新社会兵庫ナウ

私の主張(2022年2月23日号)

2022/02/23
労働組合を一から作り直す気概を持とう
 
 嘘と統計偽装の政権
 コロナ禍で3回目の春闘を迎えた。だが、私たちを包む空気は重苦しい。安倍元首相は「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事でもある」と述べた。国会では岸田首相が敵基地攻撃能力に言及する。国民を戦争への道に導こうとしているとしか思えない。戦前、「満蒙は日本の生命線」と言い、日中戦争、太平洋戦争に突入していった歴史が蘇る。
 10年にも及んだ安倍政権が何をもたらしたのだろう。モリカケ問題では財務省の公文書の改ざんが強要され、官僚を自死に追いやった。桜を見る会や前夜祭問題では安倍元首相は国会で平然と118回の嘘を言い続けた。広島の参議院選挙では買収行為が繰り広げられた。さらに、国の基本統計である毎日勤労統計の改ざんに続き、建設工事受注動態統計の偽装が2013年から行われていた。10年間ではいくらの偽装、GDPのかさ上げがなされたのだろう。絶対にあってはならないことだ。国家予算の基礎が改ざんの数字であった。もはや国家の体をなしていない。
 オミクロン株によるコロナ感染第6波が襲っている。政府のコロナ対策は非科学的で、感染爆発になすすべもない。3回目のワクチン接種は間に合わず、検査キッドは不足し、検査もせずに医者が見なし陽性と認定する。またも保健所は疲弊し、濃厚接触者の判断や連絡を感染者にまかせるという。御用学者と事実に学ばない政治は被害を拡大し、1日10万人の感染者というが、実はその何倍もの検査されていない感染者がおり、さらに感染は拡大している。
労働組合は陳情団体ではない
 こうした状況で2022年春闘を迎えている。岸田政権は財界に3%の賃上げを求め、賃上げ企業へは法人税を下げるらしい。春闘の主役たる労働組合・連合は、新春交歓会で岸田首相と厚労大臣そして経団連代表だけをあいさつさせ、野党は無視された。連合は政府や財界への陳情団体になり下がったのか。衆議院選挙の総括は、自らの闘いの総括を抜きに立憲民主党が共産党と共闘したことが敗因であるとし、参議院選挙での野党共闘を批判し続けている。労働組合つぶしにも沈黙。政治に口出しする暇があったら、情勢を学び直し、力量低下を反省するべきだろう。
春闘の歴史に学ぼう
 春闘に話を戻そう。日本の働く者の賃金は20年以上も上がっていないし低下している。こんな国はOECD諸国で日本だけだ。反比例して大企業の内部留保金は増え続け、466兆円にもなるという。
 春闘は、企業別組合が主流の日本労働組合が編み出してきた闘い方であった。古い話で恐縮だが、73年春闘での年金ストは労働組合が国民の絶大な信頼を勝ち得た闘いであった。春闘期には交通ゼネストで電車が止まり、工場には赤旗が林立した。半世紀前には当たり前の姿であり、労働組合は社会運動の中心であった。春闘は俳句の季語にもなっていたが、2022年春闘は言葉だけで労働組合の姿は見えない。賃上げは、団結した力で闘い取る以外に道はないのだ。
原則から始めよう
 私たちがコミュニティ・ユニオンの運動を始めて30年以上になる。一人ひとりの労働者、特に非正規労働者からの相談を受け続け、権利侵害に反撃してきた。武庫川ユニオンだけでも加入者は2,100人になる。特に1995年の阪神・淡路大震災、2007年の派遣切り時には、だれでもはいれるユニオン運動の強みを発揮した。コロナ禍でも同様に相談活動を続ける。
 ひょうごユニオンとNPO法人「働く者の相談室」は3月に「コロナで困った 生活と雇用を守る ホットライン」を開設する。ただ、相談活動は継続してきたが、組織化は思うように進まないし、私たちが春闘相場を引き上げる力を持つことはできないだろう。しかし、私たちができることは、諦めることなく、倦まずたゆまず、地域の働く仲間に一緒に声を上げようと呼びかけ続け、相談者と共に闘うことだ。
 賃金が上がらず、平和の危機が迫り、閉塞感漂う日本社会を招いている原因は、労働組合が闘いに立ち上がらず、政権や企業に陳情しかできないことだ。組合員の悲鳴に、個人の問題は扱わないと切り捨てる大企業労組がいかに多いことか。
 闘いを忘れた労働組合に構ってはいられない。2022年春闘は厳しくとも、非正規や虐げられた働く仲間に呼びかけ、本当の労働組合をつくり直す以外に道はない。社会を動かすのは労働組合なのだから。
 小西純一郎(ひょうごユニオン事務局長)