2011年12月27日号
■憲法審査会 衆・参とも2回の実質審議
 12月9日に閉会した第179回臨時国会中に、衆・参憲法審査会は、実質審議を2回ずつ行った。
 両院の憲法審では、96条改憲による発議要件の緩和、「非常事態条項」の導入、新しい人権条項(環境権やプライバシー権)の導入、自衛隊の明記、集団的自衛権の行使、天皇国家元首の明示などの発言が、改憲派の委員から強調された。
 改憲の本丸が、前文と9条であることは明白であるが、外堀を埋める議論を行いながら、憲法審を改憲のための世論づくりの場にし、9条改憲の機運の盛り上げを狙っているであろう。 来年の憲法審の動向を注視しなければならない。
■2011年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
  3日 経済同友会、改憲・集団的自衛権行使容認など提言
  4日 菅首相、年頭記者会見で「日米同盟の深化はアジア太平洋地域の安定のために必要」と表明
 14日 菅第2次改造内閣発足
 24日 第177回通常国会召集 菅首相、初の施政方針演説で日米同盟・防衛力の強化を強調
〈2月〉
 3日 沖縄県と基地所在27市町村長でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会、通常総会を開き、普天間基地の県外移設を全会一致で決定
 10日 陸自、新防衛計画の大綱に沿って、島しょ部の防衛強化に向けアメリカ海兵隊と着上陸訓練を米西海岸で実施
 15日 仲井真沖縄県知事、県議会の県政運営方針演説で普天間基地の県外移設を初めて明言
 25日 政府の「国家安全保障に関する内閣機能強化のための検討チーム」が初会合
〈3月〉
 11日 東日本大震災
 31日 民主党、参院議員総会で参院憲法審査会の規程案を決定
沖縄防衛局、名護市辺野古に「名護防衛事務所」を設置
〈4月〉
  7日 民主党、国会法改正案と政治主導確立法案の取り下げを決定
 21日 最高裁、「集団自決」をめぐる「岩波・大江訴訟」で上告を棄却、大江さん側勝訴の一、二審判決が確定
 28日 新憲法制定議員同盟、「新しい憲法を制定する推進大会」を開催
   改憲派の東日本大震災を口実にした「国家緊急事態条項」を盛り込む改憲策動が強まる
   第3次嘉手納爆音訴訟原告2万2058人
〈5月〉
  9日 民主党、憲法調査会を再設置 会長にタカ派改憲論者の前原誠司氏就任
 10日 米上院のレビン軍事委員長、普天間基地の嘉手納基地への統合を米国防総省に提言
 18日 参院本会議、参院憲法審査会規程を賛成多数で可決
 30日 最高裁、東京都教委の教職員に対する「君が代の起立斉唱命令は合憲」とする初判決
〈6月〉
  1日 衆議院、自公提出の菅内閣不信任案否決
  3日 大阪府議会、君が代斉唱の際、教職員の起立・斉唱を義務づける全国初の条例可決
  7日 改憲の発議要件の緩和を狙う「憲法96条改正を目指す議員連盟」が発足
  8日 米国防総省、米海兵隊の新型輸送機オスプレイを来年後半に普天間基地に配備すると発表
 21日 日米安全保障協議委員会(2プラス2)、普天間基地の移設で辺野古に建設する新基地を滑走路2本のV字形に決定
 22日 通常国会、70日延長を議決
 27日 仲井真沖縄県知事、2プラス2の合意に抗議し、菅首相に普天間の県外移設を求める
(中)
2011年12月13日号
■衆院憲法審査会 各党が意見表明 明文改憲への攻勢強まる
 11月17日、衆院憲法審査会が改憲原案づくりに向けて審議をスタートさせた。参議院の憲法審査会も28日、実質的な審議を開始した。
 衆院憲法審では、中山太郎・元衆院憲法調査会長が参考人として出席し、調査会設置以来の経過などを説明するなかで、「大震災への対応の一つとしての非常事態条項などは、最も重要な、緊急な論議すべき論点である」と述べ、改憲論議の具体的な進展を促した。
 憲法審における各党委員の主な発言要旨は以下のとおり。
●民主党 05年の「憲法提言」で国民的な議論を起こす。復旧・復興が最優先、憲法問題は相対的に言えば優先順位は下がるが、全く必要ないとはいえない。
●自民党 党結党の大義は占領下でつくられた憲法改正。平成17年に「新憲法草案」を発表した。来年4月28日を目標に、バージョンアップした改正案をまとめる。
●公明党 時代状況の変化に応じて、環境権やプライバシー権などを付け加える余地はある。大枠で言えば「護憲」だが、さらに詰めていけば「加憲」という立場だ。
●共産党 国民は憲法改正を求めておらず、憲法審査会を動かす必要はない。憲法審査会が始動しなかったことで国民が不利益をこうむった事実はない。
●社民党 今、政治がすべきことは、国民の生活を再建し、憲法の理念を実現し、これから歩んでいく決意を内外に示すことである。いかなる改憲策動にも反対である。
●みんなの党 憲法改正に賛成の立場。公布から65年、これまでの国の形を見直すときにきている。発議の条件を過半数に下げる。
●国民新党 「非常事態事項」の議論は立法府の責務。昨年の参院選政策集に「平成の自主憲法制定」という項目を立てている。
■辺野古新基地評価書 年内提出断念せよ 沖縄県議会が意見書
 沖縄県議会は11月14日の臨時会で、米軍普天間基地の辺野古移設に反対し、環境影響評価(アセスメント)の評価書の提出断念を求める意見書を全会一致で可決した。
 米国から辺野古移設問題の「具体的な進展」を突きつけられていた野田首相は、11月12日の日米首脳会談でアセス評価書を年内に沖縄県に提出することを約束していた。
 意見書は、辺野古移設を一歩進めることになる評価書の提出は容認できないと強く抗議し、「県内移設に反対を求める県内41市町村長及び、全県議会議員を含む県民の総意を無視するものであり、到底看過できるものではない」と批判している。
 県議会の代表は先月18日、首相官邸を訪れ、野田首相宛の意見書を提出した。
 意見書は、県外・国外移設が県民の揺るぎない意思であることを内外に示した。県民の総意を無視する野田政権の対米従属は度が過ぎている。
(中)
2011年11月22日号
■衆院憲法審査会 実質的審査がスタート
 「新憲法制定」を持論とし、日米同盟の強化を掲げる野田首相のもとで、衆院憲法審査会は11月17日、改憲案づくりに向けて、実質的な審議をスタートさせた。審査会は2回目。
 7日の憲法審査会の幹事懇談会で、国会で改憲論議を推進した中山太郎・元衆院憲法調査会長を招き、「同調査会が05年4月に取りまとめた最終報告書の内容や、中山氏が委員長を務めた衆院憲法調査特別委員会で審議した憲法改正手続きを定める国民投票法成立に至る経緯などについて意見を聞き、質疑を行う」(読売)ことを決めていた。
 なりをひそめていた民主、自民、公明党などの改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は15日に4月以来の集会を開いた。同「議員同盟」は、憲法審査会の始動を強く求め、さまざまな策動を展開してきた。
■野田・民主党政権 9条破壊攻撃を本格化
 野田・民主党政権は、憲法をねじ曲げ、乱暴な解釈を積み重ね、9条破壊攻撃を強めている。
 藤村官房長官は11月4日、記者会見で武器輸出3原則の見直しについて「関係省庁の副大臣クラスの会合を今から開いていく段階だ」(朝日)と述べ、検討作業に入ることを明言した。
 民主党の防衛部門会議は先月13日、武器輸出3原則の見直しを政府に求める方針を決定し、前原政調会長が政府側に申し入れていた。
 政府は1日、武力衝突のあるアフリカ南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊を派兵することを決めた。これに関連し、民主党は1日の内閣・外務・防衛合同部門会議で、参加5原則の見直しに向け、PKO協力法改悪の検討に着手した。来年の通常国会への改悪案の提出をめざす。
 見直しの焦点は、参加5原則の一つである武器使用基準の緩和である。現行の武器使用は、自衛隊員の身体・生命防護に限定されており、政府・民主党は、一緒に活動する他国の部隊を防衛するために武器を使用できるよう5原則の見直しを狙っている。
 いうまでもなく、他国の軍隊を防衛するために自衛隊が武器を使うことは、9条が禁じる「海外での武力行使」や「集団的自衛権の行使」につながり、憲法違反である。
 武器輸出3原則やPKO参加5原則の根拠は憲法の平和主義である。
■憲法公布65年 ここでも9条攻撃 産経社説
 憲法公布65年を迎えた3日付の産経新聞社説は、9条を変えて自衛隊を軍として位置づけるべきだと叫んでいる。
 「当たり前の国家として、基本的な責務を果たしていくことが求められている。それには、警察予備隊発足61年の自衛隊を軍として位置づけ、国家の機能を取り戻すことが必要不可欠だ」とし、「占領下で制定された憲法の狙いは日本の非武装化だったが、もはや何の意味も持たず、国の弱体化の『元凶』になっている」と決めつける。
(中)
2011年11月8日号
■とうとう憲法審査会が始動 新たな段階に踏み込む改憲動向
 10月20日、衆参両院本会議は、憲法審査会委員の選任を、共産、社民の反対を押し切って、民主、自民、公明などの賛成多数で強行した。
 翌21日の初会合で、衆参両院の審査会の会長が選出され、正式に始動。
 国会で改憲論議(改憲原案づくり)がスタートすることになり、明文改憲への道を開くことになる。改憲策動は新たな段階を迎えた。
 改憲原案の審議・提案権をもつ憲法審査会は、07年8月に改憲手続き法によって衆参両院に設置された。しかし、07年5月に成立した改憲手続き法は、安倍改憲スケジュールにあわせた自民、公明両党による強行採決の連発によるもので、当時野党だった民主党も反対。同法に対する国民の批判と野党の反対によって審査会は設置されたものの4年経っても始動することができなかった。
 ところが、民主党は、ねじれ国会を口実にして方針転換。国会運営に自公両党の協力を得なければならない事情から、審査会規程の制定に応じ、拒んでいた委員名簿も提出した。憲法問題を国会対策として利用する党利党略は断じて許されない。
■辺野古新基地強行 政府、評価書年内提出へ
 「知事は大多数の県民の意向を踏まえ普天間飛行場の県外移設と危険性除去を求めている。稲嶺進名護市長も受け入れに断固反対する姿勢だ」(琉球新報)「名護市長をはじめ自治体、議会、政党そして大多数の県民が反対している。これを無視して評価書を提出するのは、政府に再考を促したい」(沖縄タイムス)。沖縄の総意は明確である。
  沖縄入りした一川防衛相、玄葉外相は、民意を踏まえた仲井真知事の声を一顧だにしなかった。
 それどころか、関係閣僚会合で辺野古への移設の前提となる環境影響評価書を年内に沖縄県へ提出する方針を確認。また、「具体的な進展」を急かせるために来日したパネッタ米国防長官と野田首相の会談で「日米合意を可能な限り早く進めていく」ことで一致し、「評価書」の年内提出を確約した(10月25日)。
 「オール沖縄」で反対している県内移設は不可能だ。「できもしない(日米)合意にこだわるのは問題の解決を困難にし、普天間飛行場の危険を長期化させる」(琉球新報)。
 もはや辺野古はない。
■民主党 9条破壊へまっしぐら
 タカ派改憲論者で知られる前原誠司氏が民主党の政調会長に就任(8月31日)以来、9条破壊の企てが強まっている。
 前原政調会長自身は就任直後、訪米先の講演で「武器使用基準の緩和」を表明。また、防衛部門会議は武器輸出3原則の見直しを政府に求める方針を決定し、前原氏が政府側に申し入れた。
 さらに、内閣・外交・防衛の合同部門会議は10月25日、PKO協力法の問題点(武器使用基準、参加5原則など)を議論し、年内に結論を出す方針を決定した。
(中)
2011年10月25日号
■民主 次期臨時国会に憲法審査会名簿提出へ
 民主党は9月29日の参院議院運営委員会理事会で、憲法審査会の委員名簿を次期臨時国会の冒頭に提出する考えを表明した。同党は、衆参両院で同時に委員名簿を提出する準備を進めている。
 これまで民主党は、07年8月に国会法上衆参両院に設置されていた憲法審査会に委員名簿を提出しなかったため、審査会は始動できなかった。自民、公明両党も足並みをそろえる。
 改憲原案の審査・提案権をもつ審査会が始動すれば改憲策動は新たな段階に踏み込むことになる。
■空自が米軍機へ給油 日米間で「覚書」締結
 報道によると、航空自衛隊の空中給油機が、共同訓練などの際に米軍戦闘機に空中給油できる覚書が交わされていたことがわかった。自衛隊と米軍との間の燃料や物資などを融通しあうACSA(物品役務相互提供協定)に基づくもの。覚書は昨年10月に締結されており、藤村修官房長官が10月3日の記者会見で認めた。
 覚書締結までは「米軍機から空自機への提供に限られていたが相互提供の仕組みに変更された」(産経)。ACSAは、次つぎに改悪されており、共同訓練だけでなく日本有事や周辺事態まで適用されるようになっている。
 「周辺事態下で、日本領空での給油を受けた米軍機が戦闘行動を伴う軍事作戦に転戦した場合には、空自の後方支援が武力行使と一体化し、政府の憲法解釈で認められていない集団的自衛権行使に当たる可能性が生じる」(時事)。これらの点について会見で問われると藤村長官は、「細かくは防衛省に聞いてください」(時事)と説明を避けた。
 水島朝穂・早稲田大法学学術院教授(憲法学)は「国会の議論も経ずに、憲法上疑義のある重大な施策が日米間の覚書程度のもので進められていくことに危惧を覚える」(時事)との見解を示した。
■米海兵隊 沖縄から移転させても支障なし
 5日付の琉球新報は、米国防総省に近いシンクタンク「ランド研究所」の研究者2人と、著名な安全保障専門家、リチャード・サミュエルズ マサチューセッツ工科大学教授が米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」9月号で、「海兵隊を沖縄から移動させても、ほとんどの緊急事態における作戦遂行上、大きな支障は生じない」と指摘していることを紹介した。
 また、同教授らが海兵隊移転について「県民に歓迎され、結果的に日米同盟の強化につながる」と明言していると紹介。
 同紙は「日本政府が海兵隊普天間飛行場の県内移設を推進する理由として強調している『沖縄の地政学的な優位性』を否定している」とした。
 玄葉外相は衆院予算委員会で、沖縄に米海兵隊が駐留する理由について「地政学的な位置が大きい。どこよりも東アジアのそれぞれの地域に、ほぼ等しく近いということがある。同時に、海兵隊そのものがもつ機動性・即応性が沖縄にどうしても必要だ」と答弁している(衆院会議録)。
(中)
2011年10月11日号
■「銃剣とブルドーザーで辺野古新基地を造るつもりか」
 「ニューヨークでクリントン国務長官と会談した玄葉光一郎外相は『推進』と言い、ワシントンで講演した地元沖縄の仲井真弘多知事は『反対』を主張する。実に『異様な光景』だ」(沖縄タイムス社説)。
 時を経ずして野田首相はオバマ大統領と初の会談。普天間基地について「日米合意に基づき推進する」と、「沖縄の総意」を踏みにじり、名護市辺野古への移設をあらためて約束。大統領は「結果を出す時期だ」と首相に迫り、具体的な進展への圧力を強めた。
 仲井真知事は、ワシントンの大学で講演したり、米上院議員らとも会談し、記者会見したりして、沖縄は政治的立場の違いをこえて「オール沖縄」で辺野古移設に反対し県外移設を求めていることを米側に直接訴えた。
 ワシントンで記者会見した仲井真知事は「(戦後の米軍は)銃剣とブルドーザーで基地をつくった。(日本政府も)銃剣とブルドーザーでやるのかということになる」(読売)と日米両政府を批判した。
 さらに、仲井真知事は日米合意に固執している日米両政府に対し「県外が早いと言い続けるしかない」と強調(琉球新報)。今後も訪米し、県外移設を「直訴」する意欲を見せている。
■自民党・石破政調会長の危険な発言
 NEWSポストセブンの報道によれば、石破氏は「原発を維持するということは、核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作れるという『核の潜在的抑止力』になる。原発をなくすということはその潜在的抑止力をも放棄することになる」とインタビューに答えた。
■読売・世論調査 改憲「賛成」が43%、「反対」は39%
 読売新聞は9月14日付の紙面で憲法に関する全国世論調査の結果を発表した(面接方式・9月3、4日実施)。
 それによると、改憲賛成は43%(43)だつたが、反対は39%(42)で昨年より3%減少した(カッコ内は昨年3月調査。以下同じ)。
 9条については、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」は32%(32)。「これまでどおり、解釈や運用で対応する」45%(44)と「9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」13%(16)で、その合計は58%(60)となり、9条の明文改憲反対が昨年よりやや減少し、「厳密に守る」という人は3%減少した。
 9条のうち「戦争放棄」を定めた第1項については改憲反対が77%(80)で、これまで8割の高率を維持していたが3%減少した。改憲賛成は16%(15)。 「戦力の不保持」などを定めた第2項については、改憲反対が55%(56)で、賛成は35%(37)だった。
 1項と2項の調査結果から、戦争放棄を現実のものとするために、「戦力の不保持」を規定した2項の大きな意義が国民の中に浸透し切れてないことがうかがえる。
(中)
2011年9月27日号
■野田首相 「私は新憲法制定論者です」
 新首相・野田氏の著書『民主の敵―政権交代に大義あり』(新潮新書09年7月刊)には、同氏の憲法や防衛論などにかかわる発言が数多く見受けられる。
 まず、野田氏は政治家になって以来、「『非自民』の立場で活動をしてきました。一方で保守政治家であるとも自負しています」と自らの立脚点を明らかにし、憲法については「私は新憲法制定論者です」とはっきり言い切り、「20世紀末頃には憲法論議がいろいろなところで出てきていたと思いますし、そういう機運は高まっていました。ようやく国民投票法まではいきました」と述べている。
 ちなみに、野田氏は『民主の敵』を発刊した直後の総選挙(09年8月)で、毎日新聞の全候補者アンケートで以下の回答をしている。
 問1=憲法9条の改正に賛成ですか、反対ですか。/回答=賛成
 問2=集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を見直すべきだと考えますか。/回答=見直すべきだ
 首相になった野田氏、A級戦犯問題と同じように、この憲法発言も軌道修正するのだろうか?
■「海外での武力行使」狙う前原政調会長発言
 民主党の前原政調会長は7日、訪米先の講演で「自衛隊の国連平和維持活動(PKO)など海外派遣で、一緒に活動する他国部隊が攻撃された際に反撃できるよう武器使用基準を緩和すべきだ」(共同)と非常に危険な発言をした。
 自衛隊がPKO活動などで海外派兵される場合、武器使用は自己防衛に限定されている。他国の軍隊を防衛するために自衛隊が武器を使うことは、憲法9条が禁じる「海外での武力行使」や「集団的自衛権の行使」につながる。
 さらに、前原氏は、日米同盟について「東日本大震災の対応で日米同盟は真価を示した。日米の相互運用性を向上させるため、自然災害から武力攻撃事態まで円滑に共同対処できるよう指揮系統、調整、情報共有のあり方について準備と検証が必要だ」(同)と、日米軍事一体化の強化に一歩踏み込む発言をした。
 野田政権で、党政調会長の権限が強化されており、また、前原氏はタカ派改憲論者で知られているだけに、党内論議の進捗状況を注目し、警戒しなければならない。
■民主、自民、公明 憲法審査会名簿提出へ
 これまで消極的だった民主党が、8月31日の衆院議院運営委員会理事会で、衆参両院の憲法審査会委員の名簿を提出する方針を示したため、民主、自民、公明などは次の国会会期中に委員名簿を提出することで合意。
 委員が選任されれば、いよいよ審査会が始動することになる。
 民主党は、衆院憲法審査会長に大畠章宏前国土交通相を内定している。
 07年8月に衆参両院の憲法審査会は国会法上設置されていたが、委員が選任されず一度も会議は開かれてない。
(中)
2011年9月13日号
■普天間 野田新内閣も沖縄の心踏みにじる
 野田新内閣がスタートした。
 野田氏は、民主党の代表選挙で発表した政権構想(『文藝春秋』9月特別号)で、外交・安全保障について「日米同盟を深めることが重要」であると強調し、日米同盟は「世界の安定と繁栄のための『国際公共財』」とまで言い切っている。
 米軍普天間基地の名護市辺野古移設を盛り込んだ日米合意については、代表の就任会見で「合意を踏まえ、菅政権の政策は継承する」と述べ、県民の大多数が県外・国外への移設や無条件返還を望んでいる民意を即座に否定した。
 琉球新報社説(8/30)は、「米軍再編見直し」の政権公約に沿って米国と再交渉するよう求め、沖縄タイムス社説(同日付)も「対米交渉をやり直す気概のなさにがっかりする」と断罪する。
■与那国島に自衛隊配備 15年度末までに
 昨年12月に決定した「防衛計画の大綱」で沖縄など南西諸島への陸自の沿岸監視部隊の配備が盛り込まれたが、北澤防衛相は8月23日の記者会見で、日本最西端の沖縄県・与那国島への配備計画と2015年度末までに配備を完了する考えを明らかにした。
 与那国町の町民からは「沖縄にもう基地はいらない」の声が上がり、反対署名が有権者の過半数に近づいているという。
 さらに、「防衛省は与那国島と同じ先島諸島の石垣、宮古島には、普通科部隊を配備する方向で検討している」(沖縄タイムス)。
 琉球新報は「島しょ防衛強化は、軍事費膨張に頭を悩ます米国が日本に肩代わりを求めたのが発端だ。そこで防衛省は中国脅威論をあおり、配備の環境を整えようとしている」(社説)と指摘する。
 防衛省では、本土から南西諸島への自衛隊員や車両、弾薬の輸送などに大きな海上輸送力を必要とするため、自衛隊の輸送力のほか、民間輸送力や米軍輸送力の活用を盛り込んだロードマップをまとめている。
■大阪維新の会 条例に「愛国心」や教育への政治介入明記
 橋下知事が率いる「大阪維新の会」は、6月に強行成立させた「君が代」起立強制条例に続いて、「愛国心」や教育行政への政治介入を明記した「教育基本条例案」と、懲戒処分や免職を明文化した「職員基本条例案」を公表した。9月府議会、同大阪市議会、11月堺市議会に議員提案するとしている。
 教育基本条例案は、前文で「教育行政からあまりに政治が遠ざけられ」とし、「政治が適切に教育行政における役割を果たす」と明記。
 第2条で6つの基本理念を明示。その一つに「我が国及び郷土の伝統と文化を深く理解し、愛国心及び郷土を愛する心に溢れるとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する人材を育てること」とした。
 やたらと首長や校長の権限を拡大する2条例を許してはならない。これをファシズムならぬ「ハシズム」という人も。
(中)
2011年8月30日号
■防衛省 「新防衛大綱」実行へ具体案まとめる
 政府は2日の閣議で2011年版防衛白書を了承した。民主党政権下2度目の白書となる。
 昨年12月に決定された新「防衛計画の大綱」を受けた初めての白書で、防衛大綱に盛り込まれている「動的防衛力の構築」が強調されている。
 防衛省は、防衛大綱を具体化する「防衛力の実効性向上のための構造改革推進に向けたロードマップ〜動的防衛力の構築に向けた全省的取組〜」(以下、報告書)をまとめ、5日に公表した。
 報告書は、防衛大綱がそれまで「専守防衛」を大原則として最小限度の防衛力に限定してきた「基盤的防衛力構想」から「動的防衛力の構築」に防衛政策の基本を大転換したことにもとづき、自衛隊のあり方を具体化しようとするものである。 防衛大綱は、中国の活発な海洋進出を受け、沖縄など南西諸島地域への機動展開を想定している。
 報告書は、本土から南西諸島への自衛隊員や車両、弾薬の輸送など「機動展開には、大きな海上輸送力が必要であり、自衛隊の輸送力のほか、民間輸送力等にも大きく依存することとなる」と明記し、米軍輸送力の活用も盛り込んでいる。
 また、報告書は「アジア太平洋地域における安全保障環境構築」のため、特に日米豪および日米韓の3カ国の共同訓練を強化・拡大するとした。
 機動展開の各種機能などについては「諸外国の陸海空軍及び海兵隊の例も研究」するとしている。
 防衛大綱=動的防衛力の具体化は、よりいっそう憲法を踏みにじり、自衛隊が米軍とともにグローバル展開する道を突き進むことになる。
■自民党 来年4月までに改憲案
 自民党は4日、憲法改正推進本部(本部長・保利耕輔元文相)を開催し、改憲論議を本格化させた。
 谷垣禎一総裁は「サンフランシスコ講和条約発効60年となる来年の4月28日には自民党の考えを世に問うことが大事だ」(時事)と来年4月までに改憲案を取りまとめる方針を表明した。
 また、本部長の保利氏は東日本大震災に触れながら「行政府の権限強化などを想定した『緊急事態条項』の明記」(同)を主張した。
 憲法の緊急事態条項については5日、前自民党衆院議員の中山太郎前衆院憲法調査会長が改憲試案を公表している。
 試案は、大規模な自然災害やテロなどで、首相が緊急事態を宣言する規定を設け、自治体首長への指示権、国民の通信の自由、居住および移転の自由、財産権などの私権を制限できるようにしている。
■鳩山前首相 自衛隊を憲法上規定するべし
 産経新聞によると民主党の鳩山前首相は7日、北海道登別市で開かれた陸上自衛隊幌別駐屯地の創立58周年祝賀式のあいさつで「自衛隊が憲法の中で堂々とうたわれて仕事ができる環境をつくらなければならない」と強調し、自衛隊を憲法上規定する必要があるとの考えを示した。
(中)
2011年8月9日号
■自民党が国家戦略報告書
集団的自衛権の行使容認や武器使用権限の拡大など明記
 自民党の国家戦略本部(本部長・谷垣総裁)は7月20日、中長期的な基本政策である報告書「日本再興」を発表した。
 戦略本部は昨年9月に発足。6つの分科会(成長戦略、社会保障・財政、外交・安全保障、教育など)で議論し、まとめたもの。「憲法や安全保障など国家観にかかわる政策は大きく踏み込んだ」(東京)、「保守色の濃い政策を積極的に盛り込んだ」(毎日)、「民主党政権との対立軸を鮮明にした」(産経)などと評されている。
 報告書は、次期総選挙のマニフェスト(政権公約)のたたき台となる。
 外交・安全保障分野では、基本的スタンスとして「従来タブーとされてきた安全保障上の諸課題について、組織や制度の改革を法令の整備も含めて行う」「日米安全保障条約を基軸とする日米同盟を強化する」ことを強調し、海外派兵の強化・拡大に踏み出すことを盛り込んだ。
 11項目の「具体的政策」の冒頭に国家安全保障会議の常設が盛り込まれ、集団的自衛権の行使を認め、公海における米艦防護、弾道ミサイル防衛を可能とすることを打ち出した。
 また、PKO活動への参加を積極化するため、駆けつけ警護や国連のPKO任務に対する妨害排除のための武器使用を容認。PKO協力法などは日本の要員の生命防護が基本であったが、報告書は武器使用権限の拡大を鮮明にした。同時に、PKO海外派兵のための一般法(派兵恒久法)を制定するとしている。
 非核3原則については、陸上への核配備は認めないが、核兵器を積んだ艦船等の寄港を容認し「非核2・5原則」への転換をはかることを明記。
 日米同盟の深化では、日米防衛協力の推進や武器輸出3原則の緩和などが盛り込まれている。
 教育分野では、「戦後の日本教育のあり方を根本的に反省」すると強調し、「自助自立する国民」「家族、地域社会、国への帰属意識を持つ国民」「良き歴史、伝統、文化を大切にする国民」「自ら考え、判断し、意欲にあふれる国民」の育成を教育の目標に掲げる。
 そのため、新・教育基本法の主旨に合致した教科書の検定と選択方法の改革や学校における国旗の掲揚、国歌の斉唱を義務化するための法律の制定を明記した。
 まさに報告書は、憲法違反、解釈改憲のオンパレードである。
■何としても「戦後レジーム」からの脱却を
 真・保守主義を掲げる議員連盟『創生「日本」』(会長・安倍晋三元首相、最高顧問・平沼赳夫たちあがれ日本代表)は、このほど開いた会合で「戦後レジームからの脱却」や「憲法改正に向けた国民的議論の喚起」を柱とする運動方針を決定。
 また、自衛隊は憲法違反と強調するなど偏向した中学校教科書の採択を行わせないことを求める緊急提言も採択した。
 創生日本は国会議員約80人がメンバー。
(中)
2011年7月26日号
■自衛隊 ジブチに初めての海外基地開設
 7日、アフリカ東部、ソマリアの隣国ジブチに建設された自衛隊初の本格的な海外基地となる施設の開所式が行われた。
 政府を代表してあいさつした小川勝也防衛副大臣は「自衛隊の海外任務の歴史の中でも画期的な意義を持つ」(朝日)と強調した。
 政府は、「海賊対処法」によるソマリア沖での「海賊対処活動」のため、09年から海上自衛隊の護衛艦とP3C哨戒機、人員約580人を派兵しており、これまでは米軍基地内の施設を間借りしていたが、自前の海外基地が完成したことになる。
 海外基地を持った自衛隊が、ソマリア沖での「海賊対処活動」を強化するとともに、「国連が自衛隊の派遣を期待しているスーダンでの平和維持活動など、この地域での新たな活動の可能性も見据えた動きと受け止められている」(NHK)。
 政府は8日、23日で派兵期限を迎える「海外対処活動」を1年間延長することを決めた。延長は昨年7月に続き2回目。
■PKO5原則見直し・PKF参加検討 政府懇談会が中間報告
 政府の「PKOの在り方に関する懇談会」が4日、中間報告を枝野官房長官に提出した。懇談会は、昨年10月に設置されたもの。
 中間報告は、PKO活動への積極参加を強調し、武器使用基準など「PKOに参加しやすくできるよう」参加5原則の見直しも含め、検討するよう求めている。
 さらに中間報告では、国連平和維持軍(PKF)の本体業務への参加について「実現に向けて検討していく必要がある」ことを明記している。
 PKFの本体業務である停戦や武装解除の監視などが武力をともなう活動であることから「凍結」されていたが、01年の法改正で「解除」されている。しかし、まだ一度も派兵されたことがない。枝野官房長官は、秋にも結論を出す考えを示している。
 9条破壊策動が、いよいよ本格化されようとしている。
■防衛省の研究会報告 武器輸出自由化が狙い
 武器輸出の歯止めになってきた「武器輸出3原則」を突き崩す執拗な策動が繰り返されている。
 6月の日米安全保障協議委員会は共同開発中の弾道弾迎撃用ミサイルの米国から第3国への輸出を認めることで合意した。
 防衛省は6日、「防衛生産・技術基盤研究会」の中間報告を発表した。報告書は、防衛に必要な装備品などについて「国際共同開発・生産への参加」を強調し、その制約になる「武器輸出3原則の見直し」を提言している。
 昨年12月、政府が決定した「防衛計画の大綱」に、国民の反発で盛り込めなかった「3原則」を、研究会の提言で覆す企ては絶対に許されない。
 研究会の構成は11人のうち、三菱重工、日立、川崎重工、経団連、日本防衛装備工業会、日本造船工業会の代表ら「死の商人」が大半を占める。
 来年2月に最終報告書をまとめる予定。
(中)
2011年7月12日号
■「2プラス2」軍事同盟強化・拡大 沖縄県民の総意踏みにじる
 外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、普天間基地の移設問題で、名護市辺野古にV字形滑走路の新基地を建設することを正式に決定した(6月21日)。2014年までの完成目標は「2014年より後のできる限り早い時期」に先送り。
 「2プラス2」は、「より深化し、拡大する日米同盟に向けて:50年間のパートナーシップの基礎の上」(共同発表)や「在日米軍の再編の進展」などの文書を発表しているが、「共同発表」は新防衛大綱の「動的防衛力」にも触れ、「変化する地域及び世界の安全保障環境に対処するため」、自衛隊が米軍とともにグローバル展開する方向を打ち出している。
 普天間基地の辺野古移設や滑走路の形状など、米国の要求を丸飲みし、県民の総意を踏みにじるものであり、「沖縄の基地負担軽減に逆行する合意は同盟関係の劣化にとどまらず、民主政治を蝕(むしば)む汚点として歴史に刻まれることだろう」(琉球新報社説)。
 「2プラス2」は、国是である「武器輸出3原則」を無視し、日米で共同開発中の弾道ミサイル迎撃ミサイルについては、米国から第3国への輸出を認めることで合意した。
 米政府は「生産・配備段階に移るのを前に、欧州への輸出・配備を計画している」(朝日)。
 今回の日米合意によって「3原則」のいっそうの形がい化が進む。
■オスプレイ配備 41分の38首長が反対
 2012年後半から普天間基地に配備予定の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、琉球新報の調査で県内41市町村のうち、38首長が配備に反対していることが分かった。
 反対理由として、騒音被害と危険性の増大をあげる意見が多く、開発段階から事故が多発している同機の配備反対の声が県内全体に広がっていることが明らかになった。
■沖縄県民は見抜いている 菅首相あいさつ
 6月23日、沖縄戦から66年。沖縄県は「沖縄全戦没者追悼式」を開催。不戦と平和への誓いを新たにした。
 が、菅首相のあいさつは空虚なものだった。
 「沖縄だけ負担軽減が遅れていることは、慚愧(ざんき)に堪えない」と過重負担を認め、「米軍基地に関わる沖縄の負担軽減と危険性の除去への取り組みに最大限努力する」と(琉球新報社説)。
 「本心なら、県民の苦渋、悲しみに思いを致す最大級の表現だ。しかし、県民は額面通りには評価しまい。民意を無視して米政府と普天間飛行場の名護市辺野古移設を再確認する。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備についても反対の声を無視し強行の構え。『民主党よお前もか』。これが多くの県民の受け止め方だろう」(同)。
 追悼式の「平和宣言」に、仲井真知事は、普天間の県外移設を初めて盛り込んだ。辺野古新基地を認めない沖縄県民の決意は固い。
(中)
2011年6月28日号
■96条改憲議連発足 発議要件の緩和を狙う
 民主党、自民党、公明党、みんなの党など約100人の改憲派議員が7日、「憲法96条改正を目指す議員連盟」の設立総会を開催した。改憲の発議要件を衆参両院の各3分の2以上の賛成から過半数に変え、9条改憲などをしやすくすることをねらったもの。
 呼びかけ人の民主党の小沢鋭仁前環境相は、「憲法改正に向かいやすい環境をつくった方がいい」(時事)とあいさつ。
 西岡武夫参院議長も参加した。顧問に森喜朗、麻生太郎、安倍晋三の歴代首相が就任した。
 96条改憲原案を提出するには衆院で100人、参院で50人以上の賛同者が必要。社民、共産両党以外の議員にも呼びかけ、賛同者は200人を超えたという。
■大阪府 思想・良心の自由を侵害する「君が代」起立条例強行可決
 公立学校の入学式や卒業式などにおける「君が代」斉唱の際、教職員の起立・斉唱を義務づける全国初の条例が3日、大阪府議会で成立した。橋下知事が率いる「大阪維新の会」が提出していた。
 「維新」は先の自治体議員選挙で府議会の過半数の議席を占めており、「教育常任委員会審議を1日で打ち切る」(毎日)などまともな審議もないまま、「数の暴挙」による強行可決である。
 国や地方自治体が、教職員に対して君が代を斉唱する際に起立・斉唱を強制する条例は、憲法が保障する思想・良心の自由を侵害するもの。「(国旗・国歌法に)国旗・国歌の尊重を義務づける規定が盛り込まれなかった経緯がある。こうした立法経緯に照らせば、君が代斉唱時に起立を義務づける条例は、条例制定権を『法律の範囲内』とした憲法94条に反するものである」(日本弁護士連合会・会長声明)。
 さらに橋下知事は、起立しない教職員の懲戒免職を盛り込んだ条例案を9月府議会に提出することを明言している。
■防衛相 日米開発の迎撃ミサイル輸出容認
 国是の一つである「武器輸出3原則」をいっそう形がい化する動きが強まっている。
 北澤防衛相は3日、「米国のゲーツ国防長官との日米防衛相会談で、日米で共同開発中の海上発射方式の迎撃ミサイル『SM3ブロック2A』について、日米以外の第三国への移転を容認する方針を伝えた」(朝日)。北澤氏は、容認の条件について21日に予定される2プラス2(防衛、外交関係閣僚による日米安全保障協議委員会)で正式合意したいとしている。
 武器輸出を禁止してきた「武器輸出3原則」の根拠は憲法の平和主義である。いかなる条件であれ米国から第3国への移転(輸出)を認めることは「武器輸出3原則」の壁を突き崩す道を開くもので、許されることではない。財界・軍需産業の要求を丸のみし、「金儲け」のために、人殺しの道具を売るようなことがあってはならない。
(中)
2011年6月14日号
■改憲への道を開く参院憲法審査会規程可決
 5月18日、参議院本会議は改憲手続き法にもとづき改憲原案の審査・提案権をもつ参議院憲法審査会規程を民主、自民、公明、みんな、立ちあがれ日本、国民新の各党の賛成多数で可決した。共産党、社民党は反対。
 規程には、構成45人、過半数議決、国会の開閉中を問わず開催できることなどを定めている。
 衆・参両院の審査会は国会法上07年8月に設置された。衆院では09年6月に麻生政権末期の与党であった自民、公明両党が規程の議決を強行したが、これまで審査会は一度も開かれてない。
■民主 憲法調査会設置会長にタカ派の前原氏
 民主党は5月10日の役員会で党憲法調査会を再設置し、会長に前原誠司前外相をあてる人事を決定した。
 4年ぶりに活動を再開することになった憲法調査会は、衆・参の憲法審査会の始動にあわせ、改憲論議の盛り上げをねらったもの。来年3月末をめどに改憲案をまとめる。
 会長に就任した前原氏は、集団的自衛権の行使容認を持論とするなどタカ派改憲論者で知られる。前原氏が党代表だった05年に民主党は、自民党の「新憲法草案」に対応し「憲法提言」をまとめている。9条関連では、「制約された自衛権を明確にする」としているが、「専守防衛」を否定する「新防衛大綱」を踏まえた、与党としての9条改憲が焦点になるであろう。
■怒る沖縄!「県外・国外」で仕切り直しを
 「いったい何をしに来たのか。迷惑千万な来県と言うほかない。松本剛明外相のことである」(琉球新報社説の書き出し)。
 松本外相は、辺野古移設を決めた日米合意から1年を迎える5月28日沖縄を訪問。県外移設・日米合意の見直しを求める仲井真知事に対し、松本氏は普天間基地の「『代替施設について6月下旬開催の2プラス2(防衛、外交関係閣僚による日米安全保障協議委員会)で決める』と述べ、県の理解がなくても予定通り、代替施設の位置や配置、工法を決定したい考えを通告した」(琉球新報)。
 そして社説は「政府は『沖縄の声に耳を傾ける』と繰り返してきたが、実際には民意をくむ姿勢などない。政府の考えを一方的に押し付けるばかりだ」と怒りをあらわにし、「『沖縄に伝えた』というアリバイづくりの来県だろう」と切り捨てる。
 「米軍問題でこのまま思考停止を続け、民意を無視する政権なら、不信任を突き付けるしかない」と手厳しく糾弾しているが、民意を踏みにじられ続けてきた大多数の県民の悲痛な叫びでもあろう。
 北澤防衛相も、2プラス2の前に訪沖を予定している。
 G8サミットで訪仏中の菅首相は、オバマ米大統領と会談し、日米合意(辺野古移設)の堅持を確認した(日本時間5月27日)。
(中)
2011年5月24日号
■改憲派 東日本大震災を利用して改憲策動
 民主、自民、公明各党などの改憲派議員らでつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は4月28日、「新しい憲法を制定する推進大会」を開催、衆参両院の憲法審査会の早期始動と改憲論議の開始を求める大会決議を採択した。
 また、決議では東日本大震災への対応に関連して、現行憲法に「非常事態条項」がないことをとりあげ、早急な改憲論議を求めた。
 自民党も震災後の憲法改正推進本部役員会で、「非常事態条項」を党の新憲法草案に盛り込む考えで一致(時事)。震災を利用して憲法に基本的人権を制限する条項を盛り込むことを改憲の突破口にしようとしている。
 憲法記念日の3日、「改憲派の集会では、東日本大震災と原発事故を受け、憲法に非常事態条項を盛り込むべきだとの声が相次いだ」。「『21世紀の日本と憲法』有識者懇談会」(民間憲法臨調)は都内で集会を開き、国家緊急事態条項の新設を喫緊の課題とする緊急提言を採択」(産経)。
 また、「『新しい憲法をつくる国民会議』(自主憲法制定国民会議)が都内で開いた集会では、憲法に『緊急事態宣言・危機管理規定』を新設し、指揮権が首相にあるとの明文規定を置くべきだとする決議を採択」(同)するなど、改憲運動の盛り上げをはかった。
 一方、改憲派議員らの「衆参対等統合一院制国会実現議員連盟」(会長・衛藤征士郎衆院副議長)は4月28日に総会を開催。「衆参両院で可及的速やかに憲法審査会の『審査会規程』を整え、委員の選任を行うよう求める特別決議」を採択した。衆参両院議長に申し入れ、今国会中の実現を求めた。議連は衆院と参院を対等に統合した一院制をめざしており、その実現には改憲が必要。
 さらに、民主党の長島昭久前防衛政務官や自民党の古屋圭司衆院議員らが中心となって、改憲案の発議要件(96条)を衆参両院議員の「3分の2以上の賛成」を「過半数の賛成」に変えることをめざす議員連盟を今月中にも発足させる動きを強めている。
 ハードルが高い96条のみの改憲案に絞り込んだのが特徴。
■第3次嘉手納爆音訴訟 原告2万2058人
 米軍嘉手納基地周辺5市町村の住民2万2058人が原告となり、「殺人的」な爆音の差止を求める3度目の提訴が4月28日、那覇地裁沖縄支部で行われた。原告団は国内最大規模、県民の70人に1人に相当する。
 これまでの判決は「受忍限度を超えている」として損害賠償を国に命じたが、飛行差止は棄却した。米軍機の深夜・早朝の差止判決が出ない限り、闘いは終わらない。
■「L・X・V・I→V」 これって何?
 普天間基地の「最低でも県外移設」を掲げた民主党政権は結局、辺野古に回帰。そして今、辺野古新基地の滑走路について、政府は自ら主張していた「I字案」を引っ込め、これも結局、米側が強く求めていた「V字案」とする方針を固めた。
 「L・X・V・I→V」の解答は次のとおり。(滑走路の)工法問題は自民党政権時代、L字形の次にXとVが浮上、最終的にVで合意した。V字案は滑走路が2本に増え、代替どころか基地機能を強化するものだ。図面にLと描いては消し、X、V、Iと描いては消す。そして再びVを描く。まさに机上の空論だ。民意は図面に「×」印を付けている。(「琉球新報」社説・5月1日付)
 仲井真弘多知事は県民世論を背景に県外移設へと転換した。移設先の稲嶺進名護市長も移設に反対だ。(同)
(中)
2011年4月26日号
■民主党 参院憲法審査会規程案を決定
 民主党は3月31日、参院議員総会で、改憲原案の審査・提案権を持つ参院憲法審査会の規程案を了承した。規程案は、審査会の委員数を45人、表決は出席議員の過半数などとしている。
 同党は今通常国会での制定を目指す。
■侵略戦争美化・憲法敵視の教科書合格
 文部科学省は3月30日、2012年春から使われる中学校教科書の検定結果を発表した。侵略戦争を美化し、憲法を敵視する立場の歴史教科書が2点合格した。
 合格した歴史教科書は、新しい歴史教科書をつくる会が編集した自由社版と、「つくる会」から分裂した日本教育再生機構が編集した育鵬社版。
 民主党政権も自公政権と変わるところがない。
■「思いやり予算」 苦難する被災者にまわせ
 衆参両院は3月31日の本会議で、5年間で1兆円もの税金を米軍に支払う在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)特別協定案を民主・自民・公明3党などの賛成多数で可決、承認した。
 「思いやり」は、東日本大震災で苦難にあえいでいる被災者に向けられるべきでないのか。
■辺野古移設 沖縄防衛局が名護事務所設置
 沖縄タイムスによると沖縄防衛局は3月31日、日米両政府で米軍普天間飛行場代替施設の移設先として合意した名護市辺野古に「名護防衛事務所」を設置した。
 稲嶺進名護市長は、「今の県内状況から考えて基地建設が進むことはあり得ない。名護市民はひるむことなく、反対の意志を貫徹する」と表明した。
■米軍の災害支援 沖縄2紙の社説をみる
 東日本大震災。米軍は災害支援を「トモダチ作戦」と銘打って、大規模な部隊を派遣。とりわけ、海兵隊では普天間基地に所属するヘリ部隊が物資輸送などを展開している。
 沖縄タイムスは、「米軍や海外からの緊急援助チームが被災地に入り、懸命に活動してくれている」ことに敬意を表しながら、「ただ在沖米海兵隊が『普天間飛行場の死活的重要性が証明された』とアピールしているのは理解に苦しむ」「普天間移設問題が日米間の重要な懸案であることを承知しながら、米軍当局が震災の政治利用を画策しているのなら、文民統制の観点から見逃せない」と強調し、「震災の政治利用は厳に慎む」よう求めている。
 琉球新報は、「米軍の災害支援 それでも普天間はいらない」の見出しを掲げ、「ここぞとばかりに軍の貢献を宣伝するとは、どういう神経なのか。東日本大震災への米軍の災害支援に絡めて、在日米軍が普天間飛行場の『地理的優位性』や在沖海兵隊の存在意義などをアピールしている」ことに強い違和感を表明。
 「はっきりさせよう。米軍がどのようなレトリックを使おうとも、県民を危険にさらす普天間飛行場やその代替施設は沖縄にいらない」ことを明確に主張している。
■原発事故―想定外ではない これは人災だ
 東日本巨大地震で、東京電力福島第一原発が重大事故を起こした。本当に「想定外の事態」だったのか。
 「原発震災」の恐れを警告し、警鐘を鳴らし続けてこられた石橋克彦・神戸大名誉教授の論文「原発震災―破滅を避けるために」(岩波書店・雑誌「科学」97年10月号)が同誌のホームページで特別公開されている。
 14年前の論文は、津波による原発の冷却機能の喪失など、今、福島原発で起こっているさまざまな事態を眼前にしているかのような正確さで想定している。今回の原発事故は、「安全神話」をばらまき、安全対策を怠った結果だ。「想定外」は免罪符にならない。
(中)
2011年3月22日号
■安全保障 官邸機能強化へ検討チームが発足
 政府は2月25日、「国家安全保障に関する内閣機能強化のための検討チーム」の初会合を開いた。
 チームは、「専守防衛」を全面否定し、防衛政策の基本を大転換した新防衛大綱を踏まえて設置されたもの。「米国の国家安全保障会議(NSC)の日本版を官邸に設立することを議論する」(朝日)。メンバーはチーム長の枝野官房長官、藤井、福山、滝野各官房副長官で構成。
 日本版NSCは安倍政権が、日米同盟の強化と自衛隊が米軍とともにグローバル展開するための司令塔として打ち出し、07年4月には関連法案を国会に提出したものの廃案になった。
 民主党も、党外交安全保障調査会の下に設置されている「NSC・インテリジェンス分科会」で新防衛大綱への党提言に明記した「国家安全保障室」(仮称)を具体化する作業を進めている。
■武器輸出の突破口狙う軍用プロペラ売却
 北澤防衛相は2月22日の記者会見で「米国がアフガニスタン空軍に供与する予定の中型輸送機C27Aに使う中古プロペラを米側に売却すると発表した」(朝日)。
 防衛省はすでに米軍との契約を締結しており、米側の受け入れ準備が整い次第引き渡すことになっている。
 輸出されるプロペラは海上自衛隊の救難飛行艇USIAの予備部品である。USIAは米国からP3C対潜哨戒機を購入するまでは、海自が対潜哨戒機として開発し使っていたもの。今は救難飛行艇に転用された軍用航空機である。その部品であるプロペラの売却は明らかに武器の輸出であり、武器輸出3原則に違反することは明白である。
 民主党・菅政権は、武器輸出の歯止めになってきた「3原則」の見直しを行っている。軍用プロペラの輸出は、「3原則」の壁を突き崩し、武器輸出に突破口を開く危険な狙いがある。
■米国務省日本部長の暴言に沖縄県民激怒
 「沖縄はごまかしとゆすりの名人」「怠惰でゴーヤーも栽培できない」「普天間飛行場は特別に危険ではない」……(琉球新報)―米国務省のケビン・メア日本部長(前駐沖縄総領事)が昨年末、同省内で米大学生に対して行った講義で、沖縄県民を愚弄し、侮辱する暴言を繰り返していたことが明らかになった(7日)。
 県民の激しい怒りが広がる中、県議会は8日、メア氏本人、米国務長官らに対する強い抗議とメア氏本人に発言の撤回と謝罪を要求する決議を全会一致で可決した。 同日、那覇、浦添両市議会でも同趣旨の決議を全会一致で可決した。両市議会以外にも県内の議会では、抗議文を決議する動きが広がっている。
 メア暴言に関して地元紙「琉球新報」は「解任し米の認識改めよ ゆがんだ沖縄観を投影」、「沖縄タイムス 」は「[メア氏舌禍]信じられない侮辱発言」の見出しの社説を掲げた。
(中)
2011年3月8日号
■自民党 来年4月までに改憲案とりまとめへ
 自民党の谷垣総裁は、日本記者クラブ(東京)で記者会見し、「来年4月28日のサンフランシスコ講和条約発効60周年に合わせて党の憲法改正案をまとめる考えを明らかにした」(毎日)。  自民党は、05年の結党50周年記念大会で、現行憲法の前文と9条を廃棄する「新憲法草案」を発表しているが、昨年の党大会の運動方針で「『新憲法草案』を精査・推敲し、早期の憲法改正を実現」することを決定し、第2次草案の策定を示している。
■民主党 参院憲法審査会の規程案策定へ
 参院民主党は、改憲原案の審査・提案権を持つ参院憲法審査会について、今国会中に委員数や議決要件などを定める規程案を野党側に提案することをめざしており、とりまとめに向けた党内論議を本格化させている。
 2月15日の党の参院役員会には「審査会の委員の数を45人とし、採決は出席議員の過半数で決するなどとする素案が示され」ている(NHK)。
 衆・参両院の憲法審査会は国会法上設置されているが(07年8月)、衆院では09年6月にいたって、自民・公明両党が規程の議決を強行したが、委員はいまだ選任されておらず、審査会は一度も開かれてない。 
■陸自 離島防衛名目に米海兵隊と着上陸訓練
 夜間、暗闇の海から陸地に潜入する自衛隊員―NHKが、アメリカ西海岸で2月9日から始まった陸自西部方面普通科連隊と米海兵隊との実動訓練(訓練期間は1か月)の模様を詳しく伝えた。
 それによると米海軍のエアクッション揚陸艇を使っての上陸作戦や上陸後に橋頭堡を築く訓練などが行われている。
 この訓練は、新防衛大綱で示された離島の防衛態勢の強化に向けたもので、自衛隊の中隊長は「島しょ部を防衛するという任務を確実に遂行するため、優れたノウハウを持つアメリカ軍から知識や技術を吸収して、部隊の練度の向上に努めたい」と語ったという。
 日米共同の実動訓練の狙いは何か。少し長くなるが早稲田大学・水島朝穂教授のホームページから引用させていただく。
 水島氏は、まず今回の訓練について「普通の訓練ではない。離島が『敵』に占領されたとき、それを『奪還』する訓練である。だから着上陸作戦や橋頭堡の確保などが演練されている」と指摘。「『奪還』作戦の訓練を積めば、その能力の応用は日本の離島防衛だけに限られないだろう。米海兵隊はいつでも、どこでも軍事介入する『なぐり込み部隊』である」と強調し、実動訓練の狙いは「将来的にアジア・太平洋地域における米海兵隊の役割を徐々に日本に担わせていくことにあるのではないか」と分析。さらに水島氏は「新防衛計画大綱では、中国の軍事的脅威が強調されている。離島『奪還』の訓練のように見えて、実は自衛隊が他国への着上陸作戦を実施できる能力をもつことが意図されているのではないか」とも指摘する。
(中)
2011年2月22日号
■民主党 安全保障政策の具体案づくりに着手
 民主党は、党外交・安全保障調査会の下に「軍事的安全保障」や「NSC・インテリジェンス」など5つの分科会を設け、「党内で意見が分かれている安全保障政策を中心に、統一的な考え方をまとめる」(NHK)作業に着手した。6月をめどに提言をまとめ、政府に申し入れる方針だ。
 軍事的安全保障分科会は2日に初会合を開いた。会議では、日米同盟の在り方や自衛隊の海外派兵恒久法、PKO参加5原則・武器輸出3原則の見直しなどを中心に協議することを決定した。
 NSC・インテリジェンス分科会では、新防衛大綱への党提言に明記した「国家安全保障室」(仮称)を具体化し、官邸の機能強化をめざす。
■経済同友会 改憲・集団的自衛権行使を提言
 経済同友会は3日、「世界構造の変化と日本外交新次元への進化―日本力を発揚する主体的総合外交戦略―」を発表した。
 「外交戦略」は、まず「国の安全を確保するため……憲法改正をも視野に入れた議論が必要」と主張。
 また、「集団的自衛権行使を容認しない現在の憲法解釈は、国際安全保障の確保のために日本が取り得る活動を著しく制約し、また有事における日米同盟の有効性を損ねる」として、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認するよう強調している。
 さらに、「日本からの自衛隊派遣をより有効かつ機動的に進めるために恒久法を制定」することを提言し、武器使用基準の緩和も求めている。
 武器輸出を事実上禁じてきた武器輸出3原則については、「武器輸出政策の弾力的な運用を認め」、「国際的な開発・生産体制」への参加と第3国への移転を認めることを求めている。
 「戦争遂行能力を持つ『動的防衛力』の構築」を推進する民主党・菅政権と財界の軌を一にした動きだ。
■軍転協 日米合意見直し・県外移設を要求
 沖縄県と基地を抱える27市町村で構成する「県軍用地転用促進・基地問題協議会」(軍転協、会長・仲井真弘多知事)は3日、「那覇市内で2010年度の通常総会を開き、米軍普天間飛行場移設の日米共同発表(日米合意)を見直し、県外移設に取り組むなど7項目を日米両政府に要請することを全会一致で承認した」(沖縄タイムス)。
 軍転協が普天間基地の県外移設を要求するのは初めて。
 軍転協代表団は7日、在沖米国総領事館と在沖米4軍調整官事務所を訪ね、県外移設など7項目を要請。
 また、8日には菅首相や前原外相、北澤防衛相、枝野官房長官、ルース駐日米国大使、岡田民主党幹事長と個別面談し、要請行動を展開した。
 しかし、「政府は辺野古移設に固執する姿勢をあらためて鮮明にし」(琉球新報)、沖縄の総意を無視した。
(中)
2011年2月8日号
■施政方針 日米同盟・防衛力の強化を強調
 1月24日、通常国会開幕、菅首相が初の施政方針演説。
 「外交・安全保障政策」では、まず冒頭で「日米同盟が基軸」「日米同盟の深化」を表明し、これまでの対米追随路線を繰り返し強調した。
 さらに重大な内容は、昨年末に決定した新防衛大綱にもとづく防衛力の強化を強調したことである。「新大綱では、日本の防衛と並び、世界の平和と安定……に貢献することも、安全保障の目標に掲げて」おり、「新大綱に沿って、即応性や機動性などを備え、高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力の構築に取り組む」「その際、南西地域、島しょ部における対応能力を強化」するとしている。新大綱は、これまで基本理念としてきた日本の防衛を建前とする専守防衛の証明とされた基盤的防衛力構想を廃棄し、中国対象の動的防衛力への大転換と、自衛隊が米軍とともに地球規模で軍事活動を展開する日米同盟をめざしている。
 早くも陸上自衛隊は今月、新大綱に沿って離島の防衛態勢の強化に向けてアメリカの西海岸で、アメリカ海兵隊と共に海からの上陸訓練を行うことになっている(NHK)。
 菅首相の施政方針演説は、まぎれもなく9条破壊宣言である。
■対米軍事協力を推進
周辺事態法改悪へ
 政府は、朝鮮半島情勢を口実にして対米軍事協力を公然と推し進めるための周辺事態法改悪を策動している。
 共同通信によると「政府は、朝鮮半島有事を想定した自衛隊による米軍支援を拡充する必要があるとして、周辺事態法を改正する方向で検討に入った」。自衛隊の対米支援を「現行の日本領域から公海へ拡大するのが柱で、早ければ今秋にも改正案を国会提出する」。
 新防衛大綱は、「周辺事態における(日米)協力」を明記し、「地域における不測の事態」に備えて米軍支援のための「措置を検討する」(周辺事態法改悪を示唆)としている。
 また、1月6日の前原外相とクリントン米国務長官の会談でも、「周辺事態」での日米協力の協議をさらに加速させることで一致している。
■聞く耳を持たぬものが何人、何度、沖縄に訪れても問題解決に至るはずがない
 地元紙「琉球新報」社説の冒頭部分である。
昨秋の沖縄知事選挙以降、菅首相や前原外相(2回)、岡田民主党幹事長、北澤防衛相、馬淵沖縄担当相、枝野官房長官など関係閣僚、民主党幹部が次々と沖縄を訪問した。
 そして、「基地負担軽減策、(沖縄)振興策を使って沖縄側を懐柔し、辺野古移設を認めさせようとする腹づもりを臆面もなく見せた」(同紙・社説)。
 「名目は『県民の声を広く聞く』となっているが、共通しているのはいずれも、日米合意の着実な履行を訴えるだけで、沖縄の民意を聞く姿勢を見せていないことだ。政府が辺野古を抱える名護市の稲嶺進市長と面談したことはない」(同)。民意は県外移設だ。
(中)
2011年1月18日号
■民主党・菅政権 9条破壊へまっしぐら
 政府が昨年末に閣議決定した新防衛大綱は、これまで基本理念としてきた日本の防衛を建前とする専守防衛―基盤的防衛力構想に代えて、即応性や機動性を高めることを重視した動的防衛力の構築へ防衛政策の基本を大転換した。9条の枠を突破して、自衛隊が米軍とともにグローバル展開することを想定している。
 すでに新大綱の具体化が取り組まれている。防衛省は昨年末(27日)、「防衛力の構造改革推進委員会」の初会合を開き、動的防衛力の概念に沿った自衛隊運用などについての検討を開始し、6月までに「改革案」をまとめることを確認した。
 また、新大綱への明記が見送られていた「武器輸出3原則の見直しも含めて検討する」(時事)ことになっている。
 一方、民主党は、「国際貢献や日米同盟を強化するため自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法制定や集団的自衛権の行使容認に向けた検討に着手する」(毎日)。1月中に党の外交・安全保障調査会内に専門部会を設置し、半年をめどに党の見解をまとめる。
■2010年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
 9日 沖縄県議会、「普天間基地移設の日米合意見直しを求める意見書」を全会一致で可決
 11日 参院選投・開票 民主惨敗
 16日 政府、ソマリア沖への自衛隊派兵の1年延長を決定  30日 第175臨時国会召集
菅首相、参院定数40削減、衆院比例定数80削減を12月中の与野党合意を目指すよう指示
〈8月〉
  5日 参院予算委、菅首相は集団的自衛権の憲法解釈を「変える予定はない」と答弁
  6日 菅首相、会見で「核抑止力は、引き続き必要だ」と述べる
  7日 尖閣沖衝突事件
 27日 「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」、菅首相に報告書提出
〈9月〉
 10日 北澤防衛相、閣議に防衛白書報告
 17日 菅改造内閣が発足
 28日 仲井真沖縄知事、県議会で日米合意見直し、県外移設を表明
〈10月〉
  5日 北澤防衛相、会見でPKO参加5原則の見直しを表明
 10日 北澤防衛相、武器輸出3原則の見直しを表明
 15日 名護市議会、「県内移設の日米合意」の撤回を求める意見書を賛成多数で可決
 19日 民主、自民両党の参院国対委員長会談、参院憲法審査会規程の制定で一致
 22日 民主党の外交・安全保障調査会、武器輸出3原則緩和で一致
 29日 政府の「PKOのあり方に関する懇談会」が初会合
〈11月〉
 28日 沖縄県知事選挙投・開票
 29日 民主党外交・安全保障調査会、新防衛大綱への提言まとめる
〈12月〉
  2日 仲井真沖縄県知事、菅首相に日米合意の見直しと普天間の県外移設を求める
 13日 仙谷官房長官、普天間基地の辺野古移設について「県民に甘受してもらいたい」と発言
 14日 思いやり予算について10年度の水準を5年間維持することで日米が合意
 17日 菅内閣、新防衛計画の大綱を閣議決定
  菅首相、沖縄訪問。日米合意の受け入れ迫る
 21日 前原外相、沖縄訪問。辺野古移設が実現するまで普天間基地が継続使用になると表明
 27日 防衛省、防衛大綱に基づき、「防衛力の構造改革推進委員会」の初会合を開く
(中)
2010年12月28日号
■新防衛大綱 菅政権は最悪の憲法破壊政権
 政府は、新たな「防衛計画の大綱」を閣議決定した。
 「大綱」は、歴代政府が自衛隊を9条の下で正当化するため、「専守防衛」を大原則として最小限度の防衛力に限定してきた「基盤的防衛力」という概念を投げ捨て、「動的防衛力」という新しい概念を持ち込み、防衛政策の基本を大きく転換させた。「専守防衛」の全面否定は、憲法の平和主義を踏みにじり、自衛隊が米軍とともにグローバル展開する危険な道に一歩踏みこむことになる。  菅政権がこのまま突き進めば、歴代政権の中で最悪の憲法破壊政権と言うしかなかろう。
■2010年―主な改憲の動き(上)
〈1月〉
 12日 北澤防衛相、「武器輸出3原則」について「見直し」を表明
 15日 新テロ対策特別措置法失効
 18日 第174通常国会召集
 19日 安保改定50年。鳩山首相、日米同盟の深化を表明
 20日 鳩山首相、衆院予算委で「在任中の憲法改正はない」と答弁
 24日 名護市長選挙、普天間基地の辺野古移設に反対する稲嶺候補が現職を破り初当選
〈2月〉
 1日 鳩山首相、衆院本会議で普天間移設について「5月までに結論を出す」と答弁
 18日 鳩山首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が初会合
 24日 沖縄県会、「普天間早期閉鎖と県内移設反対、国外・県外移設を求める意見書」を全会一致で可決
〈3月〉
 4日 自民党「憲法改正推進本部」、論点整理を公表
 9日 岡田外相、日米の密約に関する外務省調査結果と有識者委員会の検証報告書を公表
 16日 岡田外相、PKO活動の武器使用基準について見直しを表明
 17日 衆院外務委、 岡田外相が核持ち込みについて有事の場合に容認することもあると答弁
〈4月〉
 24日 北澤防衛相、普天間移設で「現行案(辺野古案)に戻ることはあり得ない」と明言
 25日 「米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設に反対し国外・県外移設を求める県民大会」開催、9万余参加
 26日 平野官房長官、「現行案に戻ることはない」と明言
 28日 新憲法制定議員同盟、「新しい憲法を制定する推進大会」開催
〈5月〉
 4日 鳩山首相、仲井真知事と会談し、全面的な県外移設の断念を表明
 7日 鳩山首相、徳之島3町長に普天間基地の機能の一部を受け入れるよう要請。3町長は拒否
 11日 政府、閣議で憲法改正国民投票の投開票に関する政令決定
 13日 鳩山首相、普天間移設問題の5月末決着断念を表明
    江田参院議長、民主、自民、公明3党の参院国対委員長に憲法審査会規程の早期制定を要請
 18日 政府、改憲手続き法の施行を強行
 28日 日米安全保障協議委員会、普天間基地の移設先を名護市の「辺野古崎」周辺とする共同声明を発表。辺野古への移設を閣議決定
 30日 社民党、連立政権から離脱
〈6月〉
  4日 鳩山内閣総辞職。衆参両院、菅氏を首相に指名
  8日 菅内閣発足
 11日 所信表明演説で菅首相は、普天間について辺野古への新基地建設を明記した日米共同声明の堅持を明言
 16日 第174国会閉会
 24日 参院選公示
(中)
2010年12月14日号
■民主党 9条に挑戦する安保・防衛政策
 民主党の外交・安全保障調査会は11月29日、政府が年内に策定する「防衛計画の大綱」への提言案をまとめ、30日の政策調査会の了承を得て政府に提出した。
提言では、菅首相の私的諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書と「問題意識を共有する」と表明し、新安保懇報告と同様、基盤的防衛力構想との決別を求め、武器輸出3原則やPKO参加5原則、武器使用基準の見直しなどを盛り込んでいる。
 これらは、いうまでもなく、憲法の平和主義を踏みにじるものであり、自民党政権でも突破できなかった9条の壁を突き崩す重大な内容である。
 「自衛隊を9条の下で正当化するため、歴代政府は専守防衛を原則とし、そのために基盤的防衛力という概念で自衛隊の戦力を整備・強化し、この両者は一体のものとされてきた」。ところが、提言は基盤的防衛力構想との決別を主張。集団的自衛権行使の禁止など海外での武力行使を許さない歯止めになってきた9条改憲に道を開く狙いがある。
 武器輸出を事実上禁止してきた武器輸出3原則の根拠となるのは憲法の平和主義である。軍需産業の要求をのみ、武器輸出を認める提言は言語道断である。「金儲け」のために人殺しの道具を売ることがあってはならない。
■沖縄知事選 県内移設反対の民意は重い
 11月28日投開票された沖縄知事選挙で、普天間基地の「県内移設反対」を掲げた伊波洋一氏は大健闘したがわずかに及ばなかった。「条件付き県内移設容認」から知事選直前に「県外移設」に方針転換するも最後まで「県内移設反対」を明言しなかった現職の仲井真弘多氏が再選された。
 選挙の結果、県内移設が支持されたわけではない。辺野古新基地建設を推進する菅民主党政権が独自候補はおろか推薦候補すらたてられなかったこと、また、仲井真氏が県内容認とは言えなかったことからも、沖縄の民意が県内移設反対にあることは明白である。
 毎日新聞の出口調査によれば「県外移設40%と国外移設39%で8割近くに上り、辺野古移設19%」、「県外移設を望む層に限ると投票先の回答は仲井真氏50%、伊波氏49%でほぼ並び」「仲井真氏が『県外』にかじを切った影響が読みとれる」と分析している。
 沖縄タイムスの社説は、09年総選挙で自民党の議席がゼロになったことや名護市長選、市議選の結果、夏の参院選で当選した自民党候補が、日米合意を批判し、県外移設を訴えざるを得なかったことを例示しながら、「これまで県内移設を容認してきた保守陣営も、沖縄ではもう県内移設を掲げて戦うことはできなくなったということである」と指摘している。
 「菅政権が民意にどう向き合うのか、知事は公約の『県外』をどう要求していくのか、しっかり見守る必要がある」(同)。
(中)
2010年11月23日号
■政府 PKO参加5原則見直しに着手
 「法制定から18年たち、PKOの役割も変化している。さらに国際貢献を進める観点で議論したい」―仙谷由人官房長官(毎日)。
 政府は10月29日、PKO協力法にもとづく自衛隊の海外派遣を拡大するための「PKOの在り方に関する懇談会」(座長・東祥三内閣府副大臣)の初会合を開き、PKO参加5原則の見直しに向けた議論に着手した。
 「政府としては、今後、紛争当事者間の停戦合意がなくても参加できるかどうかや、自衛隊員が敵に襲われた一般の人や他国の軍隊を警護できるよう、武器の使用基準を一部緩和するかどうかなどについて検討を進め、来年3月までに意見を集約」(NHK)する。
 ※平和5原則=@紛争当事者間の停戦合意A紛争当事国の同意B中立性の厳守C以上の条件を欠いた場合の部隊撤収D武器使用は隊員の生命・身体防護に限定
■自民党 給油支援法案を参議院に提出
 自民党は、インド洋におけるテロ対策に従事する米国など各国の艦船への給油支援活動を再開するための特措法案を参議院に提出した。
 海自は01年9月のアメリカの同時テロ以降、一時中断をはさんで8年にわたってインド洋で米艦船などに給油支援を行ってきたが、政権交代によって今年1月に新テロ特措法が失効し、撤退。 自公政権は、アフガニスタン領土での武力行使ではないから憲法違反ではないと正当化したが、給油支援によって米艦船のアフガン空爆を支え、罪のないアフガンの人々の殺りくに手を貸したことは明らか。
 自民党が提出した法案は、失効した新テロ特措法の内容を復活させ、新たにアフリカ・ソマリア沖での海賊対策にあたる艦船への支援も盛り込んでいる。法案は2年の時限立法。
 なお、民主党もソマリア沖での給油活動を検討している。
■「憲法円卓会議」ってなんやねん?
 「国民的議論を喚起するため」として、6月に「憲法円卓会議」が発足している。
 代表格(特別顧問)は、改憲手続き法制定の推進役を務めた中山太郎・前衆院憲法調査特別委員長(昨年の総選挙で落選)、座長は江口克彦・PHP総合研究所代表取締役社長。
 「円卓会議」のブログによるとメンバーは学者、ジャーナリスト、民主・自民・公明党の現・前国会議員ら。護憲派、改憲派の「円卓会議」というふれこみだが、額面通りには受け取れない。かつての衆院憲法調査会・憲法調査特別委員会で中心的な役割を果たした現・前衆院議員らの名が並んでいる。改憲派の巻き返しの場ではないのか。
 6月発足以降、11月までに11回の会合や公開討論会(「各党に問う―憲法論議・憲法教育をどう進めていくのか―」)を開いている。10月の会合では「第一次提言」の方向性について話し合っている。どんな提言がでてくるのか?
(中)
2010年11月9日号
■参院憲法審査会 民・自が野合し規程づくり
 民主、自民両党の参院国対委員長は10月19日の会談で、改憲原案の審査・提案権を持つ参院憲法審査会について、今国会中に委員数や議決要件などを定める規程の制定を目指すことで一致した。審査会規程の具体的な内容は参院議院運営委員会で協議する。
 衆・参の憲法審査会は改憲手続き法によって法的には設置されたが(07年8月)、07年参院選で自民党が惨敗し、民主、社民、共産党が反対したことから審査会規程の制定すらできず、始動することができなかった。
 衆院では09年6月に自民、公明両党が規程の制定を強行したが、委員の選任は行われず、審査会は一度も開かれていない。
 衆院の審査会規程の議決に反対した民主党が、参院の規程を作る緊急性もないのに、なぜ自民党に擦り寄るのか。7月の参院選で過半数割れした民主党政権が、自民党や公明党の強い要求を受け入れ、補正予算案や諸法案の審議に協力を得たいという党利党略、本音が垣間見える。党利党略で憲法を扱うことはとんでもないことだ。
■「武器輸出3原則」見直し 重大な段階へ
 武器の輸出を原則として禁じている「武器輸出3原則」の見直し論議が政府・民主党内で本格化している。
 年内に策定する「防衛計画の大綱」について検討している民主党の外交・安全保障調査会は10月26日の役員会で、「3原則」を見直す方針を決め、「11月中に提言をまとめる」(時事)。
 一方、政府は10月22日、自民党参院議員の「3原則」に関する質問主意書に対し、「『防衛計画の大綱』の修正に向けた検討の過程等において、武器輸出3原則等を取り巻く状況の変化を考慮しつつ、その扱いについて議論していく」とする答弁書を閣議で決定。「関係閣僚による協議を開始した」(時事)。
 国是の一つである「武器輸出3原則」見直し・撤廃の策動は重大な段階を迎えた。
■名護市議会 「日米合意」の白紙撤回を決議
 名護市議会は10月15日の最終本会議で、普天間基地の移設先を同市辺野古と明記した日米合意の撤回を求める意見書と決議を17対9の賛成多数で可決した。名護市議会で同基地の県内移設に反対する意見書が可決されたのは初めて。
 意見書と決議では日米合意について「名護市民および県民の意思に沿うものではなく、頭越しに行われたものであり、民主主義を踏みにじる暴挙として、また沖縄県民を愚弄するものとして到底許されるものではない」と厳しく批判し、「激しい怒りを込めて抗議し、撤回を強く求める」と要求している。
 また市議会は、垂直離着陸機MV22オスプレイの沖縄配備計画について「名護市民をはじめ、沖縄県民に墜落の危険と死の恐怖を押しつける以外の何物でもない」として、配備計画の撤回を求める意見書と決議を全会一致で可決した。
(中)
2010年10月26日号
■菅民主党政権 新安保懇路線の推進に強い意欲
 菅民主党政権は、解釈改憲の拡大をめざす「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」報告(8月27日)の推進に強い意欲を示している。
 新安保懇報告がPKOでの武器使用基準の修正を求めているが、北澤防衛相は5日の記者会見で、海外派兵される自衛隊員の「武器使用基準の一部緩和も含めて、見直しを検討する」(NHK)と表明した。
 また、北澤防衛相は11日、ゲーツ米国防長官との会談で、武器の輸出を禁じている「武器輸出3原則」見直しに意欲を示し、「年末にまとめる防衛大綱で方向性を示す考えを伝えた」(読売)。
 琉球新報社説は「国際公約だ。看過できない」と、主張している。
 さらに、菅首相は、14日の参院予算委で「武器輸出3原則」の「基本理念を変えていくつもりはない。どういう扱いができるのかは『防衛計画の大綱』の議論の中でしっかりやっていきたいと述べ、年末をめどに取りまとめる『防衛計画の大綱』の見直し議論とあわせて方向性を出す考えを示した」(NHK)。
 新安保懇報告は、「日米同盟や友好国との協力深化」のため3原則の見直し(撤廃)を説き、武器の「国際共同開発・生産」を強調しているが、その延長線上に見えてくるものは集団的自衛権の行使であろう。
 武器使用基準の緩和や「武器輸出3原則」の見直しは、歴代の自民党政権でも突破できなかった憲法に抵触する問題である。9条の解釈改憲は断じて許されない。
■米海兵隊 オスプレイ12年普天間配備を明記
 米海兵隊は9月末、最新鋭の垂直離着陸機MV22オスプレイを12年10月から普天間基地に配備する計画―「2011会計年度海兵航空計画」を公表した。
 「海兵航空計画」には「普天間飛行場の代替施設計画の遅れや中止された場合も想定し、普天間飛行場への駐機場建設や滑走路、路肩の整備などの計画」(沖縄タイムス)が明記されている。
 日米両政府で合意している名護市辺野古への新基地建設の頓挫も視野に、12年10月から普天間基地へのオスプレイ部隊の配備を強行し、辺野古新基地が実現すれば同部隊を移転させる計画になっている。
 北澤防衛相は13日の衆院予算委で、「海兵航空計画」が日米の事務方の協議で議題になっていることを認めた。
 沖縄県民の反発は必至だ。世界一危険な基地「普天間」を抱える宜野湾市の伊波洋一市長は「危険なオスプレイが飛行することになるとすれば絶対に許されない」(同紙)と強い決意を表明した。
 また、那覇市議会は9月30日、オスプレイ配備計画について「市民、県民に墜落の危険と死の恐怖を押しつけるものだ」と糾弾し、配備計画の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。
■「安保若手議連」 領域警備や恒久法など検討
 1年半ほど休眠していた民主、自民、公明党の国防族議員でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が、中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件をきっかけに蠢き始めた。
 同会(議連)は7日、幹事会を開き、尖閣諸島問題などを踏まえ領域警備のあり方や海外派兵恒久法などを検討する方針を決めた。
 また、代表幹事に民主党の長島昭久・前防衛政務官、自民党の中谷元・元防衛庁長官、公明党の佐藤茂樹安保・外交部会長が就任。代表幹事だった前原外相は退任した。
 今後、民主、自民、公明党の1回生やみんなの党、たちあがれ日本の議員にも働きかけ、メンバーの拡大を図る。
(中)
2010年10月12日号
■従属ではなく自己主張を―琉球新報
 国連総会出席のため訪米した菅首相はオバマ米大統領と、就任以来(6月)2度目の日米首脳会談を行った。
 菅首相は、「日米同盟が外交の基軸である」と表明し、普天間基地問題について、「5月の日米合意に基づいて前に進めていきたい」(外務省HP)と述べ、辺野古への新基地建設を改めて約束した。
 9月26日付の琉球新報は、日米首脳会談について「従属ではなく自己主張を」と題する社説を載せた。
 社説は、普天間移設について米国では、日本の国内問題という立場を取ってきたが、米国の対日政策に影響を及ぼす専門家の間から現行案は無理だという認識が広がってきていることを紹介し、「むしろ普天間問題の解決を困難にしているのは、対米追従で硬直した日本政府の外交姿勢にある」と糾弾。
 さらに、「菅首相は(オバマ米大統領に)日米合意を守ると伝えた。おかしな話だ。それよりも民意を踏まえることが重要ではないのか」と厳しく指摘し、「県議選、名護市長選、名護市議選で県内移設反対の民意は示されている。民意と国際的な約束にずれがあれば再交渉すればいい。米国内で現行案は無理だという認識が広がっている。今こそ好機ではないか」と強調する。
 「対等な日米関係」を掲げた民主党政権ではなかったのか。11月知事選挙で鉄槌を打ち込むしかない。
■「タカ派」外相 過去の主な発言を見る
 前原外相は就任会見(9月17日)で、「経済外交というものを軸に外交を推進していきたい」と述べた。民主党きっての「安保」通といわれてきた前原氏が、「経済外交」を強調して登場した。
 これまでのタカ派発言を封印したわけではなかろう。そこで主なものをひろってみた。
◇民主党代表就任会見(05年9月・毎日)
 9条1項はいいが、2項は削除して自衛権を明記する。
◇米ワシントンで講演(05年12月・NHK、読売)
 シーレーンの防衛は死活的に重要。千海里を超える範囲はアメリカ軍に頼っているが、日本も責任を負うべきだ。そのためには、憲法の改正と自衛隊の活動や能力の拡大が必要。(集団的自衛権の行使)憲法改正を認める方向で検討すべきだ。
◇普天間問題の日米合意を受けての会見(10年5月・国土交通省HP)
 国と国との合意は極めて重い。特に日本の安全保障にかかわる約束において、これをしっかり守って履行をしていくということは大変重要なことだ。日本の安全保障の米国に占める割合は、実は時代の変遷とともにより大きくなっているという現実を我々は直視しなければいけない。
◇ニューヨークの会見で(10年9月・日経)
 日本の周りに核保有国があることを考えると、米国の(核の)傘に入るということは矛盾しない。
(中)
2010年9月28日号
■防衛白書 在日米軍駐留の意義強調
 政府は10日の閣議で2010年度版「防衛白書」を了承した。民主党政権がまとめた初の白書。
 白書は「日米安全保障条約締結50周年」の項目を新しく設け、日米の協力関係が「多くの成果を生んできた」と評価し、さらに「日米安保体制を中核とする日米同盟を深化させるためのプロセスを推進する」と表明した。
 また、「抑止力として十分に機能する在日米軍のプレゼンスが確保されていることや在日米軍が緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢が平時から我が国とその周辺でとられていることなどが必要である」とし、「在日米軍の駐留の意義」が強調されている。
 普天間基地の移設問題については、海兵隊駐留の意義や役割、抑止力を強調しながら、「国外・県外に移設すれば、海兵隊の持つ機能を損なう」として沖縄の民意を切り捨てた。「普天間飛行場の代替の施設を決めない限り、普天間飛行場が返還されることはない」と明記。脅迫である。
 白書の立場は、政権交代を実現した09総選挙のマニフェストに民主党が掲げた「緊密で対等な日米関係」「米軍再編や在日米軍基地の見直し」路線と矛盾している。どこが「対等」か、米軍事戦略への「追従」にほかならない。
■辺野古にオスプレイ 地元は怒りと反発
 政府がこれまで明言を避けてきた辺野古新基地への垂直離着陸機MV22オスプレイの配備について、岡田外相は9日の参院外交防衛委員会で「可能性はかなりある。そういう前提で物事を組み立てていくべきだと考えている」と答弁(琉球新報)。
 一方、米国防総省のモレル報道官も9日の記者会見でオスプレイの配備について「日本の基地に展開させる予定だ」と明言するとともに、既に日本政府に伝えたことを明らかにした(時事)。日米両政府が沖縄への配備を認めたのは初めて。
 オスプレイは、80年代の開発開始以降、墜落事故を繰り返している。
 沖縄タイムスによると地元からは怒りと反発の声があがっている。
 稲嶺名護市長は「政府はオスプレイや飛行経路などを県民にひた隠しにしてきた」と政府の姿勢を批判。ヘリ基地反対協の安次富浩代表委員は「欠陥機オスプレイの配備が明らかになると移設計画に影響がでる。だから防衛省はうそをついてきた」と憤った。
 オスプレイ配備が明らかになった直後(12日)の名護市議選(定数27)で、辺野古移設に反対する稲嶺市長を支える与党が16議席を獲得し、圧勝した。辺野古移設は一層困難になる。
(中)
2010年9月14日号
■「新安保懇」報告書 「9条の縛りを解き放せ」
 8月27日、「防衛計画の大綱」見直し作業を進めていた「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が菅首相に報告書を提出した。
 報告書は、歴代自民党政権が進めてきた解釈改憲と軍事大国化をめざすもので、米国や財界・軍需産業の意向を色濃く反映している。
 報告書は、「防衛力の役割を侵略の拒否に限定してきた『基盤的防衛力』概念は有効性を失った」と否定し、これまで「専守防衛」を原則として、最小限度の防衛力に限定してきた「基盤的防衛力構想」路線の大転換を提言している。
 「基盤的防衛力構想から脱却し、多様な事態が同時・複合的に生起する『複合事態』も想定して踏み込んだ防衛体制の改編を実現することが必要な段階に来ている」とし、多様な事態として、@弾道ミサイル・巡航ミサイル攻撃、A特殊部隊・テロ・サイバー攻撃、B周辺海・空域および離島・島嶼の安全確保などをあげている。
 「防衛体制改編」のため、憲法9条が歯止めになってきたこれまでの軍事政策に対する縛りを解き放す提言も打ち出されている。
 集団的自衛権の行使については「日米同盟にとって深刻な打撃となるような事態が発生しないようにする必要がある」と憲法解釈の見直しを求めている。
 また、武器輸出3原則に関しても「日本の安全保障における防衛生産・技術基盤の重要性に鑑みれば、見直すことが必要」とした。
 報告書は、非核3原則について「一方的に米国の手を縛ること(持ち込ませず)は、必ずしも賢明ではない」と「2・5原則」化を求めている。
ただ、原案にはなかった「当面、改めなければならないという情勢にはない」とも付け加えた。
 報告書は、PKO参加5原則の見直しや恒久法制定にも触れている。
 これらは、憲法9条の壁が大きく立ちはだかり、歴代政府をして軍事政策の転換がはかれなかったもの。明文改憲を待たずに「解釈」を大幅に変え「海外で戦争する軍隊」づくりを狙っている。
■陸自・総合火力演習 実弾44d3億5千万円
 「国内最大規模の実弾射撃訓練『富士総合火力演習』が8月29日、東富士演習場で一般公開され、実弾約44トン(約3億5千万円相当)を使い、約2万8千人に披露した」(産経)。
 陸自は、富士山のすそ野で約2時間にわたる演習を初めてインターネット上で生中継もした。  事業仕分けに聖域をつくってはならない。
■普天間 地元に断りなく設計図をつくるな
 地元の頭越しに普天間基地の移設先を名護市辺野古と明記した日米合意を受け、日米の専門家が検討していた新基地の位置や配置、工法に関する報告書が発表された。
 滑走路の本数など問題ではない。問題なのは沖縄の民意を踏みにじり続ける政府の姿勢である。
 政府は最終決定を11月の沖縄県知事選挙後に先送りする方針。
 「誰に向けた作文なのか」と題する地元「沖縄タイムス」の社説(1日付)を借用しよう。
 冒頭で「地元に断りなく、勝手に設計図をつくり、米軍基地を建設しようとする」と怒りを表す。
 「地元は移設そのものに反対している。……強権的に新基地を建設できる時代ではない」。稲嶺名護市長は「『陸にも海にも新基地は造らせない』と公約して当選した。民意という意味ではこれほど重いものはない」と強く訴える。
 稲嶺氏は報告書について「話にならない。言語道断だ」と批判している。
(中)
2010年8月24日号
■ソマリア沖海賊対処 自衛隊派兵1年延長
 菅内閣は7月16日、23日に期限が切れるアフリカ・ソマリア沖への自衛隊派兵を1年間延長することを決定した。現在、護衛艦2隻とP3C哨戒機2機などを派遣。
 一方で、防衛省は活動の長期化に備えるため隣国のジブチに「活動拠点」(初の海外基地)を建設中である。
 さらに、菅内閣は海賊対処行動に補給艦を派遣し、外国艦船への洋上給油を検討している。
 派兵の根拠法は「海賊対処」派兵法。同法は、保護対象を「すべての国籍の船舶」に拡大。武器使用基準も一気に拡大し、海賊行為を制止するための船体射撃を可能としている。武力行使に道を開く9条違反の法律。
■経団連 武器輸出3原則の見直しを求める
 日本経団連は、政府が年内に策定する「新防衛計画の大綱に向けた提言」を公表した。
 「提言」は、武器輸出3原則の見直しと各種衛星、ロケットなどによる宇宙開発利用を盛り込むよう求め、防衛産業の振興を通じた経済効果に向けて政府の防衛産業政策策定の必要性を強調している。
■日米合意見直し要求 沖縄県議会が全会一致
 沖縄県議会は7月の最終本会議で、普天間基地の移設先を名護市辺野古と明記した「日米合意」(日米共同声明)の見直しを求める「意見書・抗議決議」を全会一致で可決した。
 意見書は、日米合意について「県民の意見をまったく聞かず頭越しに行われ」「民主主義を踏みにじる暴挙」であり、「県民を愚弄するもの」として、日米両政府に合意を見直すよう強く求めている。
■新参院議員 9条改憲賛成が多数に
 7月の参院選は民主党の大敗によって与党が過半数割れし、「ねじれ国会」の再現となった。自民党は改選第1党となり、新自由主義路線の「みんなの党」が第3党に躍進。
 一方、護憲派の社民党、共産党は、いずれも議席数、得票数・得票率の全てにおいて後退した。
 改憲に積極的な自民、みんなが議席を伸ばしたことによって、参院では憲法審査会規程の制定と憲法審査会始動の動きが強まるであろう。
 毎日新聞が行った全候補者アンケートの当選者に絞った再集計で、新議員の憲法に向きあう姿勢が明らかになった(当選者121人のうち113人が回答)。
 それによると改憲賛成は60%、反対は33%だった。政党別では自民の91%、みんなの89%が賛成、民主の63%、公明の44%が反対。
 また、9条の改憲賛成は48%、反対は42%。賛成が07年参院選の25%から急増した。政党別では民主の76%、公明の67%が反対、自民の85%、みんなの89%が賛成と答えた。
 集団的自衛権行使を禁じた政府の憲法解釈について「見直すべきだ」が49%で、「見直す必要はない」の42%を上回った。自民の87%、みんなの56%が「見直すべき」で、民主の66%、公明の89%が「必要ない」と回答。
(中)
2010年7月27日号
■改憲政党のマニフェストを見る
 参院選を前にして、改憲を掲げる新党が続々と生まれた。改憲政党のマニフェストから「改憲宣言」を記録しておこう。
〈民主党〉
 (昨年の総選挙では「05年にまとめた『憲法提言』に基づいて自由闊達な憲法論議を行う」としていたが、参院選では憲法問題に触れていない。安保・防衛問題に関する主なものは以下のとおり)
  • 総合安全保障、経済、文化などの分野における関係を強化することで、日米同盟を深化させる。
  • 普天間基地移設問題に関しては、日米合意に基づいて、沖縄の負担軽減に全力を尽くす。
  • PKO活動などでの自衛隊のあり方について検討する。
  • 防衛大綱・中期防衛計画を本年中に策定。
    〈国民新党〉
     我が国の伝統や文化を守ると共に、国際社会で期待される役割を我が国が凛として果たしてゆく為に平成の自主憲法制定を目指す。
    〈自民党〉
     時代に合った新しい憲法に改めていく。世界に貢献できる新憲法をめざし、日本らしい日本の姿を示す。
  • すでに平成17年、新憲法草案を発表している。
  • 「憲法改正原案」の国会提出をめざす。
    〈公明党〉
     (改憲に直接ふれてないが、加憲論を主張してきた党であり、憲法審査会の始動をめざしている。安全保障に関する主なものは以下のとおり)
  • 日米安保条約を堅持し、日米関係の深化・発展。
  • PKOへの積極的参加。
    〈たちあがれ日本〉
     自主憲法制定を目指す。集団的自衛権の解釈を適正化する。
    〈日本創新党〉
     日本国の伝統に立脚しつつ、新たな憲法を制定する(「憲法前文案」を掲げている)。
    〈新党改革〉
     新たな時代にふさわしい憲法改正を議論する。
    〈みんなの党〉
     憲法は、これからの新たな国のあり方にあわせて見直す必要があり(道州制の導入など)、憲法審査会を早急に始動して議論を開始する。
    ■菅内閣も内閣法制局長官の答弁禁止
     仙谷由人官房長官は菅内閣発足直後の記者会見で「内閣が責任を持った憲法解釈論を国民や国会に提示するのが最も妥当な道だ」(読売)と強調し、鳩山前内閣の方針を踏襲して内閣法制局長官の国会答弁を禁止する方針を表明した。憲法解釈の国会答弁は仙谷氏が担当する。
     国会では、憲法解釈を担当してきた内閣法制局長官を答弁者から排除するなどを柱とする国会改革関連法案が継続審議になっている。同法案は小沢前幹事長の肝いりでつくられた議員立法。
    ■民主党 党憲法調査会復活へ
     民主党は、07年の参院選後廃止されていた憲法調査会を枝野幸男幹事長の下に復活する。
     枝野氏は復活の理由について「憲法調査会をつくって与野党間の信頼関係の修復の論議から始めたい」とした(民主党HP)。
    (中)
  • 2010年6月22日号
    ■菅内閣発足 普天間基地移設 「前内閣と同じ過ちを繰り返すのか」
     「最低でも県外」移設の公約を破り、県外・国外移設を熱望する沖縄の圧倒的な民意を裏切り、内閣支持率が10%台にまで急落した鳩山首相が辞任に追い込まれた。
     鳩山内閣に代わって8日、管内閣が発足した。
     菅首相は11日の所信表明演説で普天間問題について、辺野古への新基地建設を明記した「日米合意」の堅持を明言した。
     菅首相は、民意を正面から受けとめ、県外・国外移設に方針転換すべきである。その決断ができなければ前政権の過ちを繰り返すことになろう。
    ■「居抜き内閣」の危うさ―琉球新報(社説)
     菅新内閣の陣容がほぼ固まりつつあった8日付朝刊の琉球新報・社説の一部を紹介しよう。
     「普天間」での失態、失政で退陣した鳩山内閣だが、菅新内閣の陣容は「普天間」を混迷させた閣僚らがそのまま残る「居抜き内閣」の様相だ。……鳩山内閣の18人中11人の主要閣僚が居残る見込みだ。
     国外・県外移設を求める圧倒的な「県民意思」を無視し、辺野古での日米合意を進めた岡田克也外相、北沢俊美防衛相も続投である。
     「辺野古」ありきの日米合意継承が「続投」の意とするならば、県民は納得しまい。新内閣も早晩、鳩山内閣と同じ命運となりかねない。
    ■菅直人新首相の改憲論を見る
     民主党は9条改憲の方向を示した「憲法提言」(05年)を公表しているが、菅新首相の改憲論を追ってみた。
    ◇毎日新聞(97・5・3―憲法観をきく)=9条の問題に触れておくと、私自身は、この憲法においても国の自衛権は認められるし、専守防衛の自衛隊も認められると考えます。
    ◇朝日新聞(00・9・11―10日のテレビ番組)=今の憲法を、自分たちの力で民主的に変えることは必要だと思う。自衛隊は現実には軍隊だと思う。専守防衛という目的をきちんとしたうえで、それに対応する軍隊は認めるべきだ。
    ◇民主党04年度定期大会・代表あいさつ(04・1・13)=日本の国のあるべき姿を示す新たな憲法を創る「創憲」を主導してまいりたいと思います。できれば憲法発布から60年目に当たる2006年までに、国民的運動を集約する形で民主党として新たな憲法のあり方を国民に示せるようにしたいと考えます。
     ※1年前倒しして05年に「憲法提言」を発表。
     ※菅代表は大会終了後の記者会見で、第9条も検討対象に含むことを明らかにした。
    ◇衆院本会議・代表質問(04・1・21)=今回の自衛隊のイラク派遣がこういった意味で現行憲法に明らかに違反した活動であって、その行動を命令し承認した小泉総理は、民主主義国日本の総理としてはその資格を欠いている、辞任をこの場で強く要求したいと思います。
    ◇毎日新聞・09年総選挙アンケート=問い2:集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を見直すべきだと考えますか。 回答:見直す必要はない。
    ■那覇市議会 「辺野古」明記の日米合意撤回を
     那覇市議会は7日、普天間基地の移設先を名護市辺野古と明記した「日米合意」の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。県内で初めて。
     意見書は「(日米合意は)『県内移設』反対という沖縄県民の総意よりも、米国政府の意向を最優先するもので、民主主義を踏みにじる暴挙であり、沖縄県民を愚弄するもので断じて許せない」「激しい怒りを込めて抗議し、撤回を強く求める」としている。
    (中)
    2010年6月8日号
    ■辺野古に新基地 怒 怒 怒 怒 怒……。
     「ハトではなくサギだ」―と言われているのは、公約を破り捨て、大ウソを繰り返している総理の鳩山さんのことらしい。
     「最低でも県外」を公約し、言い続けていたにもかかわらず、普天間基地の移設先は結局、自公政権時代に日米が合意した名護市辺野古。クリントン米国務長官も大歓迎し、鳩山首相の「勇気ある決定だ」と称賛している。
     政権発足以来8カ月間、「鳩山内閣はいったい何をしてきたのか、県民の心をもてあそぶのは、いいかげんにしてもらいたい」(沖縄タイムス社説)。
     アメリカの顔色ばかりをうかがい、沖縄の民意を踏みにじる許し難い行為だ。県民、国民を裏切る鳩山内閣の罪は大きい。
     琉球新報の警告に耳を傾けよう。「普天間飛行場の県内移設に反対する世論は総じて県民の7割超だ。4月25日の県民大会で示された『県内移設ノー』の民意は世代や主義主張を超えて後戻りできないほど高まり、沖縄社会の通奏低音≠ニして息づいている」「その期待を裏切り、……在沖米軍基地は県民のぎりぎりの寛容的視線をも失い、敵意に囲まれた異物と化すことは避けられない」(社説)。
    (原稿締め切りの関係で引用した社説は、「日米共同声明」発表前のもの)
    ■江田参院議長 憲法審査会規程の制定を促す
     産経新聞によると江田五月参院議長は、「(憲法審査会を設置した国会)法と現実が齟齬(そご)をきたしている状況は遺憾」として、民自公3党の国対委員長と会談し、常設機関でありながら2年9ヵ月間も始動していない憲法審査会の委員数などを決める審査会規程の早期制定を求めた。
     衆院では昨年、自公が規程の議決を強行したがいまだ委員の選任はされていない。
    ■国連決議なくても派兵可能 自民党が恒久法
     自民党は、アメリカの要求に迅速に応え、軍事行動をともにできる恒久法の制定を与党の時代から目指してきたが、この程「国際平和協力法案」をまとめた。5月26日、衆院に提出した。
     法案では派兵する条件に、国連決議や国際機関の要請、紛争当事者の合意による要請などに加え、国連決議がなくても、日本政府が「特に必要と認める場合」をあげており、政府の判断で派兵が可能となる。
     活動地域は「非国際的武力紛争地域」に限定しているが、「国際的」な武力紛争が行われていなければどこでも派兵できることになっている。
     武器使用では、正当防衛のほか、「駆けつけ警護」も容認。他国の軍隊が武力攻撃を受けたときに自衛隊が擁護する「駆けつけ警護」は海外での武力行使に踏みこむことにもなる。
     また、これまで認められていない治安活動や警護活動も盛り込まれ、海外における目いっぱいの軍事行動の拡大を狙っている。文字どおり、明文改憲を先取りする法案である。
    (中)
    2010年5月18日号
    ■改憲手続き法の施行を強行―強まる改憲策動
     憲法は3日、1947年の施行から63年を迎えた。07年5月に自公両党によって強行された改憲手続き法は(同月18日に公布)、公布から3年が経過した5月18日、施行が強行された。これによって、法律上は改憲の発議が可能になった。
     改憲手続き法は成立時に、参院特別委員会で18項目にわたる付帯決議がなされるなど「欠陥法」といわれた。それ故、同法施行のためには投票年齢や公務員の政治活動の制限などについて必要な法制上の措置を講じることが義務づけられていた。ところが、改憲原案の審査権限を持つ衆参両院の憲法審査会が民主、共産、社民の抵抗でいまだに始動することができず、付帯決議の項目は全く検討がなされてない。
     それにもかかわらず鳩山内閣は、凍結・廃止を求める世論を無視して改憲手続き法の施行を強行した。
     憲法記念日や改憲手続き法の施行を前に改憲策動が強まっている。
     民主、国民新、自民、公明、みんな、たちあがれ日本、新党改革各党の改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)は先月28日、「新しい憲法を制定する推進大会」を開き、憲法審査会の早期始動を求める決議を採択するなど改憲手続き法の施行を前に、改憲機運の盛り上げに気勢をあげた。
     憲法記念日の3日、「『21世紀の日本と憲法』有識者懇談会」(民間憲法臨調)は憲法フォーラムを開き、憲法審査会の早期始動、憲法論議の開始を求める緊急提言を採択。
     臨調の世話人であり、極右の扇動家で知られる櫻井よしこ氏が基調提言。「9条改正を優先するとともに、教育で、日本の歴史や伝統の価値観を教えることを憲法に書き込みたい」(産経)と強調した。
     改憲団体では臨調の他、「新しい憲法をつくる国民会議」(自主憲法制定国民会議)や日本青年会議所(JC)も集会やフォーラムを開き、改憲機運の盛り上げをはかった。
    ■自民党 今国会中に改憲原案提出へ
     自民党は、今月18日の改憲手続き法施行後、今の国会に改憲原案を提出する方針を固めた。
     中谷元・憲法改正推進本部事務局長は3日、改憲手続き法施行後の対応について「逐次、党内でまとまった条項があれば、国会に提出して憲法改正を促進したい」(NHK)と述べ、改憲草案全体でなく、党内で合意した条文ごとに国会に提出する方針を明らかにした。
     今国会に提出する改憲案には@改憲発議の要件を衆参両院の「3分の2以上の賛成」から「過半数の賛成」に引き下げるA「財政の健全性の確保は、常に配慮されなければならない」との条文を加える―の2点を盛り込むとしている。
     これらについては、同党の参院選マニフェストに改憲案として示す方針。選挙公約に具体的な改憲内容を掲げるのは初めてのことである。
    ■“沖縄の心”踏みにじる暴挙 鳩山首相 県内移設を断言
     「〔県内容認〕何を信じろというのか」「民意傾聴し『県内』断念を 新基地建設しては禍根残す」―地元紙「沖縄タイムス」と「琉球新報」の5日付社説の見出しである。
     鳩山首相は4日、沖縄入りし、仲井真弘多知事、稲嶺進名護市長らと会談。首相は日米同盟や抑止力の重要性(対米追従)を理由に県内移設を断言した。政府は「現行計画の修正」と「徳之島への一部移設」をセットした案で最終調整している。
     「最低でも県外」の公約を反故にし、「国外・県外」を熱望する圧倒的多数の県民の期待を裏切る許し難い行為である。期待は怒りに変わった。
    (中)
    2010年4月27日号
    ■普天間基地撤去 鳩山政権に気骨があるのか
     「米国の圧力に屈し、最善の策を正面から主張する気骨が全くうかがえない対米追従外交」(琉球新報社説)。
     1996年4月、米軍普天間基地の全面返還に合意してから、今月12日で14年を経過した。2006年に日米両政府が米軍再編で合意し直した14年の移設完了期限も見通しは不透明のままだ。そして今、鳩山政権では「5月末の決着」を繰り返し言明しているが、絶望的との見方さえ広がっている。
     徳之島(鹿児島県)やキャンプ・シュワブ(名護市)、ホワイト・ビーチ(うるま市)―「民意欺くワースト案」(琉球新報社説)といわれる政府移設案。いずれも地元で猛反対が起こっており、対米交渉も進んでいない。
     「国外は難しい」というだけで気骨のある交渉がうかがえない。沖縄県民の意思をなによりも大切にし、対米交渉に本腰を入れるときだ。
    ■「読売」世論調査 改憲「賛成」と「反対」が拮抗
     読売新聞は9日付の紙面で憲法に関する全国世論調査の結果を発表した(面接方式・3月27、28日実施)。
     それによると、改憲賛成は43%で、改憲反対の42%と拮抗した。昨年の調査では賛成52%が反対36%を大きく上回っていた。
     9条についても改憲派は後退した。「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」は32%(昨年38%)で、昨年に比べ6%減少した。「これまで通り、解釈や運用で対応する」44%(同33%)と「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」16%(同21%)で、その合計は60%。9条の明文改憲反対が6割を占めているが、「厳密に守る」とする人は5%減少した。
     9条のうち「戦争放棄」を定めた第1項については、改憲反対が80%に上り、これまでの調査でも常に8割の高率を占めている。「戦力の不保持」などを定めた第2項についても改憲派が後退した。改憲反対が56%(昨年51%)で、賛成は37%(同42%)だった。
     同日付の社説は、「憲法論議を避けている鳩山政権の姿勢や、政権交代後の政治の混迷が、そのまま反映した調査結果」だと主張。来月18日に施行される改憲手続き法により衆参両院に設置されている憲法審査会が「3年近く休業状態にある」ことを嘆き、「憲法審査会を早期に始動させる必要がある」といら立ちをあらわにしている。
    ■自主憲法制定 新党「たちあがれ日本」が旗揚げ
     10日、「シニア新党」「家出老人党」などと揶揄されるなか、新党「たちあがれ日本」が旗揚げした。代表は、平沼赳夫衆議院議員。
     綱領の冒頭に「誇りある日本の文化と伝統、豊かな自然にはぐくまれた国土と環境、国民の生命・財産を守り、国際社会の一員としての責任を果たすため、自主憲法制定を目指す」ことをかかげている。
    (中)
    2010年4月13日号
    ■普天間政府案に島ぐるみの怒り
     米軍普天間基地移設問題で政府は3月26日、米政府と沖縄県に対し、米海兵隊キャンプ・シュワブ陸上部(名護市)と米海軍ホワイト・ビーチ(うるま市)沖合の埋め立ての2案に徳之島(鹿児島県)など県外への訓練移転を組み合わせる移設案を伝え、調整に入った。
     現地沖縄では、「県外・国外移設の公約がほごにされた」「沖縄県民を愚弄するものだ」という激しい怒りが広がっている。
     地元紙の社説を見る。
     琉球新報は「民意欺くワーストの案だ」と切り捨てる。「『最低でも県外』との公約をほごにする案には県民は納得せず、政府がどんな計画を立ててもどのみち実現できない」「政府は今すぐこの案を撤回した方がよい」と政府に怒りをぶつける。
     沖縄タイムスは「鳩山首相による計画見直しの結果がこの政府案では、いったい何のため、だれのための見直しなのか意味不明だ」「『ゼロベース』と言いながら県外を真剣に検討した様子はうかがえず、不誠実きわまりない」と怒りをこめて政府の姿勢を糾す。
     沖縄は25日に、10万人規模の県民大会の開催を準備している。
    ■「密約」公表で「2・5原則化」への危機
     日米間の「密約」問題に関する有識者委員会の報告書によって、非核3原則は佐藤栄作首相が67年に表明した直後から蹂躙され、空洞化していた事実が明らかになった。
     報告書の「結論」の項では、核持ち込みについて「日本政府は米国政府に米国側の解釈(注=事前協議の対象外)を改めるよう働きかけることはなく、核搭載艦船が事前協議なしに寄港することを事実上黙認した」と述べ、「『密約』問題に関する日本政府の説明は、嘘をふくむ不正直な説明に終始した」と非難している。歴代政府は「事前協議がないので核搭載艦船の寄港はない」とウソをつき続けてきた。
     報告書の公表後、鳩山首相と岡田外相は非核3原則の堅持を言明。岡田外相は、さらに一歩踏みこみ会見で「一時的な寄港も持ち込みに当たるという考え方を取ってきた。その考え方を変えるつもりはない」(外務省HP)と発言した。
     ところが非核3原則堅持を言いながら、鳩山首相は「密約が明らかになったが、これからの日米関係に影響を与えると考えるべきでないし、与えないように対処していくことが大事」と述べ、「核を含む抑止力は、日米安保を含め必要だ」(読売)と強調。また、岡田外相は「日本は非核3原則堅持、米国側は核の所在を明らかにしないという考え方だ(NCND政策)。これを一つにするのは至難の業だ」(日経)と述べ、衆院外務委員会では核持ち込みについて「有事の場合に容認することもあり得る」(読売)、非核3原則の法制化について「困難」(時事)と答弁した。
     これらの発言は、非核3原則堅持と絶対に相容れない。鳩山政権もまた、核密約をそのままにしてウソで国民をごまかし続けるのだろうか。
     主要メディアが、核抑止力肯定の立場から3原則見直しの論陣を張り、国民世論を誘導している
     また、衆院外務委員会の密約参考人質疑で、東郷和彦元外務省条約局長が「非核2・5原則」が最善と証言するなど、かつての外務省高官らも公然と2・5原則を主張。
     3原則の危機を前にして、私たちは鳩山政権に、核密約の廃棄とともに事前協議制度を積極的に活用することを求めていかねばならない。また、厳格な非核3原則の法制化を実現する運動のうねりをつくりだすことが求められている。広島、長崎で、すでに始まっている(詳細は広島市立大学広島平和研究所長・浅井基文氏HP)。
    (中)
    2010年3月23日号
    ■自民党 改憲へ論点整理 集団的自衛権再検討
     自民党の憲法改正推進本部(保利耕輔本部長)は4日の会合で、集団的自衛権の再検討などを柱とする論点整理をまとめた。
     今後、論点整理をもとに論議を重ね、改憲手続き法が施行される5月をメドに、05年に策定した新憲法草案を見直す。
     主な検討課題は集団的自衛権のほか、天皇元首の明記/徴兵制/外国人参政権付与の是非/一院制・二院制/軍事裁判所など、復古的改憲論も垣間見られる。
     論点では「民主主義国家での兵役義務の意味や軍隊と国民との関係を検討する必要がある」と徴兵制の検討を示唆する記述が盛り込まれていたが、大島幹事長は同日、談話で「論点整理は、他の民主主義国家の現状を整理したものにすぎない。わが党が徴兵制を検討することはない」と否定した。
    ■基地の「県内たらい回し」島ぐるみでノー
     名護市議会は8日に開会した定例会で政府・与党内で浮上しているキャンプ・シュワブ陸上案に反対する意見書を全会一致で可決した。意見書は「普天間飛行場の航空機騒音や危険性をそっくりそのまま、名護市に移しただけのものであり、言語道断だ」と非難し、「断固反対」を表明。
     稲嶺市長は、意見書可決後に初の施政方針演説を行い「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない信念を最後まで貫く」(琉球新報)とあらためて不退転の決意を表明した。
     名護市議会の意見書可決に対して平野官房長官は会見で「決議を越えてやっていかなければならない場合はある」(読売)と述べた。反対を押し切っても県内移設の強行もありうるということだ。先の名護市長選の結果について市民の意思を「しん酌する理由が無い」と言い放ったが、これまた常軌を逸した発言である。
     名護市議会が意見書を採択した8日、政府・与党の沖縄基地問題検討委員会が開かれ、社民党はグアム・県外案、国民新党はシュワブ陸上案と嘉手納基地への統合案をそれぞれ提示した。平野官房長官は会見で、3月中に政府案を絞り込む考えを示した。
     沖縄県議会は9日、全会派の代表者会議を開き、普天間の県内移設に反対し、県外・国外移設を求める県民大会の開催について合意した。5月末までに政府が結論を出そうとしていることから4月中旬に開くことを確認。
     琉球新報によると、会議では10万人規模の集会を目指すことが提起され、県議会が中心となって実行委員会を組織し、市民団体や経済団体などに参加を呼びかけていく。また、自民、公明の県政与党を巻き込んだ超党派となったことで、仲井真弘多知事にも出席を要請する。
     超党派による県民大会では、1995年の少女乱暴事件に抗議する「10・21県民総決起大会」、2007年の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」がある。
     「県内たらい回し」に反対するたたかいは島ぐるみの広がりを示してきている。
    (中)
    2010年3月9日号
    ■内閣の憲法解釈「私が判断」―枝野刷新相
     政府・与党は、野党の反発を押し切って今通常国会から政府特別補佐人から内閣法制局長官を外し、国会答弁を禁じてしまった。自民党政権すらやらなかった重大な変更である。
     ところが、法令や憲法解釈担当の平野官房長官が、たびたび答弁に窮する場面があったため、鳩山首相は、枝野刷新相を担当に指名した。
     枝野氏は2月19日の閣僚懇談会で内閣の憲法・法令解釈について「内閣法制局の意見は大事だが、判断するのは担当大臣の私であり、最終的には閣議だ」(読売)との考えを示した。会見では内閣の憲法解釈ついて「今後は政治の主導的な判断で、誤りがあったら正すし、新たな問題については対応していく」と強調(時事)。
     枝野氏は、05年に民主党の憲法調査会長として「憲法提言」をまとめた御仁。「提言」の9条関連では「制約された 自衛権を明確にする」など9条の明文改憲を打ち出している。
    ■改憲同盟 改憲手続き法施行にらみ活動再開
     改憲派議員らでつくる新憲法制定議員同盟が、改憲手続き法の施行を前に定例会の開催や4月には改憲推進大会を予定するなど活動を再開する。
     改憲同盟は、昨年8月の総選挙で所属する現職議員が激減。特に、中山太郎会長代理や愛知和男幹事長など「大物議員」が相次いで落選し、活動を事実上休止していた。
     自民党は、昨年12月に憲法改正推進本部をスタートさせ、改憲論議の活発化と「新憲法草案」見直しに取り組んでいる。
    ■「海にも陸にも基地は造らせない」 名護市長
     琉球新報によると、1月の名護市長選挙で当選した稲嶺進新市長は2月23日、当選後初めての臨時議会の就任あいさつで、「辺野古の海にも陸上にも新しい基地は造らせない」と訴えた。
     また、名護市の辺野古区は22日、普天間代替施設等対策特別委員会を開き、米軍キャンプ・シュワブ陸上案反対を全会一致で決定。隣接する豊原、久志の両区の了解も得た。日米が合意した移設先の辺野古区が反対意思を表明するのは初めて。
     地元の3区は、「国策として決定しても反対の実力行動も辞さない」などの要請文を25日、沖縄防衛局に提出した。
    ■迷走発言 もういいかげんにしてくれ
     普天間基地問題をめぐる関係閣僚の迷走発言や閣内不一致にはうんざりさせられる。発言の一部を再録しておこう。
  • 平野官房長官「常にベストを求めていくが、ベターになるかもしれない」(2月20日、「県外がベスト」とする仲井真沖縄知事との会談で・時事)。鳩山首相「ベターではなく、私どもはベストを探す」(同日記者団に・読売)
  • 北澤防衛相「(移設案を)2月中にまとめる」(20日、岩国市長との会談で・朝日)。平野官房長官「今月内に(結論を)出すと決めているわけではない」(22日、会見で・共同)。
  • 岡田外相「(移設問題が)日米間で合意できないと、(海兵隊グアム移転などに)影響が及ぶ可能性は否定できない」。鳩山首相「5月末までに必ず決着させる」(22日、衆院予算委・読売)
  • ■県民の意思は明確
     沖縄県議会は24日、「日米両政府が普天間飛行場を早期に閉鎖・返還するとともに、県内移設を断念され、国外・県外に移設されるよう強く要請する」との意見書を全会一致で可決、政府に「県民の意思」を突きつけた。県議会が「県外・国外移設」の決議・意見書を可決したのは初めて。
     政府は、移設先をアレコレ探す前に、まず「世界で最も危険な普天間基地の即時閉鎖・返還」(11・8県民大会)のための米政府との本腰を入れた交渉を行うべきである。
    (中)
    2010年2月23日号
    ■岡田外相発言 沖縄県民の心もてあそぶな
     「県民や首相の意思に背反する自らの理不尽さを恥じず、外交トップが米政府、米軍の言いなりになる。その姿を見る県民の落胆は大きい」―琉球新報3日付社説の冒頭部分である。
     普天間基地の「移設」問題で「普天間のほかになければ今のままということもあり得る」(1日)と、述べた岡田外相のことだ。先の名護市長選で辺野古新基地建設を拒否した民意を「斟酌しなければならない理由はない」と言い放った平野官房長官に続く常軌を逸した発言である。
     鳩山首相は、3日の参院本会議で「(普天間)飛行場が固定化することは何としても避けたい。(移設先が決まらず)最終的に元に戻って来ることはしない」(読売)と答弁。閣内不一致も甚だしい。
     沖縄タイムスによれば、「県議会与党最大会派の自民は4日、議員総会を開き、米軍普天間飛行場の県外移設を求める意見書・決議案を10日開会の2月定例会に提案することを全会一致で決めた」。
     名護市長に当選した稲嶺氏は6日、朝日新聞のインタビューに応じ、普天間基地の辺野古への移設について「約束を守れないときは、自分が(職を)降りる」と述べ、移設反対の公約を市長の職をかけて貫く考えを強調した。
    ■ハイチPKO 中央即応連隊が先遣隊で
     政府はPKO法に基づき、大地震で被害を受けたハイチに陸自の施設部隊350人を派遣するが、海外派兵の中核部隊である中央即応連隊などの第1陣(約160人)が6日、出発した。期間は11月末までの約10カ月間。
     陸自は、仮設住宅の用地造成やがれき除去、道路整備などを行うとしている。武器は拳銃、小銃、機関銃を携行。すでに参加している医療部隊は丸腰である。
     海外派兵が主任務である中央即応連隊が乗り込み、海外の実戦任務で空中給油機が初めて投入されることは重大である。
    ■自民党 今国会に恒久法案提出へ
     時事通信によると自民党は5日、「一般法(恒久法)に関するプロジェクトチーム」(中谷元座長)の初会合を開き、月末をめどに恒久法案を取りまとめることを決めた。武器使用基準の緩和などを議論し、単独で今国会への提出をめざす。
     また、自民党は4日、インド洋での給油支援活動を復活させる特措法案を議員立法で参院に提出した。法案の内容は、1月15日に失効した新テロ特措法と同様のもの。
    ■「真保守研」が名称変更 「創世日本」がスタート
     保守勢力の再結集を掲げる自民党国会議員を中心とした「真・保守政策研究会」は5日の総会で、会の名称を「創世『日本』」に変更することを決めた。
     安倍晋三会長はあいさつで「誇りある国を創りたいという願いを込めて、創生日本と名称を変更した」(同氏HP)と述べ、研究会にとどまらず、今後は全国運動を展開することが目的だと強調。
     運動方針では、政権奪回や戦後レジームからの脱却をめざすことなどが盛り込まれている。
    (中)
    2010年2月9日号
    ■安保改定50年 民主党政権の安保・核政策
     安保条約は1月19日、改定から50周年を迎えた。鳩山首相は談話を、日米安保協議委員会(両国の外務・防衛閣僚)は共同声明を発表した。
     「談話」は「日米安保体制を中核とする日米同盟」を深化させる両国政府の共同作業の成果を年内に示すことを表明している。
     また、「北朝鮮脅威論」を全面に押し出して「日米安保体制に基づく米軍の(核)抑止力」の役割を強調し、自公政権の安保・核政策を踏襲している。
     「共同声明」では、「この地域(東アジア)における最も重要な共通戦略目標は、日本の安全を保障し、この地域の平和と安定を維持することである」、そのため「日本と米国は、これらの目標を脅かしうる事態に対処する能力を強化し続ける」、さらに「閣僚は、グローバルな文脈における日米同盟の重要性を認識し、さまざまなグローバルな脅威に対処していく上で、緊密に協力していく決意である」ことなどが確認されている。
     自公政権が推進してきた日米軍事同盟の再編・強化路線を継承するものであり、安保政策における民主党と自民党との違いがほとんどないことが改めて明らかになった。
    ■民意は辺野古新基地ノー 政府は腰を据えよ
     名護市長選で辺野古新基地建設を拒否する民意が示された。
     「鳩山政権は示された民意をしっかりと受け止め、迷うことなく、間違いのない決断をしてほしい」(琉球新報社説)。ところが政府は民意をしっかりと受け止めるどころか混迷の度を深めようとしている。民主党は稲嶺氏を推薦した。政府は稲嶺氏の勝利を苦々しく思っているのだろうか。
     政府・与党の「沖縄基地問題検討委員会」の責任者である平野官房長官にいたっては、会見で「一つの民意の答えとしてはあるだろうが、検討していく上では、しん酌しなければいけないという理由はない」(同紙)と述べ、民意を無視する暴言を吐く始末である。
     さらに鳩山首相は記者団に「市長選結果は一つの意思と受け止めるが、ゼロベースで臨む」と語るにとどまり、辺野古案を選択肢から外そうとしない。
     「普天間の『県外・国外』移設を求める機運は選挙結果を受けますます高まっている。県内容認派だった自民、公明も方針転換し、県議会は県外・国外決議を検討している」「沖縄基地を固定化する『抑止論』『地理的優位性』といった言葉はもはや空虚だ」(沖縄タイムス社説)。
    ■自民大会 新綱領採択新憲法2次草案策定へ
     自民党は1月24日の党大会で、05年に改定して以来となる新綱領を採択した。「政策の基本的考え」(7項目)の冒頭に「新憲法の制定」を明記。
     運動方針では「立党50年党大会(05年)で公表した『新憲法草案』を精査・推敲し、早期の憲法改正を実現」するとして、第2次草案の策定を示している。
    ■新テロ特措法失効 海自インド洋から撤退
     新テロ特措法が1月15日失効し、2001年9月のアメリカ同時テロ以降、一時中断をはさんで8年にわたってインド洋で米艦船などに給油支援を行ってきた海上自衛隊が撤退した。
     自公政権は、アフガニスタン領土での武力行使ではないから憲法違反ではないと、給油活動を正当化したが、現に戦争を行っている軍隊の活動を支援したことは明らか。給油支援によって米艦船のアフガン空爆を支え、罪のないアフガンの人々の殺りくに手を貸し、憲法を踏みにじったことは重大である。
     撤退は、憲法違反の派兵に反対する世論と運動の力である。しかし、アフリカ東部ソマリア沖には、まだ陸海空3自衛隊が派兵されている。
    (中)
    2010年1月19日号
    ■大衆運動の強化へ
     「国会改革」法案、「普天間基地」問題
     連立与党3党は年末の28日、幹事長・国会対策委員長会談を開き、官僚答弁の禁止を柱とした「国会審議の活性化のための国会法等の一部改正について(骨子案)」を了承した。3党は通常国会に提出、成立させる方針。
     法案骨子は、@政府参考人制度を廃止して官僚答弁を禁止するA各委員会で官僚らから意見を聞く必要がある場合には、法案審議とは別に「意見聴取会」を開くB内閣法制局長官を「政府特別補佐人」から除外し、国会答弁を禁止するなど。内閣の憲法解釈を担当してきた法制局長官の発言を封じ、憲法解釈を「政治判断」で行うことになれば、いよいよ解釈改憲の拡大につながっていく。
     鳩山首相の首尾一貫しない態度によって普天間基地「移設」問題が混迷を続けていたが、年末の28日に政府・与党の「沖縄基地問題検討委員会」が発足した。「検討委員会」は、1月中に各党の候補地案を持ち寄り、5月をメドに結論を出す方針を確認した。
     事実上の9条改憲につながる「国会改革」法案阻止、普天間撤去・辺野古新基地建設阻止の大衆運動の強化が問われる。
    ■2009年―主な改憲の動き(下)
    〈7月〉
     17日 防衛省、09年度防衛白書発表
     21日 衆院解散
    〈8月〉
     4日 「安全保障と防衛力に関する懇談会」が麻生首相に報告書提出
     30日 総選挙、民主党圧勝・自民党惨敗
    〈9月〉
     16日 第172特別国会召集 鳩山内閣発足(民主・社民・国民新3党連立)
     17日 岡田外相、日米の核密約について外務省内にある資料を調査するよう指示
    〈10月〉
      7日 民主党の小沢幹事長、会見で政府の憲法解釈を担当してきた内閣法制局長官の国会答弁禁止の考えを示す
     20日 政府、安全保障会議で「防衛計画の大綱」の策定を来年末まで先送りする方針を確認
     ゲーツ米国防長官来日、「シュワブ沿岸への移設が唯一の道」と、普天間基地問題で足並みの乱れが続いている鳩山内閣を恫喝
     26日 第173臨時国会召集
    〈11月〉
     4日 鳩山首相、衆院予算委で集団的自衛権について「憲法9条の解釈をこの内閣で、現在のところ変えるつもりはない」と答弁
     平野官房長官、会見で憲法解釈について、過去の内閣法制局長官の答弁にしばられず、政治主導で判断していくとの見解を示す
     13日 オバマ米大統領初来日 首脳会談で鳩山首相、「信頼して」と発言
     16日 民主党役員会、「官僚答弁の禁止」などを柱とする5項目の国会審議活性化案を了承
    〈12月〉
     15日 鳩山内閣の基本政策閣僚委員会、連立3党で作業部会を設置し、普天間基地の「移設先」を再検討することを決める
     26日 鳩山首相、憲法改正について、まず民主党内で議論を再開すると表明
     28日 政府・与党、普天間基地の「移設先」を検討する「沖縄基地問題検討委員会」の初会合で、来年1月中に各党の候補地案を持ち寄って検討に入り、5月をメドに結論を出すことを確認
     与党3党、幹事長・国対委員長会談を開き、民主党が提示した「国会法等の一部改正について(骨子案)」を了承
     29日 民主党の小沢幹事長、与党3党の幹事長・国対委員長の会合で、普天間基地の「移転先」について下地島(沖縄県宮古島市)を検討すべきだとの認識を示す
    (中)