改憲の動きをウオッチング

(2022年6月21日号)

2022/06/21
■政府、「骨太方針」閣議決定 自民党の軍事力強化・大軍拡路線を丸のみ
 「防衛費は保守派の『圧力』で大幅増額を見込む内容に修正された。必要額を積み上げた結果ではなく最初から防衛費増額ありきは受け入れられない。軍事費を特別扱いした戦時中を想起させ、看過できない事態だ」―6月7日に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」に対する6月9日付の琉球新報社説である。
 「骨太方針」は政府が予算編成の指針とする文書であるが、裏付けとなる財源には触れず、軍事費増額ありきの財政方針となっている。
 政府原案に対して、自民党から軍事力増強を求める意見が相次ぎ、「骨太方針」では「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」(東京)という文言が新たに盛り込まれ、原案が書き換えられた。
 また、「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならないと加筆され、参考としてNATO目標の2%も明記された」(東京)。
  軍事費をGDP比2%に倍増すると5兆円規模の予算が必要になる。5兆円で何ができるか。
 東京新聞によれば……
・大学授業料の無償化、児童手当の拡充(中学3年までから高校3年までに延長)、小・中学校の給食無償化の3つを組み合わせても3兆円台
・年金受給権者全員(4,051万人)に、月1万円、年12万円を追加で支給することができる(4兆8612億円)
・19年度の医療費のうち、国民の負担額は5兆1837億円。5兆円は自己負担をほぼゼロにできる
・消費税の税率を10%から8%へと引き下げる財源になる(4兆3146億円)
 軍事費の倍増で国民の暮らしを押しつぶすな。

※安倍元首相の策動
  政府原案が修正されるなど異常な運営になったウラには、安倍元首相の策動があったようだ。
 時事通信によると安倍氏は、派閥の会合で「5年間でGDP比2%を『骨太方針』に明記すべきだ」との考えを示し、日本の防衛費は不十分だとして「2%をはるかに超えていく額が必要になる」とも指摘した。
■改憲にまっしぐら 維新が「緊急事態条項」創設案公表
 日本維新の会は、改憲について、先に公表した9条への自衛隊明記に次いで、新たに「緊急事態条項」を設ける案を追加することを決定した。
 維新の会は、もともと「教育の無償化」「統治機構改革」「憲法裁判所の設置」の3項目の改憲案を公表していた。
 「緊急事態条項」の創設案によると、「外部からの武力攻撃や大規模な自然災害、感染症の大規模なまん延などが起きたときには、内閣が『緊急事態』を宣言できる」としており、宣言のもとで「政府の権限を一時的に強め、国会の法律制定や議決がなくても政府による政令の制定や財政支出を可能にする」としている。
 維新の会は、文字通り9条改憲や緊急事態条項創設の”突撃隊”になった。(中)