改憲の動きをウオッチング

(2024年1月24日号)

2024/01/24
■「平和国家」の理念を投げ捨てる「死の商人国家」への道 殺傷兵器輸出解禁は許されない
 「平和国家である日本がつくった武器で人が死ぬのはおかしい。というのが、世の中の大多数の意見だったはずです」。2014年に安倍政権が廃止した武器輸出3原則は「戦争放棄や戦力の不保持を定めた憲法9条の具体化したものと理解されてきたと思います」と、青井未帆・学習院大教授(憲法学)は朝日のインタビューで語っている。
 「武器輸出3原則」を廃止した安倍政権は2014年、「防衛装備移転3原則」とその「運営方針」(以下「3原則」という)を決定し、憲法に基づき武器輸出を原則禁止していた「武器輸出3原則」を180度転換した。 自民、公明両党は、武器輸出の大幅な拡大に向けて、「3原則」の見直しを協議し、政府に提言した。政府は国民への説明もなく、国会を通さずに12月22日、「3原則」の改定を強行した。武器輸出政策を大幅に転換し、ミサイルや弾薬など殺傷能力のある武器輸出を解禁した。
《主な改定内容》
•ライセンス生産品(外国企業から許可を得て日本国内で製造するもの)をライセンス元の国への輸出を可能にする(現在米国や英国8カ国の79品目。迎撃ミサイルや大砲、弾薬菜など含む)
•5類型(救護、輸送、警戒、監視、掃海)に関わる武器の輸出は「本来業務」や「自己防護」に必要なら殺傷兵器も搭載できる
•「被戦略国」へ非殺傷武器の輸出を可能にする
•国際共同開発品の第三国への部品や技術の直接輸出を可能にする(日英伊で共同開発する次期戦闘機を想定している。自民党は今後の自公協議で完成品の輸出も可能にしようとしている)
 憲法の平和主義にのっとり国際紛争を助長しないとした「平和国家」の理念を投げ捨てるものである。岸田内閣の支持率が落ちるところまで落ち込み、「政治とカネ」問題で大揺れに揺れている自民党政治を終わりにしなければならない。
■岸田首相(自民党総裁)の改憲執念
  「憲法改正の実現に向けた最大限の取組も必要です。自民党総裁として申し上げれば、自分の総裁任期中に(9月)改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えています。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります」(官邸ホームページ)。
 岸田首相(自民党総裁)の年頭記者会見における改憲に関わる冒頭発言である。ちなみに、記者からの質問はゼロだった。
 言うまでもないが、通常国会で改憲案を条例化しなければ総裁任期中の改憲実現は極めて困難であろう。ただ、「任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはない」と繰り返されても、自民党の内部でさえ本気で受けとめている議員(党員)はいないのではなかろうか。憲法をあまりにも軽くあしらう首相にその資格はない。
(中)