改憲の動きをウオッチング

2020年9月8日号

2020/09/15
■首相の「8・15式辞」から「歴史と向き合う」消える
代わって「積極的平和主義」が登場
  アジア・太平洋戦争の敗北から75年。安倍首相は、全国戦没者追悼式の式辞で、「第2次政権発足以降は毎年盛り込んでいた『歴史と向き合う』という趣旨の内容を初めて削った」(東京新聞)。首相は、2007年の第1次政権時にはアジア諸国への加害や反省を表明していたが、12年の第2次政権に復帰してからは触れなくなった。それでも、「歴史と向き合う」など「歴史」に言及してきた。しかし、今年はそれも削除されている。
 代わって安倍政権の外交・安保の基本方針である「積極的平和主義」の言葉が初めて使われた。
 首相は、施政方針演説で、「積極的平和主義」の項目を設け、「国家安全保障戦略を貫く基本思想」と言明した(14年1月の施政方針演説)。安倍政権は、「積極的平和主義」の方針に沿って集団的自衛権の行使を認める戦争法の成立を強行した(15年)。
  安倍政権が、これまで「推し進めた日米の軍事的一体化や、自衛隊の海外派遣の拡大路線を、正当化するための根拠として用いてきた言葉だ」(同)。「平和」という言葉が使われているものの、その実態は憲法の平和主義をかなぐり捨て、軍事力の行使をいとわない安全保障戦略にほかならない。
  アジア・太平洋戦争への反省を欠いた「8・15式辞」は、安倍首相の歴史認識をあらわにしたものだ。追悼式の式辞に安全保障戦略関連の言葉が入るのは異例である。安倍9条改憲策動を断じて許してはならない。
 「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」(憲法前文)。75年前の誓いを決して忘れてはならない。

■自民・安倍政権 野党の憲法53条に基づく臨時国会開催要求拒否
  憲法53条は、国会閉会中における行政権の濫用を防止する目的で、一定数の議員の要求により国会が自主的に集会する制度を設定したものである(「立憲デモクラシーの会」見解)。
  「立憲デモクラシーの会」は8月13日、憲法53条に基づく野党の臨時国会開催要求に応じていない問題について「安倍内閣の度重なる憲法53条違反に関する見解」を発表した。
  「見解」は、安倍首相が閉会中審査に姿を見せず、記者会見もまともに開かず、臨時国会開催にさえ応じない、「これは、主権者たる国民に対する説明責任を徹底して回避していると言わざるをえない」と厳しく批判している。
 「2015年と17年につづいて20年にもまた、このような憲法違反が常態的に繰り返されようとする事態は看過できない」と強調し、こうした中で「憲法上重大な疑義のある『敵基地攻撃能力』が政権・与党内で軽々しく論議されていることも、現政権の姿勢を示すものと言える」と強調。
  「見解」は、「これ以上、立憲主義や議会制民主主義を冒瀆することを許してはならない」と結んでいる。(中)