改憲の動きをウオッチング

2020年11月24日号

2020/11/26
■うごめく菅改憲策動
 任命拒否を撤回させ「学問の自由」を守ろう
 安倍前首相は、出身派閥の細田派パーティーに出席したのを皮切りに、議員連盟「創成日本」の会合に出席するなど公の場で活発な活動を始めている。
11月1日、地元山口県入りし、「『安倍政権の間は改正しない』という野党の言い訳は、もう通用しない」(NHK)とし、「憲法について議論すべきだというのが多くの国民の民意。…… そういう機運を高めていくために努力する」と決意のほどを披歴した(同)。
「国民の民意」―多くの国民は改憲を望んでいない。昨年の参院選で改憲勢力は発議に必要な3分の2議席を割り込み、また、政策課題のどの世論調査でも、改憲は極めて少数であることからも明白である。
 「安倍改憲」を引き継ぐ菅首相は「憲法改正に挑戦する」と改憲意欲を示し、違憲・違法の学術会議会員候補6人の任命を拒否し、「学問の自由」を侵害している。
 自民党の憲法改正推進本部(衛藤征士郎本部長)は起草委員会を立ち上げ、年内をめどに改憲原案づくりを推し進めている。こうした衛藤本部長の性急な動きに自民党内から異論も出ている。
そのうえ、公明党の北側副代表は記者会見で、自民党の動きについて「自民党の中の極めて一部の話だ」(毎日)と不快感を示す。
 国民民主党の玉木代表は「自民党や日本維新の会の幹部らと会談を重ね、改憲の議論に臨む認識で一致している」(NHK)。
 菅改憲に向かって様々な策動が強まっている。

 ■学術会議への人事介入 くるくる変わる任命拒否の理由
  衆参予算委員会における任命拒否問題の審議で、菅首相の「答弁を控える」など答弁拒否は42回(朝日)。「首相の説明責任を果たそうとしない姿勢が浮き彫りになった」(同)。
 任命拒否の理由についての答弁はくるくる変わり、その根拠は総崩れとなっている。関係答弁を検証しよう。
・「個別人事に関する答弁は控えたい。総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断した」(10月5日・内閣記者会インタビュー)―意味不明。
・「必ず(学術会議の)推薦の通りに任命しなければならないわけではない」「内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考え」―1983年の中曽根首相答弁の否定。政府が主張する法制局の了解は2年前(18年)のこと。
・「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られる。多様性が大事だ」(10月28日・衆院代表質問)―女性研究者の任命拒否など真逆の人事。
・「以前は学術会議が正式な推薦名簿を出す前に内閣府との間で一定の調整をしていた。今回はそうした調整が働かず、結果として任命に至らなかった者が生じた」(11月5日・参院予算委員会)―大西隆元会長、山極寿一前会長の2人が「調整」「すり合わせ」はなかったと言明。任命拒否を正当化する卑劣極まりない大うそ。
 どこからみても正当な理由のない6人の任命拒否は撤回すべきだ。(中)