新社会兵庫ナウ

おんなの目(2023年10月11日号)
「人権後進国」日本

2023/10/11
 外国のメディアのおかげで被害者が声を上げることができたことで、ジャニー喜多川の性的虐待がやっと明らかになった。そのことで改めて日本の人権意識の低さが世界に露呈された。問題なのは、そのことにあまり気づいていないのが私も含めた日本人だということだ。
 ジャニーズ問題がキッカケで、映画VTR「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)、BBCドキュメンタリー番組「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」をYouTubeで視聴した。どちらも衝撃的だった。日本での人権無視の様々な出来事が重なって胸が苦しくなった。
 2002年1月アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ紙」が神父ジョン・ゲーガンの児童性的虐待事件(30年間で130人)を暴き、関与した5人の神父を実名で報道。教会が性的虐待を組織的に隠蔽していた事実を実証した。キリスト教を深く信仰する社会のタブーに挑んだスクープだ。映画では記者達があらゆる圧力にも諦めずにその事実を追跡する姿が描かれている。今から20年以上も前の出来事だ。この報道を契機に、全米各地で集団訴訟が相次いで起こされた。
 BBC番組では、ジャーナリストのモビーン・アザーがジャニー喜多川から性的虐待を受けた被害者に話を聞き、そして疑惑や噂があったにもかかわらず、ファン、メディア業界、日本社会が彼を英雄視し続け、その遺産が今も繁栄している驚愕の事実を知って憤慨していた。
 日本のマスメディアの人達はこの映画、ドキュメントを観たのだろうか。30年以上にわたって問題を追及もせず沈黙してきたことは絶対に許されない。何のためのメディアなのか。加害者のやりたい放題の犯罪を赦し、被害者を苦しめ続けてきたことの責任は重大だ。自国で起きている問題を他国から追及してもらって恥ずかしくないのか。2023年「報道の自由度ランキング」180ヶ国・地域中68位。G7の中では最下位。
 9月15日、岸田改造内閣は副大臣26人、政務官28人に2001年制度が始まって以来初めての女性起用ゼロの発表。このような時代錯誤の政治が何十年と脈々と続いてきていることが、今回の性虐待犯罪を長期間野放しにしてきた根幹だと思う。
 人権無視を見て見ぬふりの日本の忖度政治、マスメディア。国連からは何度も人権勧告を示されている。この7月末にも国連ビジネスと人権の作業部会が人権侵害の観点から調査し、ジャニーズ問題だけではなく日本国内の様々な分野に重い課題を示した。しかし政府の反応はない。聞く耳持たずだ。岸田首相はきっと「人権」の意味を知らないのだろう。
 では、教えてあげよう。人権と思いやりは別もの。国連の人権高等弁務官事務所が説明している。「生まれてきた人間すべてに対してその人が能力を発揮できるように、政府はそれを助ける義務がある。その助けを要求する権利が人権。人権は誰にでもある」と。あなたには性被害者はもちろん、日本に住んでいるすべての人の人権を守る義務があるのだ。すぐに実行してください。人権のガラパゴス化から脱却するために。マスメディアは共犯者になるな!声を上げた方々に感謝。
(新原三恵子)