改憲の動きをウオッチング

2020年10月13日号

2020/10/17
■菅政権をどう見るか
  コロナの失策や河井案里事件の刑事責任追及などから逃亡するため辞任した安倍首相に代わって菅首相が誕生した。
 菅政権をどう見るか、識者2人の評価を紹介したい。まずは、水島朝穂・早稲田大学教授(憲法)のホームページから。
 「菅政権は、『第3次安倍政権』『安倍首相なき安倍政権』という側面と同時に、実は菅義偉という人物を過少に評価してはならない、その危うさに注意する必要がある。坊ちゃん政治家にはない野性的な政治感覚と、硬軟とりまぜた人心掌握能力(公安警察の活用も)に着目するならば、改憲や右派イデオロギーの過度な強調はむしろ抑制して、竹中平蔵路線復活の『新自由主義政権』に大化けするかもしれない。『自助と規制改革』が首相になって飛び出した最初の言葉であり、かつ携帯電話料金値下げという、首相にしては妙に具体的な各論が突出してくるのもその兆候かもしれない。閣僚の顔ぶれだけから『安倍亜流内閣』と即断してはならない固有の危うさをもっているように思う。今後、しっかり診ていく必要があるだろう」
  次に、前川喜平・元文部科学省事務次官の評価を「東京新聞」から。
 「居抜き内閣と言われるように安倍内閣をそのままという印象。官邸主導は前政権よりも強まる。官僚は『菅さんににらまれないように』としんどい思いをすることになるだろう」「一部では、『説明能力に長ける』と評価しているが、そうではない。質問をかわすのが、極めてうまい。自信満々にしっかり答弁しているように感じても、実はごまかしで、まったく説明責任を果たしていないことが多々あった」(安倍一強の長期政権は、「官邸官僚」と呼ばれる首相の秘書官や補佐官たちの支えもあった)「官邸官僚の中で経産省出身者の地位が低下するなどの変化はあるかもしれないが、官邸官僚を駆使する手法は変わらないだろう」

■安倍氏の実弟・岸信夫氏が防衛大臣 「敵基地攻撃」路線継承
 安倍前首相は退任直前(9月11日)談話を発表し、「敵基地攻撃能力」を念頭に、新政権に議論を促し、「今年末までにあるべき方策を示す」よう指示した。
  菅首相は、安倍前首相の実弟・岸信夫氏を防衛大臣に任命。組閣後、岸防衛相に「敵基地攻撃能力保有」を含む新たな安全保障政策を年末までに策定するよう指示した。
 岸防衛相は、記者会見で「敵基地攻撃能力」の是非を問われ、「わが国を守るため必要な能力は確保しないといけない」「(米国と)役割任務の確認も必要だ」と述べた(日経)。

■改憲問題新たな局面 9条の会声明 「敵基地攻撃」の強行許さない
  9条の会は9月23日、「安倍政権の終わりと改憲問題の新たな局面を迎えて」との声明を発表。
  声明は、全国の市民のねばり強い行動と立憲野党の頑張りが安倍首相の念願である明文改憲の策動を押しとどめ、首相の公約を事実上挫折に追い込んだと強調。また、モリ・カケ・桜などの政治の私物化への怒りが政権を追い詰めた要因であると指摘。
  誕生した菅政権は「安倍政権の政治の継承」を掲げ、「憲法改正にしっかり取り組む」と安倍改憲の完遂を掲げている。菅政権が狙っている「敵基地攻撃能力」の保有は、「自衛隊が米軍とともに海外で戦争する軍隊になることをめざすものであり、9条を破壊する許すことのできない暴挙だ」と厳しく批判している。
 声明は、「安倍改憲の強行を阻んだ市民の力に確信をもって、改憲発議阻止の署名に取り組もう。敵基地攻撃能力保持という9条の破壊を許さない、という声をあげよう」と呼びかけている。(中)