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【学問の自由への政治介入を許すな】
菅首相は速やかに任命を 日本学術会議任命拒否問題

2020/11/01
菅首相の日本学術会議の会員任命拒否に抗議して新社会党県本部は街頭宣伝を行った=10月16日、JR元町駅前

 菅首相の日本学術会議会員任命拒否問題をめぐる波紋が大きく広がっている。法解釈を独断でねじ曲げ、学問の自由を侵害する学術分野への異例の人事介入だったにもかかわらず、6人の学者の任命を拒否した理由をいまだに明らかにしようとしないばかりか、その後の経過のなかで、政権側の説明が変化するとともに、さらに新たな問題も浮かび上がってきたからだ。菅政権の強権的で傲慢な対応への批判や怒りの声は学界にとどまらず他の分野からも日々大きくなっている。日本の民主主義にとっても実に危険だと言わねばならない菅政権の政治姿勢と内実があらわにされてきた。
 日本学術会議の会員は、法によって、推薦されてきた会員候補を首相が任命することになっているが、政府は1983年、「学術会議から推薦された者は拒否しない」と明確な国会答弁をしている。
 だが今回、政府は、任命しない権限も首相にあるとして、菅首相は「法律にもとづき任命した。適法だ」と強弁している。国会にも明らかにせず、安倍政権時代に内閣で法解釈を変更していたというのだ。とんでもない法秩序の破壊である。
 任命を拒否された6人の学者は安倍政権の安保法制などの政策に対して批判的な言動をとってきたことで共通しているが、菅首相は、そのことは任命拒否の理由ではないと明言する一方で、何が理由なのかを明らかにしない。繰り返されるのは、「総合的・俯瞰的」という具体的説明を拒否する言葉だ。それでかえって学術界への圧力を強めることができるとでも考えているかのように。
 さらに重大な問題は、今回の事態をきっかけに、日本学術会議への予算支出や組織のあり方に問題があると、全く別の問題を持ち出して、日本学術会議を行政改革の対象にしてしまうという卑劣な問題のすり替えを行っていることだ。今回の任命拒否は、日本学術会議の変質を目論んだ意図的、戦略的な仕掛けなのか。
 菅首相は、また、「推薦された105人の名簿は見ていない。見たのは99人だ」と言い出したことで、6人の除外に関わった首相以外の人物、杉田和博官房副長官の存在がクローズアップされてきた。元警察官僚で、内閣情報調査室長なども歴任、今は内閣人事局長も兼ねる。公安に関わる元警察官僚が長く内閣の中枢にいて人事権を掌握し、国の人事を判断するという恐怖の権力構造も明るみに出てきたのだ。菅政権の強権的な本性が早くも露呈したということか。国会での追及が待たれる。
 こうした状況のなか、新社会党兵庫県本部は10月16日夕、JR元町駅前で20人が行動に参加して抗議の宣伝行動を行い、菅政権の危険な強権的政治姿勢を批判しながら、菅政権はすみやかに任命拒否を撤回して6人の学者の任命を、と訴えた。