新社会兵庫ナウ

若者のひろば(2023年8月30日号)
ストライキに憧れる

2023/08/30
 私は、現在40代。もちろん戦争を知らない世代だが、ストライキも知らない世代だ。まがりなりにも労働組合活動には関わり続けてはいるが、ストライキを経験したことも、見たこともないと言える世代である。
 現に、日本のストライキの件数は1970年代をピークに減少傾向がつづく。厚労省の労働争議統計調査によると、最もストライキが多かった年は1974年で、半日以上のストライキが約5,200件、半日未満のストライキが約6,400件もあったそうだ。ところが、2021年は、半日以上のストライキが32件、半日未満のストライキが36件と激減している。
 そんな中、今年7月14日、アメリカの俳優らおよそ16万人が加入する労働組合が、報酬の引き上げやAIの活用に関する規制作りなどを求めて43年ぶりのストライキに突入したという報道が流れた。
 しかし、日本のテレビでの報道は、「俳優らは、撮影だけでなくプロモーションへの参加もできなくなり、日本でのイベントにも影響が出ます」(TBS)、「トム・クルーズも来日できず……ハリウッドで43年ぶりストライキ」(日テレ)といった具合に、ストライキが迷惑な行為と聞こえるような報道が多かったように感じた。その姿はまるで『肉屋を支持する豚』と揶揄するものに見えた。
 なお、このストライキは1ヶ月が経過した現在も継続されていて、年末まで続く可能性もあると言われているが、日本のテレビでは、最初以外は全く報道されていないと感じる。
 先日、労働運動の大先輩とストライキの話になったので、「なぜ、日本ではこんなにもストライキが減ったのか?」と質問をした。すると、「当時、労働運動をしていた自分たちは、これほどまでに資本による反撃、攻撃が強くなるということを予測できていなかった。反省している」と答えてくれた。
 龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は、「フランス、イタリアなどでは以前からストライキが多く、近年は英国や米国、韓国でも賃上げを求めてストライキが増えている。各国で賃金が上がっている背景には労働組合の力がある。ストライキができず、労働環境の向上が滞れば日本の将来はない」と、警鐘を鳴らしている。
 また、ジャーナリストの竹信三恵子氏は、「ストライキの減少は、労働者が要求を伝えるための基本的な権利が行使できていないことの表れ」と危ぶんでいる。
しかし、こうした中でも、全日本国立医療労働組合(全医労)や、靴小売り大手「ABC−MART」のパート従業員、回転ずし「スシロー」のアルバイト従業員などがストライキを行い、賃上げ等の成果を出している。また、百貨店「そごう・西武」の労働組合もストライキ権確立に向けて実施した組合員投票が93%を越える賛成率でストライキ権が確立され、この結果をもって労使交渉を行っている。
 日本でも、再び資本による攻撃を乗り越えて、ストライキによる労使交渉が当たり前になる日は来るのだろうか。
 私はストライキを知らない世代、ストライキに憧れている。
(元井二郎)