新社会兵庫ナウ

おんなの目(2023年8月9日号)
バックラッシュの抵抗

2023/08/09
 バックラッシュが激しくなっている。LGBT法案の審議にあたって猛烈な抵抗があったのは、その典型的なものだ。自民党の稲田朋美議さえ、一貫して夫婦別姓法やLGBT法の成立を目してきたがゆえに、裏切り者と罵倒されていると明かした。
 バックラッシュ勢力はおおむね男性である。彼らは何を恐れているのか。
 ここ数年でマイノリティの人権に関する大きな喜ばしい変化があった。Me Too運動をきっかけとして、今まで沈黙を強いられてきた女性たちが性的暴力に抗議の声を上げた。比較的軽いセクハラにも嫌なものは嫌と言い始めた。プライドパレードは、デモに抵抗感があるという若い人たちにも受け入れられているし、ジャニーズ事務所の問題をきっかけとして、性的暴力の被害者となる男性が実は驚くほど多数存在することも明らかになりつつある。
 さまざまな場面で、確かに空気が変わったのだ。スポーツに取り組む子どもたちを怒鳴ったり殴ったりする監督や、産休を申し出た女性を退職させようとする上司は、まだまだ淘汰されていないだろうが、非難されるべきものという社会的合意が確立した。
 ところが、「社会が変わること」を良しとしない人々がいる。今まで自分の方が明らかに優位に立っていたのに、下にいると思っていた人間たちが権利を主張し、しかもそれが認められる風潮が出てきた。不愉快きわまりない、というわけだ。
 もしその人々がすでに金や権力を持っていたなら、議会や行政に圧力をかけて、可能な限り自分たちの優位が続くような体制を目指すだろう。
しかし、もしその人が金も力も持っていなかったら。いつも不運に見舞われて、自分には何も誇るものがないと思っていたら。SNSで自分と何の接点もない有名人に罵詈雑言を浴びせるかもしれない。カバンの中にナイフを忍ばせて、いつかエラそうにしている女を刺してやると決心しているかもしれない。
 朝日新聞の女性記者が、雑踏の中でいきなり突進してきた男に吹っ飛ばされ、骨折したという経験を書いていた。これは「ぶつかり男」と呼ばれ、珍しくないらしい。小柄な女性ほどターゲットにされる傾向もあるという。男はあっという間に姿を消し、顔を見る暇さえなかったが、彼女は警察に被害届を出した。
 自分より弱い者を選んでターゲットにする心の持ち主は、その人も弱さを抱えているのだろう。
 誰にでも弱さはある。せめて自分の弱さを話せる相手を探してほしい。同じ弱さをもつ仲間がいればなおいい。たとえば収入が少なくてカツカツの生活しかできなくても、自分の特性のゆえにどこへ行っても生きづらくても、それは君が悪いんじゃない。
闘うべき敵は別にいる。(HN)