新社会兵庫ナウ

水脈(2022年2月23日号)

2022/02/23
 「小さな声を聞く力」―連立与党の一角を占める某政党ポスターのキャッチコピーだ。「下駄の雪」と半ば蔑みをもって周囲から見られてもなお権力の座にある自民党に伴走する。件のポスターを目にするたびに、「強い力になびく癖」と突っ込みを入れたくなる▼そういえば岸田政権も発足にあたって「聞く力」を売りにしていたのだが、今、首相は似たような状況に陥っているのではないか。たしかに当初言っていた「金融資産課税」はどこかに行ってしまったし、もともとの宏池会の主張とはかなり隔たりのある敵基地攻撃能力などもいつの間にかふつうに口にするようになっている▼最近では「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録をめぐって迷走した。長崎・端島(軍艦島)のこともあり、朝鮮人強制連行をめぐる韓国からのクレームもあって申請には消極的と伝えられていたのが、大きな派閥、その領袖の「歴史戦だ!」などというたいそうな物言いに「聞く力」を発揮して申請に踏み切った。ほんとうに貴重な文化遺産なら隣国の意見も真摯に聞き、申請し登録すればいい▼「聞く力」は、理性から外れた大きな声よりごく当たり前の声にこそ向けられなければならない、と思う。