改憲の動きをウオッチング

(2022年5月18日号)

2022/05/18
■9条破壊の大転換 自民党の「安保提言」 相手国の中枢も攻撃対象
 自民党安全保障調査会は4月21日、「敵基地攻撃能力」の名称を「反撃能力」に変更し、対象をミサイル基地に限定せず相手国の政府中枢など「指揮統制機能等」を追加し、政府に能力の保有を求める提言案を了承した(4月26日の総務会で了承、27日に岸田首相に提出)。
 提言が相手国の「指揮統制機能等」も攻撃対象に含めたことについて、元内閣法制局長官の阪田雅裕弁護士は「指揮命令の中枢部まで破壊することになれば、敵国を全面的に攻撃することにほぼ等しく、他国の軍隊と何が違うのか。安保法制で集団的自衛権の行使を容認したことによって、専守防衛は大きく破綻したが、そのことが軍備の面でもより明確になるということではないか」と、強く批判した(東京)。
 また、全国の学識者らでつくる「平和構想研究会」は、「憲法の原則を逸脱し戦争への危険を高める自民党『安保提言』に抗議する緊急声明」を発表(4月28日現在・賛同者601名)。自民党提言の重要な問題点が網羅されているので要旨を紹介したい。 
 声明は、まず、弾道ミサイル攻撃等に対する「反撃能力」という名称が付けられたが、「実質的な敵基地攻撃能力の保有を提言している」と指摘し、攻撃の対象を「ミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含む」としており「専守防衛を事実上反故にするものである」と抗議し、「日本による先制攻撃に限りなく近づくきわめて危険な政策といわざるをえない」と断じている。
 さらに提言が、防衛費を「対GDP比2パーセント以上」という目標を念頭に5年以内に拡大するとしていることについて、声明は「防衛費を倍増させようという宣言である」「日本がこのような軍拡姿勢をとることは、アジアにおける軍備競争を加速させるものである」と手厳しく批判している。
 そして声明は、「防衛装備移転3原則を見直し、侵略を受けている国に対しては『幅広い分野の装備の移転を可能とする』との言い方で、殺傷能力を持つ兵器の提供も検討するよう求めている」。これは「武器輸出管理政策の根幹といえる『紛争を助長しない』という原則を放棄するものである」と強く批判し、「恣意的な解釈で歯止めが利かなくなる可能性がきわめて高い。日本が輸出する武器によって人々が殺傷されるような事態が起きることは、受け入れがたいものである」と強調している。 
 最後に。いま、日本に求められているのは、平和憲法にもとづいて「軍備競争を煽ることではなく、周辺諸国との相互的な軍縮や緊張緩和のための外交であり、国連を中心とした国際法秩序の回復のための努力である」と訴えている。
 政府は、外交・防衛政策の基本方針(「国家安全保障戦略」と「中期防衛力整備計画」・「防衛計画の大綱」)を年末までに改定する方針だ。(中)