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記録残さねば歴史から消える
戦争孤児の証言を紹介
神戸の戦争孤児の記録を残す会
白井勝彦さん
神戸空襲を記録する会が講演会

2021/09/14
元戦争孤児たちから聞き取った体験を紹介する白井勝彦さん=8月21日、神戸市教育会館
終戦直後の戦争孤児たちの暮らしを示す写真パネルも展示=8月21日

 太平洋戦争末期には日本各地が空襲で大きな被害を受け、多くの子どもたちが親を失った。そのほかにも親の戦死や親との生き別れなど、戦争の影響で孤児になった「戦争孤児」。1948年の旧厚生省の全国孤児一斉調査では、孤児の数は全国で12万3千人を超え、兵庫県は全国で2番目に多い5970人とされている。「浮浪児」とも呼ばれ、その壮絶な体験のゆえにあまり多くは語られてこなかった戦争孤児の実態をもっと知ろうと8月21日、「戦後76年 神戸空襲を記録する会講演会」が神戸市教育会館で開かれ、「神戸の戦争孤児を記録する会」の白井勝彦さんが「神戸の戦争孤児の記録を残すために」と題して講演。戦争孤児たちの証言の一端を紹介した。
 
 講演会では、講演に先立ち、神戸市の旧葺合区で空襲に遭い、孤児となった山田清一郎さんの、「野良犬と呼ばれた子どもの生きざま」と語った生々しい体験談を記録したDVD「いのちの歌」を鑑賞した。
 講師の白井さん自身、父は戦後、旧ソ連軍の捕虜となってウズベキスタンで亡くなり、母も5歳の時に病死し孤児となった経験を持つ。神戸市職員を退職後、2017年に「神戸の戦争孤児の記録を残す会」を発足させ、元孤児たちの体験をまとめた冊子「神戸の戦災孤児たち(証言第1集)」を19年に発行している。
 こうした記録を残すことの意味について、白井さんは「記録に残さなければ歴史の流れの中から消えて無かったことになってしまう」と語った。 また、「戦争が最も弱い子どもたちを犠牲にし、生涯にわたる哀しみを負わせた」、「当時の人たちが子どもたちの人権を尊重したのかということを残したい」とも述べた。
 講演では、学童集団疎開中に孤児となったり、神戸の焼け跡に放り出され「浮浪児」になった人たちの生き抜くための壮絶な日々の暮らしの証言などを紹介。また、当時の行政の戦争孤児たちへの対応や収容保護施設の状況、入所した子どもたちのその後の紹介などもあった。
 そして結びとして、「戦争孤児は、親を失ったときから生活上、様々な苦難が強いられ、今も戦争のことは終わっていない」「この国は、最初に保護すべき子どもたちを放置し、その後、犯罪予備軍として扱った。そのことが、戦争孤児たちの生涯にさらに重い負担を負わせた」「戦争孤児の実態は不明であり、公的機関による調査が望まれる」「証言を記録することは、孤児たちが『生き抜いた証』を残すことでもある」など述べ、講演を締めた。