改憲の動きをウオッチング

(2022年7月27日号)

2022/07/27
 《岸田首相は、参院選の結果を受けた記者会見で、選挙中に銃撃され死亡した安倍元首相が執念を燃やし続けてきた改憲について、「思いを引き継ぎ、果たせなかった課題に取り組んでいく」と強調した。参院選の結果、新たな改憲の危機を迎えている。
 安倍氏は「偉大なリーダー」だと賛美されているが、国会で118回もの虚偽答弁。「モリ・カケ・桜」等々、悪政の連続だった。どこが「偉大」だったのか。歴代首相の中でも最も罪が重い首相ではなかったのか。
 そこで、安倍氏が1度ならず、2度までも政権を投げ出した直後の小欄に掲載した「憲法と立憲主義を破壊した安倍政権の大罪」を再録させていただき、安倍政治を振り返ってみる(一部省略・20年9月22日号)。》

■憲法と立憲主義を破壊した安倍政権の大罪
《96条改憲の策動》
 安倍首相は、2012年末に首相に返り咲いた直後から、改憲のハードルを下げるために「96条改憲」を目論んだ。しかし、「裏口入学」「姑息な手段」など、国民世論の高まりで挫折に追い込まれた。
《戦争の司令部―国家安全保障会議設置を強行》
 「国家安全保障会議」(日本版NSC)設置法を、数の力で強行成立させた(13年11月27日)。
 NSCは、外交・軍事の司令塔として、平時にも有事にも対処する戦争の司令部の役割を担う。
「国家安全保障戦略」を閣議決定(13年12月17日)。「安保戦略」は、「専守防衛」など歴代政権の防衛政策の基本方針(1957年閣議決定)に代わるもので、戦後日本の安保戦略を大転換した。
《国民の目・耳・口をふさぐ秘密保護法強行制定》
 安倍政権は、国民の知る権利や言論の自由など基本的人権を侵害する「特定秘密保護法」を強行成立させた(13年12月6日)。
《究極の9条解釈改憲―集団的自衛権行使容認》
 安倍政権は、集団的自衛権の行使容認を閣議決定した(14年7月1日)。
 集団的自衛権は、憲法上行使できない―これが歴代政権の一貫した憲法解釈であった。この憲法解釈を一内閣で変えるという暴挙は、断じて許されるものではない。
《日米ガイドライン改定》
「日米軍事協力の指針」(ガイドライン)を18年ぶりに改定した(15年4月27日)。新ガイドラインは、地理的限定を取り払い、日米軍事協力を地球規模に広げた。
《「戦争する国」づくりへ一目散―戦争法》
 安倍政権は、戦争法(安保法制)を国民の大規模な反対運動や世論に逆らい、数の暴力で強行成立させた(15年9月19日)。
 戦争法の重大な問題は、自衛隊の武力行使を認め、武力で他国を防衛する集団的自衛権の行使を可能にしていることである。
《「テロ対策」の看板は偽り 現代版治安維持法》
  安倍政権は、過去3度廃案になった共謀罪法を参院本会議で強行成立させた(17年6月15日)。
 「共謀罪」法は、現代版治安維持法と呼ばれる内容を持つ悪法。
《改憲の本丸 9条改憲に挑戦する安倍首相》
  安倍首相は、改憲団体の「民間憲法臨調」(「日本会議」系)の改憲集会へのビデオメッセージで、「自衛隊の存在を、9条1項、2項を残しつつ明文で書き込む」と明言した(17年5月3日)。 「集団的自衛権を行使する自衛隊」を書き込むことによって、憲法上も集団的自衛権を追認することになる。
 自民党は改憲4項目をまとめる(18年3月)。
《「戦争する国」づくりへまっしぐら》
 安倍政権の下で、護衛艦「いずも」を最新鋭のステルス戦闘機F35Bが発着艦できる攻撃型空母への改修や長距離巡航ミサイルの導入を進めるなど、「専守防衛」の原則を踏みにじってきた。
  また、辞めていく首相が、「敵基地攻撃能力」について方向性を出すよう指示を出した。(中)