新社会兵庫ナウ

地域ユニオンあちこちあれこれ401

労働条件の悪化を進める自治体の民間再委託

2022/11/09
 神戸市が業務委託をしている、ある職場の問題に取り組んでいる。
 相談の発端は、人間関係のトラブルによる解雇問題だが、法律が守られていないひどい職場実態だった。社会保険と雇用保険は未加入、就業規則の周知はされておらず、労働時間も管理されていない。労働条件明示書の交付はなく、健康診断も実施してない、法律違反だらけの民間企業である。
 職場の法律違反については、これから交渉で解決していくが、今回は神戸市の業務委託の実態を問題にしたい。
 この職場は、神戸市がA社との間で10年間の業務委託契約をし、A社がB社に再委託している。組合員はこのB社と雇用契約を締結している。組合員らの賃金は時給制である。最低賃金の960円で働いている。24時間の職場のため、長い勤務では12時間拘束となる。労働基準法第32条に基づいて、1日8時間を超える勤務の場合は、時間外割増賃金が加算されている。正社員はいない。全員がフルタイムパートである。最低賃金を上回ることがないことからも、官製ワーキングプアだと言えるだろう。
 ちょっと視点を変えて考えてみると、神戸市から委託されたA社が利益を引いてB社に再委託し、B社が利益を得ることを前提で計算すると、労働者の賃金が最低賃金になるという構造になる。A社が再委託しなければ、労働者は最低賃金を上回る賃金で働くことができるということになる。これは問題ではないか。
 神戸市と委託会社との間の委託契約に、再委託禁止を条件にすることが必要である。そして、神戸市は委託した企業に対して、労働条件を開示させ、最低でも法律に違反しない職場運営を約束させることが必要である。違反が認められた場合、委託先企業と契約解除し、神戸市が働いている人に責任を持つべきだと思う。
 神戸市は民間委託を広げているが、再委託や再々委託が行われていると、官製ワーキングプアにとどまらず、健康保険や年金、雇用保険などの社会的なセーフティネットを労働者から奪うことにもつながる。
 公的機関の職場でこの実態が放置されていることを問題にし、改善させたい。
 木村文貴子(神戸ワーカーズユニオン書記長)