとの持論を改めて表明したものだ。
     ところが、所信表明演説では集団的自衛権について一言も触れなかった。
    集団的自衛権をめぐっては、安倍元首相の肝いりで設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)が、米艦船が攻撃された場合の自衛艦の応戦や、他国軍を守るための武器使用(駆けつけ警護)などの4類型を議論。今年6月、政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使の容認を求める報告書を福田前首相に提出したが、「お蔵入り」されている。
     総選挙の結果次第で、麻生首相が「蔵出し」する可能性がある。
    (中)
    2008年9月23日号
    ■給油継続に固執 自公が特措法延長で合意
     安倍氏に続いて福田首相も政権を投げ出した(1日)。新テロ特措法成立の見通しがたたないことも辞任の理由の一つにあげている。首相は7月のサミットに合わせて行われたブッシュ大統領との会談でインド洋での給油活動の継続を約束していた。
     ここ1ヵ月近く、テレビ・新聞は、まるで自民党の広報機関になったかのようであった。総裁選騒ぎの中、新テロ特措法延長問題は吹っ飛んでいるかと思いきや、与党・新テロ特措法に関するプロジェクトチーム(座長・山崎拓自民党前副総裁)は9日、来年1月15日までの期限を1年延長することで合意した。
     政府は延長法案を閣議決定し、自民党総裁選後に召集される臨時国会(24日予定)に提出する方針。ただ、新首相が冒頭解散に踏み切れば成立は困難となる。年内に成立しなければ海自が再び撤退することになる。
    ◆日本経団連の御手洗会長は8日の記者会見で「テロとの戦いに毅然として立ち向かうことを強く支持」し、「(特措法の)延長を断固支持する」(日本経団連HP)と強調した。
    ■防衛白書 給油継続や派兵恒久法制定を強調
     防衛庁が防衛省に移行して初めての防衛白書が5日の閣議で了承された。
     白書は、海上自衛隊がインド洋で行っている米軍などへの給油活動について「わが国にふさわしい貢献であ」り、「この地域の平和と安全に貢献し、資源の多くを中東地域に依存するわが国の国益にも資する」などとして、新テロ特措法の延長を強調している。
     白書はまた、海外派兵恒久法については「国際の平和及び安全を維持するため国際社会が協力して行う活動が多様化してきていることから、必要性が生じるたびに特措法を制定して個別に対応を行ってきたが、あらかじめわが国が行う活動の内容・要件・手続などについて一般的な法律を整備しておくことが、わが国が『平和協力国家』しての役割を果たす上で、迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくために望ましく、また、国際平和協力に関するわが国の基本的方針を内外に示す上でも有意義」だとし、その制定を強くにじませている。
     白書がめざす道は、インド洋やイラク派兵の実績をふまえ、9条を破壊し海外で「戦争する国」への動きをいっそう促進・強化することである。
    ■JC兵庫 神戸で憲法タウンミーティング
     日本JC(日本青年会議所)は、改憲論議を盛り上げようと4月以降、「憲法タウンミーティング」を全国展開している。
     その一環として神戸でも憲法タウンミーティングを開催。神戸新聞によると8月31日、自民・民主・共産党の参院議員らが、9条を中心に意見を戦わせた。
     なお、日本JCは05年に「日本国憲法JC草案」を発表。9条2項を削除し、「軍隊」の保持と「軍隊」の「国際活動」への参加を明記し、天皇は元首と規定している。
    (中)
    2008年9月9日号
    ■新テロ特措法延長法案 臨時国会へ
     政府・与党は、秋の臨時国会を9月12日に召集し、会期を11月20日までの70日間とする方針を決めた。 来年1月に期限が切れる新テロ特措法の延長が最大の狙い。
     臨時国会では、08年度補正予算案が優先され、延長法案の会期内成立はほぼ困難だと見られており、参院で否決したとみなすことができる「60日ルール」を適用して再可決をするには会期延長が必要になってくる。
     年末から年明けの衆院解散・総選挙を求めている公明党は、総選挙を意識して延長法案の衆院通過には賛成するものの再可決を前提とすることには反対している。
     自民党の麻生幹事長は8月25日、水戸市内での講演で「いきなり社長(党首)同士で話して決裂、3分の2と、毎回やるのはどう考えても稚拙だ」と、重要法案の衆院再可決を前提とする考え方を否定。そのうえで野党との協議機関設置に意欲を示した(朝日)。また、翌日の記者会見では、民主党の「次の内閣」との政党間協議を進める考えを明らかにし、延長問題では衆院で継続審議になっている民主党の対案と延長法案をもとに事前協議する考えを示した。
     共同通信(8月22日配信)によると福田首相は、7月の主要国首脳会議に合わせて行われた日米首脳会談で、給油活動の継続を「約束する」とブッシュ米大統領に明言していた。会談ではアフガン本土への自衛隊派遣断念も伝えたという。
    ■給油活動の継続を扇動する読売・産経・日経
     8月20日、読売、産経、日経新聞社説が一斉にインド洋での給油活動継続のキャンペーンを張った。 前日の政府・与党連絡会議で、福田首相が秋の臨時国会を9月中旬に召集すると表明したことを受けてのもの。
     読売は、給油活動の継続は「日本が今、最低限果たすべき国際的責務だ」と特措法の延長を強調。公明党が再可決に消極的な姿勢を示していることに対し「再可決は、憲法の定める正当かつ民主的な手続きである。国民への丁寧な説明は必要だろうが、躊躇する理由はない」と、同党を叱咤する。
     産経は、「給油支援を再び中断すれば、日本はテロと戦う国際社会の一員としての責務を放棄することになる」、それでいいのかと開き直り、「首相は対テロ活動から撤退する国が国際社会の尊敬を受けられず、米国との信頼ある同盟関係も維持できないことを国民にもっと語ってほしい」と首相自らの積極的な国民への説明を求める。産経は16、22日付でも同趣旨の社説を掲げており、大変な力のいれようである。
     日経は、「給油法延長が不成立となれば、福田政権は深刻な窮地に陥るだろう」「与野党の話し合いがつかなければ、衆院を解散して民意を問うくらいの覚悟が政府与党には必要だ」と発破をかける。
     さらに、臨時国会の日程が決まった27日付の3紙の社説は、「給油継続へ会期延長も辞すな」「再可決で確実に成立させよ」などと訴えている。

    (※当記事は8月27日に書かれたものであり、その後の福田首相の突然の辞任表明で、国会日程などはその後、変更されています。)
    (中)
    2008年8月26日号
    ■麻生幹事長 給油やめて「シーレーン防衛」?
     自民党の麻生幹事長は5日、新体制発足に伴う報道各社とのインタビューで、新テロ特措法の延長問題に触れ、インド洋に派兵している海自の目的(給油)を「シーレーン防衛」に変えるともとれる発言をした。
     産経新聞(6日付)から発言の詳細を見よう。
     国際社会の関心はイラクからアフガニスタンに移っていると思うね。北大西洋条約機構(NATO)だってアフガニスタンに増派するときに日本だけ撤退というのは「いかがなものですかな」ということになる。
     だいたい、日本が輸入する原油の9割はアラビア海からインド洋を経由して来る。現実に海賊による被害が出ていることを考えると、日本が何もしないわけにはいかない。どうしても補給が難しいというのなら、油を輸送している船を(海上自衛隊が)防衛するなどいろいろな方法があると思いますよ。
     こうした自衛隊の海外活動は、長期的には恒久法(一般法)で対応すべきだ。個別法の制定に手間をかけるのではなく、恒久法で即時に対応できるようにしておかなければいけないでしょう。臨時国会でできるかというと、そんな状況にはないという気がしますけどね。
     麻生幹事長は、恒久法にも触れているが、早くもタカ派の本領を発揮してきた。
     また、笹川総務会長も同インタビューで「自衛隊の活動をインド洋での給油主体ではなく、日本に石油を運ぶ輸送船の安全を図ることにすれば、公明党も民主党も反対しない」(「毎日」6日付)と述べ、麻生氏と同じ認識を示した。
    ■空自 イラクから年内撤退か 国連決議切れ
     憲法を正面から蹂躙してまでイラク多国籍軍に参加した自衛隊。
     航空自衛隊が参加する多国籍軍は国連決議を根拠にイラクに駐留しているが、今年末に決議の期限が切れる。
     イラク特措法の期限は来年7月末だが、国連決議の期限切れに伴い、来年以降の活動を継続するためにはイラクと地域協定を締結する必要がある。
     7月29日付の産経新聞は、与野党が逆転している参議院で地位協定の批准が困難と判断し、「政府・与党は28日、航空自衛隊部隊を年末に撤収させる方針を固めた」と報じた。
     また、共同通信(29日配信)によると、自民党の伊吹幹事長(当時)が記者会見で、来年以降の空自の活動根拠に関し、「主権のある国の上空での活動に関する話で、国連決議が失効してしまえば、その後どう説明するか苦労する」と語った。
     06年に陸自が撤退しているが、空自もただちに撤退させるべきである。
     国連決議の今年末の期限切れに伴う米・イラク両国の地位協定の締結交渉は、「占領永続化」に反対するイラク国民の声に押され、7月末に予定していた締結は失敗した。米国側は、地位協定に米軍の撤退期限を盛りこむことを拒否している。
    (中)
    2008年8月12日号
    ■旧民社党関係者ら 日本再生国民会議設立
     旧民社党や旧同盟の関係者(有識者や労組幹部、国会・地方議員ら)が7月16日、国民運動組織「日本再生国民会議」の設立総会を開いた。
     産経新聞によると、「国民会議」は、日本の文化、伝統、国益を守る観点から「国家目標」をまとめ、憲法改正や教育、安全保障などについての政策提言と実現のための運動を行うとしている。
     また、超党派の国会・地方議員による議員懇談会(代表=渡辺周民主党衆院議員)を今秋に発足させ連携していく。
    ■政府 アフガンへの自衛隊派兵は当面見送り
     政府・与党は、海上自衛隊によるインド洋での給油活動に加え、陸上自衛隊による国際治安支援部隊(ISAF)の後方支援や航空自衛隊による物資輸送などを検討していたが、派兵の根拠法(新法)を成立させるメドが立たないため当面、見合わせる方針を決めた。ただ、自衛隊の派兵は欧米の強い要求でもあり、可能性をなお検討する構えは崩していない。
     アメリカのアフガン戦争は激しさを増しており、ゲーツ米国防長官は、年内にも米軍の増派を実施することを明らかにしている。
     政府・与党は秋の臨時国会で、来年1月に期限が切れる新テロ特措法の延長を強行してくる。
    ■揺れる公明党 新テロ特措法延長どうするの?
     公明党が自民党との連立政権で「平和と福祉の党」の看板を投げ捨ててまもなく10年になる。
     その公明党内では、衆院の解散・総選挙について年末から年明けにかけて行うのが望ましいという声が強まっており、秋の臨時国会での最大の焦点となる新テロ特措法延長の対応をめぐって揺れている。
     共同通信(7月23日配信)によると公明党幹部は、記者団に新テロ特措法改正案について「国民の意見が割れており、与野党でよく話し合うべきだ。いったん海上自衛隊が日本に戻り、来年の通常国会で取り扱っても問題はない」と強調。この幹部が誰なのか、配信された記事ではわからないが、この発言に続いて木庭健太郎参院幹事長も「3分の2でやった上で選挙というのは、なかなか考えにくい話しだ。国民にもわかりにくいことがまた起きてしまう」と述べ(時事通信7月24日配信)、衆院での再可決に否定的な考えを表明した。
     一方、北側一雄幹事長は同日の記者会見で、「自衛隊の海外派遣は簡単な問題ではない」と述べ、与党単独で成立させることに慎重な姿勢を示した(日経)。
     新テロ特措法は1月11日、与党が衆院本会議で再議決を強行し、成立させた。今度は総選挙を意識し、公明党は心変わりするのだろうか?
    (中)
    2008年7月22日号
    ■PKO法の改「正」を 与党PTの山崎座長
     時事通信によると、与党派兵恒久法に関するPTの山崎拓座長は6月末、福田首相に「恒久法だけでなく、PKO協力法の改正も検討する考え」を進言。首相は「一つの選択肢としては考え得る」と応じたという。
    ■PKOの活動範囲広げよ 読売・産経社説
     政府は、スーダン南部に展開している国連平和維持活動(PKO)スーダン派遣団(UNMIS)司令部に自衛官を派遣する方針を決定した。
     これに関連して読売と産経は、2日付の社説でPKOの派遣原則を見直し、活動範囲を広げるよう主張している。
     読売は、従来の活動に加え、陸自の活動の範囲を広げるため、警護任務の検討や武器使用基準の緩和(任務遂行目的の武器使用を認めている国際標準並みにする)にも取り組むべきだと強調。
     産経も武器使用を取り上げ、国連の行動基準である権限が許されていないため、「自衛隊は不法行為を抑止できず、一緒に行動する他国軍隊と同じ任務ができない―などの制約を受けている」。このため、「派遣5原則が適用できるPKOが見あたらない」。「非常識な派遣原則」を見直すよう求めている。
     ※PKO派遣5原則=@紛争当事者間の停戦合意A紛争当事国の同意B中立性の厳守C以上の条件を欠いた場合の部隊撤収D武器使用は隊員の生命・身体防護に限定
    ■資料=与党派兵恒久法に関するPTの中間報告
     与党の派兵恒久法を検討するプロジェクトチームが6月19日にまとめ、引き続き協議する「中間報告」は下記のとおり。
    《中間報告》
    1.国連決議のある場合・ない場合
    (1)@PKO、A国連決議のある国際平和協力活動について、わが国にとってふさわしい範囲で参加を得ることを検討する。
    (2)B関連国連決議のない国際平和協力活動については、引き続き議論する。
    2.わが国の行う活動内容
    (1)停戦監視任務、後方支援任務の実施を引き続き検討する。
    (2)人道復興支援任務の内容の拡充を検討する。
    (3)新たに警護任務を付与するか否かについては、武器使用権限との関係も併せて引き続き検討する。
    (4)文民の任務を拡充し、派遣に当たっての安全確保の枠組みについて検討する。
    (5)船舶検査等、その他の活動内容については引き続き議論する。
    3.憲法9条との関係
    (1)従来の憲法解釈を前提とする。
    (2)PKO参加5原則を維持する。但し、現在展開されているPKOの実態にもとづき、その運用のあり方について検討する。
    (3)上記(2)以外の場合のわが国の活動は、いわゆる「非戦闘地域」に限定する。
    4.国会の関与
     自衛隊の部隊の派遣については、原則として個別案件ごとに国会の事前承認を要することとする。
    (中)
    2008年7月8日号
    ■集団的自衛権の憲法解釈変更せよ 安保法制懇
     安倍前首相の肝いりで設置された(昨年4月)「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、安倍氏が政権を放り出して以来、約10カ月にわたり休眠中(福田政権発足後、一度も懇談会を開いてない)だったが、ようやく眠りから覚めて(?)6月24日、政府の憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使の容認を求める報告書を福田首相に提出した。
     福田首相は、憲法解釈の変更について「変えるという話はしたことはない」と述べ(読売)、慎重な姿勢を示した。ただ、報告書が示す「駆けつけ警護」などは恒久法制定の論議に引き継がれる可能性がある。
     懇談会はスタート時点から、メンバーの中心は安倍前首相の「仲良し人脈」で、解釈変更までを視野に入れた布陣と言われており、「初めに結論ありき」と批判されてきた。
    ■与党PT 派兵恒久法制定へ中間報告 警護活動など引き続き検討
     与党の派兵恒久法を検討するプロジェクトチームは6月19日、「警護任務を新たな活動にするかどうかは、武器使用権限との関係も併せて引き続き検討する」(自民党HP)などとした中間報告をまとめた。
     プロジェクトチームでは当初、通常国会中に法案の要綱をまとめ、秋の臨時国会に法案の提出をめざしていたが、「中間報告」にとどまった。自民党が主張した「警護活動」や「武器使用緩和」の追加について公明党との間で合意に至らず、引き続き検討することになったためだ。
     派兵先における人や施設、物資の警護、また他国の軍隊が武力攻撃を受けたときに自衛隊が擁護する「駆けつけ警護」は海外での武力行使に踏みこむことになる。
     プロジェクトチームの山崎拓座長は山崎派の総会で「必ず次期通常国会をめざしたい」と述べ、派兵恒久法制定への執念を示した。
    ■政府 アフガン派兵の可能性検討へ
     政府がアフガンへの自衛隊派兵の可能性を探るために派遣していた調査団が6月18日、帰国した(同月8日出発)。
     朝日新聞によると調査団は、首都カブールを中心にNATO(北大西洋条約機構)軍を主体とする国際治安支援部隊(ISAF)の活動状況を視察。さらに、アフガン本土のほか、米軍が駐留する隣国タジキスタンの空港施設も調べた。
     今後政府は、自衛隊によるISAFの後方支援や物資輸送などを検討する。
     これに関連して、石破防衛大臣は、記者会見で「あらためて現地に調査団を送るなどして、その可能性を慎重に探っていきたい」という考えを示した(NHK)。
     また、高村外務大臣は6月24日、日本外国特派員協会で「少なくとも自衛隊をアフガンに送るには新法が必要だ」「今の国会状況で新法が通るか、十分検討しないといけない」(日経)と講演。アフガン派兵の可能性を探る構えを示した。
    (中)
    2008年6月24日号
    ■憲法審査会の規程づくり 改憲派が強い圧力
     産経新聞によると9日、衆参両院合同代表者会議(両院の議院運営委員長と自民・民主両党の筆頭理事)が開かれ、委員数や議決要件などを定める「審査会規程」の制定について協議したが進展はなかった。論議は秋の臨時国会に持ち越される。
     改憲原案の提案権を持つ憲法審査会は、昨年8月の臨時国会で設置されたが、野党の反対で「規程」がいまだに決められず、活動が開始できない状態が続いている。
     国会の会期末になって開かれた衆参両院合同代表者会議の背景には、1年近くにわたって憲法審査会が始動できないことへのいら立ちと、民主党の幹部を初めて役員に取り込んだ新憲法制定議員同盟など改憲派の強い圧力が働いている。
     遅くとも今秋の臨時国会からの憲法審査会の始動を狙ってくるだろう。
    ■陸自派兵狙い アフガニスタンに調査団
     政府は8日、アメリカの「対テロ」戦争支援のため、海上自衛隊によるインド洋での給油活動に加え、アフガンへの陸上自衛隊派兵の可能性を探るため、外務、防衛両省などで構成する調査団を派遣した。
     「調査団は、首都カブールなどで治安情勢や支援活動のニーズなどを調べる。政府は、陸上自衛隊による国際治安支援部隊(ISAF)の後方支援活動や、航空自衛隊による物資輸送などを検討しており、調査団には陸自と空自の隊員が加わっている」(読売)。
     町村官房長官は先月末、都内の講演で「給油活動に関連してプラスアルファしてできるかどうか検討する」(朝日)と発言。福田首相も1日、「陸上の活動は、日本の協力ができる体制になればできる。可能性は常々考えている」(読売)と述べていた。
     これに関連して「日米関係筋は、日米防衛首脳会談の際(5月31日・シンガポール)、ゲーツ米国防長官が石破茂防衛相に対し、アフガン本土での自衛隊活動に強い期待を伝えていたことを明らかにした」(共同)。
     アフガンへの陸自派兵には新たな根拠法が必要になる。政府・与党は、インド洋での給油活動を継続するため、来年1月に期限が切れる新テロ特措法の延長と派兵恒久法制定の両にらみで、憲法の「60日規定」を織り込み、8月下旬にも臨時国会を召集する方針を固めている。
     ISAFへの参加は、民主党の小沢代表が積極的な姿勢を示しており(『世界』07年11月号)、また、民主党の「アフガン復興支援特措法案」が、衆院で継続審議になっている。
    ■鳩山幹事長 「天皇は元首」憲法に明記を
     民主党の鳩山幹事長は5日、「天皇陛下ご即位20年奉祝委員会」(会長=岡村正・日本商工会議所会頭)の設立総会であいさつし、改憲論議の中で「『日本国は天皇を元首とする民主主義国家である』と書き込むべきだ」(読売)と発言した。
    (中)
    2008年6月10日号
    ■恒久法策定の動きが加速 臨時国会提出狙う
     自衛隊をいつでも、どこへでも派兵できる恒久法策定の動きが加速している。  自民党と公明党は5月23日、「与党・恒久法に関するプロジェクトチーム」(座長・山崎拓自民党前副総裁)の初会合を開き、今国会中に法案要綱を取りまとめる方針を決めた。
     また同日、3年ぶりに活動を再開した「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」も会合を開き、恒久法の具体案作りの協議を続けることを確認した。「若手議員の会」は、自民・公明・民主・国民新各党の国会議員約110人で構成。
     与党プロジェクトチームの会合では、今国会中は週2回の会合を開き、精力的に議論を進めることや、秋の臨時国会に議員立法ではなく政府提出法案とすることを確認。
     また、「憲法の枠内とする。集団的自衛権の行使に関する憲法解釈を変更しない」ことも確認した。しかし、警護・治安維持・船舶検査活動や武器使用の拡大などの検討によって、海外における目いっぱいの軍事行動の拡大を狙っている。
     山崎氏は記者団に、「来年1月に期限が切れるインド洋での給油活動について『活動を継続するためにこの恒久法の成立を目指すか、新テロ対策特別措置法の延長を目指すかは政治判断の問題だ』と述べ、執行部の判断に委ねる考えを示した」(NHK)。
     政府・与党は、新テロ特措法の延長と派兵恒久法制定の二段構えで、憲法の「60日規定」を織り込んで、「秋の臨時国会を8月中旬に召集する方針を固めた」(朝日)。
    ■産経・読売新聞社説 派兵恒久法の策定急げ
     産経新聞の5月23日付の社説は「(恒久法の)法案化は、日本が国際社会の共同行動にいかに参加するかという国の有り様にかかわる大きなテーマ」とし、イラク特措法などによるその場しのぎの対応では「迅速かつ実効的な国際平和協力(注・という名の米軍との軍事行動)の実行は困難であることを改めて認識すべきだ」と強調。「今国会での大綱作りを急げ」と発破をかける。
     読売新聞(5月25日付社説)も「もう特措法を卒業するときだ」と恒久法の策定を促す。
     「06年の改正自衛隊法で、国際平和協力活動は自衛隊の付随的任務から本来任務に格上げされた。それなのに、国際活動の基本を定める法律がないのは不正常だ」と決めつけ、恒久法の論点として「(国連)決議がなくても、国際平和協力活動に自衛隊を参加させうる選択肢を持つべきだ」、海外任務の内容として「従来は、後方支援や停戦監視、人道復興支援に限られていたが、警護や船舶検査は加えていいだろう」と主張。さらに、武器使用の拡大については「効果的な活動のためには、任務への妨害行為を排除する目的の武器使用が不可欠である」ことを提起している。
     かくして9条が破壊され、海外での武力行使の道が開かれていく。
    (中)
    2008年5月20日号
    ■憲法審査会の始動を 改憲派議員らが大会
     3月の総会で民主党の幹部を役員に取り込み、新体制をスタートさせた新憲法制定議員同盟(中曽根康弘会長)は1日、憲政記念館で「新しい憲法を制定する推進大会」を開いた。自民、民主、公明、国民新各党の国会議員51人を含め1千人が参加。憲法審査会の早期始動と改憲論議の推進を求める決議を採択した。
     大会で、中曽根氏は「新しい憲法に作り直すまでは命の限り頑張る」(日経)とあいさつ。民主党の鳩山幹事長は欠席したが、長島昭久副幹事長は「民主党も憲法改正を党是としている。今日の会合を機に憲法審査会を動かしたい」(産経)と決意を表明した。
     憲法記念日の3日、改憲団体の「『21世紀の日本と憲法』有識者懇談会」と「新しい憲法をつくる国民会議」は、それぞれ東京都内で集会を開き、憲法審査会の始動を求める決議を採択した。
    ■海外派兵恒久法 動き強まる
     自衛隊をいつでも派兵できる恒久法制定の動きが強まっている。
     自民党は4月10日に恒久法を検討する「国際平和協力の一般法に関するプロジェクトチーム」(山崎拓座長)を立ち上げたが、同24日の会合で山崎座長は「(通常国会会期末の)6月15日までに法案の要綱を与党で合意しないと臨時国会で制定できない。少なくとも要綱をまとめたい」と述べ(日経)、秋の臨時国会で成立させるスケジュールを示した。
     自公民の若手・中堅議員でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」は4月23日、総会を開き、3年ぶりに活動を再開した。
     総会では「自衛隊を海外に迅速に派遣できるようにする恒久的な法律の早期制定を目指して、自衛隊の武器使用基準の見直しなどについて議論を進め、ことし夏ごろをめどに、法律の具体的な内容を提言としてまとめる」「集団的自衛権の行使などについても議論していく」(NHK)などとする方針を確認した。
       世話人代表に、自民党の中谷元・安全保障調査会長、民主党の前原誠司副代表、公明党の上田勇広報委員長を選出した。
      イラク派兵を9条1項違反とした名古屋高裁判決を足げにするような策動を許してはならない。
     9条1項は自民党の新憲法草案にそのまま残されている。
    ■9条改悪反対66% 朝日新聞調査
     朝日新聞社が実施した世論調査(4月19、20日)では、憲法9条を「変えない方がよい」との回答が66%で、「変える方がよい」の23%を大きく上回った。
     07年4月の安倍政権時代の調査でも、それぞれ49%、33%で9条改憲反対が上回っていたが、今回はその差が大きく広がった。
     憲法全体では改憲必要は56%(58%)、改憲不要は31%(27%)だった。改憲が必要とする56%の人の中で、54%が「9条は変えない方がよい」と答えた。
     4月の読売新聞調査では15年ぶりに改憲反対が改憲賛成を上回った。
    ※( )内は07年調査
    (中)
    2008年4月22日号
    ■海外派兵の先兵・陸自中央即応連隊が発足
     海外派兵の先兵となる中央即応連隊の発足を記念する式典が3月30日、拠点となる宇都宮駐屯地(栃木)で開かれた。
     中央即応連隊(700人)は、昨年3月に発足した中央即応集団(4100人)の中核となる地上戦闘部隊。最大の任務は、イラク戦争などアメリカの先制攻撃戦争に参加することである。中央即応連隊の発足によって海外で戦争できる軍事態勢づくりが本格化する。
    ■「読売」世論調査 改憲反対が賛成上回る
     読売新聞は8日付の紙面で「憲法」世論調査(3月15、16日実施。面接方式)を発表した。
     読売新聞は1981年から「憲法」世論調査を実施しているが93年以降、改憲派が改憲反対派を一貫して上回っていた。しかし、今回は改憲反対が43・1%(昨年比4・0ポイント増)、改憲賛成は42・5%(同3・7ポイント減)で、15年ぶりに反対が賛成を上回った。同調査では、04年の賛成65・0%が最高記録だった。
     改憲の「本丸」である9条については、「これまで通り、解釈や運用で対応する」(36・2%)と「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」(23・9%)のいずれも増加し、その合計は60・1%。「9条を改正する」は昨年比5ポイント減の30・7%で、9条改憲反対がほぼダブルスコアとなった。
     「読売」世論調査では憲法全体と9条とも、改憲反対派が多数を占めたが、「これは全国各地の草の根に急速に形成された『九条の会』をはじめ、この間の改憲に反対するさまざまな人々の運動の成果である。実に多様な『市民』が、さまざまに自らの言葉で改憲反対、9条擁護の発信を次々としてきた。こうした努力が世論を掘り起こし、耕したのである」(許すな!憲法改悪・市民連絡会)。
    ■憲法記念日に向けた改憲勢力の動向
     前項の世論調査の結果を受け、読売新聞社説(8日付)は、「最大の要因は、国会や各政党の憲法論議の沈滞にあるだろう。……憲法審査会が、いまだ始動していない。憲法改正に積極姿勢をみせていた安倍前首相が、……突然辞任した。後継の福田首相は、打って変わって、憲法改正問題には、ほとんど触れなくなった」とぼやいている。
     こうした状況に焦りを抱く改憲勢力は、憲法審査会の早期始動や改憲世論の喚起をめざし、5月3日の憲法記念日前後に集会を準備している。
     3月総会で民主党幹部を役員に取り込んだ新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は1日、「歴史・文化・伝統の香り高い憲法を」など掲げ、国会議員中心に「新しい憲法を制定する推進大会」を東京で開く。新しい憲法をつくる国民会議(堀渉理事長)は3日、「改憲国民大会」を。
     民間憲法臨調(「21世紀の日本と憲法」有識者懇談会)も3日、「国会は『憲法審査会』での改憲論議を急げ!」をテーマに、公開憲法フォーラムを開催する。
    (中)
    2008年4月8日号
    ■福田首相 海外派兵恒久法の今国会提出表明
     福田首相は3月25日、「自民党の山崎拓前副総裁、中谷元・安全保障調査会長と会談し、自衛隊の海外派遣の一般要件を定める『恒久法』を今国会に提出することで一致した」(毎日)。
     首相は会談後、記者団に「国会中に法案をまとめたいということですね。特に民主党からやるべきだという話はずいぶん前から言われていますのでぜひやりたいと思う」と述べ(同)、9条を破壊する恒久法の制定に強い意欲を示した。
     また、山崎氏は会談後、記者団に3月に持ち越されていた恒久法の与党プロジェクトチームの初会合が「国会情勢などから4月にずれ込むとの見通しを示した」(産経)。
     恒久法は昨秋の「大連立」に向けた福田・小沢党首会談の主要なテーマ。両党首の間で「恒久法制定で合意していた」と言われる経緯がある。
     イージス艦衝突事故や宙に浮いた年金、日銀総裁人事、道路財源などをめぐる国会の攻防が激化する中、福田・自公政権に国民の厳しい目が向けられており、同政権は行き詰まり状態にある。
     福田内閣の支持率は急落し、危険水域といわれる3割を切る事態に直面している。
     4月国会の攻防は予断を許さない。  
    ■自公民の「安保議連」 3年ぶりに活動再開
     「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)の3月総会で、民主党の鳩山由紀夫幹事長をはじめ同党の幹部が初めて役員に迎え入れられたが、今度は、与野党の若手・中堅議員でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が3年ぶりに活動を再開することになった。
     読売新聞によると、自民党の中谷元・安全保障調査会長、民主党の前原誠司副代表、公明党の上田勇衆院議員らが世話人会を開いて、4月に総会を開き、活動を再開することで合意した。
     同会は01年11月に101人の国会議員が参加して発足したが、05年4月に活動を休止していた。現在は自民56人、民主23人、公明3人の計82人が入会。再開にあたっては衆参両院の若手議員(当選1回議員)などにも参加を呼びかけ、100人を超える議連になる見通しだ。
     再開後は、自衛隊の海外派遣のあり方を定める恒久法や、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の見直し問題、日米安保体制のあり方などについて幅広く検討する方針だという。
     「新憲法制定議員同盟」や「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」の動きは、自民・民主両党の共同による憲法審査会の早期始動や海外派兵恒久法制定などへの道筋をつけようとするもので、きびしい警戒を要する。
    (中)
    2008年3月25日号
    ■改憲議員同盟が総会 民主党から初めての役員
     「与野党改憲派がタッグ」(朝日)―新憲法制定議員同盟(会長=中曽根康弘元首相)は4日の総会で民主党幹部を初めて役員に迎え入れ、改憲策動を一段と強める新役員体制をスタートさせた。
     民主党の鳩山幹事長が顧問、前原副代表らが副会長に就き、自民党からは安倍前首相、伊吹幹事長、谷垣政調会長も新たに顧問に就任した。  5日付読売社説は「憲法論議の前進へ、重要な意義を持つ新たな動きである」と、新体制の発足を高く評価し、「当面、急ぐべきは、衆参の憲法審査会の始動だ」と改憲派タッグの狙いを明らかにしている。
     総会は当面の活動として、早期の憲法審査会始動へ働きかけをさらに強めることや、「9条の会」に対抗する地方の拠点づくりを進めることなどを決めた。5月1日には、新憲法制定推進のための大会を予定している。
     総会では、参院選で改憲スケジュールの後退を余儀なくされていることへの苛立ちや巻き返し発言が相次いだ。
  • 中曽根会長「憲法改正のような国家的な大問題には超党派で取り組むべきだ。各党の都道府県の組織に憲法改正に向けた委員会をつくるなど、全国的な運動にもしていきたい」(NHK)、「憲法問題が冷えている最中に超党派の皆さんが参加したということは、国会議員の中に根強い憲法改正へのエネルギーが充満していることの証拠だ」(読売)
  • 伊吹幹事長「憲法審査会が動く状況を作りたい」(読売)
  • 鳩山幹事長「(総会は欠席したが記者団に)今国会で憲法審査会が動き出す可能性もある」(読売)
  • 安倍前首相「改憲は私のライフワーク」(朝日)
  • 副会長に就任した田名部匡省参院議員「(民主党を代表して)改憲はここ数年で決着すると決めてやらないと」(朝日)
  • 副会長を務める町村官房長官「超党派で国会の議論を大いに盛り上げてほしい。私も議員の一人として、力いっぱい、わが国の正しい憲法を作る運動の一翼を担いたい」(NHK)
    ■自民党憲法審議会 憲法教育のあり方論議
     衆参の憲法審査会がいまだ始動できない中で、自民党の憲法審議会は、改憲手続き法の実施に向けて必要となる法整備などについて独自の議論に取り組んでいる。
     同党HPの「ニュース」欄によれば、6日の審議会は、成人年齢と選挙権年齢の変遷と憲法教育について関係省庁から説明を受けた。
     憲法教育について議員からは、「教師によって、基本的人権に力を入れたり、イデオロギー的な教え方をしたり、歴史を重視して教える先生がいたり、教え方がかなり異なる」などの批判とともに、「どういう学習指導要領をつくるかが大切だ」などの意見が出た。
     文科省は改悪教育基本法に基づき3月末までに学習指導要領を改定しようとしている。
    (中)
  • 2008年3月11日号
    ■憲法議連が新体制 思惑は憲法審査会始動
     超党派の国会議員ら(200人余り)でつくる「新憲法制定議員同盟」は2月22日の役員会で、新役員体制を決めた。
     新たに自民党から安倍前首相と伊吹幹事長、谷垣政調会長、民主党からは鳩山幹事長らが顧問に就任するほか、前原副代表らが副会長に就任。
     議員同盟は、改憲手続き法によって昨年8月の臨時国会で衆参両院に設置された憲法審査会が、野党の反対で活動を開始できないことに苛立ちを強めており、昨年11月の総会では「憲法審査会の早期始動を求める決議」を採択、国会議員の署名に取り組んできた。
     それだけに「自民・民主両党の幹部が役員に就任することで憲法審査会の発足(始動)に向けた環境整備につながるのではないかと期待する声が出てい」るが(NHK)、思惑どおり活動開始への導火線になるか。改憲派の巻き返しは許せない。
     同役員会では国会議員の署名が353人に達したことが報告された〔自民党282人、公明党35人、民主党26人、無所属など10人〕(産経)。
    ■自民 民主へ恒久法協議の呼びかけ強める
     恒久法案の今国会提出を目指している自民党が、民主党への政策協議を強く呼びかけている。継続審議になっている新テロ特措法に対する民主党の対案の審議入りを持ちかけたが、「民主党は党の外務防衛部門会議で、自民党からの協議の呼びかけには応じない方針を確認し」た(NHK)。そのわけは、与党が新テロ特措法を再議決した総括がないからだという。
     とは言え、自民党と民主党には昨年11月の福田・小沢密室会談で「恒久法制定で合意した」と言われる経緯がある。
     また、自・公は参院で新テロ特措法案に対する民主党の対案に反対しておきながら、衆院では廃案にせず、継続審議とした。福田首相は、民主党の対案に対して「国会で大いに議論をさせていただきたい」と答弁している。このように自民党と民主党には共通の土俵がすでにつくられている。自民党にとって、恒久法の成立には民主党との協議が不可欠だ。
     他方、恒久法制定に向けて2月27日に与党プロジェクトチームの初会合が開かれる予定だったが、公明党が「(イージス艦と漁船の衝突事故によって)今は国民の理解を得られない。防衛省改革を優先すべきだ」と主張(日経)。初会合は3月以降にずれ込む。
    ■安倍前首相 「真・保守政策研究会」に参加
     「戦後レジームからの脱却」―安倍前首相が掲げた路線を継承し、保守勢力の再結集を狙って、自民党の中川昭一元政調会長や無所属の平沼赳夫元経済産業相らが立ち上げた勉強会「真・保守政策研究会」に安倍前首相も入会。安倍氏の入会で80人に。今後の動向が注目される。
    (中)
    2008年2月26日号
    ■政府・与党 「海外派兵恒久法」へまっしぐら
     福田首相は歴代首相の施政方針演説で初めて恒久法の検討を明言したが、その後も国会答弁や記者会見、講演などを通じて首相をはじめ関係大臣の恒久法制定に向けた発言が相次いでいる。
     高村外相は記者会見(1月25日)で、恒久法の必要性を強調するとともに、恒久法の議論にあわせて武器の使用基準を「緩和の方向で検討すべきだとの認識を明らかにした」(朝日)。
     さらに同外相は10日、ミュンヘン安全保障会議での演説で、PKOなど自衛隊の海外派兵に積極的に取り組む姿勢を明らかにしたうえで、「自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法(一般法)についても『必要な法制度の検討を進めていきたい』と語った」(朝日)。
     日本の閣僚が同国際シンポジウムで講演したのは初めて。
     一方、自民党は7日、恒久法策定のため「国際平和協力の一般法に関する合同部会」の設置を決めた。公明党はすでに(1月22日)外交安保調査会と内閣部会の合同会議を開き本格的な議論を始めている。
     「自民、公明両党は5日、恒久法を検討するプロジェクトチームを2月下旬に設置する方針を決めた。座長には自民党の山崎拓氏が就く」(日経)。
       韓国を訪問中の自民党の山崎拓元副総裁(党外交調査会長)は10日、同行の記者団に対し、「今国会に法案(恒久法)を提出し、成立をめざしたいとしたうえで、『民主党とも事前の非公式協議をやりたい』と語」り(朝日)、「武器の使用基準の見直しを議論して法案を作」る(NHK)と表明。
     新テロ特措法は1年の時限立法。年末には延長か、廃止かを再議論しなければならなくなる。だから、海外派兵恒久法の制定を急ぐ。
    ■中央即応集団 グリーンベレーと共同訓練
     琉球新報(1日付)は、海外派兵の中核部隊となる陸自「中央即応集団」が1月13日から2日までの日程で、県内の演習場で在沖米軍実戦訓練の研修をしていると報じた。米軍側はグリーンベレー(米陸軍特殊部隊)とみられる。
     同紙は研修について「日米軍事同盟の強化が進んでいることを如実に示す動きで、研修という名のもと、自衛隊と米軍の事実上の共同訓練が行われている事実が浮き彫りになった」としている。
    ■自民・憲法審議会 改憲手続き法実施に向け 法整備の議論始める
     自民党の憲法審議会は、衆参の憲法審査会が野党の反対で動きがとれないなか、投票年齢を18歳以上としている改憲手続き法の実施に向けて必要となる法整備(民法や公職選挙法などの改定)について、党独自に検討する必要があるとして具体的な議論を始めた。
    (中)
    2008年2月12日号
    ■改憲論議を促す―福田首相施政方針演説
     福田首相は初めてとなる施政方針演説で、憲法については「国会のしかるべき場において、改正するとすればどのような内容かなど、真摯な議論が行われることを強く期待している」とし、国会における改憲論議を促した(1月18日)。
     「国会のしかるべき場」が野党の反対で始動していない衆参両院の憲法審査会であることは明らかで、その速やかな始動をも求めている。
     また、昨年の福田・小沢会談後、恒久法制定の動きが強まる中、首相は「迅速かつ効果的に国際平和協力活動(自衛隊の海外派兵)を実施していくため、いわゆる『一般法』(恒久法)の検討を進める」と明言した(衆院会議録)。歴代首相の中で、恒久法の検討を施政方針演説で明言したのは福田首相が初めて。
     さらに、高村外相も外交演説で恒久法の必要性を強調した。
    ■海外派兵恒久法 自公がプロジェクトチーム
     新テロ特措法案は1月11日、参院本会議で否決されたが、政府・与党が同日、衆院本会議で再議決を強行、3分の2以上の賛成で成立した。
     参院の意思と給油活動の再開に反対する世論を踏みにじってまで成立させた新テロ特措法の期限は1年。自公政権にとって、福田首相が施政方針演説で表明したように、時限立法でなく、いつでも派兵を可能とする恒久法の検討が急務となる。
     自公は与党内にプロジェクトチームを設置し議論を進める。
     公明党の北側幹事長は記者会見で「一致点が見いだせれば、法案として国会に提出することも視野に入ってくる」(公明新聞)と恒久法に理解を示し、これまでの慎重な姿勢を一転させた。
    ■民主の「対案」継続審議に 与党の狙いは?
     民主党が昨年末、臨時国会に新テロ特措法の「対案」として提出した「テロ根絶法案」が衆院で継続審議になっている(同法案は参院で可決され、衆院に送付された)。参院では同法案に反対しておきながら、衆院では廃案にせず、継続審議にした自公の狙いは何か。
     福田首相は、小沢代表との初めての党首討論(1月9日)で「民主党の提案をされました対案、大変意欲的だなというように思っている。意欲的なところも含めて、これから国会で大いに議論をさせていただきたい。よろしく御協力をお願いする」(衆院会議録)と述べた。
     自公の魂胆は、民主の「対案」を通常国会に継続することによって恒久法論議の共通の土俵をつくることであろう。
     「対案」は恒久法の早期制定を明記し、海外での武力行使=集団的自衛権の行使をも前提としているなど、最悪の9条破壊法といえる。
    (中)
    2008年1月22日号
    今日の「改憲状況」− 安倍政権〜福田政権
    ■改憲の先どりによる憲法破壊
     安倍政権〜福田政権のもとで、法律の改廃などによる憲法破壊が一段と進んだ。その主なものは以下のとおりである。
    @「防衛省」発足
  • 06年12月15日―「防衛省」法案(防衛庁設置法改悪案・自衛隊法改悪案)成立
  • 07年1月9日―防衛省発足
  • 07年6月1日―自衛隊法改悪法案成立(海外派兵の中核部隊=日本版海兵隊となる陸自中央即応連隊創設)
     ※省名の変更にとどまらず、自衛隊は専守防衛から「海外で戦争する軍隊」へ任務を大きく転換
    A教育基本法改悪
  • 06年12月15日―教育基本法改悪法案成立
  • 07年6月20日―教育3法改悪法案成立(学校教育法、教員免許法、学校教育行政法)
     ※安倍首相、「戦後レジームからの脱却」について―「国を愛する心を子どもたちに教えていかなければ、日本は滅びてしまう。今こそ教育再生が必要だ」(6/19・参院文教科学委)
     ※改悪教育基本法は、憲法違反。国家権力による教育内容への無制限の介入、教育の自由と自主性を侵害
     ※教育3法は、義務教育の目標に「愛国心」などを持ち込み、教員への統制を強化。自治体の教育委員会にたいする文部科学相の「指示」「是正」の権限を盛り込む
    B改憲手続き法成立
  • 06年5月26日―与党と民主党、それぞれ改憲手続き法案を衆院に提出
  • 07年5月14日―与党(自民・公明)の常軌を逸した特別委員会の運営と強行採決の連発で、改憲手続き法案(国民投票法案)成立
     ※改憲手続き法は議員立法でありながら、参院で18項目にもわたる付帯決議を採択。欠陥法である
     ※改憲手続き法は、2010年5月18日が施行日。ただし、改憲手続き法の中に含まれている国会法の一部改正の部分は07年8月7日施行
     ※これにより、憲法改正原案の審議・提案権を持つ憲法審査会は8月7日、衆参両院に設置された。ただし、野党の反発によって定数や議決要件などを定める「審査会規程」が定まらず発進していない
     ※憲法審査会は3年間(2010年まで)、憲法などについての広範かつ総合的な調査活動にとどめ、憲法改正原案の提出・審査はできないことになっている。が、自民党は憲法改正原案の要綱、骨子の作成は権限の範囲内としている
    Cイラク特措法延長
  • 07年6月20日―イラク特別措置法延長法案(2年)成立  ※米軍の空輸支援継続
    D新テロ特別措置法案
  • 07年11月13日―衆院通過、参院へ
  • 07年12月14日―自民、公明両党が衆院で会期の再延長を強行。越年国会に
    ■究極の9条解釈改憲
    @集団的自衛権の行使容認
  • 07年4月25日―明文改憲を待たずに9条の「解釈」を変えて、集団的自衛権の行使を容認し、「日米同盟をより効果的に機能」させるため、安倍首相の肝いりで「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)が発足
     ※「メンバーの大半は政府が憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使を認める立場で」(朝日)、「中心は首相の『仲良し』人脈。解釈変更までを視野に入れた布陣」(毎日)
     ※「懇談会」は、11月をメドに、集団的自衛権行使容認の最終報告書をまとめる予定になっていたが安倍首相の突然の辞任で「懇談会」の存廃も含め宙ぶらりんの状態
     ※福田首相―「私は、何ら今まで指示したこともない。ですから、今までの経緯もあり、しかし、その内容を見て判断する」(10/16・参院予算委員会)
    A派兵恒久法制定策動
  • 07年10月30日・11月2日―「恒久法制定で合意」したと言われる福田・小沢会談後、恒久法制定の動きが強まる
     ※自衛隊の海外派兵のためにPKO法のほか、時限立法のテロ特措法(期限切れ)やイラク特措法がある。政府・自民党は、アメリカの要求に迅速に応え、軍事行動をともにできる恒久法の制定を永年主張
     ※自民党の防衛政策検討小委員会は06年8月30日、「国際平和協力法案」(恒久法)の条文案を了承している
     ※恒久法の制定を許すようなことになれば、究極の9条解釈改憲といわれる集団的自衛権行使合憲論は必要なくなるほどの重要な問題
    ■福田政権発足
  • 07年9月25日―福田政権発足
     ※福田首相は、参院における与野党逆転の中で安倍前首相ほど改憲のキバ≠むき出しにすることができないが、最初の大仕事として「新テロ特別措置法」の成立にトコトンこだわった
     ※大臣の大半が改憲・右翼団体である「日本会議」などに所属している超タカ派内閣
     ※福田首相自身は、小泉政権の官房長官として「構造改革」を推進し、テロ特措法の成立にも中心的な役割を果す。また、私的諮問機関「国際平和協力懇談会」を設置し、恒久法を積極的に検討。さらに、自民党の新憲法草案起草委員会では安全保障小委員会の座長として9条2項の削除と自衛軍創設の改憲案をまとめあげる
    (中)