新社会兵庫ナウ

私の主張(2020年3月24日号)

2020/03/24
社会的・経済的弱者を直撃した新型コロナウィルス
―新型コロナウィルス 労働・雇用ホットラインから見えるもの―

 突然、安倍首相が要請した「一斉休校」は教育現場のみならず、国中を大混乱に陥れている。こうした状況下で、ひょうごユニオンは3月6目、県パートユニオンネットワーク、NPOひょうご働く人の相談室、NPOひょうご労働安全センターと連携し、「新型コロナウイルス 労働・雇用ホットライン」を開設した。その目的は、いま労働現場で起こっている問題を正確に把握することが大切だと考えたからだ。当日は、テレビ局6社の報道があり、65件の相談が寄せられた。相談はいまも継続中で3月10日現在83件となっている。 この中には県外からの相談も含まれる。
相談内容の特徴
 相談者の内訳は、男性36人、女性40人、性別末記入7人。雇用形態では正規は2件にとどまり、契約社員、パート、派遣など非正規の割合が圧倒的に多い。そしてフリーランス・個人請負、人材派遣センター、経営者からの相談も目立った。今回のような「非常事態」になれば、真っ先にダメージを受けるのは不安定雇用労働者であることが改めて浮き彫りになった。
 4月1日から「不合理な待遇差」を禁じるパートタイム・有期雇用労働法が施行されるが、コロナウイルス問題の影響で正社員と非正規の間に新たな格差が顕著になっている。
 ホットラインで明らかになったことの第1は、イベシト中止、学校一斉休校措置が経済活動の急激な縮小を招いていることだ。その結果、流通、小売り、飲食、娯楽、交通などの分野で事業悪化がすすみ、深刻な生活不安・雇用不安を生み出している。
 第2は、雇用形態でいえば、契約社員、パート、派遣などの不安定雇用労働者を直撃する形で不安が広がっている。同じ休業でも「正規には休業手当があるが非正規はない」という訴えも多い。
 第3は、学校の一斉休校は給食従事者や校務員、スクールバス関係者らの休業問題と、子ども保護者の休業問題を生じさせている。保育所や学童保育の労働者はその狭間で苦労している。
 第4は、政府の緊急支援策も「泥縄式」で公平性を欠き、混乱を生んでいる。たとえば、休校にともなう保護者の「休業補償」でも会社と雇用瀾係がある労働者は日額8330円の補償があるが、なぜフリーフンスは4100円なのか。申請方法はどうするのか。保護者とは別に登録派遣やフリーランス・個人請負に助成制度はないのか、という問い合わせである。  第5は、使用者の「安全配慮義務」に関する問題である。マスクとアルコール消毒液の不足が言われているが、介護施設や学童保育、保育所でも確保できていない実態が明らかになっている。
 私たちとしては、上記の相談内容をとりまとめ、早急に雇用・労働問題を中心に行政として取り組むべき課題を兵庫県と兵庫労働局に申し入れることとしている。
「コロナ」対策より「自己保身」対策?
 2月29日の記者会見で、首相は一斉休校について「時間をかけているいとまはなかった」と釈明した。しかし国内で感染者が判明したのが1月16日。それ以降、一体何をしていたのか。「首相動静」によると、新型ロナウイルスの感染が深刻になる2月中も頻繁にお友達や企業経営者、与党議員らと夜の会食を重ねている。その首相が一転、専門家の意見も聞かず一斉休校に踏み切ったのは、海外からの批判と内閣支持率の急落に危機感を持ったからだ。
 緩慢な政府の「コロナ対策」や「一斉休校」措置は、窮地に立った安倍政権の「疑惑隠し」と指摘する識者は多い。前川善平さんはツイッターにこう書き込んでいる。「やっぱり新型コロナウイルスは、アベ政権にとって神風だ。『緊急事態』で国民の支持を取り付け、野党の追及を鈍らせ、野党の足並みを乱すことにも成功している。桜を見る会の私物化も、前夜祭の公選法違反疑惑も、東京高検検事長の違法定年延長も、国民の関心の外へ追いやられてしまった。」
 転んでもただでは起きないのが現政権だ。感染対策の失敗を棚に上げ、こんどは「国民の不安感」に乗じて「緊急事態宣言」の法整備を打ち出心た。最長2年間、外出や移動の自由、集会や言論、報道の自由さえ制限できる事実上の戒厳令だ。それを国会承認もないまま内閣の「政令」に委ねることになる。
 安倍政権のもとで、今、国民の命と暮らし、自由と民主主義は後のない危機に直画している。深刻化する「コロナ不況」のもとで非正規、正規を問わず、解雇、失業問題が本格化するのはこれからだ。
 労働組合の存在が問われている。あきらゆず声を上げよう。労働者のたたかいはそこからしか始まらない。(3月12日記)   
岡崎進(ひょうごユニオン委員長)