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ひょうごのまちを訪ねて 神戸市須磨区
開発免れ里山が残った 
神戸市が多井畑西地区の里山の保全・活用へ取り組み示す

2021/02/23
多井畑西地区の里山を案内する 中島秀男さん=2月6日
 神戸市須磨区と垂水区にまたがる多井畑(たいのはた)西地区の里山をめぐり、神戸市は昨年7月29日、市長の定例記者会見で「多井畑西地区・里山保全・活用へ〜withコロナ時代の取り組み」(※別掲)を発表。市街化区域とされてきた里山緑地の開発計画(区画整理事業)をやめ、里山の保全に方向転換した。これによって10年ほど前から保全のための取り組みを進めてきた多井畑西区里山保全連絡会の活動が実を結んだことになった。同連絡会の中心を担ってきた中島秀男さん(「憲法を生かす会・垂水」代表)に現地を案内してもらい、これまでの取り組みなどのお話を伺った。【編集部】
 
 求められる保全への今後の具体案
―神戸市の発表はやや唐突な感じだったが、これまでの経緯は?
中島 約72ヘクタールある多井畑西地区のうちの約4割(約29ヘクタール)を所有するUR(都市再生機構)が、6割を所有する地主ら(約90人)と共に19年3月までに区画整理事業組合を結成することを条件にセブン&アイクリエイティブと16年に売買契約を結び、セブン&アイクリエイティブは大型ショッピングセンターの建設を中心とした宅地開発を計画。だが、計画はなかなかまとまらず、昨年4月、神戸市が商業地域への用途変更を認めないとしたためにこの事業から撤退してURとの契約は白紙に戻った。保有土地の処分を急ぎたいURは神戸市に無償で土地を譲渡することになり、神戸市はそれを受け入れて人口減少や「withコロナ時代」も考慮してか、開発はやめてそのまま里山として保全することになった、というのが経過だ。
 大都市の市街化区域に指定されていた里山が保全される例は全国でもめずらしく、その意味でも画期的な神戸市の方向転換だと言えよう。
―多井畑西地区里山保全連絡会としてのこれまでの取り組みは?
 中島 私自身、2013年から神戸地区労垂水地区会議を通して毎年、区長に要望書を提出してきた。14年に連絡会をつくり、その後は他市の見学、関係機関との懇談、現地フィールドワーク、環境団体等の会合や企画への出席、国会議員への要望の持ち込み、県会(黒田一美議員)や神戸市会(小林るみ子、あわはら富夫議員)で質問してもらったりと、いろいろなことを取り組んできた。ただ、これまでは具体的な成果は見えなかった。
―神戸市の発表内容はすばらしいと思うが、これからの課題としては?
 中島 昨年11月6日に住民団体と神戸市都市計画課、須磨区まちづくり課との話し合いが持たれ、今後どう具体化していくかの検討に入った。さらに垂水区役所も話し合いに入る必要があるし、私たちも里山保全のための具体的な提案を行い、実効性のあるものにしていかねばならない。
学者や関係団体、地主・耕作者との連携も重要になってくる。

 ※神戸市が発表した「多井畑西地区・里山保全・活用へ〜withコロナ時代の取り組み」
多井畑西地区の里山
 市街地近郊で豊かな自然が多く残る多井畑西地区で無秩序な開発を抑制し、里山や農地などを保全していくためとして、①生産緑地の維持(市が譲り受けた土地にある生産緑地は、今後も耕作できるよう里道の改修などを行う)、②耕作放棄地の活用(体験農園やハイキングなど都市住民が自然とふれあう交流の場とする)、③生物多様性の保全(希少な動植物の保全・保護活動や外来生物種の防除活動を促進する)、④竹林の適正管理(道路への倒伏や土地の崩落を防ぐなど、防災性を向上する)の4項目を掲げる。