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コロナ禍で露わになった貧困
安心と笑顔の社会保障ネットワークが講演会
藤田孝典さんが講演

2022/11/09
総会では政府内で準備されている介護保険制度の大改悪も問題視した=10月16日、神戸市中央区
 安心と笑顔の社会保障ネットワーク(菊地憲之代表)は10月16日、中央区文化センターで第7回総会と講演会を開いた。総会では活動報告と社会保障制度の改悪などの情勢を踏まえた活動方針、役員体制などを確認した。講演会では「コロナで露わになった貧困」をテーマにNPO法人ほっとプラス理事の藤田孝典さんが講演。多くの分野での豊富な活動経験を踏まえた貧困問題に関する指摘や社会変革に向けた提言が行われ、藤田さんの問題提起から私たちに何ができるのかを学んだ。
 冒頭、菊地代表は「この3年間は国政選挙がないなかで社会保障制度の大改悪に向けた議論が強まっている。介護保険制度も高齢者医療保険に続いてサービス利用時負担が原則2割に、要介護1、2も介護保険から外されて地域支援事業に移行させる方向など多くの改悪が議論されている。引き上げられる保険料は確実に天引きされ、サービスが利用できない高齢者が増える。反対の声を広げていこう」とあいさつ。
 総会では小林るみ子事務局長が、介護の人手不足などの改善を求める神戸市への要望書の提出や意見交換などの活動経過を報告し、2024年度からの第9期介護事業計画に向けた史上最悪の改悪に対する取り組みの強化を柱とした活動方針を提案した。
 参加者からは「訪問看護ステーションで働いていたが、お金がないので訪問回数を減らすとなっている。もっと高額介護サービス費の限度額という制度を周知すべきだ」などの意見が出された。
 講演では、社会福祉士として生活困窮者への提言や活動を幅広く行っている藤田さんは、賃金水準や非正規雇用者の割合での男女格差などを説明し、日本社会の根本的な課題であり、コロナ禍で明らかになった女性差別の構造を変えることの必要性を強調した。また、コロナ禍での生活苦の拡大を契機に教育、医療、介護、保育、住宅など無償のベーシックサービスを創造しようと提言した。
 講演後には、「明石市が子育て支援で注目されているが、働く保育士は手取りが13万円であることが大きな問題だ。空き家が広がっているが、これらを活用して低廉な公営住宅づくりを進めていくべきではないか」「雇止めになり、介護資格を取ってヘルパーをしているが、生活保護を受けている高齢者の介護を渋るヘルパーもいる。現場と役所窓口とをつないでいくためにも役所窓口の人員増が必要だ」「私はパートのヘルパーで、要介護5の親を介護している。介護報酬が低いので処遇が悪い。1割〜3割とサービス利用負担は高い。どうすればよいのか」などの意見や質問が7人から活発に出された。(憲)