新社会兵庫ナウ

私の主張(2020年10月27日号)

2020/11/01
日本の防衛政策と「敵基地反撃能力」論を考える

1.イージス・アショアの断念はなぜ?
 イージス・アショアが断念された背景には、秋田や山口両県の住民の反対行動があっただけではない。ミサイル打ち上げに使うブースターの演習場内落下・回収の予測が覆り、どうしても演習場地域外に落下してしまう。それを避けるための改良施策も期間、資金のめどがつかないなどが取り沙汰されている。
 防衛省ではイージス・アショアの代替案としては、高価なイージス艦の購入ではなく、洋上型システムを考えているようである。しかし、実際にはイージス艦でも一定の高度の従来型軌道のミサイルには対応できるが、中国や北朝鮮が保持している変則軌道や低空超高速のミサイルには対応できないと言われており、多数の小型衛星を打ち上げ、多数のミサイルを追尾する体制の構築に注力していると言われている。また、アメリカは対露戦略の一環として欧州に配備している中距離ミサイルの配備をアジアで進めようとしている。

2.憲法違反の敵基地反撃能力論
 これまで政府は敵基地攻撃について、「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御する手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」として合憲との見解を持っていたが、実際には反撃能力をもつ兵器の保持には抑制的で、攻撃は米軍に委ねるというものであった。さらに周辺国(ロシア、中国、朝鮮民主主義人民共和国)が日本を射程に入れた中距離ミサイルを多数保持していることは事実だが、今、急に言い出す問題ではない。イージス・アショアが断念されたことで、ミサイル防衛の穴を埋めるというもっともらしい屁理屈が一つ、そして北朝鮮のミサイル発射を格好の材料にして危機感を煽り立てたことによってミサイル恐怖意識を植え付けたという分析によっていると思われる。もちろん周知のように、主仮想敵国はいうまでもなく北朝鮮ではなく中国である。

3.平和を求めるアジア人民の連帯
 「矛盾」という言葉の成り立ちからもわかるように、どのような盾をも貫く矛と、どのような矛でも破れない盾との論理は軍事戦略上の宿命のようなものである。ロシアが、北朝鮮が、中国が新たな矛を開発したから、これに負けずにこちらも強い盾を造ろう、こちらも負けずに新たな矛をつくろうという危険でかつ愚劣極まりないイタチごっこから脱却しなければならない。東北アジアの非核、軍縮の協議を求めるための運動、憲法の謳う「世界の(この場合にはアジア諸国の)平和を求める人民の良識に依拠した」国際的な連帯が求められているのである。

4.「防衛大綱」に見る日本の防衛政策
 現在の日本の防衛政策の基本は、新しく2018年12月に策定された「防衛政策の大綱」(防衛大綱)に基づいている(紙幅に限りがあるので特徴だけ)。
 大綱策定の趣旨では、①既存の秩序をめぐる不確実性の拡大、すなわち中国の台頭に対する警戒であり、この当時から強調され始めた「積極平和主義」にもとづき、「我が国に侵害を加えることは容易ならざることであると相手に認識させる」に値する軍事力の養成や安保法による集団的自衛権行使可能な体制づくりが進められることとなった、②現代の軍事戦略は宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域に対応するために、これまでの陸海空といった区分をやめ、領域横断(クロスドメイン)の新たな防衛力の構築、③日米同盟の強化と開かれたインド太平洋構想がとくに中国に対抗できる戦略である、と言われている。そして、「防衛力強化にあたっての優先事項」のうち、従来の領域における能力の強化としては、柔軟な運用が可能な短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築(いずも型空母「かが」の改修、F35Bの運用など)、総合ミサイル防空能力として、弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機等の多様化・複雑化する脅威に対し、対処能力を高めるなどがあげられている。

5.過去最高の防衛費を計上
 9月末に発表された防衛予算(概算要求)は、また過去最高の記録を塗り替えた。概算要求の総額は在日米軍駐留負担経費をも含めて5兆4898億円であり、前年比3・3%増である。主なものは、衛星など宇宙関連724億円、サイバー関連357億円、F15戦闘機のスタンド・オフ能力向上213億円、スタンド・オフ電子戦機の開発153億円、弾道ミサイル関連1244億円、継続されている戦闘機の配備ではF35A4機とF35B2機666億円、F2現有戦闘機の後継機種開発に772億円、空母「かが」の改修231億円等となっている。なお、イージス・アショア断念に伴う洋上代替設備(護衛艦などの改修が見込まれている)に関しては、額は示さず「事項要求」となっている。
津野公男(新社会党尼崎総支部委員長)