新社会兵庫ナウ

おんなの目(2021年12月15日号)

2021/12/15
海外赴任生活
 
 ロシア・モスクワへ来て、もう半年が過ぎた。
 ロシアと言えば、プーチン!ボルシチ!くらいしか知らず、本当に何も知らないまま生活が始まった。イメージはソ連時代の面影を残した暗く殺風景な街並みや、笑わないロシア人だった。
 しかし、降り立った国は私が想像していた国とは全く違っていた。モスクワの街並みは緑豊かで、夏には沢山のテラス席が町中・公園中に出て、カフェやお店の装飾は日本以上にオシャレだ。冬になった現在は多くの建物がイルミネーションで輝いている。オレンジ色を基調とする道路沿いや建物の光はとても美しい。IT化も進んでおり、ほとんどのスーパーはネットで最短2時間で届けてくれる。タクシーもアプリで目的地を設定し、カードで支払うので、ロシア語が出来なくても乗れる。電車もクレジットカードをかざすだけで乗れる。もちろんソ連時代の名残も多く、住居は同じタイプの団地のような雰囲気のものが多い。
 そして、また改めて日本の良いところ、良くないところに気づかされた。例えば、ロシア人はレジで並んでいても1つの商品を買いたいときは『前に行ってもいい?』と尋ねてくる。個人的にはとても効率がいいと思う。例えば、ロシア人は綺麗に保とうとする意識は少ない。タバコのポイ捨て、犬の糞の放置、トイレはいつも便器が濡れている。町中にお掃除の人がいて綺麗にしてくれるからなのだろうか。日本人の美意識がとても高いと感じる。例えば、ロシア人は女性、特に子どもには寛大でショッピングモールなどで大声を出していても、走っていても何をしていても危ないこと以外はあまり怒られない。なので、子どもたちは良くも悪くも伸び伸び育つ。日本では赤ちゃんでさえ電車の中など許されないことが多々ある。
 このコロナ禍でもその差は感じる。ロシア人は過去最高の感染者・死者数(1日の感染者4万人以上、死者数千人以上)でも、外ではマスクをつけないし(中でもつけなくていいならつけない)、予防接種も打ちたくない人が多い。この間の感染対策のための連休も大喜びで海外旅行へ行く人が続出。一方、日本に目を向けると、周りの目が気になって暑くてもマスクを外せないことや、コロナ感染したくない理由に周りに迷惑がかかるということがあがるなど、日本の同調圧力文化がやはり異常だと感じる。
 私はこれまで海外や地方、大都市など様々な場所で暮らしてきた。フルタイムでも働いた。日雇いバイトもした。今は駐在妻。場所や立場が変われば、自分が今まで“普通”だと感じていたものが、マイノリティになってしまうこともある。想像よりもはるかに分かりづらい部分まで見えてくる。何がベストかはきっと自分自身の判断で決めるしかなく、経験によってその判断はかなり変わる。30代後半、もっとたくさんの人たちと出会い、常に自分の“普通”に「?」をつけながら、ベストを探していきたい。(眞野多恵子)