新社会兵庫ナウ

おんなの目(2022年9月28日号)

2022/09/28
出すぎた杭は打たれない
 
 10年間専業主婦として3人の子育てをしながら平凡な生活を神戸市で送っていました。家の建て替えからまったく知らなかった三木市に引っ越すことになり、私の運命は大きく変わることとなりました。
 子どもの教育費と住宅ローン返済のため仕事を探していた時に三木市の学校給食パート調理員募集があると聞き、何かの役に立つかと思い調理師免許を取得していたこともあって応募しました。18名募集のところ157名という応募者があり、地域の市会議員に頼んでいる人が多く、採用はだめだと思っていたところをあまりの多さに新興住宅地の住民から選んだと聞きました。
 働き始めて知りましたが、全国でも珍しいパート調理員で11カ月雇用という契約。募集要項では社会保険加入を謳い、勤務時間も7時間から6時間に変更されているという劣悪なものでした。正規職員は各学校に1人でパート調理員は3人〜10人おり、6時間ですべての作業を終えることになっていましたが超勤の連続でした。衛生管理もひどいもので、自分の子どもも食べる給食に対して許すことができない状況でした。また、担当者は、パートには年休や産休はないなどというほど労働基準法も知らないお粗末さで、パート全員の不満が続出し、三木市職に相談して組合を結成することになりました。
 しかし、当局は組合結成直後に全員解雇という暴挙に出てきましたが、ストライキやあらゆる行動を駆使し、多くの仲間の支援で白紙撤回させることができました。
 労働組合などとは全く無縁な環境で生きてきた私が委員長に選ばれ、交渉していく中で、「出る杭は打たれるが出すぎた杭は打たれない」ことを学び、知らなければ騙されることも知り、働くものにとって必要な学習を積み重ねました。
 他市の正規職員の組合員から「パートの分際で正規職員を差し置いて。おとなしくしていれば(いいのに)」と言われ、パートと呼ばれるだけで人間として低くみられる差別意識を許すことはできないという思いで闘ってきました。
 7年目でようやく自治労加入を果たし、県本部に臨職評を結成し、その中で全国協議会の初代議長として自治体非正規職員の労働条件改善をめざして闘い続けました。また、ILOや国連にも、法の谷間におかれている自治体非正規職員の実態を訴え、外国の多くの労働組合にも日本の自治体非正規職員の実態を知ってもらう運動もしてきました。
 兵庫県はユニオン運動と連携してネットワークを構築し、全国にも誇れる運動を続けています。
 私たちが積み上げてきたものを会計年度任用職員などという理不尽な制度に置き換えられてきましたが、同一労働同一賃金の精神に基づき、決してあきらめることなく声を上げ続けることが大切だと思います。私も命ある限り、声をあげ闘い続けます。(中谷紀子)