新社会兵庫ナウ

おんなの目(2021年5月25日号)

2021/05/25
「NPO花たば」17年
 
 「定年を待たずに退職してでもやりたいことがある。手伝って」―。友に言われてNPO設立に関り、17年になる。
 灘区でろっこう医療生協の土地を借り、高齢者共同住宅コミュニティハウス花たば竣工にこぎつけたのは2008年末。NPO設立から4年かかったが、「どんなコンセプトを持つ住宅にするのか」にこだわった。北欧の福祉に触れて、○○だからという枠にとらわれることなく、高齢者、認知症であっても、人間らしい日々を「たたかいとったのよ」というデンマークの人々の運動が刺激になった。職場時代、共に労働組合運動にとりくんできた私たちだが、生涯を通じて人間として幸せに生きるためにできることを考えさせられる刺激だった。
 「いつでも一人になれる、いつでも誰かに会える、いつでも誰かにまかせられる」家は(途中、原油価格高騰で銀行融資も受けたが)、住宅のコンセプトを理解して、建築前から入居を申し込んでくれた方の入居一時金、個人からの借り受け金(60人を超える方々から8千万円余)を資金に建設することができた。満室で運営できるようになった現在も多くの方の協力で支えられている。
 デンマークの現役世代は高い組織率を誇る労働組合で闘う。政治に対しては老若男女が高い税率で納税しているのだから使い方について選挙を通して厳しいチェックをする。「人こそ資源だ」と、私の親世代にあたる人々が、徹底した応能負担で財政を支えるかわりに、教育、医療、社会保障制度は所得に関係なく無料にと築いてきた仕組みが人々の生活基盤を支える。
 実際に住宅運営に関わってみると、社会基盤がぜい弱な日本では、私たちのようなNPOの活動は厳しいことの連続だ。住宅も含め地域とつながる支援活動も拠点場所や人件費の確保など資金繰りがついて回る。要請が多いゴミ出しサポートは昨年ようやく助成金を受けることができたが、チラシや講演会等に使えても、実務に当たるコーディネーターの人件費には使えないので、「持ち出し」で継続している。ただただ、人と繋がる活動だからだ。
 隣接するろっこう医療生協本部ビルの建替え計画が議論されている。コミュニティハウスにとっては壁1枚隣の工事だ。入居者の健康問題、自前の厨房設備新設のための費用確保と難題ばかりで頭が痛い。それでも人生の先輩(入居者)や地域の人に教えられる、社会を学ぶ場でもある「NPO花たば」を次世代に引き継ぐ努力を続けたい。(岡粼宏美)