新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ417
悔しさ残る、納得いかない裁判結果

2023/09/13
 2010年10月31日、自ら命を絶った、河田正義さんの息子の河田明範さん。はりまユニオンにも相談があり、河田正義さんは、(株)手柄食品で働いていた明範さんの自死は会社の働かせ方に原因があるとして労働災害の一連の申請手続きを行い、裁判も起こした。しかし、労働保険審査会の裁定、その処分の取り消しを求める訴訟の大阪地裁、大阪高裁の両判決のいずれもが精神障害の発症や業務の起因性を否定するものであった。
 明憲さんの妻と子どもはこのまま彼の「死」を無駄にしたくないと、「安全配慮義務違反」の損害賠償を請求することにし、姫路地裁に再提訴を行った。
 裁判の争点は、漬物の包装の準備作業の大変さであった。包装の責任者であった河田明範さんは、包装が遅れて出荷遅延が発生したら「罰金」が課せられ、運送代も余分にかかるので「出荷時間厳守」であった。遅延させないためには包装を詰め込むバッカン(プラスチック製の容器)と搬送用の台車の確保が必要不可欠であったが、それらは他部門と取り合いの状態であった。そのため、就業時間内で確保することは不可能であったので2時間前に出勤し、定時後3時間は翌日の包装準備のために居残りをするということが作業の実態であった。その過労のため、河田明範さんは2009年に精神障害を発症し心療内科を受診した。
その後の裁判では、会社は居残りについては、「指示はしていない」と主張し(準備書面)、超勤扱いはできないとした。 被告側の(株)手柄食品は原告の主張に対して全てを否定してきた。労災認定否決後の、地裁・高裁では会社は、いまさら「安全配慮義務違反」の損害賠償請求事件の裁判で争う必要はないと「棄却」を申請した。
 裁判では、原告側の同僚2人と父親が証言した。同僚2人は、早出・居残りを強いられている事実関係を述べ、その事実を会社は知っているが、見て見ない姿勢だったと陳述した。父親が社長に長時間労働を尋ねるとそのことは認めたが、しかし、被告側は証人尋問を拒否し、裁判所も結論は最初から出ているとばかりに請求を「棄却」したのだ。納得のいかない裁判だった。
岩本義久(はりまユニオン書記長)