新社会兵庫ナウ

若者のひろば(2021年4月27日号)

2021/04/27
詐欺天国、日本
 巧みに2017年、高校の後輩から「リターンの良い仮想通貨の投資案件Aがある」と話があった。子どもたちも成人し、教育費がかからなくなった分、少し投資でもしてみようかという気になり、100万円預けることにした。2017年は仮想通貨バブルの年で、いち早く知識を得ようとセミナーに参加し、将来の経済のことがわかった気になっていた。
 2018年に入ると、コインチェックという会社の仮想通貨が流出し、仮想通貨関連の信頼が根幹から揺らぎ、仮想通貨の価格は2020年まで低迷期を向かえ、投資案件Aも軌道に乗らず、預けた100万円は帰ってこない事態になった。その間にも、「B案件があるよ」「C案件があるよ」と、スーツを着た自称投資家は巧みに煽ってきた。結局すべて詐欺案件で、どれ一つ軌道に乗った事例はない。「アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書」という本を買うと「ピラミッドスキーム」「ポンジスキーム」という詐欺の手口が解説されていた。もっと早く気づいていれば……。美味しい話は無いということを身をもって知ったのである。
 さて、私のような被害者は全国に数百人、数千人といる。今はメール、LINEなど一度に多くの情報を同時に送れ、コロナ禍で普及したズームという相互方向で意思疎通できるツールを活用すれば、オンラインでのセミナーなどが可能である。詐欺師はせっせと毎日のようにポンジスキームで魚を釣っている。この間、お金は戻ってこないにしても、被害者を拡大させてはならないという正義感が芽生え、集団訴訟に参加することにした。そこで詐欺案件に強い弁護士、詐欺師を理論的に追い詰めていく元被害者(仮称、黒鷺さん)など、多くの方々と知り合いになった。黒鷺さんは「被害者が勉強して努力しないとお金は返ってこない」、「国はタンス預金などを吐かせて、詐欺案件に投資させることをあながち黙認しているのではないか。詐欺師が金を使うと経済が回るからね」と深いコメントをされる。
 仕事上、住民に約束したことをできなくなった経験を振り返ると、自分も詐欺師だったのかなと反省することもある。反省するならまだマシだが、「記憶にございません」とうそぶく輩もいるから厄介である。週刊誌(『週刊文春』)が報じなければ国会で堂々と嘘がまかり通っていたということも今年3月の国会審議であった。国民を欺き、行政を歪め、高額な接待を受けてきた政治家、公務員も詐欺師のレッテルを貼ってあげても良いだろう。資本主義社会にどっぷりと浸かった日本人は欲望の塊で、今後も詐欺被害は無くなることはないだろう。しかし、投票に行くことで詐欺師が行う政(まつりごと)を変えることはできる。(T・K)