改憲の動きをウオッチング

改憲の動きをウォッチング(2021年1月19日 合併号)

2021/01/24
■「敵基地攻撃能力」 なし崩し保有 21年度予算に攻撃兵器次々
  破綻した陸上配備型ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策の検討が、途中から敵基地攻撃能力の保有論議にすり替ってしまった。
 菅内閣は予算案決定に先立って12月18日、陸上イージス用に米国から購入を決めたレーダーなどの装備を海上用に転用するイージス・システム搭載艦2隻の新造などを閣議決定し、敵基地攻撃能力の保有に本格的に乗り出す。一方で、国民の反発を恐れて敵基地攻撃能力の保有については「抑止力の強化について引き続き検討を行う」と結論を先送りした。
 だが、2021年度予算案には敵基地攻撃能力を持つ兵器が盛り込まれている。東京新聞によれば、12式地対艦誘導弾の射程延長(射程百数十キロ→約900キロ)、艦艇や戦闘機に搭載する。
 最新鋭ステルス戦闘機F35Aに搭載し、約500キロの遠距離から攻撃可能な長距離巡航ミサイル「JSM」の取得。
 空母から離着陸が可能なF35Bの2機取得とF35Bが搭載できるように「いずも」型護衛艦を改修し、空母化を進める。
 さらに相手国の射程圏外から攻撃できる長射程の巡航ミサイル「スタンドオフミサイル」を国産で開発することも、政府は決定している。
  他国の施設の破壊は国際法が禁じる先制攻撃にほかならない。自衛隊の、海外で武力行使する軍隊への変容は断じて認められない。
 
■2020年―主な改憲の動き(下)
〈7月〉
・2日 沖縄辺野古調査団は、大浦湾軟弱地盤があることから震度1以上の地震があれば護岸が崩壊すると発表
・17日 政府、国家安全保障会議(NSC)で新たなミサイル防衛について協議
・31日 自民党の国防部会と安全保障調査会議は「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」との表現で敵基地攻撃能力保有を求めた
 〈8月〉
・28日 安倍首相、辞意を表明 
〈9月〉
・2日 菅官房長官、自民党総裁選へ立候補表明。安倍政権の基本路線を継承し、改憲も「引き続き挑戦する」と主張
・11日 安倍首相、敵基地攻撃能力の明言は避けたものの「今年末までにあるべき方策を示すよう」、新政権に検討を求める談話を発表
 ・16日 菅内閣発足
〈10月〉
・1日 菅首相、日本学術会議会員候補6人の任命拒否。理由は説明せず
・2日 日本学術会議は「理由」と「速やかな任命」を首相に求める
・13日 自民党の改憲4項目案を条文案にする「起草委員会」初会合
・24日 核兵器禁止条約、批准国・地域が既定の50に達した(2021年1月22日発効)
・28日 菅首相は衆院本会議で任命拒否の理由は「人事に関することで答弁を控える」と明言
〈11月〉
・26日 衆院憲法審査会、国民投票法改定案を初めて実質審議。与党などは今国会成立を断念
〈12月〉
・5日 臨時国会閉会
・9日 自民党、学術会議の政府から独立した新たな組織への移行を提言
・18日 政府は閣議で、「イージス・システム搭載艦」2隻の新造を決定。スタンドオフミサイル開発方針も決めた。敵基地攻撃能力の保有については結論を先送りした
・24日 東京地検、安倍前首相を不起訴処分
・25日 安倍前首相は、衆参議院運営委員会で「桜を見る会」前夜祭をめぐる国会答弁が虚偽であったことを認める。野党は証人喚問を求めさらに追及する
   (中)