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2023年統一地方選に向けて

2023/01/18
統一自治体選に向けて
憲法理念を具体化したリアルな政策を
苦しむ市民に政治はどう応える
大阪労働学校・アソシエ講師 鈴田 渉(憲法・政治学)


 新しい年を迎えたものの、国内外の情勢は深刻化するばかりで、先行き不透明、いや今より一層の危機が私たちに降りかかってくるのではないかと危惧する。
 そういう中で4月に統一地方選挙が行われる。自公両党は岸田政権の支持率過去最低ライン横ばい、旧統一教会問題、閣僚の相次ぐ不祥事辞任などの内なる問題、ウクライナ戦争に絡み、エネルギー不安、物価高騰など外的問題で、進むも地獄、引くも地獄で相当な危機感を持っていると予測される。先月の茨城県議選では自民党公認候補が大量に落選した(保守系無所属が自民会派入りで現状維持とは思われる)。
 一方、野党は各種世論調査でも反自民の受け皿になっていない。支持なし層ばかりが増える、こうした状況で統一地方選を迎えたらどうなるだろうか。低投票率になり、危機バネを発揮して与党が勝ってしまうのではと危惧する。
 これらを払拭、打開するには「憲法理念を具現化したリアルな政策」を自治体住民に提示する必要があるのではないか。従来の「憲法をいかす政治」のスローガン型では抽象的であり、何を自治体政策において実現させたいのか明瞭ではない。自治体を国政における悪政の防波堤(反撃拠点)にという声も聞かれるが、ほとんどの自治体が共産党を除く事実上の「オール与党」状態であり、自公と呉越同舟で「防波堤」や「反撃」といって、どれだけの人が野党に支持を寄せるであろう。国政と自治体政治は、生活・教育・福祉などではリンクし、切っても切り離せないものになっている。その意味では、この首尾一貫性のない現在の野党のあり方は問題といわざるを得ない。特に立憲民主党はどのように市民に説明するのだろう。先月の宮崎県知事選では自公と共に現職を推薦をしたものの、支持層の半数以上は前知事支持へ票が流れている。政党が自らの政党支持層の意向を反映させないとは一体どういうことなのか。このような姿勢で普段、支持していない層からどうやって支持者獲得ができるのだろうか。地方自治は国政のように「与野党対決」ではない、首長と議会の「二元代表制」だから相乗りも頭から否定すべきものではないといった論もある。しかし、これは政党の論理であって、市民の側からすれば全く得手勝手なご都合論に映る。立憲に限らず、「野党」を標榜する政党は、野党とは何か、問い直す必要があると考える。
 岸田政権は、大軍拡と大増税に道を拓く「安保3文書」を閣議決定した。安倍政権の「集団的自衛権行使容認」の閣議決定同様、国民的議論もなく行政府だけでさっさと決めてしまう。新年度防衛予算は6兆8千億円余り。その中で自衛艦・施設建設に史上初の建設国債4千億円余りを充当。さらに後年度負担(いわゆる複数年にわたるローン)は10兆円超。確実に防衛費を増大させていく予算上の仕組みが出来たといえる。
防衛力強化に肯定的世論はあるものの、いざどこから負担するのかというと増税反対、増税までして軍拡する必要はないという声まである。政府は財源探しに血道をあげているが、今すべきはそこではないだろう。コロナ、物価高騰、ウクライナ問題でいのちとくらしに市民は苦しんでいる。それに政治はどう応えていくのだろうかだ。今、市民が最も知りたいことはこれではないか。市民に心を寄せた政治なくして民主主義の危機や政治不信の解消には繋がらない。このことを強調したい。(すずたわたる)