酷暑の夏から秋へと季節は変わる。台風は急回転技で私たちを翻弄し、線状降水帯は大雨を降らす。被害は避けられない実態にある▼9月1日は防災の日。関東大震災から100年になる。死者・行方不明10万人余の大災害。パニックの中、「朝鮮人が井戸に毒を入れた、放火した」等の流言飛語によって多くの朝鮮人が虐殺された歴史と向き合う日だ。追悼式典に小池都知事は今年も出席せず追悼文も送らなかった。松野官房長官にいたっては「記録はない」と歴史を否定▼同じ日、「福田村事件」という映画が封切られた。戦死者の遺骨が故郷へ戻る場面から始まり、流言飛語によって起きた朝鮮人・社会主義者狩り、香川からの行商人まで朝鮮人と思い込まれて自警団に殺される。歴史の隠蔽、差別、群集心理の怖さを知った▼奈良県御所市にある水平社博物館に行く機会があった。人間の尊厳を求めた100年の解放の闘いの歴史の展示。人間同士が差別しあう愚かさを学ぶ。婦人水平社の記録もあり、研究者の講演で第1回大会での宣言文の呼びかけが「兄弟よ」であり、なぜ「兄弟姉妹よ」ではなかったのか、女性は二重三重の差別と圧迫を感じていたのではと指摘されたことが心に残っている。