改憲の動きをウオッチング

2020年12月22日号

2020/12/29
■自民―改憲原案の作成見送り 国民民主―改憲の論点整理発表
 自民党は、党独自の改憲原案の策定を見送る方針を固めた(時事)。
 憲法改正推進本部(衛藤征士郎本部長)は10月、「憲法改正原案起草委員会」を設置し、9条への自衛隊明記など改憲4項目の改憲原案づくりに取り組んでおり、衛藤氏は「年内にまとめる」と強気な姿勢を示している。
 だが、衛藤氏の性急な動きに党内から異論も出て、「改憲の条文づくりは野党との協議で進めるべきだ」(同)との意見が相次ぎ、衛藤氏が押し切られた形になった。
 他方、国民民主党は12月7日、「憲法改正に向けた論点整理」を発表した。
 論点整理は、「序章」(第2の前文)の新設や地方自治規定の拡充、データ基本権の設定、同性婚容認、緊急事態条項の設定など、憲法全体を見渡す論点を挙げている。
 改憲の本丸である9条については、まず自衛権行使の範囲について、①個別的自衛権に限定、②制限なしの集団的自衛権、③限定された集団的自衛権の3例をあげ、①または③の範囲内で9条2項の改憲の2案を示した。(1)①または③の範囲内で武力行使を認め、武力行使を行うための実力組織(自衛隊)の保持を盛り込む。(2)1項、2項を維持したまま、3項、4項を新設し、①または③の範囲内で武力行使を容認。武力行使のための必要最小限度の戦力の保持と交戦権を認めるとしている。
 世界に誇れる憲法の「平和主義」は跡形もなく投げ捨てられる。

■2020年―主な改憲の動き(上)

〈1月〉
・6日 安倍首相は、年頭記者会見で憲法改定について「憲法改正を私自身の手で成し遂げていくという考えには全く揺らぎはない」「通常国会の憲法審査会の場において、令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」と改憲意欲をみなぎらせた
・10日 河野防衛大臣、護衛艦1隻と哨戒機2機の中東地域への派兵命令
・20日 通常国会開会 安倍首相は施政方針演説で「改憲案を示すのは国会議員の責任ではないか」と強調
・22日 安倍首相、衆院本会議で「桜を見る会」の招待者名簿の再調査に「指示する考えはない」と拒否
・27日 衆院予算委で安倍首相は「自衛隊を憲法に明記し、その正当性を確定することこそ安全保障・国防の根幹だ」と述べる

〈2月〉
・27日 安倍首相、新型コロナ感染症対策本部で私立を含め全国すべての小中学校、高校、特別支援学校に臨時休校を呼びかけた

〈3月〉
・13日 新型コロナ特措法成立 検察庁法改定案を閣議決定
・18日 森友学園への国有地売却をめぐる文書改ざん問題で、18年3月に自死した近畿財務局の男性職員の妻が損害賠償を求めて大阪地裁に提訴

〈4月〉
・7日 コロナ特措法に基づく緊急事態宣言発令。安倍首相は衆院議院運営委員会で新型コロナ感染拡大のような緊急事態に対応するため、「緊急事態条項」を設ける改憲論議を呼びかける
・21日 政府、辺野古軟弱地盤の設計変更を沖縄県に申請

〈5月〉
・18日 政府・与党、検察庁法の今国会成立を断念
・21日 「桜を見る会」前夜祭問題で662人の弁護士らが東京地検に告発状提出

〈6月〉
・15日 河野防衛相、「イージス・アショア」の配備を停止すると発表
・17日 通常国会閉会
(中)