新社会兵庫ナウ

水脈(2022年9月14日号)

2022/09/14
 ベビーカーを専用座席に固定してバスに乗っていたら、男性が「邪魔だ、畳め、このブタ!」と怒鳴り、ベビーカーを蹴った。このSNS投稿からひと月余▼国交省は2013年、「折りたたむことを一律に求めるのは子どもの安全面で困難」として、公共交通機関でベビーカーを折りたたまずに使用することを認めている。20年には2人乗りベビーカーも対象に加えた。周囲に理解や配慮を呼びかけるポスターやチラシを作製している。それでも「バスでベビーカー畳まずスマホしている母親最悪」「常識のない母親もいる」等の声が途切れない▼一人でこどもを抱えて荷物を持ち、バスや電車で移動する経験をした者はその状態がとても不安定で危険であるとわかる。通勤途上の保育園の送迎など否応なく混雑する時間帯なら、なおさらだ▼30年近く前に訪問した北欧3国では、バスや電車に車いす、ベビーカー、自転車が畳まず乗車していた。車両も乗降しやすい構造で、スペースの確保だけでなく、車いすやベビーカー利用者を自然にサポートする周囲の乗客の姿があった▼日本では非難は母親に集中。車内では関わりを避ける人が多い。根っこにある性や障がいへの差別感は、こんな日常に顔を出す。