改憲の動きをウオッチング

(2021年9月14日号)

2021/09/14
■学術会議会員任命拒否 候補6人と法律家481人が審査請求
  学術会議の会員への任命を菅首相によって拒否された学者6人と481人の法律家が、行政不服審査法に基づく審査請求書を政府に提出した(8月20日)。任命を拒否された6人は今春、任命拒否の根拠が分かる文書などを開示するよう政府に求めたが、「不開示」や「文書不存在」の通知を受けていた。
 ところが、加藤官房長官は、昨年11月の国会で、「杉田官房副長官と内閣府でやりとりした記録を内閣府で管理している」と答弁している。
 請求書は、不開示の理由が説明されていないことなどが違法だとして、不開示の取り消しを求めている。政府が文書を隠蔽している可能性もあり、「元裁判官や元検察官が入る同審査会は公正な目で判断し、早く結論を出すべきである」(東京)。
 審査請求書を提出した後、記者会見した小澤隆一・東京慈恵会医科大学教授は「違法な任命拒否の過程が明らかになることが、民主主義にとって極めて大事だ。審査会の役割に期待したい」と語った(NHK)。
■なぜ? 子ども向けの「防衛白書」
 「『はじめての防衛白書』は、防衛省が毎年作っている防衛白書の内容を小学校高学年以上のみなさんにもわかりやすく説明することを目的として作成しました」と、 防衛省は「はじめての防衛白書」(以下、「子ども向け白書」)をホームページで公開している。
  「憲法と自衛隊の関係」の項を見ると、本体である「防衛白書」と異なる記述も見受けられる。
 たとえば、「子ども向け白書」では、9条と自衛隊の関係について「自衛隊を持つことは、憲法9条の下でも認められています」と書かれているが、「防衛白書」では「憲法上認められると解している」となっており、その違いが生じている。
 さらに、武力行使について「防衛白書」は「紛争が生じた場合にはこれを平和的に解決するために最大限の外交努力を尽くすとともに… …」と記述しているが、「子ども向け白書」には、「外交努力を…… 」などの記述は全く見られず、すぐに「武力を行使することが認められています」としている。 戦前・戦後の歴史や憲法を学びきっていない子どもたちに、わざわざ「子ども向け白書」をつくる必要があったのか。小さい子どものうちから「自衛隊は憲法で認められている」「憲法は武力行使を認めている」などと、刷り込むようなものだ。
  あらためて憲法9条の意義を考えてみる。浦部法穂・神戸大学名誉教授は、その著書『憲法の本』で、「(9条1項の)戦争放棄を現実のものとするため、(2項において)軍備廃止を宣言している点で、徹底した平和主義に立っている。この点に、日本国憲法の平和主義の世界史的な意義があるのである」と説かれている。明快である。世界史的な意義を持つ憲法9条をないがしろにしたり、変えるような企てを許すわけにはいかない。(中)