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明石震災アスベスト
神戸地裁が判決
公務外認定処分の取り消し
地方公務員災害補償基金は控訴

2021/04/27
神戸地裁判決後の記者会見に臨む吉田秀夫明石市議 (左から2人目)=3月26日、神戸市中央区
 阪神・淡路大震災発生時のがれきの収集作業などに従事した際の石綿粉じんばく露により、腹膜中皮腫を発症し2013年に亡くなった明石市の元環境部職員・島谷和則さん(当時49歳、私の元同僚)の遺族が、公務災害と認めなかった地方公務員災害補償基金の判断の取り消しを求めた訴訟で、神戸地裁は3月26日、中皮腫発症との因果関係を認め、「地方公務員災害補償基金の公務外認定処分を取り消す」との判決を言い渡し、原告の主張通り「公務外認定処分の取り消し」を命じた。
 島谷さんは、1991年から明石市職員として、ごみの収集・運搬業務に従事してきた。1995年に発生した阪神・淡路大震災の時には、地震発生直後から災害復旧業務の先頭に立ち、倒壊家屋等から出た震災がれきの収集・運搬業務に従事した。
 判決理由について泉薫裁判長は、「平成7年1月〜平成8年2月までの故島谷さんの業務は、認定基準記載の石綿被ばく露作業と同視できるとまでは言えないが、日常的に石綿粉じんにばく露し得る環境下の業務であって、粉じんの飛散量等の客観的データがないことは、本件震災後の社会状況からやむを得ないことであり、ばく露期間と作業開始から発症までの期間は、いずれも認定基準を満たしており、他の有力な発症原因も認められないことからすれば、腹膜中皮腫の発症と相当因果関係が認められる。本件処分の判断には、本件の個別的事情について、本件震災の影響を正しく評価せず、いまだ確立していない腹膜中皮腫の医学的知見の評価を誤った点で、裁量権の逸脱又は乱用がある。したがって、争点についての原告の主張は理由があり、故島谷さんの腹膜中皮腫の発症が公務に起因するものではないとした本件処分には、その評価を誤った違法があるというべきであり、取り消しを免れない」と判示した。

 しかし、地方公務員災害補償基金は4月9日、神戸地裁判決を不服として大阪高裁に控訴した。このことは、震災発生時の復旧・復興業務に市民のために命を懸けて精一杯取り組んできた事実さえも否定することであり、今回の判決を不服とした基金の姿勢は絶対に許せない。今回の裁判闘争は、基金の災害補償に対する姿勢を根本から問いただすものだ。
 この控訴を受け、これからも遺族を孤立させることなく引き続きしっかりと支えていくとともに、今後、被災現場で働く労働者が安心して復旧・復興作業に従事できるようにするためにも、公務災害認定を勝ち取るまで全力で取り組む。
吉田秀夫(明石市議会議員)