改憲の動きをウオッチング

(2023年7月12日号)

2023/07/12
■武器輸出国にならない 憲法で平和主義を掲げる国の根幹
 武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転3原則」(武器輸出)をめぐり、自民、公明両党が要件緩和の議論を進めているが、政府は「殺傷能力のある武器輸出は、現行ルールでも可能」という「新解釈」を示した。現行ルールに明確な禁止条項がないことを根拠としている。
 「武器」は輸出できないのが従来の解釈だったが、武器輸出を解禁すれば、戦後、日本が積み上げてきた政策の大転換になる。
 歴代政府は、憲法の平和主義に基づいて輸出を原則禁じる「武器輸出禁止3原則」を1970年代までに確立。その後、例外措置の積み上げを受け、安倍政権が輸出を一部容認する現行ルール(「防衛装備移転3原則」)に変更した。詳細を定めた「運用方針」で輸出を認めるのは、国際共同開発・生産を除き、「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5類型に限定している。
 野党は「輸出できない立場を取ってきたはずで、なし崩し的に拡大しようとしている」と指摘。
 学習院大の青井美帆教授(憲法学)は、「日本が長年採用してきた武器輸出3原則は、戦争を放棄し世界平和を願う平和主義を掲げる憲法を踏まえ、国会審議を積み重ね、『日本製の武器が人を殺すのに加担するのはおかしい』との国民の声を受けてできた。装備移転3原則への変更後、何年も経って『殺傷武器の輸出も禁じられていない』との『新解釈』が出てきたのは、国会審議を経ず政府や与党が密室協議で決めたからだ。小手先の解釈変更で殺傷武器の輸出を認めることは到底許されない」(東京)と強調した。
■岸田首相 改憲目標は来年9月
  6月21日、岸田首相は記者会見で、改憲の目標時期を問われ、「自民党総裁任期の9月までの実現に向けて取り組む」(共同)の構えを明確に示した。首相の改憲スケジュールの発言については、自民党内で、来年の9月を想定したものではないと指摘する意見もあった。
■維新、国民が改憲条文案 緊急事態下で衆院解散や国会閉会禁止
  維新の会と国民民主党、衆院会派「有志の会」は6月19日、「緊急事態」を理由に国会の閉会と解散を禁止する改憲条文案を発表した。
 条文案は「緊急事態」を①武力攻撃、②テロや内乱、③自然災害、④感染症のまん延、⑤その他と規定している。3会派は3月、国会議員の任期を6カ月延長できる改憲条文案も発表している。
■内閣支持率 軒並み急落
  報道各社の世論調査で岸田内閣の支持率が軒並み下落している。
《時事》支持35・1%(−3・1)、不支持35・0%(+3・2)
《毎日》支持33%(−12)、不支持58%(+12)
《共同》支持40・8%(−6・2)、不支持41・6(+5・7)
《朝日》支持42%(−4)、不支持46%(+4)
《読売》支持41%(−15)、不支持44%(+11)
《日経》39%(−8)、不支持51%(+7) (中)