新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ(2020年12月8日号)

2020/12/16
労働者から信頼される労働基準監督署に
 以前、「ダンダリン」という労働基準監督官をモデルにしたドラマがあった。ドラマを見ながら、「こんな監督官いないよなぁ」と思いつつ、必死になって企業の不法行為を暴く姿に、熱く、胸がすく思いで見ていた。
確かに以前の監督官は、結構人情に厚く、労働組合と協力して、労働者の権利侵害に対する救済に奮闘する監督官もたくさんいた。そんな当時は、労働運動が活発で労使紛争もたびたび起きていたし、労働組合も労働基準監督署を利用する機会が多くあった。
 ところが最近は、企業の方に様々な法律の抜け穴について指南する監督官が増えているようだ。労基法にたくさんの抜け穴(例外規定)が作られているからでもある。さらに、行革によって監督官の人員削減が続き、1人が抱える事業所数は莫大で、1社への定期巡回監督は30年に1回しかできないと言われている。
 そうした中で、今回、問題が起きた。グループホームで働くスタッフは、12時間1人勤務の2交代制であった。ところが、賃金は1勤務につき8時間分しか支払われないことから、ユニオンで交渉を申し入れた。同時に、監督署にも申告して受理されたが、監督官から「ユニオンで一本化して解決してはどうか」「ユニオンの方が詳しい」などと言って、監督署としての調査や是正指導を怠ったのである。
 そうした中で、コミュニティ・ユニオン全国ネットが毎年12月に行う厚労省交渉の要望事項にこの問題を取り上げてもらうとともに、ひょうご労働法律センターなどと共に行っている監督署交渉で、当該監督署をこの問題で追及した。本省から労働局へ、そして監督署に連絡が入っていたのであろう。交渉には労働局の特別監督官が出席した。
 団塊の世代が退職し、若い新人監督官が増えている中でのトラブルである。頭でっかちな監督官ほど、「中立だ」「労働者の見方ではない」ということを口にする。しかし、監督官は、労基法違反を取り締まる司法警察職員である。労基法に違反するのは、労働者ではなく使用者だ。おのずと監督官は、労働者の味方でなければならない。
 弱い労働者に寄り添い、労働者から信頼される監督署であってほしい。
 塚原久雄(武庫川ユニオン書記長)