新社会兵庫ナウ

おんなの目(2020年9月22日号)

2020/09/29
「うぃずコロナ」? 
 マスクを外せない日々が続いています。この数か月、皆さまどのようにお過ごしでしたでしょうか? お過ごしされていますか? こんなに何もできない、何もする必要がない、何もすべきでない日々を、何もしないことに後ろめたさを感じなくていいと思えて過ごしたのは、記憶にある人生始まって以来の事でした。
 学校が、何の準備も予告もなく突然、長い休みになったのも、あんなに賑わっていた街から人が消えたのも、みんなどこに行ったのだろうと思ったのも初めての事でした。
 また、この夏、お盆で帰省されなかった方も多いのではないでしょうか? 私もその一人で、高齢の母を気遣ったこともありますが、何よりも実家の弟たちが近所から何か言われないだろうかと、そんな心配をしたりもしました。いつかニュースで、車のナンバープレートが他県なのは「引っ越したばかり」、「この街に住んでいます」と書いて走る車があったと聞いたことを思い出しました。知らず知らずのうちに、お互いを監視するような社会になるのではないかとドキッとしました。
 さらに様々な集会、大会、楽しみにしていたイベントなども次々に中止になり、そのために準備をしていた私たちの日常がことごとくなくなるという経験をしましたし、それが今も続いています。
 これからは、「新しい生活様式」なのだそうですが、一体どのようなものになるのでしょうか。アベノマスクと共に配られた実践例によりますと、人との間隔を出来るだけ2メートル、会話をするときは可能な限り真正面を避ける、会話をするときマスクの着用などなどと書かれています。確かに感染防止のためにはそうなのでしょう。
 でも、これでは何だか私たち「人」同士が遠い存在になってしまうような気がしてしまいます。私たちが日頃、意思疎通を図る時には、言葉だけでなく、何気ないその表情やアイコンタクト、しぐさなども手伝って、言葉だけだと先鋭化しそうな会話が、穏やかで確かな思いを伝えることができるものになっているように思えます。ある人類学者の研究によりますと、人々が意図していることを伝えるために35%は言葉によって、対してこれら言葉を用いない(non‐verbal)言語が65%を占める、と言われています。さらに、「空気を読む」という独特の習慣は、ある意味、人間社会をスムーズにしてきたのではないでしょうか?
 そう考えますと、「新しい生活様式」でこれから先の私たちの暮らす社会がどのようになり、人と人とのつながりもまた、どうなっていくのでしょうか。仕事も授業もオンラインで、握手もハイタッチもない日常は何だか物足りないですよね。はじけるような笑顔に早く出会いたいものです。
(原和美)