新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ(2021年2月9日号)

2021/02/09
不当解雇に泣き寝入りせず
 加古郡稲美町にある小さな運送会社、F興業で働く従業員の7人は、賃金明細の不透明さなどの改善を求めてはりまユニオンに加入していたが、その7人が2019年7月にユニオンを脱退した。その後、脱退の首謀者であるKが、会社の経営が悪化しているので自分が社長に就任して経営の立て直しを図りたいと出てきた。そして実施されたのが、給与の見直しと手当の減額だった。
組合員であった5人は日頃からKに対しては、不満があって信頼関係はなく、社長を含めた他の人たちも表面ではKに同調していたがKの人間性に不満を口にしていた。
 2020年3月にKが社長に就任したことで、5人が猛反発。その後、Kは4月に社長を辞任したが、Kは5人に恨みを持ち、排除の機会を待っていた。その機会が訪れたのが、6月にT兄弟が手当を巡って現社長と言い合いになった時だ。感情的になりつい暴言が出てしまった。これを理由にKと委任弁護士がT兄弟に解雇を通告してきた。さらに、給与の引き下げに不満を持ちKと対立していたHさんにも、取引先でKの悪口を言ったことが会社批判になるとして解雇通告が行われた。
 解雇された3人は、このまま解雇を認めることはできない、Kと弁護士に反撃をしたい、とユニオンに相談をしてきた。
 ユニオンも3人の気持ちを大切にし、解雇撤回を求めて団体交渉を申し入れたが、会社側は団体交渉を拒否。この対応に対し、はりまユニオンは県下のユニオン組合員の支援を受けて抗議行動を行う一方、労働審判に訴える準備を進め、最終的な判断として労働審判委員会で争うこととした。
 労働審判委員会は3回で終了。審判で出された内容は、解雇は無効で6ヶ月間の給与補償。3人はこれを了承したが、会社側は補償額にクレームは付けず持ち帰って検討するとなって物別れになり、最終審議となった。会社側は、解雇は有効と主張しながらも、異議申し立てはしなかったので審判は確定し、12月に3人に解決金が支払われた。
 3人は、解雇されて収入も途絶え、家族を支えることは大変だった。「裁判して勝てるの?ユニオンは信用できるの?」と家族の間もギクシャクしたが、このまま泣き寝入りはしたくない、という気持ちがたたかいの勝利に結びついた。
 岩本義久(はりまユニオン書記長)