改憲の動きをウオッチング

(2022年9月14日号)

2022/09/14
■防衛省概算要求 軍拡・「戦争する国づくり」へまっしぐら
 5年以内に軍事力の抜本的強化を掲げる岸田政権。年末には「国家安全保障戦略」などの関連3文書の改定を予定している。防衛省は8月31日、2023年度予算概算額として、過去最大となる5兆5947億円を要求した。さらに、具体的な金額を示さない「事項要求」を多数計上。年末の政府の予算編成で決定される軍事費は6兆円台半ばになる見通し。
 防衛省の概算要求は、規模の大きさだけでなく、その中身も大変重大である。NHKは、「防衛力抜本強化」として7つの分野を挙げている。以下、その概略。        
(1)スタンド・オフ・ミサイル
 敵の(対空ミサイルの)射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」を早期に装備化する。射程を大幅に伸ばした陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」の量産を開始する。島しょ防衛に使う「高速滑空弾」の量産を開始する。音速の5倍以上の速さで飛行する極超音速誘導弾の研究開発を進める。これらの装備(兵器)は、相手のミサイル基地などをたたく、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)として使用される。
(2)総合ミサイル防空能力
 「イージス・アショア」の代替策として建造するイージス・システム搭載艦を、弾道ミサイルだけでなく、迎撃がより難しいとされる極超音速滑空兵器にも対応できるよう能力を拡張する。
(3)無人アセット防衛能力
 無人機を早期取得し、攻撃に使用できる無人機を新たに整備する。
(4)領域横断作戦能力
 「宇宙・サイバー・電磁波」の新たな領域で対応するための体制を強化する。
(5)指揮統制・情報関連機能
  「情報戦」に対応できるよう、体制を強化し、AI=人工知能の活用を進める。
(6)機動展開能力
  部隊を迅速に展開する「機動展開能力」の向上を図るため、船舶や輸送機、ヘリコプターを取得する。
(7)持続性・強じん性
 自衛隊の「持続性・強じん性」を高めるため、弾薬の製造態勢を整え、火薬庫の確保を進める。
 これらは、まさに、戦争するための本格的な準備にほかならない。断じて許すことはできない。
■無限の軍拡ループに陥る
 東京新聞の「柳沢協二さんのウォッチ安全保障」を引用させていただく。
 防衛省の概算要求で目に付くのは、長射程ミサイルの取得や既存のミサイルの長射程化といったミサイル戦を意識した項目だ。離島配備のミサイルの射程が延びれば、確実に中国大陸を射程に収める。「敵基地攻撃」とは、相手の本土を攻撃することだ。相手の本土を攻撃すれば、日本本土に反撃が来る。そのため、航空基地の防護策も予定されているが、国民の防護は全く考慮されていない。
 過去最高額の予算要求だが、増額の大半は米国から爆買いした装備のつけ払いと、取得した装備の維持費だ。予算が増えた分だけ「強くなった」と錯覚してはいけない。
 極超音速兵器など今後開発すべき項目も多い。これらが実戦配備されるころには相手はもっと強くなっている。
 こうして、無限の軍拡ループに陥ることになる。国力の限界を見極め、足らざる部分を外交力で補って、何としても戦争を回避する決意がなければ、軍備の重圧で国が滅びる心配がある。
  ※柳沢さんは、元内閣官房副長官補。安倍内閣の集団的自衛権容認を批判。著書に『亡国の集団的自衛権』など多数。
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