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私の主張(2022年10月26日号)
岸田政権の「戦争できる国」づくりの推進を許すな
2022/10/26
10月4日で政権発足からちょうど1年を迎えた岸田内閣の支持率は、国葬問題や旧統一教会問題への対応、さらには物価高への対策などをめぐって急落し低迷したままだ。回復の兆しが見えないどころか、さらに低下している世論調査結果もある。共同通信は35%(10月8、9日実施)で、時事通信では30%さえ切る27・4%だった(10月7―10日同)。さすがにこうした「危険水域」と呼ばれるほどの低支持率に危機感を強めているのは間違いなく、窮地に喘ぐ政権の姿も覗けてくる。
だが一方では、改憲問題や防衛問題など、安倍政治に束縛されたような立場の根幹に関わる課題については、反対論などは全く意に介せず、一歩も譲ろうとしない強権ぶりだ。
国葬の強行で端的に示されたが、自ら特技として強調した「聞く力」などはとんでもないジョーク、いや噓だった。ことほどさように「看板」が変化した「岸田政治」。その変わりぶりを、10月3日の臨時国会での所信表明演説から見てみよう。
岸田首相は、昨年の所信表明演説などでは、競争と効率を志向した新自由主義的政策が「格差」につながったと指摘。「新しい資本主義」を掲げ、人々を少々驚かせたが、そこでは賃上げなど所得引き上げの必要性を説いて、「分配なくして次の成長なし」と力説した。だが、今回の所信表明演説では、「格差」に触れることもなく、「構造的な賃上げ」との言葉はあっても「成長と分配」のフレーズは消えてなくなり、「成長のための投資と改革」と、「分配」が「投資」にとってかわってしまった。
消えたものがある一方で、それまでは全く言及していなかった原発について、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を理由として、「原子力発電の問題に正面から取り組む」とし、十数基の原発再稼働や「次世代革新炉」の開発・建設についての議論の加速を指示したとした。
安全保障問題では、ウクライナ戦争や強まる米中対立と台湾海峡有事の憂慮、北朝鮮の度重なるミサイル発射などを都合よく利用して「抑止力と対処力を強化することは最優先の使命」だと宣言、GDP比2%を目標にした防衛力の5年以内の抜本的強化、さらには敵基地攻撃能力(「反撃能力」と言い換え)の保有の検討まで明言するに至った。
こうした防衛力の抜本的強化、すなわち軍備増強の大軍拡路線が強く打ち出されてきたところに岸田政権の危険な一面が表れている。
来年度の防衛省の概算要求を見ても、スタンド・オフ・ミサイル(敵の対艦・対空ミサイルの射程外から攻撃できる射程の長いミサイル)ひとつをとってみても明らかに攻撃的兵器で、「敵基地攻撃」のための武器購入計画だと言わねばならない。また、日本の自衛隊が参加するさまざまな合同軍事演習も、集団的自衛権の行使を意識したものに質的に変化してきている。
こうした流れは、物価高や円安に苦しむ国民の暮らしの改善とは逆行するもので、憲法改悪とあわせて、「戦争できる国」づくりへの「揺るぎなき」歩みというほかない。日本の国の形を大きく変えてしまう最悪の選択肢で、今後にわたって許してはならないものだ。
改憲をめぐっても、岸田首相は「発議」に向けた積極的な議論を期待すると踏み込んだ。
この歩みを止める運動がこれからのわれわれの大きな運動課題の一つであることをしっかり受け止めよう。
だが注目しなければならないことは、いま各種の世論調査でも防衛力・防衛費の増強に賛成する意見が反対を大きく上回っていることである。実際に起こってしまったロシアのウクライナ侵略や米中対立をはじめ、戦争への不安が後押しとなって、政権は防衛力増強に関する主張には何の躊躇もなく、世論もそれを受け入れているかの感がある。
この事態を私たちはどうやって変えていくのか、抑止力の強化ではなく、平和的な外交力をどうつくり出していくのか、護憲勢力、護憲の党としても大きく問われている課題だ。
臨時国会での野党の論戦に期待したい。どれだけ防衛費増強の問題点を批判し、その行きつく危険な先を分かりやすく示していけるのか。支持率低迷で窮地に立つ政権に対して攻勢をかけてほしい。しかし、そのためには立憲野党としての共闘の再構築・再強化が不可欠である。また、国会だけの問題でもない。国会で野党が力を発揮するためには、市民と野党の共闘の再構築も必要であり、大衆運動の高揚をつくり出さねばならない。
国葬に対して全国各地で起こった抗議・反対の声と運動をこうした運動に引き継ぎ、組織しなければならない。岸田政権をさらに追い詰めていく局面としなければならない。
そうした運動や局面の一大集約の場が来年4月の統一自治体選挙である。がんばろう。
上野恵司(平和運動研究会)
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国葬の強行で端的に示されたが、自ら特技として強調した「聞く力」などはとんでもないジョーク、いや噓だった。ことほどさように「看板」が変化した「岸田政治」。その変わりぶりを、10月3日の臨時国会での所信表明演説から見てみよう。
岸田首相は、昨年の所信表明演説などでは、競争と効率を志向した新自由主義的政策が「格差」につながったと指摘。「新しい資本主義」を掲げ、人々を少々驚かせたが、そこでは賃上げなど所得引き上げの必要性を説いて、「分配なくして次の成長なし」と力説した。だが、今回の所信表明演説では、「格差」に触れることもなく、「構造的な賃上げ」との言葉はあっても「成長と分配」のフレーズは消えてなくなり、「成長のための投資と改革」と、「分配」が「投資」にとってかわってしまった。
消えたものがある一方で、それまでは全く言及していなかった原発について、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を理由として、「原子力発電の問題に正面から取り組む」とし、十数基の原発再稼働や「次世代革新炉」の開発・建設についての議論の加速を指示したとした。
安全保障問題では、ウクライナ戦争や強まる米中対立と台湾海峡有事の憂慮、北朝鮮の度重なるミサイル発射などを都合よく利用して「抑止力と対処力を強化することは最優先の使命」だと宣言、GDP比2%を目標にした防衛力の5年以内の抜本的強化、さらには敵基地攻撃能力(「反撃能力」と言い換え)の保有の検討まで明言するに至った。
こうした防衛力の抜本的強化、すなわち軍備増強の大軍拡路線が強く打ち出されてきたところに岸田政権の危険な一面が表れている。
来年度の防衛省の概算要求を見ても、スタンド・オフ・ミサイル(敵の対艦・対空ミサイルの射程外から攻撃できる射程の長いミサイル)ひとつをとってみても明らかに攻撃的兵器で、「敵基地攻撃」のための武器購入計画だと言わねばならない。また、日本の自衛隊が参加するさまざまな合同軍事演習も、集団的自衛権の行使を意識したものに質的に変化してきている。
こうした流れは、物価高や円安に苦しむ国民の暮らしの改善とは逆行するもので、憲法改悪とあわせて、「戦争できる国」づくりへの「揺るぎなき」歩みというほかない。日本の国の形を大きく変えてしまう最悪の選択肢で、今後にわたって許してはならないものだ。
改憲をめぐっても、岸田首相は「発議」に向けた積極的な議論を期待すると踏み込んだ。
この歩みを止める運動がこれからのわれわれの大きな運動課題の一つであることをしっかり受け止めよう。
だが注目しなければならないことは、いま各種の世論調査でも防衛力・防衛費の増強に賛成する意見が反対を大きく上回っていることである。実際に起こってしまったロシアのウクライナ侵略や米中対立をはじめ、戦争への不安が後押しとなって、政権は防衛力増強に関する主張には何の躊躇もなく、世論もそれを受け入れているかの感がある。
この事態を私たちはどうやって変えていくのか、抑止力の強化ではなく、平和的な外交力をどうつくり出していくのか、護憲勢力、護憲の党としても大きく問われている課題だ。
臨時国会での野党の論戦に期待したい。どれだけ防衛費増強の問題点を批判し、その行きつく危険な先を分かりやすく示していけるのか。支持率低迷で窮地に立つ政権に対して攻勢をかけてほしい。しかし、そのためには立憲野党としての共闘の再構築・再強化が不可欠である。また、国会だけの問題でもない。国会で野党が力を発揮するためには、市民と野党の共闘の再構築も必要であり、大衆運動の高揚をつくり出さねばならない。
国葬に対して全国各地で起こった抗議・反対の声と運動をこうした運動に引き継ぎ、組織しなければならない。岸田政権をさらに追い詰めていく局面としなければならない。
そうした運動や局面の一大集約の場が来年4月の統一自治体選挙である。がんばろう。
上野恵司(平和運動研究会)