改憲の動きをウオッチング

(2021年3月9日号)

2021/03/09
■洋上イージスの稼働日数は126日 陸上イージスの3分の1
 政府は破綻した陸上配備型ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)の代替策として、2021年度予算案策定に先立って「イージス・システム搭載艦」(洋上イージス)2隻の新造を閣議決定した。
 朝日新聞(2月17日付号)によれば陸上イージスは「24時間365日、日本全体をカバーできる」との触れ込みだったが、洋上イージスはその3分の1(126日)しか稼働できない。「陸上イージスより導入効果が激減する」。残りの期間は、整備や訓練に充てざるを得ないという。一般的に大型艦は年間3カ月の整備に加え、5年に1度は半年間の整備が必須で、整備後は乗組員の技量を回復するための訓練期間も欠かせない。
 試算は昨年11月にまとめられていたが、これまで公表されなかった。
  巨額を投じる「搭載艦」は計画を中止し、コロナ対策に振り向けるべきだ。
■軍事予算案が成立すれば、敵基地攻撃能力のなし崩し保有が本格化
 本紙前々号(2月9日付)で、敵基地攻撃能力のなし崩し保有に触れたが補足したい。
 いうまでもないが、ミサイルの発射基地そのものを直接破壊する「敵基地攻撃能力」の保有は、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威を口実に、自民党がたびたび求めてきた。しかし、政府がこれまでその保有に公然と踏み込めなかったのは、憲法上の立場を踏み越えるからである。2021年度予算案に盛られた攻撃武器がそろえば、なし崩し的に敵基地攻撃能力の保有が急速に進む。
  予算案に盛り込まれた敵基地攻撃能力を持つ兵器と予算額を列記する。
・12式地対艦誘導弾の射程延長(射程百数十キロ→約900㌔)、艦艇や戦闘機に搭載する(335億円)
・米国製最新鋭ステルス戦闘機F35Aに搭載し、約500㌔の遠距離から攻撃可能なノルウェー製長距離巡航ミサイル「JSM」の取得(149億円、F35Aは4基で391億円)
・空母から離着陸が可能なF35Bの2機取得(259億円)とF35Bが搭載できるように「いずも」型護衛艦を改修し空母化する(203億円)
・相手国の射程圏外から攻撃できる長射程の巡航ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」の開発
・中露の極超音速滑空兵器や北朝鮮の変則軌道を描く新型ミサイルに対抗するため、米国の高性能センサーを持つ多数の衛星を配置してミサイルの動きを正確に観測する「衛星コンステレーション(星座)」(衛星群構想)への参加(調査研究1億7千万円、高性能センサーの技術開発12億円)
・相手国のレーダーを無力化し、戦闘機による侵入を可能にするスタンド・オフ電子戦機の開発(100億円)
・イージス・システム搭載艦新造の研究調査費(17億円)
 他国の施設破壊は国際法が禁じる先制攻撃だ。先制攻撃する自衛隊の軍隊への変容は断じて許されない。(中)