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職場・労働組合の民主主義を
神戸地区春闘らが春闘講演会

2024/04/10
(上)山本昭宏・神戸市外大准教授の講演に学んだ2024春闘講演会、(下)講演する山本昭宏さん=3月22日、神戸市中央区
闘争報告などでも交流
 2024春闘をめぐっては主要大手が軒並み満額回答を出したことが話題を集め、この機運が労働者の7割を占める中小・零細企業の賃上げに波及するのかどうかが注目されるが、こうしたなか、地域から春闘を闘う力と連帯を強めようと、「2024春闘講演会」が3月22日、神戸市内で開かれた。恒例の行事を主催したのは神戸地区春闘共闘会議とひょうご地域労働運動連絡会。「戦後民主主義を歴史から考える 職場・労働組合の民主主義を」と題し、神戸市外国語大学の山本昭宏准教授が講演した。

 開会冒頭、主催者あいさつに立った酒井浩二・尼崎地区労議長は、日本社会を覆う様々な負の課題にふれながら、「改めて春闘とは何か、労働組合の意義と役割は何かが問われている」として、労働組合の闘う姿勢、闘う力の重要性を強調した。
 講演に先立ち、武庫川ユニオン、明石地労協、神戸ワーカーズユニオンから闘争報告が行われた。特徴的だったのは、ユニオンからの報告は、いずれも昨年秋から集団で加入して新たな分会が結成されたこと、人権や人格無視の悪質なパワハラとの闘いでも共通していたことだ。まさに民主主義とは無縁の職場状況が暴き出された。
その後の講演では山本さんはまず、「戦後民主主義とは何か」と話を切り出し、「占領期に進んだ民主化に基づくさまざまな制度や思想の総称」だとして、①平和主義、②直接的民主主義、③平等主義の3つの要素を指摘。
しかし、その民主主義は時代限定的で、2000年代からの新自由主義的心性の浸透のなかで、見た目には終わっているとし、2000年代からの新自由主義による変化に着目した。そのなかで指摘されたのが、現代人の条件としての新自由主義に適応する新たな個人主義だ。そこには社会や人びとの分断もある。
 山本さんは、この個人主義に明るい展望を見出すのは難しいとして、戦後民主主義が遺してきた中から別の可能性としてあげたのが、地域の消費者運動と市民運動であり、それらが有する発展の要素である。
 さらに山本さんは、戦後民主主義から何を引き継げるのかとして、「集団性」と「批判的対話」の2点をあげた。「批判」という言葉は今では「否定」や「攻撃」と同じ意味で使われることが多く、集団の和を乱すものとして捉えられがちで、「批判の否認」は現状の肯定を迫るように今の社会を覆っているとしつつも、参加を通した批判的対話は、自他を少しは変化させ、周囲の関係・環境を変えていく。その営みをもう一度見つめ直すところに戦後民主主義の遺産があると締めくくった。