改憲の動きをウオッチング

(2022年8月10日号)

2022/08/10
■参院選の結果と新たな改憲の危機
 7月10日投開票の参議院選挙の結果、自民と公明、維新の会、国民民主の「改憲4党」は合わせて93議席を獲得した。非改選を合わせ177議席となり(3分の2は166議席)、改憲発議に必要な3分の2以上の議席を維持した。新たな改憲の危機を迎えたと言える。
 岸田首相は選挙結果を受けた記者会見で、安倍元首相の悲願であった改憲について「思いを受け継ぎ、果たせなかった課題に取り組んでいく」と、早期の改憲実現に向けた強い決意を表明した。また、「今回の選挙で示された民意を受け、秋の臨時国会では与野党で一層活発な議論が行われることを期待する」と強調した。
 岸田首相が言うように、参院選で改憲の民意が示されたのか?選挙で民意を最もよく反映する比例代表の結果をみると、「改憲4党」の絶対得票率(全有権者に占める総得票数の比率)は33・7%で、議席数では3分の2以上を確保しても、全有権者の支持は3分の1にすぎない。ちなみに自民党単独の絶対得票率は17・3%である。
 岸田首相は街頭演説で「憲法改正」にほとんど触れなかったと言われている。これでは「民意を受けた」などと言えたものではない。
 世論と改憲をめぐる状況を見てみよう。共同通信の世論調査では(7月11、12両日実施)、改憲を「急ぐ必要はない」58・4%で、「急ぐべきだ」37・5%を上回っている。「急ぐ必要はない」は無党派層で66・0%、維新支持層でも56・3%。自民支持層では「急ぐ必要はない」48・6%で、「急ぐべきだ」47・0%をわずかであるが上回っている。
 共同通信の世論調査と、選挙で「民意を受けた」とする岸田首相の認識はかけ離れている。多くの国民は改憲について「改憲4党」に白紙委任したわけではない。
 岸田改憲の前には、さらに大きな課題が待ち受けている。岸田首相は記者会見で「(改憲項目の)内容で(国会が発議できる総議員の)3分の2を結集しなければならない」と語っている。具体的な改憲項目をめぐる主張や賛否には不一致がある。
 自民党の改憲4項目が議論のたたき台になるであろうが、自衛隊の9条への明記と緊急事態条項の創設については、「改憲4党」の中で意見が分かれるところである。
 自衛隊の9条への明記と緊急事態条項について、維新は自民案とほぼ同じ提案をしている。
 公明党は参院選公約で9条とは別の項目で自衛隊を明記することについて「引き続き検討を進めていく」と慎重な態度をとっている。
 国民民主は公約で「9条は自衛権の行使の範囲、自衛隊の保持・統制に関するルール、2項との関係の3つの論点から具体的な議論を進める」としている。
 緊急事態条項の創設については、公明と国民民主は、災害時の国会議員の任期延長など「国会機能の維持」を重視する姿勢をとっている。自民提案の国会の権能を奪い、国民の基本的人権を制限する内閣の権限強化については具体的に触れていない。
 以上のように改憲4党の間には改憲条項(改憲の中身)について溝があり、一直線に進む状況にはない。
   憲法施行75年。幾度となく改憲勢力が衆参両院で3分の2議席を占めることがあっても、国民世論と立憲野党の抵抗で改憲発議を許さなかった。
 新たな改憲の危機を迎えている今、学習会(憲法カフェなど)や全国署名運動、宣伝活動(ビラやスタンディング)など、あらゆる手段で改憲反対の世論を大きく盛りあげていかねばならない。(中)