新社会兵庫ナウ

おんなの目(2022年1月19日号)

2022/01/19
ふざけんな!
 
 「ふざけんな!」―。赤木俊夫さんの妻、雅子さんの心の底からの激しい怒りの声だ。2度も3度も尊厳を踏みにじられてきた赤木俊夫さん、雅子さん。当時、財務省近畿財務局職員だった赤木俊夫さんは、森友学園問題での国有地売却をめぐって公文書の改ざんを強いられてきた。ずっと苦しみ続け、2018年3月7日、自ら命を絶った。雅子さんは、それを間近で見ながら、とうとう助けることができなかった自分自身を責めた。
 国会では、森友学園問題は、真実があきらかにされないままうやむやになろうとしていた。新型コロナウイルスに振り回されていた状況下、この問題への関心が薄らぎつつあったその時に、雅子さんは、責任は自分自身以上に財務省と近畿財務局にある……、「事件の真実を知りたい」と国を相手に訴訟を起こした。私は、これを機に森友学園問題の真実が明らかにされるのではないかと期待し見守った。
 ところが突然、国は、赤木俊夫さんの自殺と改ざん作業との因果関係を認め、損害賠償を全額認めるという「認諾」の手続きを取って裁判を強制終了させた。なんと卑怯な手を使うのか。誰の入れ知恵なのか。「金を払えば良いんだろう」と、赤木俊夫さん、雅子さんの尊厳を再び傷つけるこの行為に心から憤りを感じた。ほんとうに「ふざけんな!」と言いたい。
 こんな行為で裁判を終了させようとした背景に何があるのか。裁判・審理を継続することで、新たな事実が現れるかもしれない。それを避けたい人物は誰なのか。雅子さんは、そこにこそ事件の真実があると、それこそを知りたかったのだ。にもかかわらず、原告である雅子さんの請求を正しいとし、さっさと非を認め、それをもって裁判を終わらせようとしたのだ。人ひとりの命を奪いながら、こんな理不尽なことがこのまま許されて良いのだろうか。
 赤木俊夫さんが亡くなる直前に走り書きしたメモ書き遺書が残っていた。
「森友問題
佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、
それにNOを誰もいわない
これが財務官僚王国
最後は下部がしっぽを切られる。
なんて世の中だ、
手がふるえる、恐い
命 大切な命 終止符」
(『私は真実が知りたい』赤木雅子+相澤冬樹 著/文藝春秋刊)
公務員としての誇りを人一倍強く持っていた赤木俊夫さん。どれだけ苦しかっただろう。どれだけ悔しかっただろう。まだ、事件は終わっていない!終わらせてはならない!(小林るみ子)