改憲の動きをウオッチング

(2021年8月24日号)

2021/08/24
■コロナ便乗改憲の動き 感染爆発でロックダウン議論再燃
  自民党の下村政調会長は、記者会見で新型コロナの感染拡大を踏まえ、「緊急事態条項の中に感染症も入れ、衆院選で訴えるべきだ」(日経)と、かねてからの主張を強調した。また、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の効果が疑問視される中、憲法改正を含め、ロックダウン(都市封鎖)を可能とするための法整備について「国会で積極的に議論すべきだ」(朝日)とも強調。
  ロックダウンをめぐっては、感染拡大に歯止めがかからない焦りから全国知事会や政府の基本的対処方針分科会、また自民党内からも検討を求める意見が高まっている。
 こうした動きが「改憲論議の活性化に波及するのかも焦点となる」(産経)。菅首相は「日本でロックダウンという手法は、なじまない」と消極的な態度をとっている。
 かつて(4月)、参院憲法審査会で、自民党と日本維新の会は、「新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、大規模災害時などに国会議員の任期延長や内閣の権限強化を可能にする緊急事態条項を新設する改憲についての議論を求めた」(本紙5月25日号)。
  一方、立憲民主党、共産党などは「コロナ危機に便乗して改憲論議をあおるのは、究極の火事場泥棒だ」と猛反発し、決裁文書の改ざんや県民投票無視の辺野古新基地建設推進、日本学術会議の任命拒否など「違憲行為で国民の自由、権利が奪われている現状で改憲議論が許されるのか」と主張。
 緊急事態条項は、自民党の改憲4項目の1つ。法律で定めるべき事項を内閣が政令で定められる規定や、国会議員の任期を延長できる特例を盛り込んでいる。
  コロナ危機に便乗する改憲の企ては断じて許すわけにいかない。
■東京五輪は終わった だが、菅内閣の支持率は「危険水域」
  菅首相は、国論を二分した東京五輪を強行した。首相は、五輪が始まれば開催に懐疑的だった国内の世論は変わり、内閣支持率上昇、政権浮揚につながると読み、総選挙を乗り切ることを狙った。しかし、メダルラッシュにもかかわらず、首相の目算は狂った。
 五輪は8月8日に終わった。五輪の終盤から終了後にかけて報道各社が実施した世論調査で、内閣支持率は昨年9月の政権発足後の最低を更新した。
 内閣支持率は朝日が28%(不支持53%)、NHKが29%(同52%)、読売が35%(同54%)、JNNが32・6%(同63・5%)。朝日とNHKが政権維持の「危険水域」とされる30%を切った。
 8月11日付の朝日社説は、「(菅首相に)このまま人々の命と暮らしを任せて大丈夫なのか」と警鐘を鳴らし、五輪強行について、「五輪を開催しながら、国民に外出や外食を控えるよう求めることが、矛盾したメッセージになるという自覚もないまま、自らの施策の正当性ばかりをアピールされても、聴く者を得心させることはできまい」と強調している。(中)