改憲の動きをウオッチング

(2022年12月14日号) 

2022/12/14
■わずか4回だけ 安保政策大転換 敵基地攻撃能力不可欠 有識者会議
  軍事力の強化を検討する政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は11月22日、敵基地攻撃能力(「反撃能力」)の保有や増税を求める報告書を岸田首相に提出した。政府与党は、報告書を踏まえ年末に予定している「国家安全保障戦略」など安保関連3文書改定の協議を進める。
 戦後安保政策の大転換を図る内容にもかかわらず会合はわずか4回だけ。反対意見は出なかったというからメンバーは政府のお友達だけだったのか。
 報告書は、「日本が置かれている安全保障環境は非常に厳しく『待ったなし』の状況にある」と指摘し、「中途半端な対応ではなく」「5年以内に抜本的に強化する」と強調。歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(「反撃能力」)の保有について、「周辺国などが核ミサイル能力を質・量の面で急速に増強し、特に変則軌道や極超音速のミサイルを配備している」とし、日本の抑止力を維持、向上させるためには「反撃能力の保有と増強が不可欠だ」と断定した。
 その際、「国産のスタンド・オフ・ミサイルの改良などや外国製のミサイルの購入により、今後5年を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべきだ」と求めている。
 報告書は、軍事力の強化の財源について「国を守るのは国民全体の課題であり、国民全体の協力が不可欠である」「幅広い税目による負担が必要」として増税を求めた。
 報告書には、武器輸出について「防衛装備移転3原則および同運用指針などによる制約をできる限り取り除き、日本の優れた装備品などを積極的に他国に移転できるようにする」とある。政府は「防衛装備移転3原則」を見直し、殺傷能力を持つ武器の輸出を検討している。
  また、「政府と大学、民間が一体となって、防衛力の強化にもつながる研究開発を進めるための仕組みづくりに早急に取り組むべきだ」として、軍学共同体制づくりを主張している。
■「憲法9条、完全な幻に」=阪田雅裕元内閣法制局長官に聞く(時事通信より引用―要旨)
 ―反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に向けて政府・与党の議論が進んでいる。
 敵基地攻撃ができるかどうかの議論は非常に古い議論だ。外国から武力攻撃を受けない限り、自衛隊は武力行使をしないという前提の議論だ。しかし限定的な集団的自衛権行使容認で、海外で武力行使ができるようになった(2015年)。さらに外国を攻撃する反撃能力を持つと専守防衛との関係で説明が難しくなる。
 ―憲法9条との関係は。
 これまでは専守防衛で、日本を守るための軍備しか持たないと説明してきた。しかし、集団的自衛権、反撃能力と外国に対する攻撃もできるようになると、憲法9条が完全に幻になって、規範性がほぼ無くなる。
 ―政府は抑止力のために反撃能力保有が必要だと主張している。
 日米同盟で攻撃力は米軍が担うため、専守防衛のわが国は能力を持たな
いと表明していた。
 ―先制攻撃とどう区別するのか。攻撃の着手を見極めることは難しい。
専守防衛で、わが国に飛来するものを防ぐというのなら問題はない。しかし敵基地を攻撃するというのはまさに戦争だと認識する一種の表明だ。
 ―政府は限定的な集団的自衛権行使の「存立危機事態」でも反撃能力は行使できるとの立場だ。
 集団的自衛権の行使は、まさに自国防衛ではない。他国支援、戦争をしている他国への支援だ。反撃とは違う。(中)